73 / 236
琉生斗と兵馬編
第70話 じゃあ、東堂は?
しおりを挟む
「ルート。おはよう」
「ーーうん?」
何だよ、朝から爽やかだな。いや、朝ってそうか。
「誕生日おめでとう。そして、幸せな夜をありがとう」
「何言ってんだよ」
笑顔のアレクセイに赤面しつつ、よろよろと身を起こす。
「あー、恥ずかしかった」
「とても可愛かった」
はいはい、よかったですねーー。
琉生斗は服を着せてもらい、股の違和感に顔をしかめながら立ちあがる。
「ーーヒョウマだ」
アレクセイが離宮の入り口に視線を向けた。琉生斗は少し俯く。
「ーーおれ、寝てる」
「そうか……」
「おはよう、殿下」
襟の留め具をきっちりととめ、書記官の服を着た兵馬が玄関前に立っていた。
朝でも昼でも、彼がだらしない格好をしている事は見たことがない。
「ああ。おはよう」
「ルートは寝てるの?」
「ああ。何のようだ?」
アレクセイの表情のかたさに、兵馬が眉を顰めた。
「ーーーーごめん。ーー用がないなら来るなって言いたいわけだね?」
兵馬にじっと見られ、アレクセイは黙る。
「聖女様に伝言をお願い申し上げます。この書類に目を通しておいていただきたい」
兵馬が屈んでアレクセイに書類を差しだした。受け取ると説明もなく、屈んだまま後ろに下がる。臣下のような振る舞いに、アレクセイの目は細められた。
「では、早朝より失礼致しました」
恭しく腰を折り、小さな少年がきびすを返した。
「ヒョウマーー」
「…………」
「ルートも心配しているからこそ、あの話をしたのだーー」
アレクセイの言葉に兵馬が眉をしかめた。
「…………それで?僕が、やったぁー!子供を作れる!とか喜んだら、ルートの気は済むの?」
「そうは言っていない」
「言っておられますよ。では、失礼いたします」
あっさりと兵馬が出て行く。
アレクセイは溜め息をついた。
「ーー何だよ!あいつ超むかつく!あんなヤツもう知るか!」
聞き耳を立てていた琉生斗は、クッションを壁に投げつけた。
「後で泣いたって知らないからな!後悔するからなー、えーと、何歳までいけるんだろ」
ヨシノさんは四十五歳で神竜を産んだって言ってたから、その歳までいけるのかなー。ちょっと高齢出産だよなーー。
「ーー意地はるなよな」
「ーーほん!いいじゃん!修学旅行かー。アス太子わかってんなぁ!」
プリシラも卒業かー、寂しいなー、と東堂が涙ぐむ。
「二人の予定を見て日を組んだけど」
「おぅ、俺は大丈夫だ。ルートがいなくても、まぁいいだろう。ヤツは行きたいだろうが、許可は取れないのか?」
代わりにモロフでも連れてくか?、と何かと話に出されるモロフだ。
「ーーそれとも、ルートと何かあったのか?」
東堂の言葉に兵馬は動きをとめた。辺りを見回す、人はいない。
「ねえ、東堂」
「ん?」
「自分が子供が産める、って言われたら、東堂どうする?」
沈黙の後、東堂が言った。
「何言ってんだよ、頭おかしいのか?ーーだな」
「うん。そうだよねーー。手放しで喜べって無理じゃない?」
東堂が黙って何かを思案しているようだった。
「はあー、それはつまり、俺でも可能なんだ」
「話が早いね。そうらしいよ」
「で、ルートは殿下の子を産むと。めでたしめでたしだ」
「うん」
「そこで終わっとけよなー」
東堂が頭をかいた。
「どうせ、おまえに産んで欲しいんだろ?あいつはどんだけおまえが好きなんだよ」
「同じ存在が欲しい、って言うのはわかるよ。理解したいよ。でもー」
「おまえの場合、別れない保証がねえよな」
ずばり確信に迫られ、兵馬は目を細めた。
「ーー子供がいるから別れないのも嫌だけどね」
うちの両親と一緒だーー。
「ーーせっかく異世界にきたのに、考えなきゃならない事は向こうと一緒なんだよね」
「まあな。やることが変わらない限り、大なり小なり違わないよな」
魔法があるかないか、それぐらいだーー。
「おとなになるって面倒くさいね」
「だな。すぐ変えなくてもいいなら、しばらくは今のままでいいじゃねえか。おまえだって、初カレだろ?しっかり楽しめよ」
「ありがと」
兵馬は薄く微笑んだ。
「東堂が身体を変えるような相手ができたらーー」
「お笑いだな」
カラカラと東堂が笑った。
「ーーうん?」
何だよ、朝から爽やかだな。いや、朝ってそうか。
「誕生日おめでとう。そして、幸せな夜をありがとう」
「何言ってんだよ」
笑顔のアレクセイに赤面しつつ、よろよろと身を起こす。
「あー、恥ずかしかった」
「とても可愛かった」
はいはい、よかったですねーー。
琉生斗は服を着せてもらい、股の違和感に顔をしかめながら立ちあがる。
「ーーヒョウマだ」
アレクセイが離宮の入り口に視線を向けた。琉生斗は少し俯く。
「ーーおれ、寝てる」
「そうか……」
「おはよう、殿下」
襟の留め具をきっちりととめ、書記官の服を着た兵馬が玄関前に立っていた。
朝でも昼でも、彼がだらしない格好をしている事は見たことがない。
「ああ。おはよう」
「ルートは寝てるの?」
「ああ。何のようだ?」
アレクセイの表情のかたさに、兵馬が眉を顰めた。
「ーーーーごめん。ーー用がないなら来るなって言いたいわけだね?」
兵馬にじっと見られ、アレクセイは黙る。
「聖女様に伝言をお願い申し上げます。この書類に目を通しておいていただきたい」
兵馬が屈んでアレクセイに書類を差しだした。受け取ると説明もなく、屈んだまま後ろに下がる。臣下のような振る舞いに、アレクセイの目は細められた。
「では、早朝より失礼致しました」
恭しく腰を折り、小さな少年がきびすを返した。
「ヒョウマーー」
「…………」
「ルートも心配しているからこそ、あの話をしたのだーー」
アレクセイの言葉に兵馬が眉をしかめた。
「…………それで?僕が、やったぁー!子供を作れる!とか喜んだら、ルートの気は済むの?」
「そうは言っていない」
「言っておられますよ。では、失礼いたします」
あっさりと兵馬が出て行く。
アレクセイは溜め息をついた。
「ーー何だよ!あいつ超むかつく!あんなヤツもう知るか!」
聞き耳を立てていた琉生斗は、クッションを壁に投げつけた。
「後で泣いたって知らないからな!後悔するからなー、えーと、何歳までいけるんだろ」
ヨシノさんは四十五歳で神竜を産んだって言ってたから、その歳までいけるのかなー。ちょっと高齢出産だよなーー。
「ーー意地はるなよな」
「ーーほん!いいじゃん!修学旅行かー。アス太子わかってんなぁ!」
プリシラも卒業かー、寂しいなー、と東堂が涙ぐむ。
「二人の予定を見て日を組んだけど」
「おぅ、俺は大丈夫だ。ルートがいなくても、まぁいいだろう。ヤツは行きたいだろうが、許可は取れないのか?」
代わりにモロフでも連れてくか?、と何かと話に出されるモロフだ。
「ーーそれとも、ルートと何かあったのか?」
東堂の言葉に兵馬は動きをとめた。辺りを見回す、人はいない。
「ねえ、東堂」
「ん?」
「自分が子供が産める、って言われたら、東堂どうする?」
沈黙の後、東堂が言った。
「何言ってんだよ、頭おかしいのか?ーーだな」
「うん。そうだよねーー。手放しで喜べって無理じゃない?」
東堂が黙って何かを思案しているようだった。
「はあー、それはつまり、俺でも可能なんだ」
「話が早いね。そうらしいよ」
「で、ルートは殿下の子を産むと。めでたしめでたしだ」
「うん」
「そこで終わっとけよなー」
東堂が頭をかいた。
「どうせ、おまえに産んで欲しいんだろ?あいつはどんだけおまえが好きなんだよ」
「同じ存在が欲しい、って言うのはわかるよ。理解したいよ。でもー」
「おまえの場合、別れない保証がねえよな」
ずばり確信に迫られ、兵馬は目を細めた。
「ーー子供がいるから別れないのも嫌だけどね」
うちの両親と一緒だーー。
「ーーせっかく異世界にきたのに、考えなきゃならない事は向こうと一緒なんだよね」
「まあな。やることが変わらない限り、大なり小なり違わないよな」
魔法があるかないか、それぐらいだーー。
「おとなになるって面倒くさいね」
「だな。すぐ変えなくてもいいなら、しばらくは今のままでいいじゃねえか。おまえだって、初カレだろ?しっかり楽しめよ」
「ありがと」
兵馬は薄く微笑んだ。
「東堂が身体を変えるような相手ができたらーー」
「お笑いだな」
カラカラと東堂が笑った。
67
お気に入りに追加
76
あなたにおすすめの小説

婚約破棄された僕は過保護な王太子殿下とドS級冒険者に溺愛されながら召喚士としての新しい人生を歩みます
八神紫音
BL
「嫌ですわ、こんななよなよした男が夫になるなんて。お父様、わたくしこの男とは婚約破棄致しますわ」
ハプソン男爵家の養子である僕、ルカは、エトワール伯爵家のアンネリーゼお嬢様から婚約破棄を言い渡される。更に自分の屋敷に戻った僕に待っていたのは、ハプソン家からの追放だった。
でも、何もかもから捨てられてしまったと言う事は、自由になったと言うこと。僕、解放されたんだ!
一旦かつて育った孤児院に戻ってゆっくり考える事にするのだけれど、その孤児院で王太子殿下から僕の本当の出生を聞かされて、ドSなS級冒険者を護衛に付けて、僕は城下町を旅立った。
悪役令息の伴侶(予定)に転生しました
*
BL
攻略対象しか見えてない悪役令息の伴侶(予定)なんか、こっちからお断りだ! って思ったのに……! 前世の記憶がよみがえり、自らを反省しました。BLゲームの世界で推しに逢うために頑張りはじめた、名前も顔も身長もないモブの快進撃が始まる──! といいな!(笑)
【完結】ここで会ったが、十年目。
N2O
BL
帝国の第二皇子×不思議な力を持つ一族の長の息子(治癒術特化)
我が道を突き進む攻めに、ぶん回される受けのはなし。
(追記5/14 : お互いぶん回してますね。)
Special thanks
illustration by おのつく 様
X(旧Twitter) @__oc_t
※ご都合主義です。あしからず。
※素人作品です。ゆっくりと、温かな目でご覧ください。
※◎は視点が変わります。

不遇聖女様(男)は、国を捨てて闇落ちする覚悟を決めました!
ミクリ21
BL
聖女様(男)は、理不尽な不遇を受けていました。
その不遇は、聖女になった7歳から始まり、現在の15歳まで続きました。
しかし、聖女ラウロはとうとう国を捨てるようです。
何故なら、この世界の成人年齢は15歳だから。
聖女ラウロは、これからは闇落ちをして自由に生きるのだ!!(闇落ちは自称)

実はαだった俺、逃げることにした。
るるらら
BL
俺はアルディウス。とある貴族の生まれだが今は冒険者として悠々自適に暮らす26歳!
実は俺には秘密があって、前世の記憶があるんだ。日本という島国で暮らす一般人(サラリーマン)だったよな。事故で死んでしまったけど、今は転生して自由気ままに生きている。
一人で生きるようになって数十年。過去の人間達とはすっかり縁も切れてこのまま独身を貫いて生きていくんだろうなと思っていた矢先、事件が起きたんだ!
前世持ち特級Sランク冒険者(α)とヤンデレストーカー化した幼馴染(α→Ω)の追いかけっ子ラブ?ストーリー。
!注意!
初のオメガバース作品。
ゆるゆる設定です。運命の番はおとぎ話のようなもので主人公が暮らす時代には存在しないとされています。
バースが突然変異した設定ですので、無理だと思われたらスッとページを閉じましょう。
!ごめんなさい!
幼馴染だった王子様の嘆き3 の前に
復活した俺に不穏な影1 を更新してしまいました!申し訳ありません。新たに更新しましたので確認してみてください!

繋がれた絆はどこまでも
mahiro
BL
生存率の低いベイリー家。
そんな家に生まれたライトは、次期当主はお前であるのだと父親である国王は言った。
ただし、それは公表せず表では双子の弟であるメイソンが次期当主であるのだと公表するのだという。
当主交代となるそのとき、正式にライトが当主であるのだと公表するのだとか。
それまでは国を離れ、当主となるべく教育を受けてくるようにと指示をされ、国を出ることになったライト。
次期当主が発表される数週間前、ライトはお忍びで国を訪れ、屋敷を訪れた。
そこは昔と大きく異なり、明るく温かな空気が流れていた。
その事に疑問を抱きつつも中へ中へと突き進めば、メイソンと従者であるイザヤが突然抱き合ったのだ。
それを見たライトは、ある決意をし……?

我が家に子犬がやって来た!
もも野はち助(旧ハチ助)
ファンタジー
【あらすじ】ラテール伯爵家の令嬢フィリアナは、仕事で帰宅できない父の状況に不満を抱きながら、自身の6歳の誕生日を迎えていた。すると、遅くに帰宅した父が白黒でフワフワな毛をした足の太い子犬を連れ帰る。子犬の飼い主はある高貴な人物らしいが、訳あってラテール家で面倒を見る事になったそうだ。その子犬を自身の誕生日プレゼントだと勘違いしたフィリアナは、兄ロアルドと取り合いながら、可愛がり始める。子犬はすでに名前が決まっており『アルス』といった。
アルスは当初かなり周囲の人間を警戒していたのだが、フィリアナとロアルドが甲斐甲斐しく世話をする事で、すぐに二人と打ち解ける。
だがそんな子犬のアルスには、ある重大な秘密があって……。
この話は、子犬と戯れながら巻き込まれ成長をしていく兄妹の物語。
※全102話で完結済。
★『小説家になろう』でも読めます★
魔界最強に転生した社畜は、イケメン王子に奪い合われることになりました
タタミ
BL
ブラック企業に務める社畜・佐藤流嘉。
クリスマスも残業確定の非リア人生は、トラックの激突により突然終了する。
死後目覚めると、目の前で見目麗しい天使が微笑んでいた。
「ここは天国ではなく魔界です」
天使に会えたと喜んだのもつかの間、そこは天国などではなく魔法が当たり前にある世界・魔界だと知らされる。そして流嘉は、魔界に君臨する最強の支配者『至上様』に転生していたのだった。
「至上様、私に接吻を」
「あっ。ああ、接吻か……って、接吻!?なんだそれ、まさかキスですか!?」
何が起こっているのかわからないうちに、流嘉の前に現れたのは美しい4人の王子。この4王子にキスをして、結婚相手を選ばなければならないと言われて──!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる