ロクイチ聖女 6分の1の確率で聖女になりました。(第一部、第二部、第三部)

濃子

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魔法騎士大演習とそれぞれの思惑編

第109話 何があるのかわからないのがひと ♡

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 兵馬とラルジュナはアジャハン国にある屋敷に転移した。

「ヒョウマー」
 ラルジュナが兵馬にキスをする。ちゅっ、ちゅっ、とかわいい音が聞こえそうなキスを繰り返し、ラルジュナが離れた。
 兵馬は眼鏡のズレを直す。

「お疲れ様。僕、宴会の準備に行くね」

 騎士服の襟を緩めながら、ラルジュナが不服そうな顔をした。

「もうちょっと反応があってもよくないー?」
「え?」
「ーーヒョウマにはささらなかったみたいだね……」
「ジュナ……」
「ちょっとはドキドキしないのー?」
 顔を寄せられ兵馬はドキリとする。深緑色の騎士服が、似合いすぎてーー。

「…………」

 無言になった兵馬にラルジュナが手を振った。 
「ーーいいよー。忙しいのにごめんねー」

「ーーうん。ごめんね、見ないようにしてたから……」
 兵馬は視線を下に向けた。
「えー!?なにそれひどすぎるよー!」
 片眉をあげて抗議する恋人に、小さな声で告げるーー。
 


「……だって、ジュナ、カッコよすぎるんだもん……」
「えっ?」 
 手で顔を覆いながら兵馬は走りだすが、いきなり転けた。
 もちろん、床にぶつかる前に魔法でとめられ、ラルジュナに抱きあげられる。


「~~~~~」 
 首まで赤くなっている恋人に、ラルジュナは欲情した。
「ーーボク、カッコよかったー?」

 腕の中で兵馬が頷く。

「見れないぐらいー?」
 ソファに腰を下ろして、顔を覆う手をはずした。

「…………」
 真っ赤な顔の兵馬が、ぎゅっと目をつむっている。


「フルコース決定ー♡」
 兵馬の服を脱がせながらラルジュナは笑った。
「じゅ、準備がぁ!」
「みんな仮眠するんだから、急がないよー」
「だ、だって!」


「おとなしく抱かれろ」


 だからー!もうーー!

 激しくキスをされ、兵馬もためらいもなくキスに応じる。舌を絡め合ってお互いに唾液を吸い合う。
 きつく舌を吸われ、兵馬の身体がびくっと震えた。

 ラルジュナの唇がゆっくりと離れていく。兵馬は名残惜しそうな表情を浮かべた。

 優しく髪を撫でた後ーー。

「ーーヒョウマー。ホントにバッカイアの兵士に何もされてない?」
 頬をつかまれ、目をよく見て尋ねられる。

「されてないよ。一番先にジュドーさんが見つけてくれたから……」

 揺らぎはない。嘘ではなさそうだーー。



「ーージュナは後悔してない?」
「え?」
「国を出たこと、僕といることーー」
「なんで後悔するの?」
 心底あきれたような言い方をする彼を、兵馬は横目でうかがうように見た。


「ボクのこと、バカにしすぎだよー」
 軽くデコピンを受けて、兵馬はおでこを押さえる。
「ジュナ……」


「それよりもヒョウマはもっと自分の事心配するようにーー。なんでボクに何も言わずに転移したのー?」

「あ……」
 兵馬は視線を下に向けた。

「なにー?」
「あー、それはーー」
「うんー?」

「…………」
「ヒョウマー?」

「ーージュナ、メイドさん達と話してたから……」

「えっ?」
 ラルジュナが目を丸くした。そのまま目線を上に向ける。

「あー、メイドー?うーんー、付き合って欲しいって言われたから断ったけどー」

「……ジュナはもてるね」
「そこは否定しませんー。でも、こんなにカッコいいのに、ヒョウマ一筋だよー、すごいよねー♡」
 兵馬は目を見張った。

「何ー、疑ってるのー?」
「そういうわけじゃないけど、驚いてーー」

「ねえ、ボクがんばったごほうびが欲しいなー」
「えっと、何がいい?」
 何かいいものがあったかな。向こうのものでラルジュナが好きそうなものは……。

「うん。口でして欲しいなー♡」

「んっ……?」
 

 ーー口でして欲しいなー♡


 つまり。

「ふぇっ!」
 
 兵馬は真っ赤になって倒れたそうだ。

















 演習お疲れ会は大変盛りあがった。皆、大酒飲みばかりで給仕も仕事が忙しかっただろう。
 両国の魔法騎士達はお互いを健闘しあい、再戦を約束した。

「来年は、野球とかどうだ」

 琉生斗の言葉に兵馬が笑う。妻がカニばかり食べるので、アレクセイはラルジュナとどこかへ行ってしまったようだ。

「ルールか浸透するのが大変そうだね」
「あ、そうか。それより、アスラーンさんはどうなんだ?」
「うん?気になるの?」
「いちおうだよ」
「どうにもならないでしょ。あっ、東堂とアス王太子……」

 琉生斗と兵馬がふたりを見ていると、会場の隅のほうで何やら深刻な表情で話をしていた。
「殴り合ったりして」
「そんな、いくら東堂でも……」

 兵馬が、それはないない、と手を振ったそのときーー。


 アスラーンが東堂にキスをした。



「!」

 琉生斗は目をしばたいた。

 一瞬のできごとで、ふたりはすぐに離れる。そのまま、アスラーンがアンダーソニー達のいる席に向かった。


「おいおい、何だ?いまのは?」
 ーーおれの目はまぼろしを見たのか?

「ーーゴミでもついてたに、賭ける?」

 目を見開いた兵馬の言葉に、琉生斗は頷いた。

「うん。きっとそうだな」

 カニをかじる。

 本当に何が起こるかわからないのが、ひとだ。






ーーーーーーーーーーーーーーー

 最後まで読んでいただきありがとうございます。
 いつも乱文を微笑んで見てくださっている天使のようなあなた様。
 次回からは『神殺し編』です。
 ちょっとでも面白いと思っていただけるように、なったらいいな、と思います。
 
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