ロクイチ聖女 6分の1の確率で聖女になりました。(第一部、第二部、第三部)

濃子

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悪魔が来たりて嘘をつく編

第141話 ヤツが来た!

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 悪魔達はいつ来るのかーー。5月に入ると皆が緊張した顔で毎日を過ごす。ヒリヒリするようなプレッシャーに押しつぶされないように、必死だ。

 早々とロードリンゲンから避難を決めた国民を、アジャハン国や強国バルドが受け入れた。


 そして、その日は来たーー。



「アリョーシャ!来たよ!」
 ラルジュナの怒号が響き、アレクセイは間髪いれずに国の上空に転移した。

 上から黒い塊が落ちてくる。
隕石メテオか!アリョーシャ!結界はまかせて!」
「ああ」
 宙を睨みアレクセイは一瞬で魔力を練った。

超新星スーパーノヴァ

 凄まじい勢いの熱量がぶつかる。
 魔法の威力はアレクセイのほうが上だった。
神の息吹ゴッドブレス
 間髪いれずに魔法を放つ。

 隕石も悪魔達も神の吹かす風に飛ばされていく。アレクセイの領地であるクリシュナ領に飛ばし、そこで戦闘になる。
 すでにアジャハン、バルドの魔法騎士団が待機しているはずだ。
 

「ハオルは!」
「いなかった」
「アスラーン!牢屋を確認して!」
 ラルジュナが精神でアスラーンと通信する。

(ーーわかった)

「ーー牢屋?」
  アレクセイが眉をしかめた。
「あの子に悪魔の印がついてた。そこから出入り可能なんだよ。行くよ!」
「ーーああ」













 ガタンッ!

「ううっ!」
 牢屋にいた金髪の女性が胸を押さえ苦しみだした。
「ーーおい。どうした!」
 兵士が中を覗いて、目を見張る。女性がのたうちまわり、苦しんでいた。

「ーー逃げ、て……」
 息も絶え絶えに女性が言ったときだった。女性の胸あたりからローブ姿の男がでてくる。
 男はにやりと笑いながら手を前に突き出す。

『死ねーー』
 灰色の顔、蛇のような目をした男だ。

『ーー魔神雷』




 結界ーーーー!


 兵士の前に分厚い結界が出現した。
『なにっーー?』
 忌々しそうにハオルが舌打ちをする。何重にも結界が重ねられている。
 そのほとんどが壊されてしまったが、ここまでやれば防げるのだ。

「負けないわよ!ハオル!!!」
 美花が大声で叫んだ。吹き飛んだ牢屋を囲むように神聖ロードリンゲン国の魔法騎士団が立っている。


『ふんっ!悪魔達よ!出てこい!』

  ハオルの足元が暗く光る。不気味な音をたてて悪魔達が飛び出してきた。

「殲滅せよ!」
 ヤヘルが激を飛ばす。

  掛け声とともに魔法騎士達は悪魔達に向かっていく。
 
『魔神嵐』
 ハオルから凄まじい嵐が起こる。


大天使ミカエルの盾!」
 美花が叫ぶ。
 何回使えるかわからないが、最高強度の盾だ。血反吐を吐きながら使えるようになった魔法。


 ただし、発動が遅いーー。
 他の魔法騎士が結界を重ねて助けてくれるのだがーー。

 破られていく。

 あまりの疾さに美花の顔が歪む。



 だが、ーー。

「ハオル、いい面になったねー」
 ラルジュナが美花の前に立ち、魔法陣を無限に出現させていく。

「ーーちょっとは魔封じが効けばいいけど。ミハナ、悪魔は他の騎士にまかせて、アレクセイの防御に専念して」

「はい!」
 打ち合わせ通りに、ここからは美花はアレクセイの補助に入る。その間にも光の槍がハオルめがけて光速で突っ込んでいく。

『ちっ、忌々しいーー!』
 光の槍は黒い霧に変わる。

『魔神槍』

 魔法騎士達の足元に強烈な威力の黒い槍が突き刺さっていく。防ごうにもあまりの数だ。

「よくまあ、それだけ強くなったよね」
 ラルジュナの問いにハオルが答える。

『天才様に褒められるとはなぁ。私の事など見下していたくせに……』

 黒い波が空を切った。魔法を放った瞬間の無防備さに、アレクセイは動いた。

「ぶっ放せ!」
「ああーー」
 ラルジュナの魔法に隠れていたアレクセイは、ハオルの目の前に姿を現し、一閃を振りあげる。

『ぐっ!』
 ハオルがふっ飛んでいく。アレクセイは勢いを殺さずに、剣の攻撃を続ける。


「追いかけるよ!」
「はいっ!」
 美花が気合いをいれるために顔を叩いた。

「ミハナ!どうか、無事で!」 
 斬り合いながらファウラが美花に言葉をかける。
「はいっ!」

「ラルジュナ様!」
 悪魔を斬ったファウラがこちらに飛んできた。

「言わなくても無理なら離脱させる」
「いえ!どうかミハナに、ハオルを殴る機会を与えてやってください!」
 真摯に頭を下げられ、ラルジュナが肩をすくめる。
「ーー予約がいっぱいだけど、ミハナは優先するよ」
「はいっ!がんばりますっ!」



 見ててね、兵馬ーー。


 お姉ちゃん、やるわよ!!!




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