15 / 249
列車は走るよ。何乗せて?編
第14話 列車は走るよ。何乗せて? 5
しおりを挟む
バッカイア国の国民の歓迎を受けながら、琉生斗達は魔導列車を降りた。異国のきつい香りに琉生斗はくすぐったいものを感じる。
「なんか、ニオイがきつくね?」
アレクセイに小声で聞くと、そうだな、と返事が返ってきた。
「バッカイア国は香油や香水が盛んな国だ」
「はー」
たしかに、ラルジュナも香水くさい。だが、ここでは普通のこと。
おれの鼻がロードリンゲンに染まってんだろうなーー、と琉生斗は思う。
娯楽の国、バッカイア国が誇る大型遊具施設バスラパーク。ロードリンゲンとは規模が違い、複合遊具の大きさや数、アスレチック、ボルダリングの充実、何よりも客のテンションが高い。
この時期ならではの水の遊具や、きらびやかな水着の女性に、東堂は興奮して鼻血を出した。
「生きててよかったー」
「おまえは破廉恥な奴だな」
トルイストが呆れたように言う。
「え!?師団長、興奮しませんか!」
「何をだ?」
「ほら、セクシーな水着のお姉さまがいっぱいですよー」
東堂は鼻の下を伸ばす。
「自分の女でもないのに、じろじろ見ては失礼だろう」
トルイストの言葉にファウラも頷いた。
「あー、そうなんすねー」
こういう国民性なんだなー、さすがは聖女の国だ、と東堂は深く感銘を受けた。
まあ、あそこに水着の美女の視線をすべて集めるイケメンがいるけど、本人興味のきょの字も無さそうだよなーー。
アレクセイは琉生斗の為にアイスを買い、琉生斗は嬉しそうにそれを食べていた。アレクセイに食べさせたりして、ちょっとは我慢できないのかあのバカップルは、と魔法騎士達は含み笑いがとまらない。
「あれ、いつまで続くと思います?」
東堂はトルイストに尋ねた。
「知らん、というかわからないな。殿下のそういう噂は一度も聞いたことがないので、判断ができない」
生真面目にトルイストが答える。
この人とも親しくなったよなー、と東堂は思う。こんなくだけた話をする間柄じゃなかったのにーー。
「臣籍降下するなら是非教皇にと、神殿から打診があったそうです」
ファウラが話す。内情に詳しいのは、王妃ラズベリーから聞いたのかもしれない。
「それぐらい、清らかなのでしょうね」
おまえ違うのかよ、と東堂は意外そうな目でファウラを見た。美花は女性達と遊具で遊んでいる、これはチャンスだ。
「えっ。大隊長は色々ありましたか?」
声を顰める。
「それなりにです」
「どっかの令嬢とかですかー?」
「トードォ、そんな訳ないだろ。令嬢なんかに手を出したら、即結婚させられるに決まっている」
「そうですね。難しいんですよ。お付き合いする人って。父にバレたら、邪魔されますしね」
「はー、高貴な人は大変だ。下々は気楽でいいっすね」
頭をかいた後、東堂はにやりとした。
「じゃあどうすんです?」
東堂の疑問に、公爵家と侯爵家のご令息は目を見合わせた。
「ーー妓館だな。自国ではなく、それも最高クラスのな」
「口が堅い、病気もない、そこですね」
「付き合うなら婚約させられるからなー」
「極端なんですよね」
あぁ、やっぱりそうなんだな。向こうでも、偉い奴ほど夜の街に行くもんな、と東堂は納得した。
「じゃあ、きっと殿下も妓館でサクッとしてたんですねー」
トルイストとファウラが口を噤んだ。何とも判断のできない顔だ。
「我々には何ともーー」
「おまえ、聞いてみたらどうだ?」
二人が疑問を東堂へぶん投げた。
「機会があったら聞いてみます」
そのときはぜひ教えてくれーー。
琉生斗はひまわり畑の中にいた。
広大な土地に、見渡す限りのひまわりだ。
「ルートは花が好きだな」
「そうかもなー。ばあちゃんがよく、胡蝶蘭とかデンファレとか鉢植えもらうんだけど、世話すんのおれだった」
「ーー花はどうした?」
「近所の人で、欲しい人にあげた。万年筆とか、皿や、服や家具なんかは、学校のバザーに持って行ったら、すげぇー勢いでなくなったよ」
琉生斗は笑った。
「ーーひとつぐらい、身に付けてたらよかったな」
何気なく呟く。
アレクセイが後ろから琉生斗を抱きしめた。
「もう、いい加減痛いカップルだと言われてんぞ」
「言われてもいい。きみとずっとこうしてたい」
「そう?」
こいつもたいがい変わってんなー、おれの何がいいんだーー。
『加賀にスカート履かせてみないか?』
中一のときのクラスメイトが言った。
『おお!協力するぜ!履かせて犯してみる?』
『やりたい!』
ゲラゲラ笑う彼らは、犯す、という言葉が、相手にどれほどの恐怖を与えるか、知らないのだろう。
無知なウジ虫達め。
絡んできたクラスメイトを、全員病院送りにして停学になった。
当時は、あの親父の子供だし仕方がない、と言われていた。暴力を受けて育つと切れやすくなるらしく、その後は切れないように努力した。
自分は自分が思う、理想の自分になってきているのだろうかー。
夜の公園でうずくまるあいつは、どこへいったのだろうーー。
「ルート、ベンチに座ろう。何か食べたいものはないか?」
「あぁ」
何がいいかなー。
「香水とか盛んだと、味が濃そうだ」
「そうだなー、香辛料がよくきいているな」
「アレクは好き嫌いないなー」
食べれないのは可哀想だけどーー。琉生斗の言葉に、アレクセイは薄く笑った。
「それどころではなかったからなー」
自分の事を話すなんて珍しいな、と琉生斗は目を丸くした。
「ルート……」
静かに見つめられて、琉生斗の胸は早鐘を打つ。
「な、なんだよー」
「何か悩みがあるのか?」
琉生斗はアレクセイの目をじっと見つめた。何か、自分はおかしかったのだろうか、彼が不安気に見つめるほどにー。
あっーー!
「なんか、ニオイがきつくね?」
アレクセイに小声で聞くと、そうだな、と返事が返ってきた。
「バッカイア国は香油や香水が盛んな国だ」
「はー」
たしかに、ラルジュナも香水くさい。だが、ここでは普通のこと。
おれの鼻がロードリンゲンに染まってんだろうなーー、と琉生斗は思う。
娯楽の国、バッカイア国が誇る大型遊具施設バスラパーク。ロードリンゲンとは規模が違い、複合遊具の大きさや数、アスレチック、ボルダリングの充実、何よりも客のテンションが高い。
この時期ならではの水の遊具や、きらびやかな水着の女性に、東堂は興奮して鼻血を出した。
「生きててよかったー」
「おまえは破廉恥な奴だな」
トルイストが呆れたように言う。
「え!?師団長、興奮しませんか!」
「何をだ?」
「ほら、セクシーな水着のお姉さまがいっぱいですよー」
東堂は鼻の下を伸ばす。
「自分の女でもないのに、じろじろ見ては失礼だろう」
トルイストの言葉にファウラも頷いた。
「あー、そうなんすねー」
こういう国民性なんだなー、さすがは聖女の国だ、と東堂は深く感銘を受けた。
まあ、あそこに水着の美女の視線をすべて集めるイケメンがいるけど、本人興味のきょの字も無さそうだよなーー。
アレクセイは琉生斗の為にアイスを買い、琉生斗は嬉しそうにそれを食べていた。アレクセイに食べさせたりして、ちょっとは我慢できないのかあのバカップルは、と魔法騎士達は含み笑いがとまらない。
「あれ、いつまで続くと思います?」
東堂はトルイストに尋ねた。
「知らん、というかわからないな。殿下のそういう噂は一度も聞いたことがないので、判断ができない」
生真面目にトルイストが答える。
この人とも親しくなったよなー、と東堂は思う。こんなくだけた話をする間柄じゃなかったのにーー。
「臣籍降下するなら是非教皇にと、神殿から打診があったそうです」
ファウラが話す。内情に詳しいのは、王妃ラズベリーから聞いたのかもしれない。
「それぐらい、清らかなのでしょうね」
おまえ違うのかよ、と東堂は意外そうな目でファウラを見た。美花は女性達と遊具で遊んでいる、これはチャンスだ。
「えっ。大隊長は色々ありましたか?」
声を顰める。
「それなりにです」
「どっかの令嬢とかですかー?」
「トードォ、そんな訳ないだろ。令嬢なんかに手を出したら、即結婚させられるに決まっている」
「そうですね。難しいんですよ。お付き合いする人って。父にバレたら、邪魔されますしね」
「はー、高貴な人は大変だ。下々は気楽でいいっすね」
頭をかいた後、東堂はにやりとした。
「じゃあどうすんです?」
東堂の疑問に、公爵家と侯爵家のご令息は目を見合わせた。
「ーー妓館だな。自国ではなく、それも最高クラスのな」
「口が堅い、病気もない、そこですね」
「付き合うなら婚約させられるからなー」
「極端なんですよね」
あぁ、やっぱりそうなんだな。向こうでも、偉い奴ほど夜の街に行くもんな、と東堂は納得した。
「じゃあ、きっと殿下も妓館でサクッとしてたんですねー」
トルイストとファウラが口を噤んだ。何とも判断のできない顔だ。
「我々には何ともーー」
「おまえ、聞いてみたらどうだ?」
二人が疑問を東堂へぶん投げた。
「機会があったら聞いてみます」
そのときはぜひ教えてくれーー。
琉生斗はひまわり畑の中にいた。
広大な土地に、見渡す限りのひまわりだ。
「ルートは花が好きだな」
「そうかもなー。ばあちゃんがよく、胡蝶蘭とかデンファレとか鉢植えもらうんだけど、世話すんのおれだった」
「ーー花はどうした?」
「近所の人で、欲しい人にあげた。万年筆とか、皿や、服や家具なんかは、学校のバザーに持って行ったら、すげぇー勢いでなくなったよ」
琉生斗は笑った。
「ーーひとつぐらい、身に付けてたらよかったな」
何気なく呟く。
アレクセイが後ろから琉生斗を抱きしめた。
「もう、いい加減痛いカップルだと言われてんぞ」
「言われてもいい。きみとずっとこうしてたい」
「そう?」
こいつもたいがい変わってんなー、おれの何がいいんだーー。
『加賀にスカート履かせてみないか?』
中一のときのクラスメイトが言った。
『おお!協力するぜ!履かせて犯してみる?』
『やりたい!』
ゲラゲラ笑う彼らは、犯す、という言葉が、相手にどれほどの恐怖を与えるか、知らないのだろう。
無知なウジ虫達め。
絡んできたクラスメイトを、全員病院送りにして停学になった。
当時は、あの親父の子供だし仕方がない、と言われていた。暴力を受けて育つと切れやすくなるらしく、その後は切れないように努力した。
自分は自分が思う、理想の自分になってきているのだろうかー。
夜の公園でうずくまるあいつは、どこへいったのだろうーー。
「ルート、ベンチに座ろう。何か食べたいものはないか?」
「あぁ」
何がいいかなー。
「香水とか盛んだと、味が濃そうだ」
「そうだなー、香辛料がよくきいているな」
「アレクは好き嫌いないなー」
食べれないのは可哀想だけどーー。琉生斗の言葉に、アレクセイは薄く笑った。
「それどころではなかったからなー」
自分の事を話すなんて珍しいな、と琉生斗は目を丸くした。
「ルート……」
静かに見つめられて、琉生斗の胸は早鐘を打つ。
「な、なんだよー」
「何か悩みがあるのか?」
琉生斗はアレクセイの目をじっと見つめた。何か、自分はおかしかったのだろうか、彼が不安気に見つめるほどにー。
あっーー!
89
お気に入りに追加
80
あなたにおすすめの小説

美形×平凡の子供の話
めちゅう
BL
美形公爵アーノルドとその妻で平凡顔のエーリンの間に生まれた双子はエリック、エラと名付けられた。エリックはアーノルドに似た美形、エラはエーリンに似た平凡顔。平凡なエラに幸せはあるのか?
──────────────────
お読みくださりありがとうございます。
お楽しみいただけましたら幸いです。
スキルが【アイテムボックス】だけってどうなのよ?
山ノ内虎之助
ファンタジー
高校生宮原幸也は転生者である。
2度目の人生を目立たぬよう生きてきた幸也だが、ある日クラスメイト15人と一緒に異世界に転移されてしまう。
異世界で与えられたスキルは【アイテムボックス】のみ。
唯一のスキルを創意工夫しながら異世界を生き抜いていく。

息の仕方を教えてよ。
15
BL
コポコポ、コポコポ。
海の中から空を見上げる。
ああ、やっと終わるんだと思っていた。
人間は酸素がないと生きていけないのに、どうしてか僕はこの海の中にいる方が苦しくない。
そうか、もしかしたら僕は人魚だったのかもしれない。
いや、人魚なんて大それたものではなくただの魚?
そんなことを沈みながら考えていた。
そしてそのまま目を閉じる。
次に目が覚めた時、そこはふわふわのベッドの上だった。
話自体は書き終えています。
12日まで一日一話短いですが更新されます。
ぎゅっと詰め込んでしまったので駆け足です。

うるせぇ!僕はスライム牧場を作るんで邪魔すんな!!
かかし
BL
強い召喚士であることが求められる国、ディスコミニア。
その国のとある侯爵の次男として生まれたミルコは他に類を見ない優れた素質は持っていたものの、どうしようもない事情により落ちこぼれや恥だと思われる存在に。
両親や兄弟の愛情を三歳の頃に失い、やがて十歳になって三ヶ月経ったある日。
自分の誕生日はスルーして兄弟の誕生を幸せそうに祝う姿に、心の中にあった僅かな期待がぽっきりと折れてしまう。
自分の価値を再認識したミルコは、悲しい決意を胸に抱く。
相棒のスライムと共に、名も存在も家族も捨てて生きていこうと…
のんびり新連載。
気まぐれ更新です。
BがLするまでかなり時間が掛かる予定ですので注意!
人外CPにはなりません
ストックなくなるまでは07:10に公開
3/10 コピペミスで1話飛ばしていたことが判明しました!申し訳ございません!!

それ以上近づかないでください。
ぽぽ
BL
「誰がお前のことなんか好きになると思うの?」
地味で冴えない小鳥遊凪は、ある日、憧れの人である蓮見馨に不意に告白をしてしまい、2人は付き合うことになった。
まるで夢のような時間――しかし、その恋はある出来事をきっかけに儚くも終わりを迎える。
転校を機に、馨のことを全てを忘れようと決意した凪。もう二度と彼と会うことはないはずだった。
ところが、あることがきっかけで馨と再会することになる。
「本当に可愛い。」
「凪、俺以外のやつと話していいんだっけ?」
かつてとはまるで別人のような馨の様子に戸惑う凪。
「お願いだから、僕にもう近づかないで」

拝啓お父様。私は野良魔王を拾いました。ちゃんとお世話するので飼ってよいでしょうか?
ミクリ21
BL
ある日、ルーゼンは野良魔王を拾った。
ルーゼンはある理由から、領地で家族とは離れて暮らしているのだ。
そして、父親に手紙で野良魔王を飼っていいかを伺うのだった。

婚約破棄されたショックで前世の記憶&猫集めの能力をゲットしたモブ顔の僕!
ミクリ21 (新)
BL
婚約者シルベスター・モンローに婚約破棄されたら、そのショックで前世の記憶を思い出したモブ顔の主人公エレン・ニャンゴローの話。

せっかく美少年に転生したのに女神の祝福がおかしい
拓海のり
BL
前世の記憶を取り戻した途端、海に放り込まれたレニー。【腐女神の祝福】は気になるけれど、裕福な商人の三男に転生したので、まったり気ままに異世界の醍醐味を満喫したいです。神様は出て来ません。ご都合主義、ゆるふわ設定。
途中までしか書いていないので、一話のみ三万字位の短編になります。
他サイトにも投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる