ロクイチ聖女 6分の1の確率で聖女になりました。第三部 第四部

濃子

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海水浴に行きましょう。編

第1話 海水浴に行きましょう。1 ☆

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「ねえ、アリョーシャー」

 十一のとき留学先のアジャハン王立学院で仲良くなったその友は、自分のことをアリョーシャと呼ぶ。

「何だ?」

 書類にサインをしながら、アレクセイは尋ねた。

「何で今日はヒョウマじゃないのー?」
「勉強をしたいそうだ」
「真面目だねー。暑いから冷たい物でも食べようと思ったのになー」

 ラルジュナは窓の外を見た。

「良い景色だよねー」

 アレクセイは首を傾げた。何か新築の建物があっただろうかーー。

「そうだー。ボクね、お見合いするんだー」

 目を細めてアレクセイはラルジュナを見た。

「ーーお見合い……」
「うん、秋にねー。パパの薦めでさー」
「ーーそうか」

「決まったとしても、春は世界聖女連盟もあるしー、次はうちが開催国だから忙しいんだよねー。それが終わった五月か六月かなー」

 ラルジュナは明るく言った。

「ーーいいのか?」
「何が?」
「ーーいや……」
「ああ、ヒョウマのことー?側室は大歓迎だよー!」

 笑うラルジュナの胸ぐらをアレクセイは掴んだ。首にかけられた金のネックレスがちぎれる。装飾品のイエローダイヤモンドが床に散らばっていく。

「ーーやめてよー、お気に入りだったのにー」

 がっかりしたように、ラルジュナは眉をしかめた。

「それはすまない」

 アレクセイは手を離した。

「失礼する」
「ゆっくりしたらいいのにー」

 返事もせずにアレクセイは王太子の私室を出た。


 彼は王太子だ。そんな事はわかっている。


「なぜだろうな、ラルジュナ。おまえが泣いているように見えるのは……」 


 彼は本心を語らない。アレクセイにはそれもわかっていたーー。

「秋かーー」
 日差しの眩しさにアレクセイは目を伏せた。
 












 
「ルート!久々だな!」

「おぅ、セージ。元気だったか?アジャハンはどうだよ?」



 留学中のセージが、琉生斗を見つけて駆け寄ってきた。背は伸びていないが、顔つきがしっかりしたように見える。

「あー、勉強ばっかで嫌になるぜ!なあ、ルート、海好きなんだろ?一緒に行こうぜ!」

 セージがまとわりつく。

「海かー、いいなぁ。近くなのか?」
「オランジーに親父のプライベートビーチがある」

 さすが、ってそりゃそうだよなーー。

「アレク行けるかな」
「はあ?兄ちゃんはいいよ。絶対誘うなよ!」
「いや、そう言うわけにはいかねえよ。護衛だし」
「オレがいるじゃん」

 秘密で出かけたいのに、あんなのいらねえわーー。

「おまえを信用してないわけじゃない。だけど、おまえだって近衛兵がつく身じゃないか」

 痛いところを指摘される。

「仕方ねー。ルートのダチと一緒ならいいんだろ?」

「あぁ、東堂とかー、兵馬かー」

 兵馬は護衛としてはないが。

「兄ちゃんはなしだ!絶対だぜ!」

 兄ちゃん、ってわりと親しみがこもっているような気がしないでもないがー、琉生斗は苦笑した。

「正直に言えば許してくれるかなー」
  









 そんな訳がなかったーー。

「ちょ、ちょっとーー」

 セージ達と海に行ってきてもいいか?と尋ねた途端にベッドに直行され、服を脱がされる。

 琉生斗は無言で抱かれながら、自分だけ恥ずかしい喘ぎ声をあげた。

「あっ、あん!ひゃん!」

 耳を噛まれ、変に声がひっくり返ってしまい、赤面する。片足をアレクセイの肩にかけられ、身体の隙間もなくアレを挿し込まれる。

「いて!い、いきなり、ひどくねー?」

 風呂で準備はしてきたが、一気に挿れられ、身体がのけぞろうと動く。びくびくするそこの快感から逃げようとしたが、アレクセイの腕がそれを許さない。何よりずっと無言を貫いている。

「な、何か言えよーー」

 あー、動かすなよー、いきなりそこ突くなよー、と色々言いたいが、琉生斗は空気を読んだ。

「おれが、悪かったからー」
 抱きしめて、頬ずりをする。
 わりとこれで機嫌がなおるんだがーー。

「ーーーーー」
 アレクセイは無言を貫き、琉生斗を抱いた。



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 最後まで読んでいただき、いつもありがとうございます。番外編のようなお話からスタートです。兵馬とラルジュナ編はもう少しお待ち下さい。楽しみにして下さった方(いたら嬉しいです!)申し訳ありません! 濃子。
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