ロクイチ聖女 6分の1の確率で聖女になりました。第三部 第四部

濃子

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列車は走るよ。何乗せて?編

第10話 列車は走るよ。何乗せて? 1

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 別日に設けた海水浴も、大賑わいだった。

 国王夫妻も参加し、パボンも子供連れでやって来て、しっかりとお父さんしていた。

 良い父親だな、と琉生斗は感心する。まぁ、自分の父親と比べると誰でも良い父親なのだろうがーー。

 東堂は魔法騎士候補生を引率し、始終危険のないように目を光らせていた。



 海水浴の次は納涼会である。

 こちらも屋台の出店や、企画などで忙しい琉生斗であったのだが、それとは別にあることに頭を悩ませていた。


「仮縫いは終わったから、次からは本縫いね」
「はい!本当に、なんてお綺麗なんでしょうー」

「ちょっとずつしか出来ないけど、殿下の誕生日には間に合わせないとーー」

 美花とマーサが、自分を見てうっとりしている。いや、自分ではない。自分達が作る純白の衣装にだ。

 純白の衣装は、琉生斗に合わせたウエディングドレスだ。襟は立襟だがレース素材で、肩や腕もレースだ。胸からは切り替えられているが、純白の生地に銀の刺繍が入るらしい。

 ズボンは履かせてもらえるが、上着は後ろ裾がふんわり膨らみ、腰から幾重にも布を重ねていく。

「ーー完全にスカートだろー」

 もう、やめようやーー、と心底嫌そうな顔をするが、二人には通じない。

 もう一着マネキンが着ている衣装は、漢服のアレンジだ。まあ、あっちならなんとかーー。

「絶対にやんない」
 服を脱ごうとした琉生斗に美花が言う。

「写真だけは撮りなさいよ」

 きつく言われる。

「何でだ?」
「あんた、結婚は一回きりなんでしょ?向こうだってそうなら、殿下は結婚式できないのよ」

 そんなのかわいそうじゃない、と美花は続けた。

「あんただって我慢してる事あるでしょうけど、きっと向こうだって、言いたい事言えずに我慢してるわよ。これから弟も結婚するのよ。羨ましい、って思ったりするわ」

 だからせめて、と美花は強く語った。

 琉生斗は下を向いた。

 アレクは結婚式したかったのかなーー、気にした事なかったけどーー。

 





「ルート。明日はヒョウマと一緒に鉄道を見に行くがルートはどうする?」
「場所は?」
「バッカイアのバスラ領にある車庫だ」

 琉生斗は固まった。妻の様子にアレクセイが目を細める。

「ーーそれって、向こうの王太子さんは、来るの?」

 アレクセイは首を振った。

「明日は来ないそうだ。試運転の日は何があっても行くと言っていたが」

「そ、そうか」

 顔を合わせるの気まずいだろうなーー、と琉生斗が考えていると、アレクセイの美しい瞳がすぐ近くにあった。

「やはり、何かあったのだなー?」

 視線が厳しい。

「あー、やー、うー?」

 琉生斗は視線を横にしたが、頬を押さえられる。

「うー、まあ、おまえには言っといた方がいいかーー」

 実はなーー、

「兵馬、ラルジュナさんと、やっちゃったんだって」

 アレクセイは目を開いたまま、沈黙した。

「あいつも、両親、特に父親からの拒絶がこたえたんだろうなー。しょげちゃって、ラルジュナさんのとこ行ったそうなんだよ。ほら、あの人励ますのとかうまそうじゃん」

 楽しく騒いじゃおー、みたいな。

「ーー襲ったのか」

「違うみたい。合意の上だって」

「ーーつい最近の打ち合わせではそんな感じはなかったが」

「一回きりだって。遊びでもなくて、後は普通にしましょう、なんだと」

 ほんとあのタレ目、と琉生斗は肩を怒らせた。

「ーーそうか……」
「言い方悪いけど、弱ってる人間に優しくすりゃ、大抵は落ちるよな。あの人そういう人か?」

 アレクセイは首を振る。

「ああ見えて真面目な男だ」


 危ないのはむしろアスラーンの方なのだがーー。


「そうなんだーー。試運転の日はおれも行くから、明日は兵馬よろしくな」
「わかった」 

 話が終わり琉生斗からキスをする。抱き抱えてソファに横たえられ、強く深く唇でつながる。

「なあーー」
「どうした?」
「もし、だけどーー、おれが女だったらどうだった?」

 アレクセイは琉生斗の顔をまじまじと見る。返事に困ったような彼の顔を見て、琉生斗は質問を取り消した。

「あぁ、やっぱりなし。変な事聞いて、ごめん!」

 琉生斗はアレクセイの服を脱がしながら、首すじにキスをした。肩の傷にも念入りに唇を這わせる。

「ーー何か悩みが?」
「ーーないよ」

 大事にしよう、と琉生斗は思った。

 おれの大事なアレクを、大切にしよう、と琉生斗は誓った。
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