ロクイチ聖女 6分の1の確率で聖女になりました。第三部 第四部

濃子

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バッカイア・ラプソディー編 (長編)

第32話 恋なのか、尊敬なのか。☆

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「ーー元気になったな。ルート」
 ベッドの上で琉生斗はアレクセイとキスをする。
「うん。心配ばっかりかけてごめんな」
 隙間なく抱きつく。
「いや。夫では親友にはなれないからな」

 そうだよなー。おれにとって、兵馬はやっぱり特別な存在だ。

「んー、たまに友達みたいな夫婦とか聞くけど、実際はどうなんだろうな?」 
「私はあまり聞かないな」
「あっ、そっか。向こうではよく聞いたんだよ。うちの親、友達みたい、とか」
 アレクセイは首を傾げた。

「それは、親と子供が友達なのか?」
「あー、そうかも。友達親子って言葉があったなー」

 アレクセイが、考えられない、という表情を浮かべた。

「それぐらい仲良しな親子ってすごいな。おれには想像できないけど」
「そうだな。さて、私達の子は仲良くしてくれればいいがーー」
「あっ、そうだよな。どんな神竜が出てくんだろ。ていうか、人だったらどうする?何てまわりに言おうか?」
「ーー養子をとった事に……」
「顔が似てたらどうすんだ?」
「似てる子を養子にしたと言うよりないな……」
「タケさんは何て言ったんだろ。今度バンブーさんに会ったら聞いてみよう」
 アレクセイが上半身を起こし、右手の指を孔に入れた。

「あっ!」
 琉生斗は腰を浮かした。
「膝を立ててくれ。触りやすい」
「もう!」
 琉生斗の身体の中で作られている、子を宿すための器官。その道をアレクセイは指で確認する。
「この前より長くなっているなーー。気持ちいいのか?」
「……やめて………」

 マジで恥ずかしいんだよ!

 指で触られてるだけなのに、そこがキュンてして何かでてくるしーー。

「ま、まだダメ……」
「ルート、濡れている……」
「ヤダって!この変態!」

 アレクセイの指とアレの攻撃に、琉生斗は意識を飛ばすほどイッた。
 その中、琉生斗は思った。

 
 ーー兵馬が元気にしててよかった、本当に……。















「ヒョウマ!久々だな!」
「そんなに経ってないよ」
「あれから大丈夫だったか心配で……」
 ヒューリは頭をかきながら下を向いた。
「全然、あんな事で立ちどまらないよ、僕は。そうだ、ヒューリ、射的の景品、かなり取ったんでしょ?空気読みなよ」

 最後、子供達の景品がなかったそうだーー。

「ごめん、ごめん!面白くてさ!うちの空気で飛ばす筒と違って、指で引くんだな。それが的を狙いやすかったからさ」
「空気の筒ーー」

 あー、小学校のときの理科の授業でやった空気銃かーー。

「ーー魔法ありきだから、文明にバラつきがあるね……」
「ん?」
「魔法が使えない人って生活が大変だね」
「そりゃもう!なんでこんなに差があるかな、ってぐらいだ。魔導洗濯機も動かせないから、魔法が使える奴に頼むんだぜ!ロードリンゲンなんか、兵士はみんな魔法が使えるだろ?」

「そうだね。強いか弱いかの違いかな」

「うちは、十五歳から十八歳まで兵役があるんだけど、魔法が使える奴は本当に有利なんだ。そのまま、軍に残って偉い身分になるし。オレなんか魔力が少ないから苦労したし、軍なんかとても残れなかったーー」

「残りたかったの?」
「ーーできることならな。まっ、天地がひっくり返るような事が起こらない限り無理だろうな」
 ヒューリの真剣な顔に、兵馬は目を見張った。
 
 自分達の国には兵役の義務がなかったから、気持ちがわからないけどーー。

 やはり、名誉な事なのだろうかーー。


 

「そうだ。明日、アウローラ大神殿にミント王女がお参りに来るんだと。みんなどんなひとか見たいから、休講になるみたい」
「へえー、逆に見に行くんだね」
「ん?」
「いや、ロードリンゲンじゃ、王族関係には一般のひとはなるべく関わらないようにするから。王太子以外は外交みたいな事、してないしね」

「うちの王太子はチャラそうだけど、疫病が流行ればどんな小さな村にだって、で慰問に行くぜ」

 兵馬は動きをとめた。

「ーーすごいね……」

 病気が流行っている場所には、普通は行かないだろう。

「医療系の魔法が得意なんだと。新種の病気の研究所にもよく行ってんじゃないか?なんか、流行る前に予防線が張れたらって昔言ってたよ。予防ワクチンじゃなくて、その前に病原菌を作らない、研究?よくわかんねえけど」

「なるほど……」

 向こうでも温暖化による降雨量の変化から、水質汚染、蚊の繁殖増加が問題になっている。

 蚊ーー。結構いたよねー。

 蚊取り線香だけじゃなくて、民家にハーブを植えたり、蚊を減らす事で病気避けにもなるかも。

「来年の夏までに蚊取り線香を……」
「何をブツブツ言ってるんだ?」
「じゃあ、僕は明日は休むよ」
「ーーそうだよな。行かないほうがいいよな。ヒョウマ、王太子と仲がいいんだろ?」
「仕事でね」

「それだけか?」
 
 ヒューリにじっと見つめられ、兵馬は視線をそらした。

「ーー凄いひとだとは思っているよ」


「だな。けど、仕事相手の奥さんが、嫌な姫さんなんだろう?」
「いやいや、良い方だよ。噂が悪い方になってるだけ」
「ああ、良い噂はまわらないってヤツだよな」
 ヒューリは息をついた。

「王太子の弟もさ、良い方なのに、王太子ができが良すぎて可哀想な面もあるんだ」
「あー、シャラジュナ第二王子」
「いまの王妃様の子はシャラジュナ様と姫が3人なんだ」

「え?」 

「王妃様のお姉様が、王太子の母親なんだけど、すぐに亡くなったから、側室だったジュリアム様が育てられる事にしたんだって」

「ーーそうなんだ……」

「それもあって、王様は王太子の子供が欲しいんだよ。王様にとっちゃ一番の女性だったみたいだ」
「ジュリアム王妃すごいね。普通だったら、自分の子を王太子にしない?」
「ラルジュナ様が優秀だからな。シャラジュナ様はヒョウマの作った鉄道模型がすごく気に入ったんだって。いまはそれで遊ぶのが楽しいらしい」
 兵馬は肩を竦めた。
「パクリで誉められても困るよ」

 自分は向こうの世界のものを模倣するだけ。何も生みだす事はない。

 何も……。

「ーー女のひとって、いいよね……」
「はあ?なんで?おまえ子供でも生みたいのか?」








「……いや、そんなわけないよ……」
 兵馬は俯いた。
 
 ヒューリの言葉が心臓に突き刺さる。


「おい!ヒュー!」

「あっ、フォンカベルだ。あいつも根っから悪いヤツじゃないんだ、許してやってくれ」
「気にしてないよ」
「ヒョウマは人間ができてるな」

 ヒューリは呼ばれた方へ走って行った。フォンカベルは長い箱を持っていて、ヒューリと外へ歩き出した。

 彼は兵馬を見た。

 口元だけフォンカベルは兵馬に笑って見せた。
「?」
 嫌な笑い方だった。目がちっとも笑っていない。
「何だろう……」
 理由がわからないが、胸騒ぎがする。
「ーー明日、か……」

 ミント王女は決意したのだろうか。




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