ロクイチ聖女 6分の1の確率で聖女になりました。第三部 第四部

濃子

文字の大きさ
上 下
15 / 236
列車は走るよ。何乗せて?編

第14話 列車は走るよ。何乗せて? 5

しおりを挟む
 バッカイア国の国民の歓迎を受けながら、琉生斗達は魔導列車を降りた。異国のきつい香りに琉生斗はくすぐったいものを感じる。

「なんか、ニオイがきつくね?」
 アレクセイに小声で聞くと、そうだな、と返事が返ってきた。

「バッカイア国は香油や香水が盛んな国だ」
「はー」

 たしかに、ラルジュナも香水くさい。だが、ここでは普通のこと。

 おれの鼻がロードリンゲンに染まってんだろうなーー、と琉生斗は思う。

 娯楽の国、バッカイア国が誇る大型遊具施設バスラパーク。ロードリンゲンとは規模が違い、複合遊具の大きさや数、アスレチック、ボルダリングの充実、何よりも客のテンションが高い。

 この時期ならではの水の遊具や、きらびやかな水着の女性に、東堂は興奮して鼻血を出した。
「生きててよかったー」
「おまえは破廉恥な奴だな」

 トルイストが呆れたように言う。

「え!?師団長、興奮しませんか!」
「何をだ?」
「ほら、セクシーな水着のお姉さまがいっぱいですよー」

 東堂は鼻の下を伸ばす。

「自分の女でもないのに、じろじろ見ては失礼だろう」

 トルイストの言葉にファウラも頷いた。

「あー、そうなんすねー」

 こういう国民性なんだなー、さすがは聖女の国だ、と東堂は深く感銘を受けた。

 まあ、あそこに水着の美女の視線をすべて集めるイケメンがいるけど、本人興味のきょの字も無さそうだよなーー。


 アレクセイは琉生斗の為にアイスを買い、琉生斗は嬉しそうにそれを食べていた。アレクセイに食べさせたりして、ちょっとは我慢できないのかあのバカップルは、と魔法騎士達は含み笑いがとまらない。


「あれ、いつまで続くと思います?」
 東堂はトルイストに尋ねた。

「知らん、というかわからないな。殿下のそういう噂は一度も聞いたことがないので、判断ができない」

 生真面目にトルイストが答える。

 この人とも親しくなったよなー、と東堂は思う。こんなくだけた話をする間柄じゃなかったのにーー。

「臣籍降下するなら是非教皇にと、神殿から打診があったそうです」

 ファウラが話す。内情に詳しいのは、王妃ラズベリーから聞いたのかもしれない。

「それぐらい、清らかなのでしょうね」

 おまえ違うのかよ、と東堂は意外そうな目でファウラを見た。美花は女性達と遊具で遊んでいる、これはチャンスだ。

「えっ。大隊長は色々ありましたか?」
 声を顰める。

「それなりにです」
「どっかの令嬢とかですかー?」

「トードォ、そんな訳ないだろ。令嬢なんかに手を出したら、即結婚させられるに決まっている」

「そうですね。難しいんですよ。お付き合いする人って。父にバレたら、邪魔されますしね」
「はー、高貴な人は大変だ。下々は気楽でいいっすね」

 頭をかいた後、東堂はにやりとした。

「じゃあどうすんです?」

 東堂の疑問に、公爵家と侯爵家のご令息は目を見合わせた。

「ーー妓館だな。自国ではなく、それも最高クラスのな」
「口が堅い、病気もない、そこですね」
「付き合うなら婚約させられるからなー」
「極端なんですよね」

 あぁ、やっぱりそうなんだな。向こうでも、偉い奴ほど夜の街に行くもんな、と東堂は納得した。


「じゃあ、きっと殿下も妓館でサクッとしてたんですねー」

 トルイストとファウラが口を噤んだ。何とも判断のできない顔だ。

「我々には何ともーー」
「おまえ、聞いてみたらどうだ?」
 二人が疑問を東堂へぶん投げた。
「機会があったら聞いてみます」


 そのときはぜひ教えてくれーー。






 琉生斗はひまわり畑の中にいた。

 広大な土地に、見渡す限りのひまわりだ。

「ルートは花が好きだな」
「そうかもなー。ばあちゃんがよく、胡蝶蘭とかデンファレとか鉢植えもらうんだけど、世話すんのおれだった」

「ーー花はどうした?」
「近所の人で、欲しい人にあげた。万年筆とか、皿や、服や家具なんかは、学校のバザーに持って行ったら、すげぇー勢いでなくなったよ」

 琉生斗は笑った。

「ーーひとつぐらい、身に付けてたらよかったな」

 何気なく呟く。

 アレクセイが後ろから琉生斗を抱きしめた。

「もう、いい加減痛いカップルだと言われてんぞ」
「言われてもいい。きみとずっとこうしてたい」
「そう?」

 こいつもたいがい変わってんなー、おれの何がいいんだーー。




『加賀にスカート履かせてみないか?』
 中一のときのクラスメイトが言った。

『おお!協力するぜ!履かせて犯してみる?』
『やりたい!』

 ゲラゲラ笑う彼らは、犯す、という言葉が、相手にどれほどの恐怖を与えるか、知らないのだろう。

 無知なウジ虫達め。
 絡んできたクラスメイトを、全員病院送りにして停学になった。

 当時は、あの親父の子供だし仕方がない、と言われていた。暴力を受けて育つと切れやすくなるらしく、その後は切れないように努力した。
 
 自分は自分が思う、理想の自分になってきているのだろうかー。
 
 夜の公園でうずくまるあいつは、どこへいったのだろうーー。






「ルート、ベンチに座ろう。何か食べたいものはないか?」
「あぁ」

 何がいいかなー。

「香水とか盛んだと、味が濃そうだ」
「そうだなー、香辛料がよくきいているな」
「アレクは好き嫌いないなー」

 食べれないのは可哀想だけどーー。琉生斗の言葉に、アレクセイは薄く笑った。

「それどころではなかったからなー」

 自分の事を話すなんて珍しいな、と琉生斗は目を丸くした。

「ルート……」
 静かに見つめられて、琉生斗の胸は早鐘を打つ。
「な、なんだよー」

「何か悩みがあるのか?」


 琉生斗はアレクセイの目をじっと見つめた。何か、自分はおかしかったのだろうか、彼が不安気に見つめるほどにー。

 あっーー!
しおりを挟む
感想 15

あなたにおすすめの小説

婚約破棄された僕は過保護な王太子殿下とドS級冒険者に溺愛されながら召喚士としての新しい人生を歩みます

八神紫音
BL
「嫌ですわ、こんななよなよした男が夫になるなんて。お父様、わたくしこの男とは婚約破棄致しますわ」  ハプソン男爵家の養子である僕、ルカは、エトワール伯爵家のアンネリーゼお嬢様から婚約破棄を言い渡される。更に自分の屋敷に戻った僕に待っていたのは、ハプソン家からの追放だった。  でも、何もかもから捨てられてしまったと言う事は、自由になったと言うこと。僕、解放されたんだ!  一旦かつて育った孤児院に戻ってゆっくり考える事にするのだけれど、その孤児院で王太子殿下から僕の本当の出生を聞かされて、ドSなS級冒険者を護衛に付けて、僕は城下町を旅立った。

悪役令息の伴侶(予定)に転生しました

  *  
BL
攻略対象しか見えてない悪役令息の伴侶(予定)なんか、こっちからお断りだ! って思ったのに……! 前世の記憶がよみがえり、自らを反省しました。BLゲームの世界で推しに逢うために頑張りはじめた、名前も顔も身長もないモブの快進撃が始まる──! といいな!(笑)

【完結】ここで会ったが、十年目。

N2O
BL
帝国の第二皇子×不思議な力を持つ一族の長の息子(治癒術特化) 我が道を突き進む攻めに、ぶん回される受けのはなし。 (追記5/14 : お互いぶん回してますね。) Special thanks illustration by おのつく 様 X(旧Twitter) @__oc_t ※ご都合主義です。あしからず。 ※素人作品です。ゆっくりと、温かな目でご覧ください。 ※◎は視点が変わります。

不遇聖女様(男)は、国を捨てて闇落ちする覚悟を決めました!

ミクリ21
BL
聖女様(男)は、理不尽な不遇を受けていました。 その不遇は、聖女になった7歳から始まり、現在の15歳まで続きました。 しかし、聖女ラウロはとうとう国を捨てるようです。 何故なら、この世界の成人年齢は15歳だから。 聖女ラウロは、これからは闇落ちをして自由に生きるのだ!!(闇落ちは自称)

実はαだった俺、逃げることにした。

るるらら
BL
 俺はアルディウス。とある貴族の生まれだが今は冒険者として悠々自適に暮らす26歳!  実は俺には秘密があって、前世の記憶があるんだ。日本という島国で暮らす一般人(サラリーマン)だったよな。事故で死んでしまったけど、今は転生して自由気ままに生きている。  一人で生きるようになって数十年。過去の人間達とはすっかり縁も切れてこのまま独身を貫いて生きていくんだろうなと思っていた矢先、事件が起きたんだ!  前世持ち特級Sランク冒険者(α)とヤンデレストーカー化した幼馴染(α→Ω)の追いかけっ子ラブ?ストーリー。 !注意! 初のオメガバース作品。 ゆるゆる設定です。運命の番はおとぎ話のようなもので主人公が暮らす時代には存在しないとされています。 バースが突然変異した設定ですので、無理だと思われたらスッとページを閉じましょう。 !ごめんなさい! 幼馴染だった王子様の嘆き3 の前に 復活した俺に不穏な影1 を更新してしまいました!申し訳ありません。新たに更新しましたので確認してみてください!

繋がれた絆はどこまでも

mahiro
BL
生存率の低いベイリー家。 そんな家に生まれたライトは、次期当主はお前であるのだと父親である国王は言った。 ただし、それは公表せず表では双子の弟であるメイソンが次期当主であるのだと公表するのだという。 当主交代となるそのとき、正式にライトが当主であるのだと公表するのだとか。 それまでは国を離れ、当主となるべく教育を受けてくるようにと指示をされ、国を出ることになったライト。 次期当主が発表される数週間前、ライトはお忍びで国を訪れ、屋敷を訪れた。 そこは昔と大きく異なり、明るく温かな空気が流れていた。 その事に疑問を抱きつつも中へ中へと突き進めば、メイソンと従者であるイザヤが突然抱き合ったのだ。 それを見たライトは、ある決意をし……?

我が家に子犬がやって来た!

もも野はち助(旧ハチ助)
ファンタジー
【あらすじ】ラテール伯爵家の令嬢フィリアナは、仕事で帰宅できない父の状況に不満を抱きながら、自身の6歳の誕生日を迎えていた。すると、遅くに帰宅した父が白黒でフワフワな毛をした足の太い子犬を連れ帰る。子犬の飼い主はある高貴な人物らしいが、訳あってラテール家で面倒を見る事になったそうだ。その子犬を自身の誕生日プレゼントだと勘違いしたフィリアナは、兄ロアルドと取り合いながら、可愛がり始める。子犬はすでに名前が決まっており『アルス』といった。 アルスは当初かなり周囲の人間を警戒していたのだが、フィリアナとロアルドが甲斐甲斐しく世話をする事で、すぐに二人と打ち解ける。 だがそんな子犬のアルスには、ある重大な秘密があって……。 この話は、子犬と戯れながら巻き込まれ成長をしていく兄妹の物語。 ※全102話で完結済。 ★『小説家になろう』でも読めます★

魔界最強に転生した社畜は、イケメン王子に奪い合われることになりました

タタミ
BL
ブラック企業に務める社畜・佐藤流嘉。 クリスマスも残業確定の非リア人生は、トラックの激突により突然終了する。 死後目覚めると、目の前で見目麗しい天使が微笑んでいた。 「ここは天国ではなく魔界です」 天使に会えたと喜んだのもつかの間、そこは天国などではなく魔法が当たり前にある世界・魔界だと知らされる。そして流嘉は、魔界に君臨する最強の支配者『至上様』に転生していたのだった。 「至上様、私に接吻を」 「あっ。ああ、接吻か……って、接吻!?なんだそれ、まさかキスですか!?」 何が起こっているのかわからないうちに、流嘉の前に現れたのは美しい4人の王子。この4王子にキスをして、結婚相手を選ばなければならないと言われて──!?

処理中です...