ロクイチ聖女 6分の1の確率で聖女になりました。(第一部、第二部、第三部)

濃子

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スズの指輪編

第49話 それは懐かしい話

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「なあなあ、ラルジュナさん。カカオ豆知ってる?」
「知ってるけど、欲しいのー?」
「おう」

「アジャハンの農業が盛んな地域で育ててるよー。アスラーンに聞いてあげるー。何に使うのー?」

「ん、チョコレート」

「チョコレートー?」

 売ってるけど作るのー?

「あっ、もしかしてバレンタインの?」

 兵馬が何かを閃いた顔をする。

「そうそう。売ってるのすごい甘いのばっかりだし。生チョコがないから最初から作ろうかな~と思って」

「ルート、お菓子作り上手いもんね。生チョコ大量生産して、聖女の石畳、とかにして売ろうかな」

「ーーすぐに商売にするなよ」

 また、上手い事ネーミングしようとするしーー、琉生斗は呆れた。

「何かのイベントなのー?」
「向こうの行事でね……」

 兵馬がラルジュナに説明する。

「ふーんー。向こうの世界はそういうイベントで商品を売るのが上手いねー」
「うん。クリスマスとかすごい金額が動くよ」

 この商売人コンビに情緒はあるのか?


「わたしもお師匠様に作ろうかな~」
「おっ、いいじゃん」

 商売人は放っておいて、琉生斗は町子と打ち合わせしながら魔法陣の上に乗る。







 地上に戻ってきた。
「夕方だよね。日差しがきついけど」
「ほんと倒れそう~」
「ヒョウマなら抱えてあげるー♡」
「ーー気合で立つよ」

 四人はイザベルのいる場所へと歩き出した。


「ねえねえ、ルートー」
「はいはい」
「ヒョウマがつれないんだけど、どうしたらいいのかなー?」

 兵馬が引きつる。

「え?マニュアルがあるんじゃないのか?」
 琉生斗が意外そうな顔でラルジュナを見た。

「何のマニュアルー?」
「こういうヤツにはこの手、ああいうヤツにはあの手、みたいな」

「ひどいなー、ボクの事どういう目で見てるのー?」
「うーん。基本詐欺師の部類」

 町子が大笑いする。

「ふふっ、ルートおもしろいー。もちろん、ルートならカモにするけどねー。ルート、アレクセイのドア・イン・ザ・フェイスに引っかかったでしょー?」

「へ?」

「ーー前にあいつに相談されてねー。毎日キスをする為にはどうしたらいいか、ってねー」

 琉生斗は固まった。

「何~?」

「本命の要求を通すために、まずは過大な要求を提示して、相手に断られたら小さな(実は本命の)要求を出す方法だよ。その逆もあるよ」

 町子と兵馬の会話を遠く聞きながら、琉生斗はラルジュナを睨んだ。

「あんたが相方にいらん知恵を入れたのか?」
「進展してよかったでしょー?」

 ボクって友達思いなんだー、とラルジュナが言った。

「じゃあ、兵馬に言えよ!毎日セックスしたいって!」


「ーーあいつそれ言ったんだー」

 ラルジュナが吹きだした。

「ルート、オッケーしたの?」

 親友の開かれた目に琉生斗はいじけそうになった。
「すごいわね~」

「してないわ!そんときは毎日キスだわ!」

「ーーそれでもなかなかハードルが高いわ~」
「どうせ結婚するから貞操観念がバグったんだよ」

 やかましい。

「ふんだ。おれはもう、ラルジュナさんの応援はしないからな!」

「いいよー、自分で何とかするしー」



「あら、兵馬君、ピアスしてるの~?」
 町子に指摘され、兵馬が右耳を押さえた。

「何で隠すんだ」

 琉生斗は兵馬の手を持ち上げて、髪の毛を払う。

「あー、おまえこれはーー」
「わぁ、キレイなオレンジ色~」

 ジト目になった琉生斗の視線を兵馬が避けた。

「いいでしょー♡」
「はいはい。自分の横歩けって意味でしょ」
「ぷぷっ~、素敵ね~」
 
 親友の言葉に兵馬が真っ赤になった。

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