ロクイチ聖女 6分の1の確率で聖女になりました。(第一部、第二部、第三部)

濃子

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アジャハン国の王太子とラッキースケベについて。編

第80話 浮気者の末路 ☆

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「明日は温水プールだぞ」
 アスラーンのテンションは高い。楽しそうに水着を並べている。
「どうだ、アリョーシャ。これを履くか?」
 キンキラキンのビキニパンツを渡され、アレクセイはラルジュナに流した。

「いらないよー、何これー」
「おまえなら似合いそうだ」

「水着なんか普通でいいよー」

「ふむ。ラルジュナ。おまえはまだ水着の威力を知らないと見えるーー。その分ではセクシーランジェリーの真髄しんずいもわからないのだろうな」

「何言ってんのー?セクシーランジェリーで迫られた事なんか山程あるよー。ほぼ布面積なくて笑えるよね、あれー。まあ、全員、暗殺者だったんだけどねーー」

 ラルジュナがつまらなそうに欠伸をした。

「昨日遅くまで研磨してたから、今日は早く寝たいなー」

「ラルジュナ、藤の花のかんざしを作りたい」
「あー、いいねー」
 空中からスケッチブックを取り出して、ラルジュナがラフ画を描きはじめた。

「ああいう優しい感じにするには、宝石じゃかたいかなー。クリスタルを加工してみようかなー。あー、コーヒーないのー?じゃあ、帰ってやろうー」
 ラルジュナが立ちあがる。

「明日は行けたら行くよー。やりたい事たまってるからー」
「そうか、残念だな」
「またねー」




「ーーアスラーン。子供の前で恥ずかしい真似はするなよ。もし何かするのであればーー」

 アレクセイは念を押した。

「ーー明日、おまえ達はプールには来ない」
 アスラーンが確信したように宣言する。

「ルートが楽しみにしているーー」
 訝しげに眉を寄せて、アレクセイは首を捻った。

「賭けだ。来なければ好きにさせてもらう。だが、おまえ達が来たならば、おとなしくしよう」

「何を仕掛けた?」
 アレクセイは目を細めて親友を睨んだ。

「アリョーシャ、何を仕掛けようが自分は大丈夫と思っているなら、底が浅いぞ。おまえはまだ、二十一の若造だからな」

「ーーほぅ。ずいぶんと自信があるようだな」

「ああ。精々みっともない姿を晒すがいいーー」

 睨み合った二人は、挨拶もなく別れた。
















 ーーその頃、琉生斗と兵馬は大喧嘩をしていた。
「ちょっと!ルートのバカ!信じられない!」
「おいおい、クローゼットが開かないぞ!」
「君が悪いんだよ!簡単にだまされて!なんで服がないんだよ!!!」

「あんな機会、二度とないと思ったんだよ!」

「この浮気者!」

「鞄も開かない!どうすんだよ!」

「僕は転移で帰る!バスタオルは貰うからね!」
 兵馬が琉生斗のバスタオルをはぐ。

「二枚もいらねえだろ!」
「うるさい!ジュナが帰ってくる前に帰る!」


 真っ赤な顔をした兵馬が一瞬で消えると、琉生斗はあわあわとまわりを見まわした。

「あっ!ブランケット!」
 琉生斗はベッドのシルクブランケットをはぎ、自分に巻きつけた。

「いったい、なんでこんな目にーー」


 ガチャリ。


「ぎゃあぁぁぁぁぁぁーーーー!!!」

「どうした?」
  アレクセイが慌てたように琉生斗の近くに寄る。




 ふわっと、甘い香りが部屋を満たしていた。

「ルート」

 妻はシルクブランケットを被ったまま返事もない。

「何をされた?」
 シルクブランケットをはごうとするが、琉生斗が必死で抵抗してきた。

「ちょ、ちょっとお願いだから!ちょっと待って!」

 琉生斗の焦った声にアレクセイは強引にブランケットを奪いーー。





 固まった。
 

「か、返せよーー」

 琉生斗がシースルーのナイトローブを着ていた。自分を抱きしめるようにし、顔をそむけている。
 それだけでも色っぽいのに、極めつけは下着が白のレースだ。

「見んなって……」
 恥ずかしいのか、いつもの元気がない。
「ルート……」

 アレクセイは優しくキスをした。それから、しばらくの間、琉生斗の姿をじっと眺める。特に透けて見える煽情的せんじょうてきなレースの下着を、よく見た。

「こんなの、完全にアウトだよな……」

 泣きそうな声の琉生斗に、アレクセイは我に返る。

「着替えさせられたのか?」
「ーーこっちの作法だって……」
「何か塗られたのかー」
「肌がかたいって、ゴリゴリに揉まれたよーー。吸い付くような玉の肌って、なんだよー」

 男だっつうの。

「ルート。先に謝っておく」
「え?何を?」

 笑うのかーー。




「今夜は寝かさない」
「え!なんで!」
 琉生斗はアレクセイを見た。


 あっーー。

 目が違うとはこういうことなのかーー、彼の美しい双眸の中に、いつもの自分を優しく気づかう色がない。 

 琉生斗は荒々しく押し倒され、余裕なく抱かれながら彼からの熱を受け続けた。

「な、なにか、言ってよー、あっ、あん!」

 いつもくれる甘い言葉もない。ただ、獣のように獲物に食らいつくようだ。

 激しさのみの行為に抗議したくも、アレクセイからひとらしさが感じられず、琉生斗は黙るしかなかった。
 
 その夜、最後までアレクセイからの睦言はなかった。

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