ロクイチ聖女 6分の1の確率で聖女になりました。(第一部、第二部、第三部)

濃子

文字の大きさ
上 下
324 / 410
魔法騎士大演習とそれぞれの思惑編

第105話 夢に届く

しおりを挟む
 威圧に身がすくむ。

 本当にこれを、自分と同じ歳のヤツがつくったのかーー、東堂は聖剣を構えて呼吸を整えた。
 
 モチーフはドラゴンだろう。巨体にドラゴンの首と、鳥の羽根、尾には鎖のような尻尾がついている。腕からは剣が生えていて、先が黒い。毒でも塗られているのかーー。

「詰め込み過ぎだろ」

「東堂。あたしは魔法封じと、ひたすら攻撃魔法の連射をするから」
「おう、適当に逃げて、いいところでデカいの一発頼むぜ」
「ええ」
 
「後、俺の足元に足場魔法かけといてくれ」
「ーーわかった」
 美花が首を傾げたが、自分と東堂に結界をかけ、足場をつくり、さらに光の矢を出現させた。

「ーーすげぇー!」


 東堂は疾走る。
 走りながらラルジュナの走り方を思い出した。彼は闘技場の足場は一切使っていなかった。魔法の足場を利用して疾走り、飛んでいた。
 それならば足元を気にせずに、いつも同じ条件で戦えるというわけだ。

「賢いよな!ヒョウマの旦那!」
 小石や砂も関係ない。東堂は驚くほどの疾さでデスビーストを斬りつけにいく。

 カキーン!

 腕の剣に塞がれる。反対の腕を気にしながら、滞空時間内に何度か斬りつけ、飛んで下がる。
魔弾マジックバレット!」
 鋭い光がデスビーストを貫く。

「すげー!殿下みてぇー!」

 魔法が終わる前に突っ込み、弱点をさがす。町子の事だ。絶対にわかりにくいに違いない。

「うわぁ!皮膚かてー」
「凍らせてみる!」
 なるほど。
深淵なる氷結ディープフリージング!」
 凍った腕を斬る。

 ガッ!

 硬すぎて弾かれる。深入りせずに離れ、もう一度別の角度から斬りつけた。

「破ぁ!」
 気合斬りじゃ!

 弾かれれば、斬れるまでやる。聖剣の輝きが強くなっていく。
聖なる矢ホーリーアロー!」
 美花の魔法が途切れずにくる。

「おい!無理すんなよ!」
「大丈夫!あたし、魔力だけはあるからぁ!」
 大雷波!

「そりゃうらやましい話だな!」
 魔法を避けて、飛び退る。

「ん?」
 左脇腹をデスビーストが押さえた。

「美花!左側脇腹に猛攻撃!」
「はい!」
 美花が連続で最高位の魔法を撃ち続けた。

 とにかく撃つ。とまってはだめだーー。

 デスビーストの腕が吹っ飛ぶ。脇腹をかばうものがなくなる。
「わっ!」
 東堂の足に鎖が絡んだ。
 聖剣で素早く斬り、すぐに左脇腹を狙って突っ込んでいく。
魔弾マジックバレット!」
 光が走る。デスビーストの左脇腹に穴が開いた。

「おりゃぁ!」
 東堂の剣が完全にデスビーストをとらえた。

 左脇腹から真っ二つに胴体が分かれる。

 ごあああああぁぁぁーーーー。

 不気味な断末魔が響き、デスビーストハードが討伐された。


「やっ、」
「やー」

「「やったぁぁぁ!!!」」

 美花がその場にくずれ、泣きだした。
「おっしゃぁぁ!」
 東堂は大きなパライバトルマリンを拾う。
「おい!泣いてねえで、陣営まで行けるか!」
「ーーうん!」









「ーーそうはさせませんよ!」
「えっーー!」
 東堂は背後からの声に驚愕した。

 竜騎士達が戦闘態勢に入っている。剣をかまえてマルテスが言葉を放つ。

「いただきますよ、その宝石!」

「ーー美花、俺が時間を稼ぐ!」
「でも!陣営前にもいるかもしれない!」
「ありゃー!それもそうか……」

「もちろん、いますよ~」
 タルティンが明るく言う。

「えっ、詰んでんの?これ?」

「あっ、そうだわ!」
 美花が魔法を唱えた。

「はい。東堂、これ飲んで」
「えっ?」
「後で、取り出すから」
「なんで俺がーー」
「保護魔法はかけたけど、くれぐれも下からださないでね」
「ーーはいはい」
 東堂は小さくなった宝石を飲んだ。

「おえっ~。もう少し小さくしてくれよ」
「それより小さくは難しいのよ、段階があるから」
 
 ふたりの行動に、竜騎士達は手も足も出なかった。

「うそー!」
「えっ?」
「どうします?」
「いや、だってーー」

「ふふふっ!殺しはナシだよな?」
 東堂がニカッと笑った。


「俺達、デスビーストハードもう一体いくけど、あんたらどうすんの?」
「え?あれをもう一体?ふたりで?」
 マルテスが呆然と目を開いた。

「まさかーー」


「トードォ!無事かぁ!」
 トルイストが飛んできた。
「ミハナ!怪我はありませんか!」
 ファウラも駆けつけた。
「遅いっすよ!何してたんですか!」

「いや、アジャハンの魔法騎士達を叩いていた」
「もう、彼ら以外いませんよ」

「えっー!」

「さすがっす!」
「すご~い!」
 東堂と美花が喜びの声をあげた。

「「いやいや」」
 トルイストとファウラが頭をかく。
「マリアとエリヤフが見張ってくれていますので」

「じゃあ、心おきなく次いけますね!」
「ああ!」
「行きましょう!最低でも後、三体!」
 ファウラの言葉に東堂は顔を引きつらせた。

「まじっすかぁ!」
「あたしもがんばります!」

 討伐に向かうロードリンゲンの魔法騎士達を見て、竜騎士達は皆顔を赤らめる。

「カッコいい……」
 皆の心を代表して、マルテスがつぶやいた。






しおりを挟む
感想 19

あなたにおすすめの小説

とある文官のひとりごと

きりか
BL
貧乏な弱小子爵家出身のノア・マキシム。 アシュリー王国の花形騎士団の文官として、日々頑張っているが、学生の頃からやたらと絡んでくるイケメン部隊長であるアベル・エメを大の苦手というか、天敵認定をしていた。しかし、ある日、父の借金が判明して…。 基本コメディで、少しだけシリアス? エチシーンところか、チュッどまりで申し訳ございません(土下座) ムーンライト様でも公開しております。

神子の余分

朝山みどり
BL
ずっと自分をいじめていた男と一緒に異世界に召喚されたオオヤナギは、なんとか逃げ出した。 おまけながらも、それなりのチートがあるようで、冒険者として暮らしていく。

一級警備員の俺が異世界転生したら一流警備兵になったけど色々と勧誘されて鬱陶しい

司真 緋水銀
ファンタジー
【あらすじ】 一級の警備資格を持つ不思議系マイペース主人公、石原鳴月維(いしはらなつい)は仕事中トラックに轢かれ死亡する。 目を覚ました先は勇者と魔王の争う異世界。 『職業』の『天職』『適職』などにより『資格(センス)』や『技術(スキル)』が決まる世界。 勇者の力になるべく喚ばれた石原の職業は……【天職の警備兵】 周囲に笑いとばされ勇者達にもつま弾きにされた石原だったが…彼はあくまでマイペースに徐々に力を発揮し、周囲を驚嘆させながら自由に生き抜いていく。 -------------------------------------------------------- ※基本主人公視点ですが別の人視点も入ります。 改修した改訂版でセリフや分かりにくい部分など変更しました。 小説家になろうさんで先行配信していますのでこちらも応援していただくと嬉しいですっ! https://ncode.syosetu.com/n7300fi/ この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。

幼い精霊を預けられたので、俺と主様が育ての父母になった件

雪玉 円記
BL
ハイマー辺境領主のグルシエス家に仕える、ディラン・サヘンドラ。 主である辺境伯グルシエス家三男、クリストファーと共に王立学園を卒業し、ハイマー領へと戻る。 その数日後、魔獣討伐のために騎士団と共に出撃したところ、幼い見た目の言葉を話せない子供を拾う。 リアンと名付けたその子供は、クリストファーの思惑でディランと彼を父母と認識してしまった。 個性豊かなグルシエス家、仕える面々、不思議な生き物たちに囲まれ、リアンはのびのびと暮らす。 ある日、世界的宗教であるマナ・ユリエ教の教団騎士であるエイギルがリアンを訪ねてきた。 リアンは次代の世界樹の精霊である。そのため、次のシンボルとして教団に居を移してほしい、と告げるエイギル。 だがリアンはそれを拒否する。リアンが嫌なら、と二人も支持する。 その判断が教皇アーシスの怒髪天をついてしまった。 数週間後、教団騎士団がハイマー辺境領邸を襲撃した。 ディランはリアンとクリストファーを守るため、リアンを迎えにきたエイギルと対峙する。 だが実力の差は大きく、ディランは斬り伏せられ、死の淵を彷徨う。 次に目が覚めた時、ディランはユグドラシルの元にいた。 ユグドラシルが用意したアフタヌーンティーを前に、意識が途絶えたあとのこと、自分とクリストファーの状態、リアンの決断、そして、何故自分とクリストファーがリアンの養親に選ばれたのかを聞かされる。 ユグドラシルに送り出され、意識が戻ったのは襲撃から数日後だった。 後日、リアンが拾ってきた不思議な生き物たちが実は四大元素の精霊たちであると知らされる。 彼らとグルシエス家中の協力を得て、ディランとクリストファーは鍛錬に励む。 一ヶ月後、ディランとクリスは四大精霊を伴い、教団本部がある隣国にいた。 ユグドラシルとリアンの意思を叶えるために。 そして、自分達を圧倒的戦闘力でねじ伏せたエイギルへのリベンジを果たすために──……。 ※一部に流血を含む戦闘シーン、R-15程度のイチャイチャが含まれます。 ※現在、改稿したものを順次投稿中です。  詳しくは最新の近況ボードをご覧ください。

どこにでもある話と思ったら、まさか?

きりか
BL
ストロベリームーンとニュースで言われた月夜の晩に、リストラ対象になった俺は、アルコールによって現実逃避をし、異世界転生らしきこととなったが、あまりにありきたりな展開に笑いがこみ上げてきたところ、イケメンが2人現れて…。

せっかく美少年に転生したのに女神の祝福がおかしい

拓海のり
BL
前世の記憶を取り戻した途端、海に放り込まれたレニー。【腐女神の祝福】は気になるけれど、裕福な商人の三男に転生したので、まったり気ままに異世界の醍醐味を満喫したいです。神様は出て来ません。ご都合主義、ゆるふわ設定。 途中までしか書いていないので、一話のみ三万字位の短編になります。 他サイトにも投稿しています。

某国の皇子、冒険者となる

くー
BL
俺が転生したのは、とある帝国という国の皇子だった。 転生してから10年、19歳になった俺は、兄の反対を無視して従者とともに城を抜け出すことにした。 俺の本当の望み、冒険者になる夢を叶えるために…… 異世界転生主人公がみんなから愛され、冒険を繰り広げ、成長していく物語です。 主人公は魔法使いとして、仲間と力をあわせて魔物や敵と戦います。 ※ BL要素は控えめです。 2020年1月30日(木)完結しました。

龍の寵愛を受けし者達

樹木緑
BL
サンクホルム国の王子のジェイドは、 父王の護衛騎士であるダリルに憧れていたけど、 ある日偶然に自分の護衛にと推す父王に反する声を聞いてしまう。 それ以来ずっと嫌われていると思っていた王子だったが少しずつ打ち解けて いつかはそれが愛に変わっていることに気付いた。 それと同時に何故父王が最強の自身の護衛を自分につけたのか理解す時が来る。 王家はある者に裏切りにより、 無惨にもその策に敗れてしまう。 剣が苦手でずっと魔法の研究をしていた王子は、 責めて騎士だけは助けようと、 刃にかかる寸前の所でとうの昔に失ったとされる 時戻しの術をかけるが…

処理中です...