ロクイチ聖女 6分の1の確率で聖女になりました。(第一部、第二部、第三部)

濃子

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アジャハン国の王太子とラッキースケベについて。編

第77話 その名も『ラッキースケベ大作戦』

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「あちゃー、かなり寝てたのかー」
 明日、東堂にからかわれるな、と琉生斗が頭をかいていると、寝室のドアがノックされた。

「ほぉい」
「ルート。いまいい?」
「おぅ!兵馬!」

「食事に来ないなんて、大丈夫?体調は?」
「悪い悪い。連続魔蝕がこたえるわ~」
「夏までまだあるからね。ああ、サンドイッチがあるんだ。僕、スープ持ってきたよ。ゴロゴロ野菜のビーツのスープだから鉄分豊富だよ」
「食べる!」

 琉生斗は食事をはじめた。赤いスープをスプーンですくい口に運ぶ。

「美味しいなぁ」
「見た目と味が違うよね」
「味は大根っぽいよな」
「これでおでん作る?」
「ーービジュアルが違う。だいたい、練り物ないだろ?」
「そうだねー。厚揚げは豆腐でできるけど、出汁がねえ」

「昆布か、かつお節がないとだめか」
 相方の胃には合いそうなんだけどな、と琉生斗は残念そうにつぶやいた。

「ーー今日はラルジュナさんは?」
「うん、いまアス王太子のとこで飲んでるよ」
「ええっ!大丈夫なのか!」

「殿下は絶対にだめ、とは言ったけど」
「前にシャンパン飲まれたんだよ」
「えっー!なんで?」
 兵馬の眉が飛び跳ねた。

「おれが飲もうとしたのを、取られた」
「ありゃ。またやられたんだ」
「ひどい目にあったぞ」

 ふふっ、と兵馬が笑う。

「普段抑えてる、って言うけどそんなことないよな?」
「体力に差がありすぎるのはたしかだね」
「絶対にサドだよ。何言ってもやめないんだから」

「それだけ君の事が好きなんだよ……」

 親友の言い方が琉生斗は気になった。目を丸くして兵馬を見る。

「えっ?ま、まさかうまくいってないのか?」

 うわずった声で尋ねると、兵馬が首を傾げた。

「よくわからないかな。どういうのが順調で、どういうのがだめとか。特に問題はないけどね」

「今なんか、いちゃいちゃいちゃいちゃする時期だろ」
「君と殿下はそうだったんだよ……。ーー明日は、ザルクが加わって、竜騎士団の飛空ショーが見られるよ」
「楽しみだな。すごいなぁ!」
「はい。スープの器下げとくね」

「ありがとう。悪いな」
「手加減してもらえたらいいね」

 琉生斗は苦笑した。


















 アスラーンの私室では、ラルジュナがベッドの上に寝転び本を読んでいた。
 
「アリョーシャ、紅茶にレモンを入れるか?」
「そうだな」

「ボク、ブランデー」
「自分でやれ」

 そう言うアスラーンの手には、ラルジュナ用のブランデーとチューリップグラスが用意されている。

 ラルジュナが空中から四角いキューブを取り出した。 

「これ、アリョーシャが作ったんでしょー?面白いよねー」

「何だ?」 
 アスラーンがラルジュナから、キューブを受け取る。
「キューブ型のおもちゃだよー。バルドの王都の結界がこうなってたらしいよー」

 くるくるまわしてアスラーンが目を丸くした。

「はー、なるほど面白いなー」

「ハオルも、こんなの思いつくなんて、遊具屋でもしたらよかったのにねー。そうそうこの間ねーー」
 
 アスラーンとラルジュナの話は尽きることがない。
 
 口を挟むタイミングを伺っていると、ラルジュナがこちらを向いた。

「どうしたのー?」
「ーーああ。アスラーン」

「何だ?」

「おまえ、ヒョウマを脅したりしてはいないか?」

「え?」
 目を丸くしてラルジュナがアスラーンを見た。

「人聞きの悪い事を言うな」
「態度がおかしかった。口どめに何をした?」

「いやいや、応援はしないが邪魔もしない、そう言われただけだ」

「ホントにー?」
 ラルジュナにも睨まれ、アスラーンが手を振る。

「まあ、ヒョウマもマルテスにあれを話した手前、口出しはできないと思っているのかもな」

「あれー?」

「ああ。今回の作戦内容だ」
 嬉しそうに語る友を訝しげに見ながら、アレクセイは尋ねる。

「ーー何をしようとしている?」

「ふふっ、気になるのか?」
 
 アレクセイとラルジュナが無言で友を見た。





「ーーその名も、『ラッキースケベ大作戦』だ」



「ら、ラッキー、スケベー?」
「ーー大作戦?」
 

「……何言ってんのー?」
「向こうの世界の書物にあるらしいのだ。意中の相手に抱きついたり、抱きつかれたり、さわったり、さわられたり、突然胸をわしづかみにしたり、股間にタッチしたりする事が、なぜか偶然起きるそうだ」

「ーー難しくないー?」
 ラルジュナが首を捻った。

 アレクセイは付き合ってられないと思ったのか、冷ました紅茶を飲んだ。

「ヒョウマがそんなこと言うー?」

「お見合いパーティーの企画だしのときに、世間話のついでにでたそうだ。本人もうっかりしたのだろう。まあ、内容にドン引きはしていたが、静観の方向だ」

「ふうん。トードォくんなら大丈夫と思ってるのかなー?」

「ふっふっふっ、どうなる事だろうな」
 アスラーンが楽しそうに笑った。



 さあ、トードォ、計画のはじまりだーー。



「楽しみだな。あの好青年を組み敷いて、あんな事やこんな事や、口にだすのもはばかられるような事をたくさんしてあげたい」

 アスラーンがえげつない実例をあげるのを、ラルジュナはさえぎった。

「黙ってくれるー?」
 耳がくさるー、と本を片付けてベッドから降りる。


「ーーおまえだってしたいくせにな」

 ムッとした顔でアスラーンを睨みつけると、そのままラルジュナは部屋をでた。


 バタンッ!

 物を大切にする彼にしては珍しく、勢いよくドアが閉められる。




「ふふっ、珍しい顔をしていたな」

「アスラーンーー。腕をいれるとはどういう事だ?」
 アレクセイの問いに、アスラーンは声をあげて笑った。


「おまえには関係がない。嫁にはできないことさ」

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