ロクイチ聖女 6分の1の確率で聖女になりました。第三部 第四部

濃子

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バッカイア・ラプソディー編 (長編)

第31話 運動神経以外、死角のない男 ☆

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「ーーねえ、アス王太子。いくら何でも吊り橋すぎるよ!」

 兵馬は吊り橋の綱にしがみついたまま、動く事も出来ずに固まっている。

「これぐらいでか?」

 アジャハン国北部、雨の多いプルウィア領のダイナ大橋は、プルウィア大公ダイナの名をつけた吊り橋である。老朽化から、いつかは落ちる、いつ落ちる、としてマニアの間では有名な橋だ。

「もう、無理。僕は気絶するよ」
「本当に臆病なやつだ」
「うるさい!」
 五メートルも進めずに、兵馬は引き返そうとした。
 


 そのとき、
「兵馬ぁ!」
 親友の声が響いた。
「え?ルート?」
 見れば琉生斗がグラグラする橋を全力疾走してくる。

「バカ!揺れる!落ちる!死ぬーー!」

 兵馬は泣きべそをかきながらきつく綱を握りしめる。橋がうねるように揺れる中、琉生斗は兵馬に抱きついた。

「兵馬!おれはもう自分がヘタレすぎて嫌だあ!」
「えー?知らなかったの?君がヘタレで甘ったれなのは昔からじゃない」
「そうだよ!兵馬!おれはやっぱりおまえがいないとダメなんだぁーー」

「ーーとりあえず揺らすなぁ!落ちるー!怖いよぉ!助けてよぉ!」
「え?たいした事ないじゃん」

「ルートなんか大っきらいだぁぁぁぁ!!!」
 へたり込んだ兵馬の叫びが、こだまになってかえってきた。




「もう。殿下、ちゃんと見ててよ」
「すまない」
 全然すまないと思っていないじゃん、と兵馬は愚痴をこぼす。

「ヒョウマに会えて嬉しいのだ」
「そうだよ!もう、おまえってヤツは連絡のひとつも寄越さないで!」

 すぐ、近くで魔蝕が出てたんだぞ。危なかったんだからな、兵馬。

「うん、ありがと。あっ、そうだ、君の結婚式の写真、マグナス大神殿の大階段でも撮るから」
「はい?」
「ミハエルさんの許可はおりたから。これから、一般の人でも撮りたい人は予約できるようになるよ。殺到するね」
「それはいい。天気がよければ最高だ」
「聖地になるよ」
「聖地か」
 アスラーンがごきげんだ。

「勝手に決めんな!」
「殿下、大丈夫だね?」
「問題ない」
「断れ!」
「君は聖女だ。僕はもっと君が外に出るべきだと思う」

「え?」
「他国で活動をする事にも意義があると、ミハエルさんに言っておいたから」

 琉生斗は目を丸くした。

「自分はロードリンゲンだけの聖女ではないと、他国にアピールすれば、無理に横槍を入れる奴は減るよ。ただし、必ず殿下が側にいる事。入る隙がない事もアピールしないと」

「ーーなるほど」

「君が思うより、ひとは魔蝕が怖い。世界聖女連盟に出席できない海国オランジーや、農国ナルディアも口を揃えて同じ事を言う」
「おれ、ちゃんと浄化に行ってるじゃんか」

「そうだね。それに加えて少しでも平時にも行くと、また心証は違うんじゃないかな?神殿巡りは積極的にやろうよ。それなら、僕も同行してもいいよ」
「まじか!」

 兵馬と一緒。何と魅力的な旅なのか。

 琉生斗はアレクセイを見た。
「ルートの体調に無理がなければ」
「よしっ!じいちゃんと相談しよ!」

「そうそう、これあげるよ。兵士の人からもらって困ってたんだ。ルートなら使うでしょ?」
 兵馬は空中から箱を取り出した。

「うん?はちみつ石鹸?こんなんおまえでも使えるだろ」
「よく読みなよ」
「ん?この石鹸は食べられます。飲み込んでも害がありません。ーー何の石鹸なんだ?」

「アレを口で洗う石鹸」

「ちょっと待てぇ!!!大丈夫かぁ!その兵士は誰だぁ!」
 この場にその兵士がいたら、確実に息の根を止めにいきそうな勢いで琉生斗は喚いた。
「そういう系のグッズを売ってる店の息子。使用した感想よろしく」

「あほかぁぁぁぁぁぁ!!」

「なんだ、アレクセイ。ルートはおとなしい方か?」
「そんなわけないよ。この二人、口では言えない事もかなりやってるよ」

「ほぎゃああぁぁぁ!!!」

 兵馬の暴露に琉生斗は地に突っ伏した。

「ルート、早く試そうか」
 頬を染めたアレクセイの可愛らしさに、琉生斗は真っ赤になった。

「バカかよ!おまえは!!」
「アレクセイ、いいホテルがある。予約しよう」
「ああ」
「ああ、じゃねえぇ!魔蝕浄化しに来て何してるんだよ!」
「セックスだ」
「最低だぁぁぁぁぁぁ!!」

「部屋の感想も聞きたい」
「聖女御用達の部屋って看板に書く?」
「ちゃんと私の名前も入れてくれ」
「オッケー」
「それはいい!今後、利用客が殺到するだろう」


 やめろぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!

















「もう、みんな悪ノリしすぎだ!」
 しっかりと予約されたホテルの一室に二人はいた。
 琉生斗は怒りながら石鹸を口に含む。浴室は声の反響が大きく、恥ずかしさに苦笑した。

「あっ、甘い。ほんのり泡立つ感じ」
 琉生斗はアレクセイのモノを口に含み、舌で擦るように舐める。

「うっ」

 滅多に声をあげないアレクセイが呻き声をあげ、その声が浴室内に響き、琉生斗は耳がぞわりとするのを感じた。


 吸いしゃぶり、舐め続けると、アレクセイが音をあげる。
「ーールート、挿れるぞ」
「ふぇー?」

 もう?、と不満気に見上げたが、アレクセイは気にもしない。足を広げて抱えあげられ、孔に彼のモノを一気に押し込まれた。

「ひゃんっ!」

 石鹸のヌメリでずるっと入ってしまい、琉生斗は気持ちの良さに口をパクパクと開けて震える。

「あんっ!いやっ!あっ!」
 足が宙に浮いている為、自分の重みで深く入ってしまう。上下に軽々と動かされ、琉生斗は激しく声をあげた。
「ああんっ!イイッ!」
 首を掴み頬を擦りつける。

「はぁっ、アレク、好きだよぉ」
「ああ。ルート、愛しているー」

 登りきった快楽に全身が期待する。

 琉生斗は脳天までクる絶頂を味わい、甘い声で喘ぎ続けた。



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