ロクイチ聖女 6分の1の確率で聖女になりました。第三部 第四部

濃子

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スズの指輪編

第46話 暗いダンジョンが似合わない男

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 アルカトラズ地下ダンジョンの入り口は、魔法陣だった。

 魔法陣が光り、ダンジョンから出てきた集団がいる。袋を担いで、琉生斗達の横を無言で通り過ぎて行った。疲れているのか、かなり青い顔をしている。
 
「へぇ~!感動~!すごい力ね~」
 町子の目が爛々と輝いた。

「ーーたしかにーー。威圧感が凄いね」
 兵馬が顔をしかめた。

「ん?そうなの?」
 琉生斗は不思議そうな顔をした。

「わからないの?」
「うん。よくわからん」
「でも、ルート君、魔導師や魔法剣士の強さはわかるでしょ~?」

「ん~?ーー深い所からなら、何か感じるけど」
「ーー最初は楽そうね~。兵馬君、東堂君は~?」
「通信ができないー。忙しいのかな」

 兵馬はかなりの距離を、精神魔法でやり取りできるようになっていた。

「他の前衛か~。誰かいるかしら~」
「いよいよ、おれの出番か」

 琉生斗はカッコつけてみた。

 二人共相手にはしてくれなかったがーー。

「ーーあっ、ううん。いいってー。だからー!」

 兵馬の口調がきつくなる。

「どうしたんだ?」
「誰かに、精神魔法で割り込まれたのね~」
「ハッキングされるみたいな?」

「そうそう~。かなり高度な魔法よ~。網を張らなきゃいけないし~」

 いや、最初から兵馬に網を張っているのだろうーー、琉生斗はここに転移してくる人物が誰だかわかった。


 兵馬が溜め息をついた。


 キラッと光が走り、目の前にラルジュナが降り立つ。

「やっほー!ヒョウマお待たせー☆」
「帰っていいよ」
「冷たいー」

「前衛としてはどうなんだ?」

 真顔で問う琉生斗に、町子が疲れた顔を見せる。

「ーールート君~。ラルジュナさんは竜殺しドラゴンスレイヤーよ~」
「じゃあ、東堂より強くて、相方より弱いんだ」

「ルート、基準が間違ってるよー」

 ラルジュナは楽しそうに笑った。

「アルカトラズに何の用なのー?」

 兵馬がかいつまんで説明すると、ラルジュナは笑顔になった。

「いいねー。ピンクダイヤかー。色付きは地下50階ぐらいじゃないと難しいかなー。昔ね、地下66階でレッドダイヤがたくさん出て、アレクセイと分けたよー」

「ーーもしかして、5カラットのがあった?」
「あったよー。アダマス陛下にあげたけどー」

 ムサイエフ・レッドダイヤかーー、あっちの名前が何でついたんだ?

 琉生斗は尋ねた。

「それって、ムサイエフって名前?」
「うんー。陛下はそう呼んでたねー」

 たまたまなのか、何かが連動するのかー?

「地下30階から行くー?人も少ないから楽だよー」

 記憶魔法陣あるしー、とラルジュナが言うので、琉生斗は頷いた。

「僕はほんとに役に立たないから、待ってるよ」

 と、逃げようとした兵馬をがっしりと掴み、ラルジュナは魔法陣を起動したーー。




 ダンジョン内は灯りがともり、はっきりと見渡せるようになっていた。

「うわぁ!本格的なダンジョンだ!」

「あれー?魔物がいないねー」

 いつもならすぐに襲ってくるんだけどー。
 ラルジュナが辺りをみまわす。

「ルートがいると……」
 兵馬がラルジュナの上着の裾を引っ張っる。それを琉生斗は殺意をもって見ていた。

「あっ、そうかー。ドラゴンはもっと深く潜らないといないよー、残念ー♡」

 誰も楽しみにはしていないがーー。

「町子はドラゴン倒せるのか?」
「戦った事がないわ~」

「普通、会わないよねー」
 
 昔、自分めがけて出て来たなぁーー、琉生斗は懐かしさに頷く。


「古代からあるダンジョン~!」

 町子が嬉しそうにはしゃいだ。

「お宝はあるの?」

「この辺りは上級者なら来れるから、たいして残ってないかもねー」
「なら、もう少し地下にすればよかったんじゃ」

「次の魔法陣は、100階なんだー。間を記憶させるの忘れててねー」

「意外にうっかりさんなんだな」

 相方と同じだ。類は友を呼ぶ、かーー。

「そうー、支えて貰うほうが好きなんだー♡」
 ラルジュナは兵馬にくっついた。
 
 琉生斗は頬を引きつらせる。

「そうだー、ルートー。旦那に行き先行ってないでしょー?」

 ラルジュナが兵馬と手をつなぎながら話しかけてくる。

 某食器用洗剤のCMかよ、と琉生斗は苦々しくそれを見ている。

「出かけるとは言ったよ」
「そうなのー?じゃあ、あいつが聞いてなかったのかなー?」

 ラルジュナが目をくるくると動かした。

「ん?ラルジュナさん、相方といたの?」
「うん。おたくの王太子に頼まれた事があってねー、ついでにあいつの用事もすませたんだー」
「それは、お世話になりました。何の用事だったんだ?」

「それはねーー。秘密だよー☆」

 明るく言われる。
 なぜだか、背後に星が見えるような気がする。
 暗いダンジョン内に、これだけふさわしくない人がこの世にいるとは。


「ーー言うと思った」


 兵馬ーー。
 おまえ、この人の何がいいんだ?

 琉生斗は眉間にシワを寄せた。

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