ロクイチ聖女 6分の1の確率で聖女になりました。第三部 第四部

濃子

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アジャハン国の王太子とラッキースケベについて。編

第78話 アスラーンはしかける。

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 次の日、ラシーバ大広場に琉生斗達は集められた。

「「「ザルク!」」」
「ダニル!プリシラ!リガ!アンナ!メリッサ!」
 子供達は再会をはしゃいだ。

「元気にしてたか!」
「うん!みんないい人ばっかりだよ!」

「よかったな、ダニル」
「うん。トードォありがとう!」
「いやいや、来れたのはアス太子のおかげさ」
 ザルクはアスラーンに頭を下げる。
「王太子様、ありがとうございます」

「なに、たいしたことはない。それよりそろそろ来るぞ。寝転がってもいいぞ」
 アスラーンは芝生の上に寝転んだ。
「はーい!」
 子供達が仲良く横になり、東堂もアスラーンの側に転がる。
 アスラーンの手に手があたり、東堂が詫びる。
「しゃあせん!」
「気にしないでくれ、いい手だ。よく鍛錬している」
「へへっ」



「あっ!」
「きたぁ!」


 空の端から竜が飛んできた。

 六匹の竜が横一列に並んで飛行している。

 そして、前に三匹、後ろに三匹、列を入れ替えたり宙返りをしたり、タイミングを合わせ同じ速さで飛んでいくのだ。

「ブルーインパルスじゃん」
 東堂が眩しそうにつぶやいた。
「そう。ヒョウマに聞いて訓練をした。これからは国の行事でも取り入れようと思う」

「すげえー」
「ザルクもあそこに入るの?」
「まだまだ、竜の卵をかえすところからだよ」

 ぶつかりそうなところをすれすれでかわし、六匹の竜が垂直に急降下して六方向に分かれ地上に下りてきた。

 子供達は歓声をあげ、立ちあがって駆け寄っていく。

「すげえなーー!」

 東堂も身を起こそうとして、急に腕ががくりとなり、アスラーンの方に倒れてしまった。

「おっと危ない」
「あっ」
 アスラーンに抱きとめられて、東堂は驚いて起きあがる。
「すみません!」
「いやいや、怪我はなかったか?」
「うす!」



 離れたところで見ていたアレクセイが、頭を押さえた。


「アスラーン様」
 竜から下りたマルテス達がアスラーンのもとに集まってきた。

「ごくろうーー。トードォ、竜騎士団の将軍達だ」
「ちーす!東堂っす!マジすごいっすねー!」
「この通り、素直な男だ」
 六人の竜騎士達がにこやかに笑みを浮かべている。

「よろしく、トードォ。私はマルテスです」
 竜騎士達が次々に名乗るが、東堂は名前が覚えられなかった。

「さあ、子供達。今日はモフモフ動物園だぞ」

「きゃあ!」
 プリシラの目が輝いた。
「楽しみにしてたもんな」
「トードォが連れて行ってくれないから」
「ーーひと連れて転移できないんだよ……」

 悲しそうに東堂が項垂れた。

「トードォ、おまえの持ち味はそんなものじゃ計れないだろ。その下賜された聖剣がおまえの価値だ」
「えへへっ」



「ーーなんか、あの二人、変じゃね?」
「……………」
 妻に尋ねられ、アレクセイが困ったような表情を浮かべる。
「どしたの?」

「いや……」













「きゃあ!!かわいい!!」
 プリシラが星ウサギを抱きあげてスリスリする。
「だろ~だろ~!楽しめよ~」
 気持ち悪い東堂が、デレデレで星ウサギを撫でている。

「ストレスとかないのか?」
「スキンシップ好きの動物しか集めていない」
「ふーん」
「ルートは興味がなさそうだな」
「ああ」
 今の琉生斗の興味は、黒いマスクをつけたアレクセイのみだ。



「ルートの趣味は大型犬だからね。自分で調教するほうが好きだし」
 モフモフ動物園で準備をしていた兵馬が、話に入ってきた。

「なるほど。アレクセイとの力関係が見えるな」

 アレクセイが目を細めた。

「ここの夫婦はなんだかんだ嫁が強いからね」
「ふむふむ。アレクセイが犬になるとはな」

 相手にしないと言いたい放題言われる。アレクセイが鋭い視線をアスラーンにやる。そんな夫の腕に抱きつき、琉生斗は言った。

「ああ、最高の大型犬だ。おれの言う事しか聞かないんだから」

 その愛らしさにやられ、アレクセイがマスクを外して琉生斗にキスをする。

「すみません。通行人の皆様。風景ですから気にせずに」
「はははっ」

 ここは自国じゃないよ、と釘をさしながら兵馬は子供達を連れて行ってしまった。


 
「兵馬、どこ行くんだぁ!」
 くしゃみをしたアレクセイを気づかいながら、琉生斗は尋ねた。 

「向こうに、ミニ鉄道を作ったんだ。それの試運転」
「へぇー。作ったのか?」
 兵馬を追いかける。

「ジュナがね」
「大物の活用がすごいな」
「どうせ、詐欺師ですから」
「何言ってんだよ」

 琉生斗は眉をひそめた。

「何言われても、気にすんなよ」
「ーーわかってるよ」
 兵馬の表情がかたいと、琉生斗は感じた。

 
「あっ、きたきたー。乗ってみてー」  
 子供用のSL列車が、小さな線路の上に乗っていた。
「機関車トーハコみたいだな」
 琉生斗はしゃべる列車を思い出した。

「スピードの調整できた?」
「バッチリだよー!」
 きらきらと眩しくラルジュナが笑う。


 兵馬ぁ!本当に、本当に、このひとの何がいいんだぁ!

 いまからでもおれが、おまえに合う男を探したほうがよくないか?
 何だかおまえ、無理してるように見えるよーー。

 琉生斗は顔を曇らせた。 


「わぁー!すごい!」
「きゃあ!」
「シートベルトを締めてくださいー」
 プリシラ以外の子供達がミニ列車に乗る。


「出発進行ー」
 ラルジュナが笛を吹いた。

 目の前を、列車が走るーー。

「え?」

 すごい勢いで列車がいってしまった。

「ジュナ……」
「あれじゃジェットコースターだな」

「おかしいなー?」

 ウインクされてもおれにはささらないよーー、琉生斗はラルジュナを睨む。

「アレク、スピード緩めてくれ」
「ああ」


 列車はゆっくりと戻ってくる。青ざめた子供達が可哀想だった。
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