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列車は走るよ。何乗せて?編
第15話 列車は走るよ。何乗せて? 6
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「あー、そうかーー。アレクには聞こえてたのか……」
琉生斗は俯いた。
「すまない。魔法をかける強度を図る為に、自分にはかけられなかった」
「いやいや、変な事ばっか考えてわりーな」
しょうもない事考えてんな、おれーー。
「ルート」
「気にすんな。自分の中の問題だから」
「ルート、私達は家族だ。話せる事は話してくれないか?」
いや、話したくないーー。
はっきりとした拒絶に、アレクセイは動きをとめる。その傷ついた顔を見て、琉生斗は視線を逸らした。
「ーーキス……」
「ルート?」
「キス。おれ、最初勝手にしちゃって悪かったよなー」
アレク意識なかったけどーー。
「嫌かも、って考える間もなかったから、悪かっーー」
琉生斗の唇は塞がれた。
ーーちょ、人前!
ひまわり見に来て何を見せられてんの、という観光客の顔が通り過ぎて行く。
「ーーこれ以上、ルートが愚かな事を言わないように塞いだだけだ」
何だよ、それーー。琉生斗は怪訝な表情を浮かべる。
「私はきみを愛している。きみの内面はもとより、きみの唇も目も、顔も、身体のすべてが愛おしい!」
アレクセイの言葉に、景色が変わる。
目の前の視界がクリアになっていくのを琉生斗は感じた。
「ーー男だから、嫌だったとか、ない?」
「はあ?」
アレクセイの美貌が歪んだ。はじめて見る表情に、琉生斗は目を丸くした。
「女だったらよかったなどと、私が思っていると?」
それは違うよなーー、むしろ積極的なのはアレクの方だったしーー、愛情に嘘はなかったーー。
結局、自分の中の小さなこだわりなんだよな、と琉生斗はアレクセイに身体を預ける。
アレクセイも琉生斗を強く抱きしめようとしてー。
「そんないちゃいちゃするもん?」
呆れた美花の声に、琉生斗はハッとなる。
「他の人が気を使って通れないから、よそでやりなさいよ」
「ーーわりー」
それでも離れない二人に苦笑して、美花はじっとアレクセイを見た。その視線の先が下の方なので、琉生斗は眉を顰めた。
「ーー何見てんだよ?」
「あぁ、ごめんなさい。やっぱり足が長いなーって。でも、王太子より細いのよねー」
琉生斗は首を傾げた。
「肩幅はアレクの方があると思うけど」
「そう、逆三角形って感じよね」
美花は、ふーむ、と唸った。
「ちょっと殿下、立って下さる?」
アレクセイは、不思議そうな顔をしながら立ち上がる。美花はじっと見ている。
身長差が、三十センチ近くありそうだ。
「ーー抱きついちゃ、だめよね?」
美花の言葉に、琉生斗は弾かれたように怒りを見せる。後ろにいたファウラの顔が引きつった。
「ざけんな!おれのアレクだ!」
「わかってるわよー。やっぱり採寸させてもらえます?」
「は?」
「殿下の縫製室にデータ欲しいってお願いしたんですが、駄目だって言われたんで」
「ミハナが、私の服を作るのか?」
「はい!こうみえて裁縫は得意なんですよ。そりゃプロと違って技術はないけど、マーサさん達も手伝ってくれますし」
「なぜ?」
とめようとした琉生斗は、手で口を後ろにいた東堂に塞がれる。
「殿下と琉生斗の結婚式の衣装作っているんです。写真だけでも撮りましょうよ」
ーー琉生斗は、そのときのアレクセイの顔を生涯忘れる事はなかった。
表情はいつものままなのに、深い海の藍色の目が、星のように煌めいた。なんて綺麗なんだろうー、琉生斗はそこから目が離せなくなった。
「いや、ルートが嫌ならー」
「がっつりドレスじゃないから大丈夫よね?」
美花に尋ねられ、琉生斗は覚悟を決めた。
「ーー問題ない」
一度きりの結婚式、女装に近い写真ぐらいどうというのか、琉生斗は吹っ切った。
自分の気持ちより優先したい相手がいる。それは琉生斗の中の過去の亡霊達を吹き飛ばす、エネルギーになっていく。
おまえの為なら、大丈夫だーー、琉生斗は心の中で頷いた。
どうせ将来はスカートだしーー、とは考えない事にしているのだがーー。
「おまえも忙しいのに、わりーな」
て、いうか東堂も知ってんの?
「いえいえ、あんたにはダンスでしごかれてるしね」
「おまえ、動きがロボットなんだよ」
「ヒップホップとかはできるんだけどねー」
美花が簡単なステップを踏むのを見て、東堂が合わせる。
「おれ、逆だわ。クラシック弾けてもジャズが無理」
「運動会でのあんたと兵馬のソーラン節、ズレてたもんね」
黒歴史が多いなーー、おれ。
「ソーラン節とは?」
トルイストが東堂に尋ねた。
「あっ、こういうやつっす」
東堂は足を開いて、地引網を引くようなポーズをとって繰り返す。
「なかなかしんどそうだな」
訓練になるかー。
「あっ、いいっすね!揃ったら面白いっすよ!」
「えー!ファウラ様がふんどしー!」
「誰がそんなん着てたんだーー」
体操着だよな、と東堂が疲れた顔を見せた。
琉生斗は俯いた。
「すまない。魔法をかける強度を図る為に、自分にはかけられなかった」
「いやいや、変な事ばっか考えてわりーな」
しょうもない事考えてんな、おれーー。
「ルート」
「気にすんな。自分の中の問題だから」
「ルート、私達は家族だ。話せる事は話してくれないか?」
いや、話したくないーー。
はっきりとした拒絶に、アレクセイは動きをとめる。その傷ついた顔を見て、琉生斗は視線を逸らした。
「ーーキス……」
「ルート?」
「キス。おれ、最初勝手にしちゃって悪かったよなー」
アレク意識なかったけどーー。
「嫌かも、って考える間もなかったから、悪かっーー」
琉生斗の唇は塞がれた。
ーーちょ、人前!
ひまわり見に来て何を見せられてんの、という観光客の顔が通り過ぎて行く。
「ーーこれ以上、ルートが愚かな事を言わないように塞いだだけだ」
何だよ、それーー。琉生斗は怪訝な表情を浮かべる。
「私はきみを愛している。きみの内面はもとより、きみの唇も目も、顔も、身体のすべてが愛おしい!」
アレクセイの言葉に、景色が変わる。
目の前の視界がクリアになっていくのを琉生斗は感じた。
「ーー男だから、嫌だったとか、ない?」
「はあ?」
アレクセイの美貌が歪んだ。はじめて見る表情に、琉生斗は目を丸くした。
「女だったらよかったなどと、私が思っていると?」
それは違うよなーー、むしろ積極的なのはアレクの方だったしーー、愛情に嘘はなかったーー。
結局、自分の中の小さなこだわりなんだよな、と琉生斗はアレクセイに身体を預ける。
アレクセイも琉生斗を強く抱きしめようとしてー。
「そんないちゃいちゃするもん?」
呆れた美花の声に、琉生斗はハッとなる。
「他の人が気を使って通れないから、よそでやりなさいよ」
「ーーわりー」
それでも離れない二人に苦笑して、美花はじっとアレクセイを見た。その視線の先が下の方なので、琉生斗は眉を顰めた。
「ーー何見てんだよ?」
「あぁ、ごめんなさい。やっぱり足が長いなーって。でも、王太子より細いのよねー」
琉生斗は首を傾げた。
「肩幅はアレクの方があると思うけど」
「そう、逆三角形って感じよね」
美花は、ふーむ、と唸った。
「ちょっと殿下、立って下さる?」
アレクセイは、不思議そうな顔をしながら立ち上がる。美花はじっと見ている。
身長差が、三十センチ近くありそうだ。
「ーー抱きついちゃ、だめよね?」
美花の言葉に、琉生斗は弾かれたように怒りを見せる。後ろにいたファウラの顔が引きつった。
「ざけんな!おれのアレクだ!」
「わかってるわよー。やっぱり採寸させてもらえます?」
「は?」
「殿下の縫製室にデータ欲しいってお願いしたんですが、駄目だって言われたんで」
「ミハナが、私の服を作るのか?」
「はい!こうみえて裁縫は得意なんですよ。そりゃプロと違って技術はないけど、マーサさん達も手伝ってくれますし」
「なぜ?」
とめようとした琉生斗は、手で口を後ろにいた東堂に塞がれる。
「殿下と琉生斗の結婚式の衣装作っているんです。写真だけでも撮りましょうよ」
ーー琉生斗は、そのときのアレクセイの顔を生涯忘れる事はなかった。
表情はいつものままなのに、深い海の藍色の目が、星のように煌めいた。なんて綺麗なんだろうー、琉生斗はそこから目が離せなくなった。
「いや、ルートが嫌ならー」
「がっつりドレスじゃないから大丈夫よね?」
美花に尋ねられ、琉生斗は覚悟を決めた。
「ーー問題ない」
一度きりの結婚式、女装に近い写真ぐらいどうというのか、琉生斗は吹っ切った。
自分の気持ちより優先したい相手がいる。それは琉生斗の中の過去の亡霊達を吹き飛ばす、エネルギーになっていく。
おまえの為なら、大丈夫だーー、琉生斗は心の中で頷いた。
どうせ将来はスカートだしーー、とは考えない事にしているのだがーー。
「おまえも忙しいのに、わりーな」
て、いうか東堂も知ってんの?
「いえいえ、あんたにはダンスでしごかれてるしね」
「おまえ、動きがロボットなんだよ」
「ヒップホップとかはできるんだけどねー」
美花が簡単なステップを踏むのを見て、東堂が合わせる。
「おれ、逆だわ。クラシック弾けてもジャズが無理」
「運動会でのあんたと兵馬のソーラン節、ズレてたもんね」
黒歴史が多いなーー、おれ。
「ソーラン節とは?」
トルイストが東堂に尋ねた。
「あっ、こういうやつっす」
東堂は足を開いて、地引網を引くようなポーズをとって繰り返す。
「なかなかしんどそうだな」
訓練になるかー。
「あっ、いいっすね!揃ったら面白いっすよ!」
「えー!ファウラ様がふんどしー!」
「誰がそんなん着てたんだーー」
体操着だよな、と東堂が疲れた顔を見せた。
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