ロクイチ聖女 6分の1の確率で聖女になりました。第三部 第四部

濃子

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アジャハン国の王太子とラッキースケベについて。編

第82話 東堂は懐かしむ

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 のどかな景色の中、その巨大な施設はあった。高台から何台もすべり台が見える。
 プールも、子供用から大人用、流れるプール、波のプールなど、たくさんあった。


 東堂は向こうの世界を思い出す。

 小さい頃から海やプールを好んだ自分のために、夏になると父親が必ず連れて行ってくれた。


 夏休み、学童保育が嫌でギャーギャーー言ってたときも、土日は泳ぎにいける、ってがんばったよなー。いま思うと土日の度に連れてくなんて、親父も大変だったよな。
 杉田のおじさんもいたから、親父にしてみればデートかーー(※杉田のおじさんの事は第一部、魔法騎士大演習の最後にでてくるぜ。第二部の聖女の禁域にもな!)。
 
 そう思うと、父親もなかなか純愛なひとだ。

 聞く機会は永遠に失われたが、杉田のおじさんの事をどう思っていたのかは聞きたかった。

 なぜ、おじさんの妻を奪う事にしたのかーー。






「すげえ広い。みんな、迷子になるなよ!」
「はあい」
「わあ!すべり台だぁ!」

「今日は警備を増やしている。トードォも安心して遊びなさい」

「やったあ!」
 
 アスラーンの予想通りアレクセイは来なかった。


「ふふっ。あいつに勝ったのははじめてかもな」
 
 これで面倒な視線を気にせずに、トードォと遊ぶ事ができるなーー。


 ちなみに、施設内の職員もしっかりグルである。

 さらにーー。

「アスラーン様!」
「来たか、マルテス達」

 昨日、竜の背に乗り、見事なアクロバットを披露した竜騎士達があらわれた。

「あっ、竜騎士の皆さん」
「私達、子供が大好きなんで、子守りしますからね!」
「どんどん遊んでください!」

「えー、なんかすみません」
 東堂は嬉しそうに頭を下げた。









「ひゃっほぉ!」
 東堂は巨大すべり台を滑っていく。スピードがどんどんでて、水しぶきがはじける。

「超おもろー!」
 トンネルに入った。

 長いトンネルをくぐりながら、首を傾げた。
「あれ?ゆっくりになったーー」

 スピードが落ちていく。


「トードォ!」
「わあ!」

 後ろからアスラーンが東堂にぶつかった。

「すみません!」
「どうしたんだ?」
 しっかりと東堂の肩をつかんでアスラーンが尋ねる。ゆっくりだったスピードは、突然速くなっていき。

「ひゃあー!」

 しっかりとくっついたまま、二人はプールに落ちた。

「大丈夫っすか!アス太子!」
「ああ、問題ない」
 東堂の胸をつかみながらアスラーンが答えた。

「ーーえと……」
 髪の毛を払いながら、東堂は困惑した表情を浮かべる。

「ああ、すまない」
 アスラーンが手を離そうとしてーー。

「もしかして、泳ぐの苦手なんすか?」

 目を丸くしてアスラーンが下を向いた。

「ーー実は恥ずかしくて言えないのだが、そうなのだ」

「俺でよかったら教えますよ!」

「そんな、トードォの遊ぶ邪魔はできない」
「いやいや、すぐに泳げるようになりますよ!」



 ちゃっかりアスラーンは、東堂の手を握りながら泳ぎを教えてもらいだした。

 竜騎士達が顔を見合わせて頷き合う。

「どのタイミングで、キスにいく?」
 イスラが尋ねる。
「まだ早い」
「そうだね」
 サヘラとタルティンが眉を寄せた。

「確実にいけるタイミングを計るぞ」
 マルテスの指示に皆が頷いた。

「イエス、リーダー!」















「上手いですよ!アス太子!」
「そうか?トードォに言われると自信がつくなぁ」

 すでに自然にボディタッチをしている。ラッキースケベどころではない。

 触ってみてますます思う。

 身体の硬さも好みだとーー。きっとどれだけやっても頑丈で壊れないだろう。


「トードォ。子供達が流れるプールにいるぞ」
「あっ!行きたいっす!」
「行こう」

「大丈夫っすか?」
「手をつないでいてくれ」

「しゃーなしですよ」
 さわやかな笑顔に、アスラーンの胸がときめいた。
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