257 / 410
スズの指輪編
第46話 暗いダンジョンが似合わない男
しおりを挟む
アルカトラズ地下ダンジョンの入り口は、魔法陣だった。
魔法陣が光り、ダンジョンから出てきた集団がいる。袋を担いで、琉生斗達の横を無言で通り過ぎて行った。疲れているのか、かなり青い顔をしている。
「へぇ~!感動~!すごい力ね~」
町子の目が爛々と輝いた。
「ーーたしかにーー。威圧感が凄いね」
兵馬が顔をしかめた。
「ん?そうなの?」
琉生斗は不思議そうな顔をした。
「わからないの?」
「うん。よくわからん」
「でも、ルート君、魔導師や魔法剣士の強さはわかるでしょ~?」
「ん~?ーー深い所からなら、何か感じるけど」
「ーー最初は楽そうね~。兵馬君、東堂君は~?」
「通信ができないー。忙しいのかな」
兵馬はかなりの距離を、精神魔法でやり取りできるようになっていた。
「他の前衛か~。誰かいるかしら~」
「いよいよ、おれの出番か」
琉生斗はカッコつけてみた。
二人共相手にはしてくれなかったがーー。
「ーーあっ、ううん。いいってー。だからー!」
兵馬の口調がきつくなる。
「どうしたんだ?」
「誰かに、精神魔法で割り込まれたのね~」
「ハッキングされるみたいな?」
「そうそう~。かなり高度な魔法よ~。網を張らなきゃいけないし~」
いや、最初から兵馬に網を張っているのだろうーー、琉生斗はここに転移してくる人物が誰だかわかった。
兵馬が溜め息をついた。
キラッと光が走り、目の前にラルジュナが降り立つ。
「やっほー!ヒョウマお待たせー☆」
「帰っていいよ」
「冷たいー」
「前衛としてはどうなんだ?」
真顔で問う琉生斗に、町子が疲れた顔を見せる。
「ーールート君~。ラルジュナさんは竜殺しよ~」
「じゃあ、東堂より強くて、相方より弱いんだ」
「ルート、基準が間違ってるよー」
ラルジュナは楽しそうに笑った。
「アルカトラズに何の用なのー?」
兵馬がかいつまんで説明すると、ラルジュナは笑顔になった。
「いいねー。ピンクダイヤかー。色付きは地下50階ぐらいじゃないと難しいかなー。昔ね、地下66階でレッドダイヤがたくさん出て、アレクセイと分けたよー」
「ーーもしかして、5カラットのがあった?」
「あったよー。アダマス陛下にあげたけどー」
ムサイエフ・レッドダイヤかーー、あっちの名前が何でついたんだ?
琉生斗は尋ねた。
「それって、ムサイエフって名前?」
「うんー。陛下はそう呼んでたねー」
たまたまなのか、何かが連動するのかー?
「地下30階から行くー?人も少ないから楽だよー」
記憶魔法陣あるしー、とラルジュナが言うので、琉生斗は頷いた。
「僕はほんとに役に立たないから、待ってるよ」
と、逃げようとした兵馬をがっしりと掴み、ラルジュナは魔法陣を起動したーー。
ダンジョン内は灯りがともり、はっきりと見渡せるようになっていた。
「うわぁ!本格的なダンジョンだ!」
「あれー?魔物がいないねー」
いつもならすぐに襲ってくるんだけどー。
ラルジュナが辺りをみまわす。
「ルートがいると……」
兵馬がラルジュナの上着の裾を引っ張っる。それを琉生斗は殺意をもって見ていた。
「あっ、そうかー。ドラゴンはもっと深く潜らないといないよー、残念ー♡」
誰も楽しみにはしていないがーー。
「町子はドラゴン倒せるのか?」
「戦った事がないわ~」
「普通、会わないよねー」
昔、自分めがけて出て来たなぁーー、琉生斗は懐かしさに頷く。
「古代からあるダンジョン~!」
町子が嬉しそうにはしゃいだ。
「お宝はあるの?」
「この辺りは上級者なら来れるから、たいして残ってないかもねー」
「なら、もう少し地下にすればよかったんじゃ」
「次の魔法陣は、100階なんだー。間を記憶させるの忘れててねー」
「意外にうっかりさんなんだな」
相方と同じだ。類は友を呼ぶ、かーー。
「そうー、支えて貰うほうが好きなんだー♡」
ラルジュナは兵馬にくっついた。
琉生斗は頬を引きつらせる。
「そうだー、ルートー。旦那に行き先行ってないでしょー?」
ラルジュナが兵馬と手をつなぎながら話しかけてくる。
某食器用洗剤のCMかよ、と琉生斗は苦々しくそれを見ている。
「出かけるとは言ったよ」
「そうなのー?じゃあ、あいつが聞いてなかったのかなー?」
ラルジュナが目をくるくると動かした。
「ん?ラルジュナさん、相方といたの?」
「うん。おたくの王太子に頼まれた事があってねー、ついでにあいつの用事もすませたんだー」
「それは、お世話になりました。何の用事だったんだ?」
「それはねーー。秘密だよー☆」
明るく言われる。
なぜだか、背後に星が見えるような気がする。
暗いダンジョン内に、これだけふさわしくない人がこの世にいるとは。
「ーー言うと思った」
兵馬ーー。
おまえ、この人の何がいいんだ?
琉生斗は眉間にシワを寄せた。
魔法陣が光り、ダンジョンから出てきた集団がいる。袋を担いで、琉生斗達の横を無言で通り過ぎて行った。疲れているのか、かなり青い顔をしている。
「へぇ~!感動~!すごい力ね~」
町子の目が爛々と輝いた。
「ーーたしかにーー。威圧感が凄いね」
兵馬が顔をしかめた。
「ん?そうなの?」
琉生斗は不思議そうな顔をした。
「わからないの?」
「うん。よくわからん」
「でも、ルート君、魔導師や魔法剣士の強さはわかるでしょ~?」
「ん~?ーー深い所からなら、何か感じるけど」
「ーー最初は楽そうね~。兵馬君、東堂君は~?」
「通信ができないー。忙しいのかな」
兵馬はかなりの距離を、精神魔法でやり取りできるようになっていた。
「他の前衛か~。誰かいるかしら~」
「いよいよ、おれの出番か」
琉生斗はカッコつけてみた。
二人共相手にはしてくれなかったがーー。
「ーーあっ、ううん。いいってー。だからー!」
兵馬の口調がきつくなる。
「どうしたんだ?」
「誰かに、精神魔法で割り込まれたのね~」
「ハッキングされるみたいな?」
「そうそう~。かなり高度な魔法よ~。網を張らなきゃいけないし~」
いや、最初から兵馬に網を張っているのだろうーー、琉生斗はここに転移してくる人物が誰だかわかった。
兵馬が溜め息をついた。
キラッと光が走り、目の前にラルジュナが降り立つ。
「やっほー!ヒョウマお待たせー☆」
「帰っていいよ」
「冷たいー」
「前衛としてはどうなんだ?」
真顔で問う琉生斗に、町子が疲れた顔を見せる。
「ーールート君~。ラルジュナさんは竜殺しよ~」
「じゃあ、東堂より強くて、相方より弱いんだ」
「ルート、基準が間違ってるよー」
ラルジュナは楽しそうに笑った。
「アルカトラズに何の用なのー?」
兵馬がかいつまんで説明すると、ラルジュナは笑顔になった。
「いいねー。ピンクダイヤかー。色付きは地下50階ぐらいじゃないと難しいかなー。昔ね、地下66階でレッドダイヤがたくさん出て、アレクセイと分けたよー」
「ーーもしかして、5カラットのがあった?」
「あったよー。アダマス陛下にあげたけどー」
ムサイエフ・レッドダイヤかーー、あっちの名前が何でついたんだ?
琉生斗は尋ねた。
「それって、ムサイエフって名前?」
「うんー。陛下はそう呼んでたねー」
たまたまなのか、何かが連動するのかー?
「地下30階から行くー?人も少ないから楽だよー」
記憶魔法陣あるしー、とラルジュナが言うので、琉生斗は頷いた。
「僕はほんとに役に立たないから、待ってるよ」
と、逃げようとした兵馬をがっしりと掴み、ラルジュナは魔法陣を起動したーー。
ダンジョン内は灯りがともり、はっきりと見渡せるようになっていた。
「うわぁ!本格的なダンジョンだ!」
「あれー?魔物がいないねー」
いつもならすぐに襲ってくるんだけどー。
ラルジュナが辺りをみまわす。
「ルートがいると……」
兵馬がラルジュナの上着の裾を引っ張っる。それを琉生斗は殺意をもって見ていた。
「あっ、そうかー。ドラゴンはもっと深く潜らないといないよー、残念ー♡」
誰も楽しみにはしていないがーー。
「町子はドラゴン倒せるのか?」
「戦った事がないわ~」
「普通、会わないよねー」
昔、自分めがけて出て来たなぁーー、琉生斗は懐かしさに頷く。
「古代からあるダンジョン~!」
町子が嬉しそうにはしゃいだ。
「お宝はあるの?」
「この辺りは上級者なら来れるから、たいして残ってないかもねー」
「なら、もう少し地下にすればよかったんじゃ」
「次の魔法陣は、100階なんだー。間を記憶させるの忘れててねー」
「意外にうっかりさんなんだな」
相方と同じだ。類は友を呼ぶ、かーー。
「そうー、支えて貰うほうが好きなんだー♡」
ラルジュナは兵馬にくっついた。
琉生斗は頬を引きつらせる。
「そうだー、ルートー。旦那に行き先行ってないでしょー?」
ラルジュナが兵馬と手をつなぎながら話しかけてくる。
某食器用洗剤のCMかよ、と琉生斗は苦々しくそれを見ている。
「出かけるとは言ったよ」
「そうなのー?じゃあ、あいつが聞いてなかったのかなー?」
ラルジュナが目をくるくると動かした。
「ん?ラルジュナさん、相方といたの?」
「うん。おたくの王太子に頼まれた事があってねー、ついでにあいつの用事もすませたんだー」
「それは、お世話になりました。何の用事だったんだ?」
「それはねーー。秘密だよー☆」
明るく言われる。
なぜだか、背後に星が見えるような気がする。
暗いダンジョン内に、これだけふさわしくない人がこの世にいるとは。
「ーー言うと思った」
兵馬ーー。
おまえ、この人の何がいいんだ?
琉生斗は眉間にシワを寄せた。
12
お気に入りに追加
255
あなたにおすすめの小説
とある文官のひとりごと
きりか
BL
貧乏な弱小子爵家出身のノア・マキシム。
アシュリー王国の花形騎士団の文官として、日々頑張っているが、学生の頃からやたらと絡んでくるイケメン部隊長であるアベル・エメを大の苦手というか、天敵認定をしていた。しかし、ある日、父の借金が判明して…。
基本コメディで、少しだけシリアス?
エチシーンところか、チュッどまりで申し訳ございません(土下座)
ムーンライト様でも公開しております。


一級警備員の俺が異世界転生したら一流警備兵になったけど色々と勧誘されて鬱陶しい
司真 緋水銀
ファンタジー
【あらすじ】
一級の警備資格を持つ不思議系マイペース主人公、石原鳴月維(いしはらなつい)は仕事中トラックに轢かれ死亡する。
目を覚ました先は勇者と魔王の争う異世界。
『職業』の『天職』『適職』などにより『資格(センス)』や『技術(スキル)』が決まる世界。
勇者の力になるべく喚ばれた石原の職業は……【天職の警備兵】
周囲に笑いとばされ勇者達にもつま弾きにされた石原だったが…彼はあくまでマイペースに徐々に力を発揮し、周囲を驚嘆させながら自由に生き抜いていく。
--------------------------------------------------------
※基本主人公視点ですが別の人視点も入ります。
改修した改訂版でセリフや分かりにくい部分など変更しました。
小説家になろうさんで先行配信していますのでこちらも応援していただくと嬉しいですっ!
https://ncode.syosetu.com/n7300fi/
この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。
幼い精霊を預けられたので、俺と主様が育ての父母になった件
雪玉 円記
BL
ハイマー辺境領主のグルシエス家に仕える、ディラン・サヘンドラ。
主である辺境伯グルシエス家三男、クリストファーと共に王立学園を卒業し、ハイマー領へと戻る。
その数日後、魔獣討伐のために騎士団と共に出撃したところ、幼い見た目の言葉を話せない子供を拾う。
リアンと名付けたその子供は、クリストファーの思惑でディランと彼を父母と認識してしまった。
個性豊かなグルシエス家、仕える面々、不思議な生き物たちに囲まれ、リアンはのびのびと暮らす。
ある日、世界的宗教であるマナ・ユリエ教の教団騎士であるエイギルがリアンを訪ねてきた。
リアンは次代の世界樹の精霊である。そのため、次のシンボルとして教団に居を移してほしい、と告げるエイギル。
だがリアンはそれを拒否する。リアンが嫌なら、と二人も支持する。
その判断が教皇アーシスの怒髪天をついてしまった。
数週間後、教団騎士団がハイマー辺境領邸を襲撃した。
ディランはリアンとクリストファーを守るため、リアンを迎えにきたエイギルと対峙する。
だが実力の差は大きく、ディランは斬り伏せられ、死の淵を彷徨う。
次に目が覚めた時、ディランはユグドラシルの元にいた。
ユグドラシルが用意したアフタヌーンティーを前に、意識が途絶えたあとのこと、自分とクリストファーの状態、リアンの決断、そして、何故自分とクリストファーがリアンの養親に選ばれたのかを聞かされる。
ユグドラシルに送り出され、意識が戻ったのは襲撃から数日後だった。
後日、リアンが拾ってきた不思議な生き物たちが実は四大元素の精霊たちであると知らされる。
彼らとグルシエス家中の協力を得て、ディランとクリストファーは鍛錬に励む。
一ヶ月後、ディランとクリスは四大精霊を伴い、教団本部がある隣国にいた。
ユグドラシルとリアンの意思を叶えるために。
そして、自分達を圧倒的戦闘力でねじ伏せたエイギルへのリベンジを果たすために──……。
※一部に流血を含む戦闘シーン、R-15程度のイチャイチャが含まれます。
※現在、改稿したものを順次投稿中です。
詳しくは最新の近況ボードをご覧ください。

どこにでもある話と思ったら、まさか?
きりか
BL
ストロベリームーンとニュースで言われた月夜の晩に、リストラ対象になった俺は、アルコールによって現実逃避をし、異世界転生らしきこととなったが、あまりにありきたりな展開に笑いがこみ上げてきたところ、イケメンが2人現れて…。

せっかく美少年に転生したのに女神の祝福がおかしい
拓海のり
BL
前世の記憶を取り戻した途端、海に放り込まれたレニー。【腐女神の祝福】は気になるけれど、裕福な商人の三男に転生したので、まったり気ままに異世界の醍醐味を満喫したいです。神様は出て来ません。ご都合主義、ゆるふわ設定。
途中までしか書いていないので、一話のみ三万字位の短編になります。
他サイトにも投稿しています。
某国の皇子、冒険者となる
くー
BL
俺が転生したのは、とある帝国という国の皇子だった。
転生してから10年、19歳になった俺は、兄の反対を無視して従者とともに城を抜け出すことにした。
俺の本当の望み、冒険者になる夢を叶えるために……
異世界転生主人公がみんなから愛され、冒険を繰り広げ、成長していく物語です。
主人公は魔法使いとして、仲間と力をあわせて魔物や敵と戦います。
※ BL要素は控えめです。
2020年1月30日(木)完結しました。
龍の寵愛を受けし者達
樹木緑
BL
サンクホルム国の王子のジェイドは、
父王の護衛騎士であるダリルに憧れていたけど、
ある日偶然に自分の護衛にと推す父王に反する声を聞いてしまう。
それ以来ずっと嫌われていると思っていた王子だったが少しずつ打ち解けて
いつかはそれが愛に変わっていることに気付いた。
それと同時に何故父王が最強の自身の護衛を自分につけたのか理解す時が来る。
王家はある者に裏切りにより、
無惨にもその策に敗れてしまう。
剣が苦手でずっと魔法の研究をしていた王子は、
責めて騎士だけは助けようと、
刃にかかる寸前の所でとうの昔に失ったとされる
時戻しの術をかけるが…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる