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バッカイア・ラプソディー編 (長編)
第31話 運動神経以外、死角のない男 ☆
しおりを挟む「ーーねえ、アス王太子。いくら何でも吊り橋すぎるよ!」
兵馬は吊り橋の綱にしがみついたまま、動く事も出来ずに固まっている。
「これぐらいでか?」
アジャハン国北部、雨の多いプルウィア領のダイナ大橋は、プルウィア大公ダイナの名をつけた吊り橋である。老朽化から、いつかは落ちる、いつ落ちる、としてマニアの間では有名な橋だ。
「もう、無理。僕は気絶するよ」
「本当に臆病なやつだ」
「うるさい!」
五メートルも進めずに、兵馬は引き返そうとした。
そのとき、
「兵馬ぁ!」
親友の声が響いた。
「え?ルート?」
見れば琉生斗がグラグラする橋を全力疾走してくる。
「バカ!揺れる!落ちる!死ぬーー!」
兵馬は泣きべそをかきながらきつく綱を握りしめる。橋がうねるように揺れる中、琉生斗は兵馬に抱きついた。
「兵馬!おれはもう自分がヘタレすぎて嫌だあ!」
「えー?知らなかったの?君がヘタレで甘ったれなのは昔からじゃない」
「そうだよ!兵馬!おれはやっぱりおまえがいないとダメなんだぁーー」
「ーーとりあえず揺らすなぁ!落ちるー!怖いよぉ!助けてよぉ!」
「え?たいした事ないじゃん」
「ルートなんか大っきらいだぁぁぁぁ!!!」
へたり込んだ兵馬の叫びが、こだまになってかえってきた。
「もう。殿下、ちゃんと見ててよ」
「すまない」
全然すまないと思っていないじゃん、と兵馬は愚痴をこぼす。
「ヒョウマに会えて嬉しいのだ」
「そうだよ!もう、おまえってヤツは連絡のひとつも寄越さないで!」
すぐ、近くで魔蝕が出てたんだぞ。危なかったんだからな、兵馬。
「うん、ありがと。あっ、そうだ、君の結婚式の写真、マグナス大神殿の大階段でも撮るから」
「はい?」
「ミハエルさんの許可はおりたから。これから、一般の人でも撮りたい人は予約できるようになるよ。殺到するね」
「それはいい。天気がよければ最高だ」
「聖地になるよ」
「聖地か」
アスラーンがごきげんだ。
「勝手に決めんな!」
「殿下、大丈夫だね?」
「問題ない」
「断れ!」
「君は聖女だ。僕はもっと君が外に出るべきだと思う」
「え?」
「他国で活動をする事にも意義があると、ミハエルさんに言っておいたから」
琉生斗は目を丸くした。
「自分はロードリンゲンだけの聖女ではないと、他国にアピールすれば、無理に横槍を入れる奴は減るよ。ただし、必ず殿下が側にいる事。入る隙がない事もアピールしないと」
「ーーなるほど」
「君が思うより、ひとは魔蝕が怖い。世界聖女連盟に出席できない海国オランジーや、農国ナルディアも口を揃えて同じ事を言う」
「おれ、ちゃんと浄化に行ってるじゃんか」
「そうだね。それに加えて少しでも平時にも行くと、また心証は違うんじゃないかな?神殿巡りは積極的にやろうよ。それなら、僕も同行してもいいよ」
「まじか!」
兵馬と一緒。何と魅力的な旅なのか。
琉生斗はアレクセイを見た。
「ルートの体調に無理がなければ」
「よしっ!じいちゃんと相談しよ!」
「そうそう、これあげるよ。兵士の人からもらって困ってたんだ。ルートなら使うでしょ?」
兵馬は空中から箱を取り出した。
「うん?はちみつ石鹸?こんなんおまえでも使えるだろ」
「よく読みなよ」
「ん?この石鹸は食べられます。飲み込んでも害がありません。ーー何の石鹸なんだ?」
「アレを口で洗う石鹸」
「ちょっと待てぇ!!!大丈夫かぁ!その兵士は誰だぁ!」
この場にその兵士がいたら、確実に息の根を止めにいきそうな勢いで琉生斗は喚いた。
「そういう系のグッズを売ってる店の息子。使用した感想よろしく」
「あほかぁぁぁぁぁぁ!!」
「なんだ、アレクセイ。ルートはおとなしい方か?」
「そんなわけないよ。この二人、口では言えない事もかなりやってるよ」
「ほぎゃああぁぁぁ!!!」
兵馬の暴露に琉生斗は地に突っ伏した。
「ルート、早く試そうか」
頬を染めたアレクセイの可愛らしさに、琉生斗は真っ赤になった。
「バカかよ!おまえは!!」
「アレクセイ、いいホテルがある。予約しよう」
「ああ」
「ああ、じゃねえぇ!魔蝕浄化しに来て何してるんだよ!」
「セックスだ」
「最低だぁぁぁぁぁぁ!!」
「部屋の感想も聞きたい」
「聖女御用達の部屋って看板に書く?」
「ちゃんと私の名前も入れてくれ」
「オッケー」
「それはいい!今後、利用客が殺到するだろう」
やめろぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!
「もう、みんな悪ノリしすぎだ!」
しっかりと予約されたホテルの一室に二人はいた。
琉生斗は怒りながら石鹸を口に含む。浴室は声の反響が大きく、恥ずかしさに苦笑した。
「あっ、甘い。ほんのり泡立つ感じ」
琉生斗はアレクセイのモノを口に含み、舌で擦るように舐める。
「うっ」
滅多に声をあげないアレクセイが呻き声をあげ、その声が浴室内に響き、琉生斗は耳がぞわりとするのを感じた。
吸いしゃぶり、舐め続けると、アレクセイが音をあげる。
「ーールート、挿れるぞ」
「ふぇー?」
もう?、と不満気に見上げたが、アレクセイは気にもしない。足を広げて抱えあげられ、孔に彼のモノを一気に押し込まれた。
「ひゃんっ!」
石鹸のヌメリでずるっと入ってしまい、琉生斗は気持ちの良さに口をパクパクと開けて震える。
「あんっ!いやっ!あっ!」
足が宙に浮いている為、自分の重みで深く入ってしまう。上下に軽々と動かされ、琉生斗は激しく声をあげた。
「ああんっ!イイッ!」
首を掴み頬を擦りつける。
「はぁっ、アレク、好きだよぉ」
「ああ。ルート、愛しているー」
登りきった快楽に全身が期待する。
琉生斗は脳天までクる絶頂を味わい、甘い声で喘ぎ続けた。
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