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スズの指輪編
第46話 暗いダンジョンが似合わない男
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アルカトラズ地下ダンジョンの入り口は、魔法陣だった。
魔法陣が光り、ダンジョンから出てきた集団がいる。袋を担いで、琉生斗達の横を無言で通り過ぎて行った。疲れているのか、かなり青い顔をしている。
「へぇ~!感動~!すごい力ね~」
町子の目が爛々と輝いた。
「ーーたしかにーー。威圧感が凄いね」
兵馬が顔をしかめた。
「ん?そうなの?」
琉生斗は不思議そうな顔をした。
「わからないの?」
「うん。よくわからん」
「でも、ルート君、魔導師や魔法剣士の強さはわかるでしょ~?」
「ん~?ーー深い所からなら、何か感じるけど」
「ーー最初は楽そうね~。兵馬君、東堂君は~?」
「通信ができないー。忙しいのかな」
兵馬はかなりの距離を、精神魔法でやり取りできるようになっていた。
「他の前衛か~。誰かいるかしら~」
「いよいよ、おれの出番か」
琉生斗はカッコつけてみた。
二人共相手にはしてくれなかったがーー。
「ーーあっ、ううん。いいってー。だからー!」
兵馬の口調がきつくなる。
「どうしたんだ?」
「誰かに、精神魔法で割り込まれたのね~」
「ハッキングされるみたいな?」
「そうそう~。かなり高度な魔法よ~。網を張らなきゃいけないし~」
いや、最初から兵馬に網を張っているのだろうーー、琉生斗はここに転移してくる人物が誰だかわかった。
兵馬が溜め息をついた。
キラッと光が走り、目の前にラルジュナが降り立つ。
「やっほー!ヒョウマお待たせー☆」
「帰っていいよ」
「冷たいー」
「前衛としてはどうなんだ?」
真顔で問う琉生斗に、町子が疲れた顔を見せる。
「ーールート君~。ラルジュナさんは竜殺しよ~」
「じゃあ、東堂より強くて、相方より弱いんだ」
「ルート、基準が間違ってるよー」
ラルジュナは楽しそうに笑った。
「アルカトラズに何の用なのー?」
兵馬がかいつまんで説明すると、ラルジュナは笑顔になった。
「いいねー。ピンクダイヤかー。色付きは地下50階ぐらいじゃないと難しいかなー。昔ね、地下66階でレッドダイヤがたくさん出て、アレクセイと分けたよー」
「ーーもしかして、5カラットのがあった?」
「あったよー。アダマス陛下にあげたけどー」
ムサイエフ・レッドダイヤかーー、あっちの名前が何でついたんだ?
琉生斗は尋ねた。
「それって、ムサイエフって名前?」
「うんー。陛下はそう呼んでたねー」
たまたまなのか、何かが連動するのかー?
「地下30階から行くー?人も少ないから楽だよー」
記憶魔法陣あるしー、とラルジュナが言うので、琉生斗は頷いた。
「僕はほんとに役に立たないから、待ってるよ」
と、逃げようとした兵馬をがっしりと掴み、ラルジュナは魔法陣を起動したーー。
ダンジョン内は灯りがともり、はっきりと見渡せるようになっていた。
「うわぁ!本格的なダンジョンだ!」
「あれー?魔物がいないねー」
いつもならすぐに襲ってくるんだけどー。
ラルジュナが辺りをみまわす。
「ルートがいると……」
兵馬がラルジュナの上着の裾を引っ張っる。それを琉生斗は殺意をもって見ていた。
「あっ、そうかー。ドラゴンはもっと深く潜らないといないよー、残念ー♡」
誰も楽しみにはしていないがーー。
「町子はドラゴン倒せるのか?」
「戦った事がないわ~」
「普通、会わないよねー」
昔、自分めがけて出て来たなぁーー、琉生斗は懐かしさに頷く。
「古代からあるダンジョン~!」
町子が嬉しそうにはしゃいだ。
「お宝はあるの?」
「この辺りは上級者なら来れるから、たいして残ってないかもねー」
「なら、もう少し地下にすればよかったんじゃ」
「次の魔法陣は、100階なんだー。間を記憶させるの忘れててねー」
「意外にうっかりさんなんだな」
相方と同じだ。類は友を呼ぶ、かーー。
「そうー、支えて貰うほうが好きなんだー♡」
ラルジュナは兵馬にくっついた。
琉生斗は頬を引きつらせる。
「そうだー、ルートー。旦那に行き先行ってないでしょー?」
ラルジュナが兵馬と手をつなぎながら話しかけてくる。
某食器用洗剤のCMかよ、と琉生斗は苦々しくそれを見ている。
「出かけるとは言ったよ」
「そうなのー?じゃあ、あいつが聞いてなかったのかなー?」
ラルジュナが目をくるくると動かした。
「ん?ラルジュナさん、相方といたの?」
「うん。おたくの王太子に頼まれた事があってねー、ついでにあいつの用事もすませたんだー」
「それは、お世話になりました。何の用事だったんだ?」
「それはねーー。秘密だよー☆」
明るく言われる。
なぜだか、背後に星が見えるような気がする。
暗いダンジョン内に、これだけふさわしくない人がこの世にいるとは。
「ーー言うと思った」
兵馬ーー。
おまえ、この人の何がいいんだ?
琉生斗は眉間にシワを寄せた。
魔法陣が光り、ダンジョンから出てきた集団がいる。袋を担いで、琉生斗達の横を無言で通り過ぎて行った。疲れているのか、かなり青い顔をしている。
「へぇ~!感動~!すごい力ね~」
町子の目が爛々と輝いた。
「ーーたしかにーー。威圧感が凄いね」
兵馬が顔をしかめた。
「ん?そうなの?」
琉生斗は不思議そうな顔をした。
「わからないの?」
「うん。よくわからん」
「でも、ルート君、魔導師や魔法剣士の強さはわかるでしょ~?」
「ん~?ーー深い所からなら、何か感じるけど」
「ーー最初は楽そうね~。兵馬君、東堂君は~?」
「通信ができないー。忙しいのかな」
兵馬はかなりの距離を、精神魔法でやり取りできるようになっていた。
「他の前衛か~。誰かいるかしら~」
「いよいよ、おれの出番か」
琉生斗はカッコつけてみた。
二人共相手にはしてくれなかったがーー。
「ーーあっ、ううん。いいってー。だからー!」
兵馬の口調がきつくなる。
「どうしたんだ?」
「誰かに、精神魔法で割り込まれたのね~」
「ハッキングされるみたいな?」
「そうそう~。かなり高度な魔法よ~。網を張らなきゃいけないし~」
いや、最初から兵馬に網を張っているのだろうーー、琉生斗はここに転移してくる人物が誰だかわかった。
兵馬が溜め息をついた。
キラッと光が走り、目の前にラルジュナが降り立つ。
「やっほー!ヒョウマお待たせー☆」
「帰っていいよ」
「冷たいー」
「前衛としてはどうなんだ?」
真顔で問う琉生斗に、町子が疲れた顔を見せる。
「ーールート君~。ラルジュナさんは竜殺しよ~」
「じゃあ、東堂より強くて、相方より弱いんだ」
「ルート、基準が間違ってるよー」
ラルジュナは楽しそうに笑った。
「アルカトラズに何の用なのー?」
兵馬がかいつまんで説明すると、ラルジュナは笑顔になった。
「いいねー。ピンクダイヤかー。色付きは地下50階ぐらいじゃないと難しいかなー。昔ね、地下66階でレッドダイヤがたくさん出て、アレクセイと分けたよー」
「ーーもしかして、5カラットのがあった?」
「あったよー。アダマス陛下にあげたけどー」
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琉生斗は尋ねた。
「それって、ムサイエフって名前?」
「うんー。陛下はそう呼んでたねー」
たまたまなのか、何かが連動するのかー?
「地下30階から行くー?人も少ないから楽だよー」
記憶魔法陣あるしー、とラルジュナが言うので、琉生斗は頷いた。
「僕はほんとに役に立たないから、待ってるよ」
と、逃げようとした兵馬をがっしりと掴み、ラルジュナは魔法陣を起動したーー。
ダンジョン内は灯りがともり、はっきりと見渡せるようになっていた。
「うわぁ!本格的なダンジョンだ!」
「あれー?魔物がいないねー」
いつもならすぐに襲ってくるんだけどー。
ラルジュナが辺りをみまわす。
「ルートがいると……」
兵馬がラルジュナの上着の裾を引っ張っる。それを琉生斗は殺意をもって見ていた。
「あっ、そうかー。ドラゴンはもっと深く潜らないといないよー、残念ー♡」
誰も楽しみにはしていないがーー。
「町子はドラゴン倒せるのか?」
「戦った事がないわ~」
「普通、会わないよねー」
昔、自分めがけて出て来たなぁーー、琉生斗は懐かしさに頷く。
「古代からあるダンジョン~!」
町子が嬉しそうにはしゃいだ。
「お宝はあるの?」
「この辺りは上級者なら来れるから、たいして残ってないかもねー」
「なら、もう少し地下にすればよかったんじゃ」
「次の魔法陣は、100階なんだー。間を記憶させるの忘れててねー」
「意外にうっかりさんなんだな」
相方と同じだ。類は友を呼ぶ、かーー。
「そうー、支えて貰うほうが好きなんだー♡」
ラルジュナは兵馬にくっついた。
琉生斗は頬を引きつらせる。
「そうだー、ルートー。旦那に行き先行ってないでしょー?」
ラルジュナが兵馬と手をつなぎながら話しかけてくる。
某食器用洗剤のCMかよ、と琉生斗は苦々しくそれを見ている。
「出かけるとは言ったよ」
「そうなのー?じゃあ、あいつが聞いてなかったのかなー?」
ラルジュナが目をくるくると動かした。
「ん?ラルジュナさん、相方といたの?」
「うん。おたくの王太子に頼まれた事があってねー、ついでにあいつの用事もすませたんだー」
「それは、お世話になりました。何の用事だったんだ?」
「それはねーー。秘密だよー☆」
明るく言われる。
なぜだか、背後に星が見えるような気がする。
暗いダンジョン内に、これだけふさわしくない人がこの世にいるとは。
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兵馬ーー。
おまえ、この人の何がいいんだ?
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