ロクイチ聖女 6分の1の確率で聖女になりました。第三部 第四部

濃子

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アジャハン国の王太子とラッキースケベについて。編

第76話 アレクセイは動揺する。

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 城の中をアスラーンに案内され、あちこち見ながら進んで行く。

「ほわー、シェーンブルン宮殿みてえ」
 マグナス大神殿もすごかったが、アジャハン国の王宮の豪華さもすごい。琉生斗は目を開きっぱなしだ。

 外観はバロック様式、内装はロココ様式。
 神聖ロードリンゲン国の王宮の外観が淡い黄色に対し、こちらは国のシンボルカラーである緑を薄めた色で統一されている。
 曲面と、建物の構造と一体化した装飾が特徴のロココ様式だが、優美に翼を広げたような外観に、琉生斗は魅入った。

 バロックとか、ロココでいいのか、とアレクセイに尋ねると、ちゃんと翻訳されている、と返事が返ってくる。

「自動で翻訳されるから、本当ならアレクが何言ってんのかわからないのかな?アジャハンとは言葉が違うのか?」 

「少し違うが、訛のようなもので大差はない。この辺りは、ソラリス語で統一されている」

「なるほど、宗教で統一するのか」
「そうだ」
 自国の大神殿の名前が出たので、琉生斗はピンときた。

「相変わらずおまえは頭の回転が早いよな」
 東堂が口を挟んだ。

「実際の話、おまえなんか自動翻訳されねえと、いつまでたっても誰とも会話ができねえだろうな」
「それは思う」
 東堂はしみじみ頷いた。

「現地で恋人を作ると、言葉はすぐに覚えられるそうだよ」
「なるへそ」
「それでいくとルートは五人の彼女がいてもよかったかもね」

「え?おまえ、そんなにしゃべれるのか!」
「そこそこだよ。現地でじいちゃんとばあちゃんの通訳してたから。まあ、姉貴がウィーンに留学してたから、よく学校さぼって行ったな」
「金持ちだなー」

「音大なんか、金持ちしか行けねえよ。もったいねえよな、姉貴も。飛び級で大学行ったのに」
「亡くなったんだったかー」
「そうなんですよ」
「あれ?おまえなんか不幸じゃねえ?」

 東堂が気が付いた。

「いやいや、おれほど幸せなヤツはいねえよ」
 琉生斗はアレクセイの腕にしがみついた。妻の愛らしさにら夫が優しく微笑んだ。



 室内は壁や天井、柱と一体化した化粧漆喰細工や彫刻、フレスコ画、絵画で装飾され、天井を見上げて東堂は口笛を吹いた。
 








 謁見の間ではアジャハン国王リルハンが、立ち上がって琉生斗達を迎えてくれる。

「よくきてくれたね、アレクセイ君。いつもアスラーンがすまない」

 息子と同じ深緑色の目だ。顔もよく似た塩顔ハンサムというやつか。

 アレクセイは優雅に頭を下げた。

「聖女様、無事に再会でき嬉しい限りです」
 リルハンに頭を下げられ琉生斗は戸惑った。

 腰の低い国王だな、と目をパチクリさせる。

 だが、リルハンはすぐにぎっくり腰になるらしい。

「ご心配ありがとうございます」
 琉生斗も優雅にお辞儀をした。

 
「アスラーンも、アレクセイ君のように剣技に優れんものか」
「いや、アレクセイはやりすぎだ。誰も一人で空軍を潰したりはしたくない」

 父と息子は笑った。

「ーー何が面白いんだ?」
「王族ジョークだよ。きっと」
「てか、うちの陛下もだけど、どの国も国王、若くないか?」

 アダマスは、四十一歳だ。見た目よりも若い為、二十一歳の息子が二人もいるようには見えない。

「王様って、白いヒゲ伸ばしてるイメージがあったんだけどな」
「結婚が早いんだろうね」

 後継者問題もありそうーー。

「花蓮にすぐ子供ができたら、陛下じいさんじゃねえか!」
「若いじいさんだよね」

「ーー作ったら殺す……」

 琉生斗はぼそりと言った。

「ーー手を貸すぞ、相棒!」
 東堂が低く返す。

「よっしゃあ!」
 二人で手を叩き合う。

「はあー、さすがにクリス王太子に同情するよ。敵がラスボスすぎてー。でも、殿下、陛下って愛人結構いるでしょ?他に兄弟いないの?」

 アレクセイが驚いた目で兵馬を見た。

「あっ、ごめん。殿下は知らないよねー」

 複雑な顔をしたアレクセイを見て、琉生斗は微笑んだ。
「安心しろ、お兄ちゃん。兄弟は四人だぜ。陛下の宝石も、ペイン石以外、前のままだし」

「いや、別に私はーー」

 少しだけ、アレクセイが動揺している。

「いきなり紹介されるのもなあー」 
「それはやだよねー」
「けど、クリスなんか、いきなり紹介されたんだろ?」

 ミントとセージは一歳だから覚えてないだろうが、あいつはどうだったんだろうな?

「ーーそうだな」
 アレクセイがぽつりと言った。

「王太子妃が怖すぎて、クリスがどうだったかは覚えていないな」

 素直に話すアレクセイに、東堂が笑った。








 案内された部屋で荷解きをする。
 薄緑色の落ちついた壁に癒されながら、琉生斗は欠伸をした。

「なんか疲れたなー。風呂入って休みたい」
「そうか」
 浴室はいつでも使えるようになっていた。



 花びらが浮かんだ湯船で、琉生斗とアレクセイはキスをしたり、抱き合ったり入浴を楽しむ。

「いい匂いだーー」
 と、食事の前に、自分を食べられてしまった琉生斗は、自然にまぶたが下がっていきーー。


 
 はっと気がつくと、外がかなり暗くなっていた。

 近くを見まわすがアレクセイはおらず、ベッドの横のコンソールテーブルの上には、保存魔法がかけられたサンドウィッチが置いてあった。
 皿の下にメモが貼ってあり、『アスラーンの部屋にいる』と書かれている。

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