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魔法騎士大演習とそれぞれの思惑編
第90話 模擬戦
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「よお!兵馬!」
「東堂、棄権するなら早くしなよ」
「負けてもいい、最後までやりきる事に意味があるんだ!」
ガッツポーズの東堂だ。
「その通りだ、トードォ!勝利など二の次だ!」
背後にいるアスラーンが東堂の肩を叩く。さりげにボディータッチを狙っているようだ。
「え?勝ちたいっすよ!」
東堂の辞書に矛盾という文字はない。
「そうか。トードォは、魔力量がな……」
「そうなんですよ。増えないっすか?」
「増やす方法もあるにはあるんだがーー」
「えっー!あるんすか!」
「方法がな……」
「お願いします!なんでもしますから!」
「な、な、何でも!」
顔を赤らめてアスラーンが言葉を繰り返した。
ラルジュナが吹きだす。
「何、あのアスラーンー、どっかおかしいのー?」
「乙女モードなんだよ」
冷静に琉生斗は返した。
「へぇ、マルテスが心配するわけだー」
にやにや親友を見る。
「さあて、どっちの国が勝つかなー」
関係ないとばかりに、ラルジュナが伸びをした。
「ーーそうだな。参考になるかはわからないが……。見るだけ見てみるか?」
「何をっす?」
「ヒャルパン!アンダーソニー殿!」
「はい、殿下。何かございましたか?」
アジャハン国の魔法騎士団士長ヒャルパンが膝をついた。深緑色の騎士服を着用している。
アンダーソニーもヒャルパンに合わせて膝をつく。今回は色がかぶるため、ロードリンゲン側はすべての騎士が焦げ茶色の騎士服を着用している。
「スタートを遅らせる」
「わかりました。何か不備が?」
「いや」
アスラーンが指を鳴らした。
あらわれたのは広々とした闘技場だ。
「はあ……」
場がざわつく。
困惑する魔法騎士を気にせずに、アスラーンが琉生斗達のいるテントに顔を向ける。
「ラルジュナ、アレクセイと模擬戦をやれ」
「!」
魔法騎士達が驚きに顔を見合わせた。
「ーーやだよー」
「もったいぶらずに、へなちょこなりの戦いをトードォに見せてやれ」
「最悪ー。アレクセイ断ってよ……、アレクセイ?」
ラルジュナが慌てた。
アレクセイが立ちあがり上着を脱いだからだ。
「行くぞ」
黒い上着と白いシャツを琉生斗に渡し、長剣を椅子に立てかける。
黒のインナー姿に女性騎士達が口元を押さえた。
「嘘みたいに、細いーー」
美花がつぶやく。
「うっそぉ~~~!」
ラルジュナが顔を引きつらせた。
琉生斗も突然の事に声をかけられない。
だが、もっと驚いているのは魔法騎士達だ。とりわけ将軍クラスが驚愕に言葉を失っている。
「ルッタマイヤ、剣を貸せ」
「ーーは、はい!」
アレクセイはルッタマイヤが使う少し細身の剣と自身の短剣を持った。
「あー、もうー。ヒョウマ、死んだら泣いてくれるー?」
上着を渡しながらラルジュナが潤んだ目で兵馬を見つめる。こちらは薄い緑色のインナーだ。
「え?瞬殺?」
泣く暇があるのかな?
「ひど~い~。勝ったらキスしてねー♡ーーアスラーン、剣貸してー」
「折るなよ」
「折れるにきまってるよー」
アスラーンから長剣を渡されたラルジュナは、剣を下に持ち、くっと真横になるように持ちあげた。
「ポンメルの位置が悪いよー」
すべるー、とラルジュナが、ぶーぶー、文句を言う。
「おまえは手が小さいからな」
「私のならどうだ」
アレクセイが自分の剣を差しだした。
同じように確認し、ラルジュナは頷く。
「これならいいよー」
「アレクセイも小さい、というより細いからな」
よくまああんな力がでるものだ、とアスラーンがいう台詞に全員が同意した。
アレクセイとラルジュナが闘技場に入った。端と端に立ち、お互いを見る。
両者立っているだけで華がある。その美しい華のある姿には、数少ない女性魔法騎士達や、手伝いにきているメイド達から溜め息がもれた。
ーー一もちろん、男性魔法騎士の中にも、うっとりとあやしげな呼吸を繰り返す奴もいるが……。
アスラーンは琉生斗と兵馬を手招きし、東堂の隣りに立たせた。
「ーー闘技場外への結界は私が張る。準備はいいか?」
両国の魔法騎士達が闘技場のまわりを囲んだ。皆、少しでも前で見ようと押し合う。
「どうぞー」
軽いノリでラルジュナが答えた。
「ああ」
アレクセイが軽く息をつく。
「東堂、棄権するなら早くしなよ」
「負けてもいい、最後までやりきる事に意味があるんだ!」
ガッツポーズの東堂だ。
「その通りだ、トードォ!勝利など二の次だ!」
背後にいるアスラーンが東堂の肩を叩く。さりげにボディータッチを狙っているようだ。
「え?勝ちたいっすよ!」
東堂の辞書に矛盾という文字はない。
「そうか。トードォは、魔力量がな……」
「そうなんですよ。増えないっすか?」
「増やす方法もあるにはあるんだがーー」
「えっー!あるんすか!」
「方法がな……」
「お願いします!なんでもしますから!」
「な、な、何でも!」
顔を赤らめてアスラーンが言葉を繰り返した。
ラルジュナが吹きだす。
「何、あのアスラーンー、どっかおかしいのー?」
「乙女モードなんだよ」
冷静に琉生斗は返した。
「へぇ、マルテスが心配するわけだー」
にやにや親友を見る。
「さあて、どっちの国が勝つかなー」
関係ないとばかりに、ラルジュナが伸びをした。
「ーーそうだな。参考になるかはわからないが……。見るだけ見てみるか?」
「何をっす?」
「ヒャルパン!アンダーソニー殿!」
「はい、殿下。何かございましたか?」
アジャハン国の魔法騎士団士長ヒャルパンが膝をついた。深緑色の騎士服を着用している。
アンダーソニーもヒャルパンに合わせて膝をつく。今回は色がかぶるため、ロードリンゲン側はすべての騎士が焦げ茶色の騎士服を着用している。
「スタートを遅らせる」
「わかりました。何か不備が?」
「いや」
アスラーンが指を鳴らした。
あらわれたのは広々とした闘技場だ。
「はあ……」
場がざわつく。
困惑する魔法騎士を気にせずに、アスラーンが琉生斗達のいるテントに顔を向ける。
「ラルジュナ、アレクセイと模擬戦をやれ」
「!」
魔法騎士達が驚きに顔を見合わせた。
「ーーやだよー」
「もったいぶらずに、へなちょこなりの戦いをトードォに見せてやれ」
「最悪ー。アレクセイ断ってよ……、アレクセイ?」
ラルジュナが慌てた。
アレクセイが立ちあがり上着を脱いだからだ。
「行くぞ」
黒い上着と白いシャツを琉生斗に渡し、長剣を椅子に立てかける。
黒のインナー姿に女性騎士達が口元を押さえた。
「嘘みたいに、細いーー」
美花がつぶやく。
「うっそぉ~~~!」
ラルジュナが顔を引きつらせた。
琉生斗も突然の事に声をかけられない。
だが、もっと驚いているのは魔法騎士達だ。とりわけ将軍クラスが驚愕に言葉を失っている。
「ルッタマイヤ、剣を貸せ」
「ーーは、はい!」
アレクセイはルッタマイヤが使う少し細身の剣と自身の短剣を持った。
「あー、もうー。ヒョウマ、死んだら泣いてくれるー?」
上着を渡しながらラルジュナが潤んだ目で兵馬を見つめる。こちらは薄い緑色のインナーだ。
「え?瞬殺?」
泣く暇があるのかな?
「ひど~い~。勝ったらキスしてねー♡ーーアスラーン、剣貸してー」
「折るなよ」
「折れるにきまってるよー」
アスラーンから長剣を渡されたラルジュナは、剣を下に持ち、くっと真横になるように持ちあげた。
「ポンメルの位置が悪いよー」
すべるー、とラルジュナが、ぶーぶー、文句を言う。
「おまえは手が小さいからな」
「私のならどうだ」
アレクセイが自分の剣を差しだした。
同じように確認し、ラルジュナは頷く。
「これならいいよー」
「アレクセイも小さい、というより細いからな」
よくまああんな力がでるものだ、とアスラーンがいう台詞に全員が同意した。
アレクセイとラルジュナが闘技場に入った。端と端に立ち、お互いを見る。
両者立っているだけで華がある。その美しい華のある姿には、数少ない女性魔法騎士達や、手伝いにきているメイド達から溜め息がもれた。
ーー一もちろん、男性魔法騎士の中にも、うっとりとあやしげな呼吸を繰り返す奴もいるが……。
アスラーンは琉生斗と兵馬を手招きし、東堂の隣りに立たせた。
「ーー闘技場外への結界は私が張る。準備はいいか?」
両国の魔法騎士達が闘技場のまわりを囲んだ。皆、少しでも前で見ようと押し合う。
「どうぞー」
軽いノリでラルジュナが答えた。
「ああ」
アレクセイが軽く息をつく。
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