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アジャハン国の王太子とラッキースケベについて。編
第79話 頬を染めた兵馬
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お昼は動物園内の屋台で食べて、それからは大型遊具でめいいっぱい遊ばせる。
子供達がはしゃぎまわる中、東堂も一緒になって遊んでいた。
「あいつは元気だな」
アイスクリームを食べながら琉生斗は感心する。
「子供なんて、遊びに遊んでいつの間にか寝るだろ?」
「後の事を考えなくてもいいからね」
「そうだよな」
「トードォ、そろそろ帰るぞ」
「えー!もうですか!?」
「明日はプルウィア領の温水プールに行くからな。子供達を疲れさせてはならない」
「なるほど!よし、おまえら、明日のプールに備えて今日は早く寝るぞ!」
「わあい!」
「プール?わたしはじめて!」
「私もよ!」
「ボクこの前連れてってもらったけど、すごく楽しかったよ!」
「わたし、卒業するの寂しいな」
プリシラが涙を浮かべる。
「いつでも来いよ。プリシラは一期生だからな」
「うん。ありがとう、トードォ。大好き!」
「おう!俺も好きだぞ!」
アスラーンが目を細めた。
「ーー守備範囲が広いな」
「本気で言ってる……?ーーフストンさん、アス王太子お疲れでぇす。連れて帰ってください~!」
「ええっ!ヒョウマさん、最後までお願いしますよ!」
近衛兵のフストンが首を振る。
「もう、無理です」
「はははっ、ヒョウマ。照れなくてもいい。私とおまえの仲だろう」
「はいはいー」
兵馬は相手にしない。
「おまえは照れ屋だな」
アスラーンが軽く肩を叩くと、兵馬はつんのめった。
「あっ!」
こける、と思った瞬間、目をつむる。
だが、衝撃はこなかった。身体が軽くなる浮遊感を感じ、抱きあげられたのを悟る。
「アスラーンー」
ラルジュナが兵馬を抱えた。親友のいる方を睨みつける。
「その程度も駄目なのか、もう腹の中からやり直すしかないな」
ひどい事を言われているが、兵馬の耳には入らなかった。
「ありがと……」
下ろしてもらいながら、兵馬は礼を述べる。
「大丈夫だったー?」
「……うん」
頬を染めた兵馬に反応したのはこの方だ。
「な、な、な、なんだ、アレク。あの兵馬の可愛らしさは!おれの前じゃあんな顔した事ないだろ!」
「ーールートもしないだろう」
「いやーー!悔しいー!」
「落ち着きなさい」
「落ち着いてられるか!」
琉生斗は地団駄を踏んで悔しがったそうだ。
アジャハン名物の新鮮な魚介をつかった豪華なディナーの後、琉生斗は兵馬をつかまえた。
「兵馬ー!一緒に風呂に入ろうぜ!」
「いいよ。僕、家のお風呂があるし」
「いいだろ!たまには!あっちじゃよく一緒に入ったじゃないか~」
「君が勝手に乱入してきたんだからね!うちのお風呂狭いのに!」
「二人は充分いけただろ」
くっつく琉生斗をはらいながら、兵馬が帰ろうとする。
「ーーふむ」
アスラーンが何かに頷いた。
「ヒョウマ。アレクセイもラルジュナも、私の部屋で遊んでいるから、気にせずにゆっくり浸かるといい」
「だから、帰るよ」
「まあまあ、お互い親友と交友を深めようじゃないか」
アスラーンに言われて兵馬が肩を竦めた。
「帰って仕上げたい書類があるからちょっとだけだよ」
「やったあ!」
じゃれあう二人を見つめながら、アレクセイは不満を漏らしたいのを耐えた。
旦那を締め出して、琉生斗は兵馬と湯船に浸かる。
「何この花ー」
湯船にはバラの花びらが浮かぶ。兵馬の頬がひくつく。
「これが通常なのか、昨日もこうだったぜ」
「ーー奥方も大変だ」
「ーーなあ。実際の話、あの人完全に国を抜けれるのか?」
琉生斗の問いに、兵馬が視線を花に落とした。
「ーー無理だろうね……」
「そうかーー。シャラジュナだっけ?あいつがどうにかならないとも限らないもんな」
「うん……。帰るときがきたら、心おきなく帰ってもらうよ」
「ーーついてかねえの?」
「ついていっていいの?」
「六十代になってまで、兵馬、兵馬とは言ってないと思うんだけどな」
バシャバシャと湯をかぶり、琉生斗は親友を横目で見た。
「えらく飛んだね」
兵馬の表情は変わらなかった。
浴室のドアがノックされる。
「え?誰ですか?」
眉をしかめて尋ねると、「失礼いたします」と、王宮のメイド服を着た女性が三人はいってきて、琉生斗達に向かってお辞儀をした。
「聖女ルート様、今日はわたくし達がお身体のお世話をさせていただきます」
ヴィーナ、ロディ、カリテと自己紹介をされる。さすがは大国のメイド。三人とも目を瞠るような美人だ。
「え?お世話?」
「はい。わたくし達、あっちをお手伝いさせていただきますからー」
「え?」
まさか!
このお姉さん達と、おれが!
「ルート!騙されちゃだめだよ!」
呆然としている琉生斗を兵馬が揺すった。
「こちらへどうぞーー」
「だめだったらぁ!ルートォー!」
色っぽい女性に手招きをされ、琉生斗は目を開いたまま言葉を失ったーー。
子供達がはしゃぎまわる中、東堂も一緒になって遊んでいた。
「あいつは元気だな」
アイスクリームを食べながら琉生斗は感心する。
「子供なんて、遊びに遊んでいつの間にか寝るだろ?」
「後の事を考えなくてもいいからね」
「そうだよな」
「トードォ、そろそろ帰るぞ」
「えー!もうですか!?」
「明日はプルウィア領の温水プールに行くからな。子供達を疲れさせてはならない」
「なるほど!よし、おまえら、明日のプールに備えて今日は早く寝るぞ!」
「わあい!」
「プール?わたしはじめて!」
「私もよ!」
「ボクこの前連れてってもらったけど、すごく楽しかったよ!」
「わたし、卒業するの寂しいな」
プリシラが涙を浮かべる。
「いつでも来いよ。プリシラは一期生だからな」
「うん。ありがとう、トードォ。大好き!」
「おう!俺も好きだぞ!」
アスラーンが目を細めた。
「ーー守備範囲が広いな」
「本気で言ってる……?ーーフストンさん、アス王太子お疲れでぇす。連れて帰ってください~!」
「ええっ!ヒョウマさん、最後までお願いしますよ!」
近衛兵のフストンが首を振る。
「もう、無理です」
「はははっ、ヒョウマ。照れなくてもいい。私とおまえの仲だろう」
「はいはいー」
兵馬は相手にしない。
「おまえは照れ屋だな」
アスラーンが軽く肩を叩くと、兵馬はつんのめった。
「あっ!」
こける、と思った瞬間、目をつむる。
だが、衝撃はこなかった。身体が軽くなる浮遊感を感じ、抱きあげられたのを悟る。
「アスラーンー」
ラルジュナが兵馬を抱えた。親友のいる方を睨みつける。
「その程度も駄目なのか、もう腹の中からやり直すしかないな」
ひどい事を言われているが、兵馬の耳には入らなかった。
「ありがと……」
下ろしてもらいながら、兵馬は礼を述べる。
「大丈夫だったー?」
「……うん」
頬を染めた兵馬に反応したのはこの方だ。
「な、な、な、なんだ、アレク。あの兵馬の可愛らしさは!おれの前じゃあんな顔した事ないだろ!」
「ーールートもしないだろう」
「いやーー!悔しいー!」
「落ち着きなさい」
「落ち着いてられるか!」
琉生斗は地団駄を踏んで悔しがったそうだ。
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「兵馬ー!一緒に風呂に入ろうぜ!」
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「ーーふむ」
アスラーンが何かに頷いた。
「ヒョウマ。アレクセイもラルジュナも、私の部屋で遊んでいるから、気にせずにゆっくり浸かるといい」
「だから、帰るよ」
「まあまあ、お互い親友と交友を深めようじゃないか」
アスラーンに言われて兵馬が肩を竦めた。
「帰って仕上げたい書類があるからちょっとだけだよ」
「やったあ!」
じゃれあう二人を見つめながら、アレクセイは不満を漏らしたいのを耐えた。
旦那を締め出して、琉生斗は兵馬と湯船に浸かる。
「何この花ー」
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「これが通常なのか、昨日もこうだったぜ」
「ーー奥方も大変だ」
「ーーなあ。実際の話、あの人完全に国を抜けれるのか?」
琉生斗の問いに、兵馬が視線を花に落とした。
「ーー無理だろうね……」
「そうかーー。シャラジュナだっけ?あいつがどうにかならないとも限らないもんな」
「うん……。帰るときがきたら、心おきなく帰ってもらうよ」
「ーーついてかねえの?」
「ついていっていいの?」
「六十代になってまで、兵馬、兵馬とは言ってないと思うんだけどな」
バシャバシャと湯をかぶり、琉生斗は親友を横目で見た。
「えらく飛んだね」
兵馬の表情は変わらなかった。
浴室のドアがノックされる。
「え?誰ですか?」
眉をしかめて尋ねると、「失礼いたします」と、王宮のメイド服を着た女性が三人はいってきて、琉生斗達に向かってお辞儀をした。
「聖女ルート様、今日はわたくし達がお身体のお世話をさせていただきます」
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「え?お世話?」
「はい。わたくし達、あっちをお手伝いさせていただきますからー」
「え?」
まさか!
このお姉さん達と、おれが!
「ルート!騙されちゃだめだよ!」
呆然としている琉生斗を兵馬が揺すった。
「こちらへどうぞーー」
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