263 / 447
スズの指輪編
番外編 魔法少女ふわりんショー
しおりを挟む
それは町子の思いつきだった。
「美花ちゃん~。神殿の演し物で、ふわりんショーやってみない~?」
「えー!それいい!町子、ピンク?ブルー?」
「う~ん~。……ピンク、だめ~?」
「あたし、ブルー推しよ!じゃあ、兵馬に許可取らせるから」
「お願い~。わたしは仲間を集めるわ~」
「誰に頼むの?」
「あのひとははずせないわね~」
「ーーというわけで、ブラックをお願いいたします~」
「…………」
「ぷっ」
ヤヘルがこらえきれずに吹きだし、アンダーソニーから怒られる。
「ーー断る」
「え~、なんでですかぁ~。深淵なる黒き泉よりいでし黒の天使、魔法少女ブラッディですよ~。すごいかっこいいんですよ~」
町子の熱弁も聞く気がないのか、アレクセイは黙ったままだ。
「あら~、じゃあ誰にしよう~。ルート君は神殿じゃ白い服しか着れないし~」
「ーールート……」
「興味でましたか~」
アレクセイは聞きたそうにしている。
「仕方ないですね~。ーーみんなの心をわしづかみ、ピュアピュアラブリー、魔法少女ミルキー参上!ーーって感じです~」
「ルートが……」
「はい~。おまけにブラッディとミルキーは百合展開があるんですよ~。きゃあきゃあ~」
「百合…展開……?」
「ふふふっ。女の子同士でいちゃいちゃするんです~」
バタン。
アレクセイが書物を落とした。
「ル、ル、ルート、ト、と、百合?」
「殿下!しっかり引き受けてくださいませ!」
ルッタマイヤが食い付いた。
「おいおい、いくらなんでも殿下に女装なんかさせたら、観客が倒れるぞ」
「そっか~。じゃあ誰にしよう~。殿下~、誰なら許せます~?」
「…………」
「はい~?」
「ーーヒョウマ以外は、なしだ」
苦渋に満ちたアレクセイの顔に、ルッタマイヤは涙した。
「あら~、兵馬くんには、ドジっ子レモネードをやってもらおうと思ったのに~、まあ、いいか~。じゃあ、当日をお楽しみに~」
「ーーああ」
町子が出ていくと、アレクセイは頭を押さえた。
「殿下!なぜです!」
「ーーすまない」
「殿下ぁぁぁぁぁぁ!」
ルッタマイヤが床を叩いて号泣した。
「百合展開見たかったのにーー!」
「平和だなーー」
「本当に。がははっ!」
当日、満員の子供達の後ろに、いい大人達も混ざっていた。
「はははっ、子供達をさらっていくぞ!」
魔王子(東堂)が部下(モロフ、トルイスト)を使って子供を人質にする。
「お待ちなさい!」
「な、なんだー!」
「だ、だれだ(棒読み)」
「ふわふわふわのふわりんちょ、魔法少女ふわりん、ただいま参上!」
ピンクのふりふり衣装で町子があらわれる。
「きらきら輝く美しい海の化身、魔法少女オーシャン、華麗に登場!」
青い神秘的な衣装であらわれたのは美花だ。
続く人物に、ひときわ大きな歓声が起きる。
「みんなの心をわしづかみ!ピュアピュアラブリー、魔法少女ミルキー参上!」
ヤケクソの琉生斗が白いひらひら衣装で出てきた。スカートの丈にアレクセイは口元を押さえる。
「深淵なる黒き泉よりいでし黒の天使、魔法少女ブラッディ、ここに参上ーー」
黒のマーメイドスカートの兵馬に、子供達は大喜びだ。
「ヒョウマ!戦えるの?」
「はやく逃げてね!」
「みんなの後ろにいてね!」
ーーなんで僕が一番強い役なんだよ。
眼鏡も外され視界に不安が残るーー。
本人も不服そうだ。
「あっ、いた~い。またこけちゃった~。はじける元気、魔法少女レモネードよー」
黄色ひらひらミニ丈スカートの花蓮の登場に、クリステイルが悲鳴をあげた。
「な、なんと女神様がいる!」
「ーー女神様はルートだ」
「いやいやいや、カレンですよ!」
しょうもない兄弟喧嘩がはじまる。
「私たちは、負けないわよ!」
戦闘シーンも魔法を使うので迫力があり、子供達はその世界観のとりこになっていく。
「ブラッディ。わたしをかばって!」
倒れたブラッディをミルキーが助け起こす。
「いいの、あなたが無事なら」
「ブラッディ……」
ミルキーとブラッディがお互いの顔を見て、強く抱き合う。
「ヒューヒュー!」
「さすが!ラブラブだね!」
子供達が野次を飛ばした。
「ーーアリョーシャ。なんで断ったのー?」
友に真顔で尋ねられ、アレクセイは顔を歪めた。
「私には……、勇気が足りなかった……」
「ふうん。ボクに言えばよかったのにねー」
「これで終わりだ!」
ノリノリの魔王子が、剣(偽物)を振る。後ろから手下(トルイスト)が風の魔法を吹かせ、ふわりん達は絶対絶命のピンチだ。
「みんなー!みんなの応援が足りないわ!」
オーシャンの願いに、子供達は大声でエールを送る。
「この力で、魔王子を倒すのよー!」
「まかせて!」
「ええ」
「はい!」
「いやん、こけちゃったー。えへへっ」
光が放たれ、魔王子は消された。
「ぴぎゃあーー(ホントにぴぎゃあーとか言うやついるのか?)!!!」
「みんなのおかげで、勝てたわ!」
「応援、ありがとう!」
大歓声の中、魔法少女ショーは終わる。
「よぉ、アレク。どうだった?」
「いろいろ駄目だ」
「えー、ヘタだったかー」
「なせ、この丈なのだ?」
「ひざ丈じゃん。タイツもはいてるし」
「ヒョウマと抱き合いすぎだ」
「アレクがいいって言ったんだろ?好評だったら、また演るんだって」
「また?」
「うん!もっと練習しようーっと」
「…………」
魔法少女になることを、アレクセイは悩みに悩んだそうだが、父王に全力で止められ断念したというーー。
しかし、その後、噂を聞きつけた王都の劇団員達があちこちで魔法少女ショーやり始めた為、琉生斗達の出番がなくなってしまったそうだ。
聖女様は残念そうでしたが、夫君は安堵した、との事でありますーー。
「美花ちゃん~。神殿の演し物で、ふわりんショーやってみない~?」
「えー!それいい!町子、ピンク?ブルー?」
「う~ん~。……ピンク、だめ~?」
「あたし、ブルー推しよ!じゃあ、兵馬に許可取らせるから」
「お願い~。わたしは仲間を集めるわ~」
「誰に頼むの?」
「あのひとははずせないわね~」
「ーーというわけで、ブラックをお願いいたします~」
「…………」
「ぷっ」
ヤヘルがこらえきれずに吹きだし、アンダーソニーから怒られる。
「ーー断る」
「え~、なんでですかぁ~。深淵なる黒き泉よりいでし黒の天使、魔法少女ブラッディですよ~。すごいかっこいいんですよ~」
町子の熱弁も聞く気がないのか、アレクセイは黙ったままだ。
「あら~、じゃあ誰にしよう~。ルート君は神殿じゃ白い服しか着れないし~」
「ーールート……」
「興味でましたか~」
アレクセイは聞きたそうにしている。
「仕方ないですね~。ーーみんなの心をわしづかみ、ピュアピュアラブリー、魔法少女ミルキー参上!ーーって感じです~」
「ルートが……」
「はい~。おまけにブラッディとミルキーは百合展開があるんですよ~。きゃあきゃあ~」
「百合…展開……?」
「ふふふっ。女の子同士でいちゃいちゃするんです~」
バタン。
アレクセイが書物を落とした。
「ル、ル、ルート、ト、と、百合?」
「殿下!しっかり引き受けてくださいませ!」
ルッタマイヤが食い付いた。
「おいおい、いくらなんでも殿下に女装なんかさせたら、観客が倒れるぞ」
「そっか~。じゃあ誰にしよう~。殿下~、誰なら許せます~?」
「…………」
「はい~?」
「ーーヒョウマ以外は、なしだ」
苦渋に満ちたアレクセイの顔に、ルッタマイヤは涙した。
「あら~、兵馬くんには、ドジっ子レモネードをやってもらおうと思ったのに~、まあ、いいか~。じゃあ、当日をお楽しみに~」
「ーーああ」
町子が出ていくと、アレクセイは頭を押さえた。
「殿下!なぜです!」
「ーーすまない」
「殿下ぁぁぁぁぁぁ!」
ルッタマイヤが床を叩いて号泣した。
「百合展開見たかったのにーー!」
「平和だなーー」
「本当に。がははっ!」
当日、満員の子供達の後ろに、いい大人達も混ざっていた。
「はははっ、子供達をさらっていくぞ!」
魔王子(東堂)が部下(モロフ、トルイスト)を使って子供を人質にする。
「お待ちなさい!」
「な、なんだー!」
「だ、だれだ(棒読み)」
「ふわふわふわのふわりんちょ、魔法少女ふわりん、ただいま参上!」
ピンクのふりふり衣装で町子があらわれる。
「きらきら輝く美しい海の化身、魔法少女オーシャン、華麗に登場!」
青い神秘的な衣装であらわれたのは美花だ。
続く人物に、ひときわ大きな歓声が起きる。
「みんなの心をわしづかみ!ピュアピュアラブリー、魔法少女ミルキー参上!」
ヤケクソの琉生斗が白いひらひら衣装で出てきた。スカートの丈にアレクセイは口元を押さえる。
「深淵なる黒き泉よりいでし黒の天使、魔法少女ブラッディ、ここに参上ーー」
黒のマーメイドスカートの兵馬に、子供達は大喜びだ。
「ヒョウマ!戦えるの?」
「はやく逃げてね!」
「みんなの後ろにいてね!」
ーーなんで僕が一番強い役なんだよ。
眼鏡も外され視界に不安が残るーー。
本人も不服そうだ。
「あっ、いた~い。またこけちゃった~。はじける元気、魔法少女レモネードよー」
黄色ひらひらミニ丈スカートの花蓮の登場に、クリステイルが悲鳴をあげた。
「な、なんと女神様がいる!」
「ーー女神様はルートだ」
「いやいやいや、カレンですよ!」
しょうもない兄弟喧嘩がはじまる。
「私たちは、負けないわよ!」
戦闘シーンも魔法を使うので迫力があり、子供達はその世界観のとりこになっていく。
「ブラッディ。わたしをかばって!」
倒れたブラッディをミルキーが助け起こす。
「いいの、あなたが無事なら」
「ブラッディ……」
ミルキーとブラッディがお互いの顔を見て、強く抱き合う。
「ヒューヒュー!」
「さすが!ラブラブだね!」
子供達が野次を飛ばした。
「ーーアリョーシャ。なんで断ったのー?」
友に真顔で尋ねられ、アレクセイは顔を歪めた。
「私には……、勇気が足りなかった……」
「ふうん。ボクに言えばよかったのにねー」
「これで終わりだ!」
ノリノリの魔王子が、剣(偽物)を振る。後ろから手下(トルイスト)が風の魔法を吹かせ、ふわりん達は絶対絶命のピンチだ。
「みんなー!みんなの応援が足りないわ!」
オーシャンの願いに、子供達は大声でエールを送る。
「この力で、魔王子を倒すのよー!」
「まかせて!」
「ええ」
「はい!」
「いやん、こけちゃったー。えへへっ」
光が放たれ、魔王子は消された。
「ぴぎゃあーー(ホントにぴぎゃあーとか言うやついるのか?)!!!」
「みんなのおかげで、勝てたわ!」
「応援、ありがとう!」
大歓声の中、魔法少女ショーは終わる。
「よぉ、アレク。どうだった?」
「いろいろ駄目だ」
「えー、ヘタだったかー」
「なせ、この丈なのだ?」
「ひざ丈じゃん。タイツもはいてるし」
「ヒョウマと抱き合いすぎだ」
「アレクがいいって言ったんだろ?好評だったら、また演るんだって」
「また?」
「うん!もっと練習しようーっと」
「…………」
魔法少女になることを、アレクセイは悩みに悩んだそうだが、父王に全力で止められ断念したというーー。
しかし、その後、噂を聞きつけた王都の劇団員達があちこちで魔法少女ショーやり始めた為、琉生斗達の出番がなくなってしまったそうだ。
聖女様は残念そうでしたが、夫君は安堵した、との事でありますーー。
22
お気に入りに追加
259
あなたにおすすめの小説
【BL】どうやら精霊術師として召喚されたようですが5分でクビになりましたので、最高級クラスの精霊獣と駆け落ちしようと思います。
riy
BL
風呂でまったりしている時に突如異世界へ召喚された千颯(ちはや)。
召喚されたのはいいが、本物の聖女が現れたからもう必要ないと5分も経たない内にお役御免になってしまう。
しかも元の世界へも帰れず、あろう事か風呂のお湯で流されてしまった魔法陣を描ける人物を探して直せと無茶振りされる始末。
別邸へと通されたのはいいが、いかにも出そうな趣のありすぎる館であまりの待遇の悪さに愕然とする。
そんな時に一匹のホワイトタイガーが現れ?
最高級クラスの精霊獣(人型にもなれる)×精霊術師(本人は凡人だと思ってる)
※コメディよりのラブコメ。時にシリアス。

平民男子と騎士団長の行く末
きわ
BL
平民のエリオットは貴族で騎士団長でもあるジェラルドと体だけの関係を持っていた。
ある日ジェラルドの見合い話を聞き、彼のためにも離れたほうがいいと決意する。
好きだという気持ちを隠したまま。
過去の出来事から貴族などの権力者が実は嫌いなエリオットと、エリオットのことが好きすぎて表からでは分からないように手を回す隠れ執着ジェラルドのお話です。
第十一回BL大賞参加作品です。

獣のような男が入浴しているところに落っこちた結果
ひづき
BL
異界に落ちたら、獣のような男が入浴しているところだった。
そのまま美味しく頂かれて、流されるまま愛でられる。
2023/04/06 後日談追加
【完結】相談する相手を、間違えました
ryon*
BL
長い間片想いしていた幼なじみの結婚を知らされ、30歳の誕生日前日に失恋した大晴。
自棄になり訪れた結婚相談所で、高校時代の同級生にして学内のカースト最上位に君臨していた男、早乙女 遼河と再会して・・・
***
執着系美形攻めに、あっさりカラダから堕とされる自称平凡地味陰キャ受けを書きたかった。
ただ、それだけです。
***
他サイトにも、掲載しています。
てんぱる1様の、フリー素材を表紙にお借りしています。
***
エブリスタで2022/5/6~5/11、BLトレンドランキング1位を獲得しました。
ありがとうございました。
***
閲覧への感謝の気持ちをこめて、5/8 遼河視点のSSを追加しました。
ちょっと闇深い感じですが、楽しんで頂けたら幸いです(*´ω`*)
***
2022/5/14 エブリスタで保存したデータが飛ぶという不具合が出ているみたいで、ちょっとこわいのであちらに置いていたSSを念のためこちらにも転載しておきます。
国を救った英雄と一つ屋根の下とか聞いてない!
古森きり
BL
第8回BL小説大賞、奨励賞ありがとうございます!
7/15よりレンタル切り替えとなります。
紙書籍版もよろしくお願いします!
妾の子であり、『Ω型』として生まれてきて風当たりが強く、居心地の悪い思いをして生きてきた第五王子のシオン。
成人年齢である十八歳の誕生日に王位継承権を破棄して、王都で念願の冒険者酒場宿を開店させた!
これからはお城に呼び出されていびられる事もない、幸せな生活が待っている……はずだった。
「なんで国の英雄と一緒に酒場宿をやらなきゃいけないの!」
「それはもちろん『Ω型』のシオン様お一人で生活出来るはずもない、と国王陛下よりお世話を仰せつかったからです」
「んもおおおっ!」
どうなる、俺の一人暮らし!
いや、従業員もいるから元々一人暮らしじゃないけど!
※読み直しナッシング書き溜め。
※飛び飛びで書いてるから矛盾点とか出ても見逃して欲しい。
騎士様、お菓子でなんとか勘弁してください
東院さち
BL
ラズは城で仕える下級使用人の一人だ。竜を追い払った騎士団がもどってきた祝賀会のために少ない魔力を駆使して仕事をしていた。
突然襲ってきた魔力枯渇による具合の悪いところをその英雄の一人が助けてくれた。魔力を分け与えるためにキスされて、お礼にラズの作ったクッキーを欲しがる変わり者の団長と、やはりお菓子に目のない副団長の二人はラズのお菓子を目的に騎士団に勧誘する。
貴族を嫌うラズだったが、恩人二人にせっせとお菓子を作るはめになった。
お菓子が目的だったと思っていたけれど、それだけではないらしい。
やがて二人はラズにとってかけがえのない人になっていく。のかもしれない。
秘花~王太子の秘密と宿命の皇女~
めぐみ
BL
☆俺はお前を何度も抱き、俺なしではいられぬ淫らな身体にする。宿命という名の数奇な運命に翻弄される王子達☆
―俺はそなたを玩具だと思ったことはなかった。ただ、そなたの身体は俺のものだ。俺はそなたを何度でも抱き、俺なしではいられないような淫らな身体にする。抱き潰すくらいに抱けば、そなたもあの宦官のことなど思い出しもしなくなる。―
モンゴル大帝国の皇帝を祖父に持ちモンゴル帝国直系の皇女を生母として生まれた彼は、生まれながらの高麗の王太子だった。
だが、そんな王太子の運命を激変させる出来事が起こった。
そう、あの「秘密」が表に出るまでは。

オッサン、エルフの森の歌姫【ディーバ】になる
クロタ
BL
召喚儀式の失敗で、現代日本から異世界に飛ばされて捨てられたオッサン(39歳)と、彼を拾って過保護に庇護するエルフ(300歳、外見年齢20代)のお話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる