ロクイチ聖女 6分の1の確率で聖女になりました。第三部 第四部

濃子

文字の大きさ
上 下
2 / 235
海水浴に行きましょう。編

第1話 海水浴に行きましょう。1 ☆

しおりを挟む

「ねえ、アリョーシャー」

 十一のとき留学先のアジャハン王立学院で仲良くなったその友は、自分のことをアリョーシャと呼ぶ。

「何だ?」

 書類にサインをしながら、アレクセイは尋ねた。

「何で今日はヒョウマじゃないのー?」
「勉強をしたいそうだ」
「真面目だねー。暑いから冷たい物でも食べようと思ったのになー」

 ラルジュナは窓の外を見た。

「良い景色だよねー」

 アレクセイは首を傾げた。何か新築の建物があっただろうかーー。

「そうだー。ボクね、お見合いするんだー」

 目を細めてアレクセイはラルジュナを見た。

「ーーお見合い……」
「うん、秋にねー。パパの薦めでさー」
「ーーそうか」

「決まったとしても、春は世界聖女連盟もあるしー、次はうちが開催国だから忙しいんだよねー。それが終わった五月か六月かなー」

 ラルジュナは明るく言った。

「ーーいいのか?」
「何が?」
「ーーいや……」
「ああ、ヒョウマのことー?側室は大歓迎だよー!」

 笑うラルジュナの胸ぐらをアレクセイは掴んだ。首にかけられた金のネックレスがちぎれる。装飾品のイエローダイヤモンドが床に散らばっていく。

「ーーやめてよー、お気に入りだったのにー」

 がっかりしたように、ラルジュナは眉をしかめた。

「それはすまない」

 アレクセイは手を離した。

「失礼する」
「ゆっくりしたらいいのにー」

 返事もせずにアレクセイは王太子の私室を出た。


 彼は王太子だ。そんな事はわかっている。


「なぜだろうな、ラルジュナ。おまえが泣いているように見えるのは……」 


 彼は本心を語らない。アレクセイにはそれもわかっていたーー。

「秋かーー」
 日差しの眩しさにアレクセイは目を伏せた。
 












 
「ルート!久々だな!」

「おぅ、セージ。元気だったか?アジャハンはどうだよ?」



 留学中のセージが、琉生斗を見つけて駆け寄ってきた。背は伸びていないが、顔つきがしっかりしたように見える。

「あー、勉強ばっかで嫌になるぜ!なあ、ルート、海好きなんだろ?一緒に行こうぜ!」

 セージがまとわりつく。

「海かー、いいなぁ。近くなのか?」
「オランジーに親父のプライベートビーチがある」

 さすが、ってそりゃそうだよなーー。

「アレク行けるかな」
「はあ?兄ちゃんはいいよ。絶対誘うなよ!」
「いや、そう言うわけにはいかねえよ。護衛だし」
「オレがいるじゃん」

 秘密で出かけたいのに、あんなのいらねえわーー。

「おまえを信用してないわけじゃない。だけど、おまえだって近衛兵がつく身じゃないか」

 痛いところを指摘される。

「仕方ねー。ルートのダチと一緒ならいいんだろ?」

「あぁ、東堂とかー、兵馬かー」

 兵馬は護衛としてはないが。

「兄ちゃんはなしだ!絶対だぜ!」

 兄ちゃん、ってわりと親しみがこもっているような気がしないでもないがー、琉生斗は苦笑した。

「正直に言えば許してくれるかなー」
  









 そんな訳がなかったーー。

「ちょ、ちょっとーー」

 セージ達と海に行ってきてもいいか?と尋ねた途端にベッドに直行され、服を脱がされる。

 琉生斗は無言で抱かれながら、自分だけ恥ずかしい喘ぎ声をあげた。

「あっ、あん!ひゃん!」

 耳を噛まれ、変に声がひっくり返ってしまい、赤面する。片足をアレクセイの肩にかけられ、身体の隙間もなくアレを挿し込まれる。

「いて!い、いきなり、ひどくねー?」

 風呂で準備はしてきたが、一気に挿れられ、身体がのけぞろうと動く。びくびくするそこの快感から逃げようとしたが、アレクセイの腕がそれを許さない。何よりずっと無言を貫いている。

「な、何か言えよーー」

 あー、動かすなよー、いきなりそこ突くなよー、と色々言いたいが、琉生斗は空気を読んだ。

「おれが、悪かったからー」
 抱きしめて、頬ずりをする。
 わりとこれで機嫌がなおるんだがーー。

「ーーーーー」
 アレクセイは無言を貫き、琉生斗を抱いた。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
 最後まで読んでいただき、いつもありがとうございます。番外編のようなお話からスタートです。兵馬とラルジュナ編はもう少しお待ち下さい。楽しみにして下さった方(いたら嬉しいです!)申し訳ありません! 濃子。
しおりを挟む
感想 15

あなたにおすすめの小説

婚約破棄された僕は過保護な王太子殿下とドS級冒険者に溺愛されながら召喚士としての新しい人生を歩みます

八神紫音
BL
「嫌ですわ、こんななよなよした男が夫になるなんて。お父様、わたくしこの男とは婚約破棄致しますわ」  ハプソン男爵家の養子である僕、ルカは、エトワール伯爵家のアンネリーゼお嬢様から婚約破棄を言い渡される。更に自分の屋敷に戻った僕に待っていたのは、ハプソン家からの追放だった。  でも、何もかもから捨てられてしまったと言う事は、自由になったと言うこと。僕、解放されたんだ!  一旦かつて育った孤児院に戻ってゆっくり考える事にするのだけれど、その孤児院で王太子殿下から僕の本当の出生を聞かされて、ドSなS級冒険者を護衛に付けて、僕は城下町を旅立った。

【BL】こんな恋、したくなかった

のらねことすていぬ
BL
【貴族×貴族。明るい人気者×暗め引っ込み思案。】  人付き合いの苦手なルース(受け)は、貴族学校に居た頃からずっと人気者のギルバート(攻め)に恋をしていた。だけど彼はきらきらと輝く人気者で、この恋心はそっと己の中で葬り去るつもりだった。  ある日、彼が成り上がりの令嬢に恋をしていると聞く。苦しい気持ちを抑えつつ、二人の恋を応援しようとするルースだが……。 ※ご都合主義、ハッピーエンド

悪役令息の伴侶(予定)に転生しました

  *  
BL
攻略対象しか見えてない悪役令息の伴侶(予定)なんか、こっちからお断りだ! って思ったのに……! 前世の記憶がよみがえり、自らを反省しました。BLゲームの世界で推しに逢うために頑張りはじめた、名前も顔も身長もないモブの快進撃が始まる──! といいな!(笑)

実はαだった俺、逃げることにした。

るるらら
BL
 俺はアルディウス。とある貴族の生まれだが今は冒険者として悠々自適に暮らす26歳!  実は俺には秘密があって、前世の記憶があるんだ。日本という島国で暮らす一般人(サラリーマン)だったよな。事故で死んでしまったけど、今は転生して自由気ままに生きている。  一人で生きるようになって数十年。過去の人間達とはすっかり縁も切れてこのまま独身を貫いて生きていくんだろうなと思っていた矢先、事件が起きたんだ!  前世持ち特級Sランク冒険者(α)とヤンデレストーカー化した幼馴染(α→Ω)の追いかけっ子ラブ?ストーリー。 !注意! 初のオメガバース作品。 ゆるゆる設定です。運命の番はおとぎ話のようなもので主人公が暮らす時代には存在しないとされています。 バースが突然変異した設定ですので、無理だと思われたらスッとページを閉じましょう。 !ごめんなさい! 幼馴染だった王子様の嘆き3 の前に 復活した俺に不穏な影1 を更新してしまいました!申し訳ありません。新たに更新しましたので確認してみてください!

僕がハーブティーを淹れたら、筆頭魔術師様(♂)にプロポーズされました

楠結衣
BL
貴族学園の中庭で、婚約破棄を告げられたエリオット伯爵令息。可愛らしい見た目に加え、ハーブと刺繍を愛する彼は、女よりも女の子らしいと言われていた。女騎士を目指す婚約者に「妹みたい」とバッサリ切り捨てられ、婚約解消されてしまう。 ショックのあまり実家のハーブガーデンに引きこもっていたところ、王宮魔術塔で働く兄から助手に誘われる。 喜ぶ家族を見たら断れなくなったエリオットは筆頭魔術師のジェラール様の執務室へ向かう。そこでエリオットがいつものようにハーブティーを淹れたところ、なぜかプロポーズされてしまい……。   「エリオット・ハワード――俺と結婚しよう」 契約結婚の打診からはじまる男同士の恋模様。 エリオットのハーブティーと刺繍に特別な力があることは、まだ秘密──。

結婚式当日に「ちょっと待った」されたので、転生特典(執事)と旅に出たい

オオトリ
BL
とある教会で、今日一組の若い男女が結婚式を挙げようとしていた。 今、まさに新郎新婦が手を取り合おうとしたその時――― 「ちょっと待ったー!」 乱入者の声が響き渡った。 これは、とある事情で異世界転生した主人公が、結婚式当日に「ちょっと待った」されたので、 白米を求めて 俺TUEEEEせずに、執事TUEEEEな旅に出たい そんなお話 ※主人公は当初女性と婚約しています(タイトルの通り) ※主人公ではない部分で、男女の恋愛がお話に絡んでくることがあります ※BLは読むことも初心者の作者の初作品なので、タグ付けなど必要があれば教えてください ※完結しておりますが、今後番外編及び小話、続編をいずれ追加して参りたいと思っています ※小説家になろうさんでも同時公開中

寄るな。触るな。近付くな。

きっせつ
BL
ある日、ハースト伯爵家の次男、であるシュネーは前世の記憶を取り戻した。 頭を打って? 病気で生死を彷徨って? いいえ、でもそれはある意味衝撃な出来事。人の情事を目撃して、衝撃のあまり思い出したのだ。しかも、男と男の情事で…。 見たくもないものを見せられて。その上、シュネーだった筈の今世の自身は情事を見た衝撃で何処かへ行ってしまったのだ。 シュネーは何処かに行ってしまった今世の自身の代わりにシュネーを変態から守りつつ、貴族や騎士がいるフェルメルン王国で生きていく。 しかし問題は山積みで、情事を目撃した事でエリアスという侯爵家嫡男にも目を付けられてしまう。シュネーは今世の自身が帰ってくるまで自身を守りきれるのか。 ーーーーーーーーーーー 初めての投稿です。 結構ノリに任せて書いているのでかなり読み辛いし、分かり辛いかもしれませんがよろしくお願いします。主人公がボーイズでラブするのはかなり先になる予定です。 ※ストックが切れ次第緩やかに投稿していきます。

不遇聖女様(男)は、国を捨てて闇落ちする覚悟を決めました!

ミクリ21
BL
聖女様(男)は、理不尽な不遇を受けていました。 その不遇は、聖女になった7歳から始まり、現在の15歳まで続きました。 しかし、聖女ラウロはとうとう国を捨てるようです。 何故なら、この世界の成人年齢は15歳だから。 聖女ラウロは、これからは闇落ちをして自由に生きるのだ!!(闇落ちは自称)

処理中です...