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琉生斗と兵馬編

第68話 幼児運動教室とアスラーン ☆

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 風呂あがりに軽く食事をとった後、本格的な愛の行為がはじまる。

 キスが大好きな琉生斗のために、アレクセイは何度も何度もキスを繰り返す。粘着質な愛撫を行いながら、琉生斗の身体のすべてを愛していく。


「可愛いー」
「あんっ、やっ、やっ、」
 乱れた息の色っぽさに、アレクセイの顔は上気してくる。
「ルート、可愛いルートーー」

 自分のすべてを包み込んでくれる愛しいひとーー。

「っふ~、もう、カチカチじゃんーー」

 ねじ込んだモノが、喜びのあまり言う事を聞かないーー。ルートのナカで良い子でいるのは無理というものだ。


「離さない。何があろうともーー」


 かたく握った手を、さらにかたく握り返してくれる。



 心の奥底から愛しいひとが、自分の側にいる。

 この奇跡を何に感謝すればいいのだろうかーー。


 






 琉生斗に水を飲ませ、寝衣を着せる。

「ーーそうか。ヒョウマがそう言うのなら、ラルジュナには話さないほうがいいな」
「うんーー。実際、どうなんだろあの二人。すぐに別れると思う?」

 アレクセイは首を振った。

「判断ができない。ラルジュナの恋人に会ったことがないからな」

「ないの?」
 琉生斗の眉が跳ねる。

「アスラーンなら知っているかもしれないが、二人とも私に遠慮をして恋人の話はしなかった」
「そっかー。アレクの事、大事に思ってくれてんだな」

 琉生斗がアレクセイの手を握った。

「どうした?」
 尋ねると嬉しそうな顔が返って来る。

「ふふっ、何もないよー」

















「今日は初歩的な格闘技の授業をします」


 兵馬の言葉は子供達に衝撃を与えた。

「無理しないで」
「そうだよ!ヒョウマが死んじゃうよ!」
「トードォ、呼ばないと!」


「……もちろん、講師の先生と一緒です」

 僕っていったいーー、悲しみをこらえて兵馬は講師を紹介した。

「ああ、皆よろしく。幼いうちから感心な事だ」
 颯爽と広場にあらわれた人物に、幼児達は固まった。

「知らないお兄さんが来て驚いているな。そう、その感覚は大事にしないと。誰かれかまわず付いていくと、たいがいはひどい目に会うからな」

 うんうん、とアジャハン国の王太子アスラーンは頷いた。

「さっそくだが、皆体操をするとき深呼吸をするだろう?今日はまず腹式呼吸をきちんとできるようにするぞ」

「ふくしきこきゅう?」

「そうだ。これから剣をとったり、魔法を極めるにも呼吸は大事だからな。戦場においてまともに呼吸ができないとすぐに死ぬ」

 子供達はアスラーンの話に聞き入っている。兵馬も、そうなんだー、と教え方の丁寧さに安堵する思いだ。




 ーー兵馬は講師を探していると、魔法騎士団の訓練を眺めているアスラーンに出くわした。

「アス王太子、何してんの?」

「ヒョウマか。おまえこそ、こんな所で何をしている」
「それはこっちの台詞だよ」

「おまえはアジャハンの国民として、日夜私のために働かなければならない人間だろ」

 目を細めて兵馬は大大国の王太子を睨む。

「ごめんね。忙しいから後で相手してあげるね」

「なんだ、つれないな」
 近衛兵のフストンがアスラーンの後ろで笑っている。

「こんな場合じゃないんだ。格闘技の講師を探してるんだよ」
「どうしてだ?」

「うん。幼児運動教室を定期的にやってるんだけど、ルートと東堂がいないときがあって、子供のレベルが高すぎて僕じゃ教える事がないんだ」

「そうだろうな。ヒョウマは赤児のレベルだろう。おまえにできることは、ミルクをやって、お尻を洗ってやるぐらいだ」
「あのね」

「一歳児、二歳児のあの体力。全力で遊び全力で逃げ、すべてにおいて大人を翻弄する力。とてもおまえでは追いつかない」

「アス王太子、子供いるの?」

 よく知ってるねー、と兵馬は目を丸くした。

「妹妹が、それぐらい離れたのが何人かいる」
「あー、お疲れ様です」

「皆、元気すぎてな。父上が腰が痛いと言ってちっとも見ない為、私に子守りがまわってくる」

「兄弟あるあるだね。はあ、生後数カ月の子と同レベルって、僕ってどうなってんだよー」

 兵馬は溜め息をつく。

「まあ、そんなマニア向けなおまえだから、あいつの性癖に刺さったのだろう。よかったな」

 マニア向け、って。 

「何?ジュナって、性癖がおかしいの?」
 自然に尋ねるが心臓の音は跳ねている。


「ヒョウマ、おまえはまだまだだな。性癖がおかしくない男など、この世にはおらんよ。アレクセイなど、あんなに涼しい顔をしてるのに、頭の中は嫁とのエッチばかり考えている」

 偉そうに何を言うんだかーー。

 答える気がないと、兵馬は悟った。


「じゃあね。この際、モロフにでも頼もうかな」

「私が行こう」
「はい?」
「案内せよ」

「フストンさん?」
「ああ、いいですよ。私、この後予定がありますので、王太子お願いします」




 フストンに逃げられ、兵馬はアスラーンを広場に連れてきたのだが、思っていたよりちゃんとやってくれている。


 見た目だけはまともな王太子だからねーー。

 兵馬は教えられた通りに丹田(臍の下あたり)を意識して呼吸を繰り返す。

「よし、そのまま瓦でも割ろうか」

「基準がどこなの?」

「十枚割れたら、言う事を聞いてやろう」

 えー!
 すごいー!

 子供達が張り切りだす。

「割れるわけないじゃん」
 兵馬は呆れた。

 七歳のダニルでも無理だろう。




「割れた!」

 割れるんかい!

 大喜びのダニルを見ながら、兵馬は顎が外れそうなぐらい驚く。

「あー、五枚!」
「六枚!」

 案外簡単なものなのかなー。


 兵馬は瓦の前に立ち、呼吸を整えた。一度当てるイメージをして、一気に拳を振り下ろす。



「ーーっいたーい!」

 兵馬は手を振る。

 もちろん、瓦は一枚も割れずにアスラーンが大笑いをし、子供達に怒られていた。

「ヒョウマはあれでいいのよ」
「まもってあげなくちゃ」
 女子がアスラーンに説教をした。

「ちょっと待って、大きなお世話だよ」

「恋人が守ってくれるんだから、おまえはそのままでいいぞ」
 アスラーンがよけいな事を言う。

「ぴょうま、こいぴと?」
「えー、うっそー!」 
「やだ、カッコいい人かしら?」

「はい、そこ!すぐに男を当てはめない!」
 兵馬は女子に注意をした。

「よし、ダニル君。何でも言い給え」
 事実のくせにーー、とアスラーンは兵馬をにやにや見ながらダニルに問う。

「えー、本当にいいんですかー?」

「ちょっとダニル気をつけてよ。そのひと本物の大大国の王太子だからね」
 何を言い出すのか心配になり、兵馬はダニルをとめた。

「えー、とね。オレ、ザルクに会いたいな」
 意表をつかれ、兵馬は眉をあげた。

「ーーなるほど。ならば、全員アジャハンに遊びに来ればいい。ヒョウマ、修学旅行だ。引率はもちろん、トードォで」

 念を押すような言い方に、兵馬はピンときた。子供達が喜ぶ手前何も言わなかったが、自由時間に入るとアスラーンを問い詰めにいく。






「アス王太子、東堂狙いなの?」
「なんだ嫉妬か?おまえはラルジュナだけでは足らずに、私まで欲しいのか?」

 それも面白いな、とアスラーンが不敵に笑う。

「はいはーい。面白い面白いー。東堂は難しいと思うよ。僕と違って、ほんとにモテるから」
「私もモテるぞ」

「じゃあ、そっちで我慢してよ」
「一度食べてみて考えよう」

 兵馬は吹きだした。

「や、やる気満々だね」
 引くわー、と兵馬は引きつった。

「つべこべ言わずに企画しろ。ザルクと一緒にまわる、子供に無理のない内容でだ」



「イエス、ボス」

 兵馬は頬を引きつらせながら答えた。
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