お見合いで等身大の恋をしよう。

濃子

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第5話 お見合いします。

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 夕食のときに、妙子が言った。
「服装はスーツでいいって」
「何が?」
「淡いグレーのスーツがあったでしょ?あれがいいわね」

「あれ、ウエストが入らないわよ」
「なおしておくわ」
「お母さん、全部ゴムにするじゃない~」
「楽ちんでいいわよ」
「絶対さわらないでよ!」
「じゃあ、痩せな!」

「っていうか、お見合いなんか行きません!しばらくひとりで生きてくの!」
「しばらくが一生になるわよ」
「うるさい!」

 言い合う母娘を気にせずに、照夫は食事を楽しんだ。

「大根美味いな~。幸せ~」













 妙子に引っ張られながら、郁海はホテルのレストランに連れて来られた。
「冗談でしょ!」
「本気です。いくちゃんは男を見る目がないもの」
「ーーそれは否定しないけど……」


「あっ、長塚さん~!」
「ああ、武者小路むしゃのこうじさん!」
 レストランのお客が何人か振り返った。頼むから人前で呼ばないで、と郁海は思う。

 何なんだろう、武者小路って。武者小路実篤とは一切関係ないけど。

 こんな名字だから早く結婚したいのもある。

「あらら、娘さん。地味なスーツ着て」

 小太りの身体をスーツに押し込んだ長塚が、郁海を上から下までじっと見た。値踏みするような視線がすごく不愉快だ。
 さっと視線を走らせると、相手の男性が郁海を背にして座っていた。 

 妙子が先に顔を見て、まっ!、と言った。

「上杉さん、こちらが武者小路郁海さん」
 頼むからフルネームはやめて!

 男性がゆっくりと立ちあがる。


 えっーー!

 郁海は目を丸くして、食い入るように男性を見た。
「ーー上杉武琉たけるです。今日は来てくださって、ありがとうございます」

 たくみから助けてくれた男性が、そこには立っていた。
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