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海水浴に行きましょう。編
第7話 海水浴に行きました。1☆
しおりを挟むーーあったまきたー!
海水浴から帰った後、足腰が立たない琉生斗は、アレクセイに身体を洗ってもらい、ベッドに横たえてもらったのだがーー。
その間、琉生斗は終始むすっとしていた。しかし、旦那様にはその攻撃は効かなかったらしい。
ベッドの中でシルクブランケットでガードしているにもかかわらず、それをはいでキスしてくるのだからー。
「嫌だ」
きっぱりと断るも、アレクセイは不思議そうな顔をした。
「キスは話が別だ。これは儀式のようなものだ」
「ふんだ。今日は何を言われてもいやだ!」
と、勢いよくそっぽ向いた。
「ーーそうか……」
アレクセイは寂しげな声色で、布団の中に入った。その声を聞いて、琉生斗は慌てた。
「いや、だけども、き、キスはしなきゃなー、そうだよなー。うん」
「いいのか?」
下手に出られると、どうしていいかわからない。
「う、うん。キスして……」
アレクセイの深い海の藍色の瞳が潤むのを見て、琉生斗は断ることに罪悪感にも似た気持ちを抱いてしまった。
「ルート…」
見惚れるほど形の良い唇が、琉生斗の唇と重なり、つながりはじめるー。
「あっ……」
喘いでしまったのは自分だ。アレクセイのキスが優しく、気持ちよすぎてーー。
「信じらんねー」
琉生斗はボヤく。
何やってんだ自分。
イケメンほどスカした顔して絶倫て、町子が言ってたのは本当なのかー。
力強い日が差し込んでくる。
「昼に近いなーー」
布団から起きあがる。腰がだるすぎて仕方がない。ただ、孔の中のお掃除はすまされている。本当に色々腹ただしい。
「ーールート、起きたか?」
気配に気づいたのか、涼しい顔のアレクセイが、琉生斗の着替えを持って寝室に入ってきた。
「あぁ」
キスをされる。そのまま押し倒される。
「違う!違う!何なんだよ!」
必死に押し返すが、怖いぐらいびくともしない。おれいちお男なんで、わりと力はあるんだけどー。
「わかっている」
優しく髪の毛を撫でられる。
本当にアレクは、このテンションでいつまでいく気なんだろーー。自分が二十歳過ぎたら落ち着くかなー。
急に落ち着かれても悲しいのだが、ここまで愛されるのもどうかと思う。
「愛している」
「おれも愛しているよ」
力では勝てないので、押してダメなら引いてみろ、とキスに応じる……。
「ーーだから、もう何でこうなんだよ!」
完全に琉生斗はキレた。
「すんなり入ってしまったから……」
「そりゃ、昨日からフルスロットルだからな!」
もう、一緒にいるのが駄目なんだ。いまの時期、幸いにも魔蝕が少ない。
もう、家出してやる!
琉生斗は荷物をまとめ、とりあえず、というか、やはりここに行った。
「じいちゃん、もう今日は匿ってよ~」
メソメソと鳴き真似をし、教皇ミハエルを泣き落とそうとする。
「絶対に泊まるんだから!追い出されてもテント張るんだからーー」
「はいはい、落ちついて。そんなにただれきってるのに何が不満なんです?」
「ただれきってることがだ!」
ほぉ、とミハエルは目を丸くした。
「ようやく心を入れ替えて、真っ当な聖女になる決意をなされたわけですな」
「ーーおれは真っ当な聖女じゃなかったのか」
ミハエルの言葉に、琉生斗は脱力した。
「そうですねー。来年にはカレンがいなくなりますしねー」
ミハエルは涙ぐんだ。後ろで控えていたイワンとドミトリーは声をあげて泣き出した。
「ほ、本当に寂しいことですーー……」
ミハエルはイワンから受け取ったハンカチで涙を拭う。イワンとドミトリーはお互いを励ましあっている。
何だこりゃーー?
「じいちゃん、おれにはそんな態度とらないのに」
琉生斗がぶーたれると、ミハエルは咳払いした。
「結婚を決めたのは聖女様ですよ。私はなんと言いましたか?」
「ーー不貞を働かず夫に尽くせ、と」
「はい、その通り!帰って殿下に謝りなさい!」
「なんでおれがーー」
琉生斗は泣きながら神殿を後にした。
「東堂!頼むよ、ちょっと今日泊めてくれよ!」
訓練中の東堂は琉生斗を見て、きょとんとしている。
「嫌だ」
はっきりと断られる。
「なんでだよ!」
「俺は自分の生命がかわいい」
その場にいた魔法騎士達は、東堂の言葉に深く頷いた。
「まあ、そう言うなよ。ほら、お好み焼き焼いてやるから」
琉生斗は胃袋を懐柔することにした。
「うっそ!まじまじ!食べさせてくれんのかよ!」
「おうよ。厨房借りるぜ。キャベツ切ってくれ」
琉生斗は男子宿舎の厨房を借りてお好み焼きを作り出した。
「モロフ、豚肉薄切りで」
「はい!」
「トルさん、粉混ぜて」
「ーーはいはい」
巻き込まれたトルイストは、心底嫌そうな顔をしている。
「なかなか、大変だよな!」
東堂はひたすらキャベツを切る。
「こんなにキャベツ使うのか?」
「使うんだよー」
海水浴で使った鉄板を用意して、琉生斗はお好み焼きを焼きはじめた。
「卵を割って~♪いれましょう~♫」
陽気に歌を歌いながら、大量に作っている。
「おっ、いい焼き色だな。東堂、ソースとマヨネーズ」
アレクセイが屋台用に熟成してくれたソースを、無断で使用する。
「えー!すげぇーな!まじ売りもんみてー!」
「西にはじいちゃんとよく行ったんだよ」
「ほおん。旅行でか?」
「そうだな。金曜日の夜に飛行機乗ってホテルで寝て、次の日は一日遊んでた。んで、夜に帰って日曜日は一日習い事ざんまいよ」
「じいさんとは仲良かったのか?」
「んー、荷物持ちや、買い物係だな。まあ家にいると親父と遭遇する確率があがるから、おれ基本家にいなかったしな」
なんというか過去の闇が深いのに、ケロッとしてるよなーー、と東堂は不思議でしょうがない。
「すっごい!美味しいですよ!」
モロフや若い魔法騎士達が大喜びで食べている。
「東堂!キャベツが足りねえぞ!」
「まだ、切るのかよ!」
「ソニーさん達にも持っていかなきゃ」
兵馬いわく、こういうところが聖女なんだよーー、と東堂も同じ思いだ。
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