ロクイチ聖女 6分の1の確率で聖女になりました。第三部 第四部

濃子

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スズの指輪編

第47話 琉生斗、感心する

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「魔法陣で降りていくのね」

「そうー。最短で降りてもいいしー、フロアをすべて探索してもいいけどー、記憶魔法陣は、0がつくフロアにしかないからー。調子に乗ると神殿行きだねー」

「全滅だったらどうすんの?」

「他の隊が助けてくれるかー、非常灯を付ければ地下50階までは警備隊がやってくるよー。後は自己責任ー」

「地下50階まで来てくれるの~?」
「ヘッソ島周辺には、竜殺しドラゴンスレイヤーが多くいるからねー」
「そうなの~。すごい~!」

 杖を振り町子がデコボコの地面を直す。

「掘ったら埋めないとコケちゃうわ~」

「マナーが悪い人もいるからねー」



 散策もせずにどんどん地下に降り、50階を過ぎた頃、琉生斗が言った。

「あっ、なんかいるぞ」

「ドラゴンクラスが来るのかしら~」

 町子がワクワクした表情で、杖を構えている。

「思うんだけどさ、浄化で魔物は倒せないのか?」

「ふふっー、贅沢な魔物の倒し方だねー」

 ラルジュナが笑う。

「できるよー。結界でとめようかー?」
「遠慮しとくよ。ここ、神力の回復遅いから」

「そうだねー」
 ラルジュナの手が光り長剣があらわれた。

「えっ!」
 兵馬が声をあげた。

 ダンジョンを埋め尽くすような巨大な大蛇が、音もなく目の前に出現する。

 大きな口に牙が光りーー。

「はいー」

 二、三度剣を振り、ラルジュナは兵馬に笑顔を見せた。

 瞬間、大蛇が斬れた。




「ーーほえー、すごいなぁ」
 琉生斗は感心した。

 大蛇は細切れにされ、空圧で吹っ飛ぶ。
天使の炎ファイヤーオブエンジェル~」
 町子が肉を焼き切る。

「あっ、なんか残ったよ」
 町子が頷いて、落ちたものを見る。

「ダイヤかな~」
「イエローダイヤだねー。ボクはブルーが欲しいなー」

 残念そうにラルジュナが言った。

「強いんだね」
 琉生斗が言うとラルジュナは笑ったまま答えた。

「ボクに惚れちゃダメだよー」
「ああ、ない」
「ふふっー、ボクもないよー。ルート、綺麗だけど好みじゃないしー」

「ーーなんでおれが振られた事になるんだ」

 気に食わないなーー、と琉生斗は頭をかいた。



「ルートは、元から同性オッケーなのー?」
「いやいや全然。最初はどうやって断ろうかと思ってたんだ」
「え!そうなの?」

 なぜか兵馬が驚いた。

「おまえ、おれが男とできると思ってたのか?」
「けど、すぐに好きになってたでしょ?」

  琉生斗は動きがとまった。

「ーーそうなのよ、奥さん。あれは顔が良すぎたのよ」

 ふざけた琉生斗に町子は笑った。

「たしかに、美花ちゃんもスパダリでうらやましいって言ってたわ~」

「今じゃ変態呼ばわりだけどね」
 ラルジュナが兵馬の前に出て剣を振る。


「あっ……」
 剣には大きな蜘蛛が刺さっていて糸を吐いていた。

「ヒョウマー。この蜘蛛の糸切れないよー」
 ラルジュナの言葉を聞いて、兵馬は糸を触る。

「ほんとだー。何これ?」
「軍服にも使われる、ストレングスタランチュラの糸だよー。高強度でねー」
「へぇ」

 感心しながら、兵馬は糸を巻く。


「無駄がないな、あいつ」
「何でも活用しそうよね~」





「顔が好みだったのー?」
 ラルジュナが続きを尋ねた。

「それもある。まあ、一番は……」

 一番はーー、何だっけ?

 琉生斗は首を捻る。

「決め手は何だったんだろうな」

「えっー。ルートー、よくわからなくて結婚したのー?」
「明確な理由があったのかなかったのか、はたまた押し負けたのか」

 琉生斗は考える。

「ルート君~、下に降りるわよ~」
「ああ」





「ーーけどさぁ。実際の話、生命の危険があるところに行って、二人でがんばるわけよ。生命がかかると恋なんてすぐにはじまるんじゃないか?葛城もそうだが、町子や花蓮に東堂、兵馬おまえだっておれのポジションなら結婚してるって」

「それは一理あるね」
 兵馬が頷いた。

「けど。その場合、問題は殿下だよ」
「うん?」
「向こうは君に一目惚れしてるんだよね?」

 兵馬にじっと見られて、琉生斗は視線を横にする。

 
「東堂ならまだしも、他のヤツなら、まあいいかってなるんじゃないか?」

 気恥ずかしさを隠すためか、ぶっきらぼうに答えた。

「ならないわね~」
「おまえらは、何でそう確信があるんだ?」

 琉生斗は呆れながら鼻をかく。


「この前、こんなん考えたんだよーーー」


 琉生斗は前に想像した、聖女ハルカと護衛のアレクセイ、アレクセイに想いを寄せる魔法騎士ルートの話をした。

「ーーちょっと面白い~!」

 町子は大受けだ。

「なんか、東堂が可哀想だねー」
「何に当てはめたと思ってんだ」
「え?」
「あれよね~。聖女がミントちゃん。護衛がラルジュナさん。魔法騎士が兵馬君なのよね~」


 ちなみに、兵馬達にはアレクセイの忘却魔法は効いていない。魔法を発動した場にいた場合、強い魔力を持つ者ならかかりにくいのだ。


「ーー何それ……」
 兵馬は苦笑いだ。

「まあ、純愛だなんだ言っても、やっぱり大半は正妻の味方だという結果になるよな」

「心証はそうだよね」

「けど、演劇なんかの話じゃ、三角関係や不倫がウケる」

「だね。お芝居だからいいんじゃない?」
「現実にはご遠慮なんだよなー。おまえなんか結婚はどうすんだ?」


「えっ?」
 兵馬は意表をつかれたような顔をした。

「法的にはどうなんの?」
 琉生斗がラルジュナに尋ねる。

「アジャハンの国籍を取ろうかなー」
「あっ、完全にバッカイアを抜けるんだ。後々大丈夫なのか?」

「元々、パパの遺産は放棄してるからねー。ボクの資産については、ボクに何かあったら各施設に振り分けるようにしてるしー。隠し資産はアジャハン国に預けてるしねー」

 へぇー、しっかりしてるんだな。

 琉生斗は感心したように兵馬を見た。

「良い旦那さんだな」
 お金にしっかりしているのは好感がもてる。
「そうでしょー」

「でも、あんまり進んでないよな」
 琉生斗は意地悪く二人を見た。

 兵馬の顔色が変わり、ラルジュナの笑顔が少し引きつった。

「ルート君~、マナー違反よ~」
 町子に怒られ、琉生斗はにこにこした。

「うん。悪い悪い、気にしないでくれ」


 
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