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バッカイア・ラプソディー編 (長編)

第18話 魔法騎士ルート ☆

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 琉生斗は神殿から帰った後も、離宮のソファでゴロゴロしながら思案にくれた。
 ラルジュナがバッカイア帝国の王太子なのは、事実だ。アレクセイに聞いたところ、母親の身分もいいらしく廃される確率もない。

 どう考えても彼らの未来は、最高で側室、最悪はやり捨て、ぐらいしかない。

 だが、どんな結末になるにせよ、お互いが納得しなければ意味がない。

「ーー例えばだ、おれが聖女じゃなくて、魔法騎士だったとしよう………」

 
『聖女になった東堂はハルカと呼ばれ、護衛のアレクセイと魔蝕の浄化に行く。
 いつしか二人は信頼以上の関係になり、王宮の至るところでキスを交わす毎日。

 それを大木の陰から見ている、将来は士長確定な強さを誇る魔法騎士ルート。
 王子のアレクセイに恋をしてしまい、誰にも打ち明けられず、毎夜ベッドの中で涙にくれるーー。
 
 どうにもできない気持ちを抱えながら、訓練に明け暮れ自分の気持ちに蓋をするーー。
 だが、ある日アレクセイと闘技場で対峙したときに、彼に気持ちがばれてしまう。はじめはハルカへの義理立てをしていたアレクセイだが、次第にルートの愛らしさに心惹かれていき、やがて二人はひと目を忍んで会うようになるーー。

「だめですわ。私は友を裏切れませんわ」
 何で女言葉なんだ?
「なら、側室になってくれ」
 最低だな。
「それでもいい、あなたの側にいたい」
 いたいか?他さがせよ。この際モロフでもいいだろう。ああ見えて公爵家の三男坊だ。
「ああ。大切にしよう」
 してないだろーー。     
            完 』


「違うなーー。ギャグだなー」
「なかなか面白い」
 琉生斗が飛び起きたとき、アレクセイは観葉植物に水をあげていた。

「あ、おかえり。おれ、まだ声漏れてるの?」
「いや、もう大丈夫だ。難しい顔をしていたので覗いてしまった。すまない」
 琉生斗に近付きキスをする。背中に腕がまわり、嬉しそうな瞳と目が合う。 

 アレクセイは身体を引かれ、そのまま琉生斗に覆い被さる。琉生斗が深いキスをねだった。 

 強引に求めてくる琉生斗に、アレクセイの心は踊る。
「ルート……。嫉妬しているのか?」
 楽しそうなアレクセイの声に、琉生斗がむくれた。
「ーー想像でも許せない」
 

 可愛いーー。


 すぐにアレクセイの理性は飛び、明るい部屋で秘部を隠す事もなく二人は愛し合う。

 熟れた実に指を突き刺すように、琉生斗の孔を指でいじる。愛撫をしながら逸る気持ちを抑え、琉生斗を傷つけないように硬くなったモノを捩じ込んでいく。

「あんっ」
 いい声だ。腰にクる。
 結合している部分をよく見えるようにすると、琉生斗は真っ赤になって顔を横に向ける。
「ルート?」
 アレクセイが突くのをやめると、琉生斗は困ったような顔で自分を見た。

「……やめないでよ………。アレク、ちょうだい……」

 潤んだ目で見つめられ、その愛らしい唇で自分を求める言葉をもらす。

 ルート!
 ああ、言葉にできないぐらい愛している!


「愛している!愛している!ルートォ!」
「アレクー!おれも好きー!好きー!好きすぎてやばいよーー!」
 琉生斗の瞳からこぼれた涙を舐めながら、アレクセイの舌は頬を這った。
 涙を追って耳の中に舌を入れる。ぴちゃり、と音がする。

「あんっ!」

 琉生斗は耳が弱い。舐めて噛んで耳をベタベタにすると、下はもっとすごい事になってくる。

「やんっ!」
 グチャクチャ、良い音が響く。中がよく動きアレクセイのモノを締めつけてくる。
「すごく可愛いい……」
「ーーバカ……」
 上目遣いで琉生斗が言う。

 アレクセイは心臓を鷲掴わしづかみにされるほど琉生斗に魅了され、もはや自分でも自分の止め方がわからない。
 
 その目も最高だーー。












 

 ふと、アレクセイは玄関フロアに兵馬がいる事に気が付いた。
 眠そうにうとうとしている琉生斗にキスをして、ブランケットをかけ、アレクセイは魔法で服を着る。





「すまない、ヒョウマ」
 アレクセイが向かうと、テーブルに書類を広げた兵馬は、顔をあげた。
「ごめん、連絡もなしに。これちょっと急ぎ!」
 鉄道関係の書類を渡され、アレクセイは目を通しーー。
 美しい深い海の藍色の目が見開かれた。

「ーーヒョウマ……」
「うん?警備が増えるみたいだから、一般の人の規制をかけないとーー」
「ーーいいのか?」
「何が?」
 アレクセイは口を閉じた。

 その書類には、ラルジュナが自身の婚約者を伴って開通式に参加するにあたり、警備人数を変更する内容が書かれていた。

「殿下は優しいねーー。いつでもどんなときでもルートの事ばかり考えてるーー。ルートもそうだよ、殿下が好きでしょうがないんだからーー。それって、本当、奇跡だよね」
「認可をーー」
「ちゃんとして、私情なんか挟んじゃだめだよ」
 鼻をすすりながら、兵馬は言った。
「なんか、だめだよね。何でこんな考えちゃうんだろ。殿下、記憶消せない?」
 アレクセイは黙った。

「できるんだーー」
 兵馬は書類を片付けた。



「ありがとう。明日も大学だから、行くね」
「ヒョウマーー」
「何?」
「おまえは私にとっても大切な友だ」
「殿下……」
「あまりに我慢ができない場合は言ってくれ。ラルジュナを殴るぐらいなんてことはない」
 兵馬は目を丸くした。

「あははっ、それはダメだよ。顔も好きなんだからーー。けど、そうだね、どうしてもつらくなったら、記憶消してね……」
 笑いながら離宮から出ていく。

「ラルジュナ……」

 どういうつもりだ?
 ヒョウマが苦心した鉄道に、婚約者を連れてくるなどとはーー。

 それが普通だと言うのなら、おまえの普通はあまりにも残酷すぎるなーー。


 アレクセイは溜め息をついた。




 
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