291 / 410
アジャハン国の王太子とラッキースケベについて。編
第79話 頬を染めた兵馬
しおりを挟む
お昼は動物園内の屋台で食べて、それからは大型遊具でめいいっぱい遊ばせる。
子供達がはしゃぎまわる中、東堂も一緒になって遊んでいた。
「あいつは元気だな」
アイスクリームを食べながら琉生斗は感心する。
「子供なんて、遊びに遊んでいつの間にか寝るだろ?」
「後の事を考えなくてもいいからね」
「そうだよな」
「トードォ、そろそろ帰るぞ」
「えー!もうですか!?」
「明日はプルウィア領の温水プールに行くからな。子供達を疲れさせてはならない」
「なるほど!よし、おまえら、明日のプールに備えて今日は早く寝るぞ!」
「わあい!」
「プール?わたしはじめて!」
「私もよ!」
「ボクこの前連れてってもらったけど、すごく楽しかったよ!」
「わたし、卒業するの寂しいな」
プリシラが涙を浮かべる。
「いつでも来いよ。プリシラは一期生だからな」
「うん。ありがとう、トードォ。大好き!」
「おう!俺も好きだぞ!」
アスラーンが目を細めた。
「ーー守備範囲が広いな」
「本気で言ってる……?ーーフストンさん、アス王太子お疲れでぇす。連れて帰ってください~!」
「ええっ!ヒョウマさん、最後までお願いしますよ!」
近衛兵のフストンが首を振る。
「もう、無理です」
「はははっ、ヒョウマ。照れなくてもいい。私とおまえの仲だろう」
「はいはいー」
兵馬は相手にしない。
「おまえは照れ屋だな」
アスラーンが軽く肩を叩くと、兵馬はつんのめった。
「あっ!」
こける、と思った瞬間、目をつむる。
だが、衝撃はこなかった。身体が軽くなる浮遊感を感じ、抱きあげられたのを悟る。
「アスラーンー」
ラルジュナが兵馬を抱えた。親友のいる方を睨みつける。
「その程度も駄目なのか、もう腹の中からやり直すしかないな」
ひどい事を言われているが、兵馬の耳には入らなかった。
「ありがと……」
下ろしてもらいながら、兵馬は礼を述べる。
「大丈夫だったー?」
「……うん」
頬を染めた兵馬に反応したのはこの方だ。
「な、な、な、なんだ、アレク。あの兵馬の可愛らしさは!おれの前じゃあんな顔した事ないだろ!」
「ーールートもしないだろう」
「いやーー!悔しいー!」
「落ち着きなさい」
「落ち着いてられるか!」
琉生斗は地団駄を踏んで悔しがったそうだ。
アジャハン名物の新鮮な魚介をつかった豪華なディナーの後、琉生斗は兵馬をつかまえた。
「兵馬ー!一緒に風呂に入ろうぜ!」
「いいよ。僕、家のお風呂があるし」
「いいだろ!たまには!あっちじゃよく一緒に入ったじゃないか~」
「君が勝手に乱入してきたんだからね!うちのお風呂狭いのに!」
「二人は充分いけただろ」
くっつく琉生斗をはらいながら、兵馬が帰ろうとする。
「ーーふむ」
アスラーンが何かに頷いた。
「ヒョウマ。アレクセイもラルジュナも、私の部屋で遊んでいるから、気にせずにゆっくり浸かるといい」
「だから、帰るよ」
「まあまあ、お互い親友と交友を深めようじゃないか」
アスラーンに言われて兵馬が肩を竦めた。
「帰って仕上げたい書類があるからちょっとだけだよ」
「やったあ!」
じゃれあう二人を見つめながら、アレクセイは不満を漏らしたいのを耐えた。
旦那を締め出して、琉生斗は兵馬と湯船に浸かる。
「何この花ー」
湯船にはバラの花びらが浮かぶ。兵馬の頬がひくつく。
「これが通常なのか、昨日もこうだったぜ」
「ーー奥方も大変だ」
「ーーなあ。実際の話、あの人完全に国を抜けれるのか?」
琉生斗の問いに、兵馬が視線を花に落とした。
「ーー無理だろうね……」
「そうかーー。シャラジュナだっけ?あいつがどうにかならないとも限らないもんな」
「うん……。帰るときがきたら、心おきなく帰ってもらうよ」
「ーーついてかねえの?」
「ついていっていいの?」
「六十代になってまで、兵馬、兵馬とは言ってないと思うんだけどな」
バシャバシャと湯をかぶり、琉生斗は親友を横目で見た。
「えらく飛んだね」
兵馬の表情は変わらなかった。
浴室のドアがノックされる。
「え?誰ですか?」
眉をしかめて尋ねると、「失礼いたします」と、王宮のメイド服を着た女性が三人はいってきて、琉生斗達に向かってお辞儀をした。
「聖女ルート様、今日はわたくし達がお身体のお世話をさせていただきます」
ヴィーナ、ロディ、カリテと自己紹介をされる。さすがは大国のメイド。三人とも目を瞠るような美人だ。
「え?お世話?」
「はい。わたくし達、あっちをお手伝いさせていただきますからー」
「え?」
まさか!
このお姉さん達と、おれが!
「ルート!騙されちゃだめだよ!」
呆然としている琉生斗を兵馬が揺すった。
「こちらへどうぞーー」
「だめだったらぁ!ルートォー!」
色っぽい女性に手招きをされ、琉生斗は目を開いたまま言葉を失ったーー。
子供達がはしゃぎまわる中、東堂も一緒になって遊んでいた。
「あいつは元気だな」
アイスクリームを食べながら琉生斗は感心する。
「子供なんて、遊びに遊んでいつの間にか寝るだろ?」
「後の事を考えなくてもいいからね」
「そうだよな」
「トードォ、そろそろ帰るぞ」
「えー!もうですか!?」
「明日はプルウィア領の温水プールに行くからな。子供達を疲れさせてはならない」
「なるほど!よし、おまえら、明日のプールに備えて今日は早く寝るぞ!」
「わあい!」
「プール?わたしはじめて!」
「私もよ!」
「ボクこの前連れてってもらったけど、すごく楽しかったよ!」
「わたし、卒業するの寂しいな」
プリシラが涙を浮かべる。
「いつでも来いよ。プリシラは一期生だからな」
「うん。ありがとう、トードォ。大好き!」
「おう!俺も好きだぞ!」
アスラーンが目を細めた。
「ーー守備範囲が広いな」
「本気で言ってる……?ーーフストンさん、アス王太子お疲れでぇす。連れて帰ってください~!」
「ええっ!ヒョウマさん、最後までお願いしますよ!」
近衛兵のフストンが首を振る。
「もう、無理です」
「はははっ、ヒョウマ。照れなくてもいい。私とおまえの仲だろう」
「はいはいー」
兵馬は相手にしない。
「おまえは照れ屋だな」
アスラーンが軽く肩を叩くと、兵馬はつんのめった。
「あっ!」
こける、と思った瞬間、目をつむる。
だが、衝撃はこなかった。身体が軽くなる浮遊感を感じ、抱きあげられたのを悟る。
「アスラーンー」
ラルジュナが兵馬を抱えた。親友のいる方を睨みつける。
「その程度も駄目なのか、もう腹の中からやり直すしかないな」
ひどい事を言われているが、兵馬の耳には入らなかった。
「ありがと……」
下ろしてもらいながら、兵馬は礼を述べる。
「大丈夫だったー?」
「……うん」
頬を染めた兵馬に反応したのはこの方だ。
「な、な、な、なんだ、アレク。あの兵馬の可愛らしさは!おれの前じゃあんな顔した事ないだろ!」
「ーールートもしないだろう」
「いやーー!悔しいー!」
「落ち着きなさい」
「落ち着いてられるか!」
琉生斗は地団駄を踏んで悔しがったそうだ。
アジャハン名物の新鮮な魚介をつかった豪華なディナーの後、琉生斗は兵馬をつかまえた。
「兵馬ー!一緒に風呂に入ろうぜ!」
「いいよ。僕、家のお風呂があるし」
「いいだろ!たまには!あっちじゃよく一緒に入ったじゃないか~」
「君が勝手に乱入してきたんだからね!うちのお風呂狭いのに!」
「二人は充分いけただろ」
くっつく琉生斗をはらいながら、兵馬が帰ろうとする。
「ーーふむ」
アスラーンが何かに頷いた。
「ヒョウマ。アレクセイもラルジュナも、私の部屋で遊んでいるから、気にせずにゆっくり浸かるといい」
「だから、帰るよ」
「まあまあ、お互い親友と交友を深めようじゃないか」
アスラーンに言われて兵馬が肩を竦めた。
「帰って仕上げたい書類があるからちょっとだけだよ」
「やったあ!」
じゃれあう二人を見つめながら、アレクセイは不満を漏らしたいのを耐えた。
旦那を締め出して、琉生斗は兵馬と湯船に浸かる。
「何この花ー」
湯船にはバラの花びらが浮かぶ。兵馬の頬がひくつく。
「これが通常なのか、昨日もこうだったぜ」
「ーー奥方も大変だ」
「ーーなあ。実際の話、あの人完全に国を抜けれるのか?」
琉生斗の問いに、兵馬が視線を花に落とした。
「ーー無理だろうね……」
「そうかーー。シャラジュナだっけ?あいつがどうにかならないとも限らないもんな」
「うん……。帰るときがきたら、心おきなく帰ってもらうよ」
「ーーついてかねえの?」
「ついていっていいの?」
「六十代になってまで、兵馬、兵馬とは言ってないと思うんだけどな」
バシャバシャと湯をかぶり、琉生斗は親友を横目で見た。
「えらく飛んだね」
兵馬の表情は変わらなかった。
浴室のドアがノックされる。
「え?誰ですか?」
眉をしかめて尋ねると、「失礼いたします」と、王宮のメイド服を着た女性が三人はいってきて、琉生斗達に向かってお辞儀をした。
「聖女ルート様、今日はわたくし達がお身体のお世話をさせていただきます」
ヴィーナ、ロディ、カリテと自己紹介をされる。さすがは大国のメイド。三人とも目を瞠るような美人だ。
「え?お世話?」
「はい。わたくし達、あっちをお手伝いさせていただきますからー」
「え?」
まさか!
このお姉さん達と、おれが!
「ルート!騙されちゃだめだよ!」
呆然としている琉生斗を兵馬が揺すった。
「こちらへどうぞーー」
「だめだったらぁ!ルートォー!」
色っぽい女性に手招きをされ、琉生斗は目を開いたまま言葉を失ったーー。
22
お気に入りに追加
255
あなたにおすすめの小説
とある文官のひとりごと
きりか
BL
貧乏な弱小子爵家出身のノア・マキシム。
アシュリー王国の花形騎士団の文官として、日々頑張っているが、学生の頃からやたらと絡んでくるイケメン部隊長であるアベル・エメを大の苦手というか、天敵認定をしていた。しかし、ある日、父の借金が判明して…。
基本コメディで、少しだけシリアス?
エチシーンところか、チュッどまりで申し訳ございません(土下座)
ムーンライト様でも公開しております。


一級警備員の俺が異世界転生したら一流警備兵になったけど色々と勧誘されて鬱陶しい
司真 緋水銀
ファンタジー
【あらすじ】
一級の警備資格を持つ不思議系マイペース主人公、石原鳴月維(いしはらなつい)は仕事中トラックに轢かれ死亡する。
目を覚ました先は勇者と魔王の争う異世界。
『職業』の『天職』『適職』などにより『資格(センス)』や『技術(スキル)』が決まる世界。
勇者の力になるべく喚ばれた石原の職業は……【天職の警備兵】
周囲に笑いとばされ勇者達にもつま弾きにされた石原だったが…彼はあくまでマイペースに徐々に力を発揮し、周囲を驚嘆させながら自由に生き抜いていく。
--------------------------------------------------------
※基本主人公視点ですが別の人視点も入ります。
改修した改訂版でセリフや分かりにくい部分など変更しました。
小説家になろうさんで先行配信していますのでこちらも応援していただくと嬉しいですっ!
https://ncode.syosetu.com/n7300fi/
この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。

せっかく美少年に転生したのに女神の祝福がおかしい
拓海のり
BL
前世の記憶を取り戻した途端、海に放り込まれたレニー。【腐女神の祝福】は気になるけれど、裕福な商人の三男に転生したので、まったり気ままに異世界の醍醐味を満喫したいです。神様は出て来ません。ご都合主義、ゆるふわ設定。
途中までしか書いていないので、一話のみ三万字位の短編になります。
他サイトにも投稿しています。
幼い精霊を預けられたので、俺と主様が育ての父母になった件
雪玉 円記
BL
ハイマー辺境領主のグルシエス家に仕える、ディラン・サヘンドラ。
主である辺境伯グルシエス家三男、クリストファーと共に王立学園を卒業し、ハイマー領へと戻る。
その数日後、魔獣討伐のために騎士団と共に出撃したところ、幼い見た目の言葉を話せない子供を拾う。
リアンと名付けたその子供は、クリストファーの思惑でディランと彼を父母と認識してしまった。
個性豊かなグルシエス家、仕える面々、不思議な生き物たちに囲まれ、リアンはのびのびと暮らす。
ある日、世界的宗教であるマナ・ユリエ教の教団騎士であるエイギルがリアンを訪ねてきた。
リアンは次代の世界樹の精霊である。そのため、次のシンボルとして教団に居を移してほしい、と告げるエイギル。
だがリアンはそれを拒否する。リアンが嫌なら、と二人も支持する。
その判断が教皇アーシスの怒髪天をついてしまった。
数週間後、教団騎士団がハイマー辺境領邸を襲撃した。
ディランはリアンとクリストファーを守るため、リアンを迎えにきたエイギルと対峙する。
だが実力の差は大きく、ディランは斬り伏せられ、死の淵を彷徨う。
次に目が覚めた時、ディランはユグドラシルの元にいた。
ユグドラシルが用意したアフタヌーンティーを前に、意識が途絶えたあとのこと、自分とクリストファーの状態、リアンの決断、そして、何故自分とクリストファーがリアンの養親に選ばれたのかを聞かされる。
ユグドラシルに送り出され、意識が戻ったのは襲撃から数日後だった。
後日、リアンが拾ってきた不思議な生き物たちが実は四大元素の精霊たちであると知らされる。
彼らとグルシエス家中の協力を得て、ディランとクリストファーは鍛錬に励む。
一ヶ月後、ディランとクリスは四大精霊を伴い、教団本部がある隣国にいた。
ユグドラシルとリアンの意思を叶えるために。
そして、自分達を圧倒的戦闘力でねじ伏せたエイギルへのリベンジを果たすために──……。
※一部に流血を含む戦闘シーン、R-15程度のイチャイチャが含まれます。
※現在、改稿したものを順次投稿中です。
詳しくは最新の近況ボードをご覧ください。
龍の寵愛を受けし者達
樹木緑
BL
サンクホルム国の王子のジェイドは、
父王の護衛騎士であるダリルに憧れていたけど、
ある日偶然に自分の護衛にと推す父王に反する声を聞いてしまう。
それ以来ずっと嫌われていると思っていた王子だったが少しずつ打ち解けて
いつかはそれが愛に変わっていることに気付いた。
それと同時に何故父王が最強の自身の護衛を自分につけたのか理解す時が来る。
王家はある者に裏切りにより、
無惨にもその策に敗れてしまう。
剣が苦手でずっと魔法の研究をしていた王子は、
責めて騎士だけは助けようと、
刃にかかる寸前の所でとうの昔に失ったとされる
時戻しの術をかけるが…

どこにでもある話と思ったら、まさか?
きりか
BL
ストロベリームーンとニュースで言われた月夜の晩に、リストラ対象になった俺は、アルコールによって現実逃避をし、異世界転生らしきこととなったが、あまりにありきたりな展開に笑いがこみ上げてきたところ、イケメンが2人現れて…。
某国の皇子、冒険者となる
くー
BL
俺が転生したのは、とある帝国という国の皇子だった。
転生してから10年、19歳になった俺は、兄の反対を無視して従者とともに城を抜け出すことにした。
俺の本当の望み、冒険者になる夢を叶えるために……
異世界転生主人公がみんなから愛され、冒険を繰り広げ、成長していく物語です。
主人公は魔法使いとして、仲間と力をあわせて魔物や敵と戦います。
※ BL要素は控えめです。
2020年1月30日(木)完結しました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる