ロクイチ聖女 6分の1の確率で聖女になりました。第三部 第四部

濃子

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アジャハン国の王太子とラッキースケベについて。編

第74話 アスラーンの企み

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 琉生斗が魔蝕の浄化に明け暮れる中、その話は進みつつあった。



「ーー諸君ら、今日はよく集まってくれた」

 アジャハン国の王太子アスラーンは、六人の青年と円卓を囲んでいた。

「もちろん。アスラーン様のお呼びとあらば」
「何があろうとも駆けつけますよ」
 青年達は頷いた。


 アジャハン国は国土面積が世界一である。
 あまりにも広大過ぎるため、王族以外が統治する六つの大公領がある。

 いまアスラーンの前にいるのは、六つの大公領主の息子達である。

 
 北に位置するプルウィア領、大公領主ダイナの子、勝気な顔のマルテス。

 西に位置するハリマ領、大公領主ヴァッキの子、ふんわりした美少年イスラ。

 東に位置するジャンラ領、大公領主ブーリの子、大きな瞳のサヘラ。

 南に位置するダッカマ領、大公領主ナブラの子、音楽家のタルティン。

 西の大島のララバ領、大公領主リアーの子、優しい顔のフェリカ。

 東の大島のマカ二領、大公領主アーダの子、きつい眼差しのオルシカ。



 歳も近い事からアスラーンは、何かあれば彼らに招集をかけて雑談を楽しんだりする。

「聖女ルートの仲間である、トードォ・ハルカという男を私は狙っている」
「それはそれは、楽しそうな話ですね」
「幸運な男だ。羨ましい」
 マルテスとイスラが話に乗る。

「彼の好みに合わせて、モフモフ動物園を作った」
「あそこいいですよね」
「わたしもよく行きます」
 サヘラとタルティンが相槌を打つ。

「彼も来てはくれるのだが、その後の進展がない」
「えー!」
「そんな事が!」
 フェリカとオルシカが大袈裟に驚いた。

「だが、今度聖女様と共に、泊まりで遊びに来てくれるのだ」
「やりましたね!」
「一気にしかけないと!」
 マルテスとオルシカが手を叩いて喜んだ。

「そうだ。ここは何としても決めたいのだが、どうすればよいかーー」




「ーーアスラーン様、これはもう、ラッキースケべを狙うしかありませんね」
 マルテスの話にイスラが食い付く。

「ごく自然に、相手に抱きついたり、キスしたり、あそこに触ったりする、ラッキースケベですか!」




「ーー詳しく話を聞こう」
 アスラーンは真面目な顔で会話をつづけた。
















「ティンさん!ごめん!遅くなった!」
 琉生斗が駆け込むと、優しげな顔で魔導室室長は迎えてくれた。

「顔色がいいですね」
「ああ。兵馬が作ってくれてる牡蠣と来来人参の栄養ドリンクがいいんだよ」
「薬ですか?」
 実際、作っているのはラルジュナだがーー。

「栄養素を補う、っていうのかな。身体に良いものを詰め込んでるの」
「ファイト二発ね~」
「そうそう」
「そうでもしないと持ちませんか……」
 ティンが同情する目で琉生斗を見た。

「ああ、乗り切らないと。夏以降は暇だといいなぁ」
「妊活はどう?」
「それが、さっぱりなんだ。おれよりも相方がへこんでるよ」
 そんな上手くいくかよー、と琉生斗は笑う。

「ねえ、ティンさん。ティンさんの事、先代はまわりに何て言ってたの?」

「ーー養子にだされましたよ」
 琉生斗は目を丸くした。

「そうなんだ……」

「戸籍をです。実際は一緒に住んでいましたが」
「え?」
「小さい頃は、神殿と家ぐらいしか行けませんでしたね。朝、神殿に預けられ、夜に迎えに来るみたいな」

「保育園みたいだな……」

「母は、当時の教皇パルテナ様と仲がよかったので、何かあれば頼りにしていました」
「へえー、教皇と?」
「パルテナ様は、女性でしたから。良い友達だ、と言っていました」

 ひぇー、と変な声がでる。

「向こうじゃ、女性は無理だよな」
 琉生斗は町子の顔を見た。
「そもそも宗教が違うじゃない~」
「そうか、こっちはソラリス教が一般的だもんな」

 時空竜の女神様を崇めるソラリス教。その信仰人数は世界一だ。ただ、バッカイア帝国のように、他の神々も一緒に信仰している国も多い。
 基本、宗教の自由はないらしいーー。





 
 琉生斗は二十歳になった。
 あちらの世界でもお酒が飲める歳になったのだが、妊活のために手を付けずにいる。

 シャンパン飲ませろーー、と誕生日の夜にアレクセイと戦ったが負けてしまい、逆に彼に飲まれひどい目にあった。


 今年、バッカイア国で開催予定の世界聖女連盟は、都合により中止になった。そういうときはあえて別の国で開催したりはせず、来年に持ち越されるそうだ。

 去年、琉生斗のお披露目が終わっているので、どの国からも反論はないらしい。このまま永遠に開かれなければいいのにと思う。

 

「魔蝕は大丈夫そうですね」
「最近、おとなしいんだ。何の反応もない。何か他にできないかなー」
「琉生斗」
 ティンに咎められる。

「ねえ、ルート君。デスビーストのソフトを作ったの~。試さない?」
「おれで何を試すんだよ」
「ルート君を見て逃げるかどうか~」
「闇系の魔物はすべて駄目だと思うよ」
 ティンが苦笑いで町子を見た。

「ありゃま~。やっぱりドラゴンを作るか~」
 何を目指しているんだ、町子。

「おまえの母さんマッドサイエンティストだったよな。似てきたんじゃないか?」
「やめてよ~。ぶー~」
「どうせティンさんには言ってんだろ?」
「うふふ~」

 うちの女子チームは本当に怖いぐらいメンタルが強いよな、と琉生斗は噛みしめるように思った。

 母がわからない琉生斗とは違い、町子は父親が誰だか知らないそうだ。優秀な遺伝子としか聞いていないらしい。


 母親は町子が思った以上の知能がなかったため、彼女が高校に入ると家に帰らなくなったそうだ。あくまで近所の噂だがーー。


 こいつもひどい環境で育ってるのにひねくれもせずに偉いなーー。

 
 けど、ティンさんに惹かれるのってもしかしてーーと、琉生斗は密かに考えている。


「ルート君知ってる~?今度の魔法騎士大演習~?」

「ああ、聞いた。アジャハン国の魔法騎士と合同でするんだよな」
「わたしのデスビーストを貸して欲しいんですって~」
 町子の話に琉生斗は笑いだした。

「東堂、アウトじゃないか」
「だから~、ソフトも作るの~」
「ん?もしかして、討伐数を競うのか?」

「その通りよ~!張り切ってたくさん作ってるの~。ハードタイプは、亡霊王より強いかも~」

「ーーラスボスが魔王で、魔王を倒したら大魔導師がでてくるボーナスステージがあるんだろ?」
 呆れて琉生斗が言うと、町子が手を叩いた。

「それいい~!がんばって、超新星スーパーノヴァ覚えようかしら~」
 
 ーー二国の魔法騎士の全滅が見えたなー。

 琉生斗は目を細めた。

「ーー反転インヴァートを使うことのないように祈るよ」
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