ロクイチ聖女 6分の1の確率で聖女になりました。(第一部、第二部、第三部)

濃子

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バッカイア・ラプソディー(長編)

第23話 心から自分を預けられる男☆

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 離宮に戻ってからも、琉生斗は悲しそうにしていた。アレクセイに身体を洗ってもらうときも、抱かれているときも、元気がまったくない状態だった。
「ルート……」
 優しく背中を撫でながら、アレクセイは琉生斗を抱きしめていた。

「アレク、何て言うか、もどかしいな。もっと頼ってくれればいいのに」
「ヒョウマのプライドもあるだろう」
「ーーそうだけどさ」

「ルートがでれば、皆黙る。だが、それは解決ではない」
 琉生斗は顔をアレクセイの胸に押し付けた。
「ーーうん。そうだよな……。おれが正しくなっちまうんだよなーー。それが怖い事だって、おれわかってるつもりなのにな……」

 微笑みながらアレクセイは琉生斗の艶がある髪をすいた。汗でしっとりしている。
 アレクセイの上に、琉生斗は座った。
「ーー欲しくなってきちゃた……」
 照れながら言われ、アレクセイのモノに触れる。

「いくらでも……」



 琉生斗は下から突き上げられ、何度もクる快感に身を震わせながら嬌声をあげ続けたーー。

 ーー兵馬にも心から自分を預けられる男ができねえかなーー。

 どんなヤツがいいかなー、しっかりした大人の男で、双子は好きなタイプが似るっていうからファウラみたいな感じはどうだーー。


 考えながら、やはり男を想像してしまうーー、おれもかなり重症だな、と琉生斗は思ったそうだ。






 次の日、アレクセイはアダマスから呼びだされた。
「アレクセイーー。何だ?昨日のあれは?」
「事実です。ミントは無理かと……」

 同席したクリステイルも、それはそうだろう、と頷く。

「娘をお飾りの王妃にしたいのならば、お好きなように」
 アダマスは顔をしかめた。
「昨日も言いましたが、なぜ今なのですか?」

「ーー私は気づいているぞ、アレクセイ……」
 アレクセイは父親の言葉に目を細めた。
「ーー何をです?」
「ーーヒョウマとラルジュナ王太子の事だ」

 クリステイルが目を見開いた。
「ーーさすがに色恋を見る目は肥えておられる」

「誉めていないな?身体の関係がないにせよ、距離が近すぎるのが気になってな。アルジュナに確認したら、寝室の出入り、それに転移魔法まで使えるようにしているらしい」

「えっ?」

 王太子の寝室に出入りって……。

「うちでは家族か、正妃だけですよね…」
 クリステイルは兄を見たが、アレクセイからの答えはなかった。

「ーーヒョウマを国から出したくはない……」
 アダマスが深く息を吐いた。
「ルートの為には必要だろう?」

 アレクセイは目を丸くした。父がそんな事を考えているとは……。

「その為に、娘を犠牲にすると?」
「元々、良いとは思っていたからなー」

 何よりおまえの親友だからな、とアダマスは話を締めた。

「だが、ラズベリーは快諾していない。渋々といったところだ……」
「でしょうね」

 クリステイルは昨日のラズベリーの様子を思い出す。いつものように優しい雰囲気なのに、目がまったく笑っていなかった。

「赤児の頃から熱ばかり出す子でなー。心配でよく一緒に寝たもんだ」
「…………」


 息子はどうでもいいのだろうかーー。


 熱を出しても自分で何とかしてきた王太子は複雑な顔をし、熱で寝込む間もなかった第一王子は、ルートが熱を出したらそうなるな、と考えていた。

「子供が大きくなると、違う問題が出てくる。それはそれで大変だな。だが、ミントは決意をした。国の為になる決意だ。それは誇りに思ってほしいのだがーー」







 アレクセイからラルジュナの見合い相手を聞いた琉生斗は、飲ませてもらっていた水を吐き出した。

「ぶっ!ミントだった?陛下何考えてんだ?」
「ルートの為に、ヒョウマが国外に出るのを止めるらしい」

「はあ!よけいなお世話だ!おれはあいつが何を選択しても味方でいるって決めてんだよ!東堂や、葛城、町子、花蓮だってそうだ!おれのために選択肢を少なくして欲しくない!」

 琉生斗は俯いた。

「クッソ!ミントはそれでいいのかよ!誰か好きなヤツとかいなかったのか!」
 アレクセイは目を伏せた。
「アレクも妹をやるんだから、ラルジュナさんの事は相当信用できるんだろうな?」

「ーーそれは間違いなく」
「そうかーー。アレクがいうんじゃ悪い人じゃないんだろうけど」

 ミントが琉生斗に好意を抱いている事を、知らないのは琉生斗だけである。

「よし、もう三人で幸せになろう!アレク!」
「はあ?」
 アレクセイの美しい顔が歪んだ。
「やだ、その顔。興奮するなぁ」
「三人とは?」
「おまえが兵馬を第二夫人にするの。どうせ仕事で一緒にいる機会は多いじゃん」

 それはそうだがーー。

「もちろん、身体は無しだ!」

 絶対だぞ!、と言う琉生斗もかなりひどいヤツである。

「ーーどのみち無理だが」
「できたらやる気かよーー」
 琉生斗は目を細めた。

「なんか、おれだけ幸せで、申し訳ないなぁー」
 アレクセイの背中に腕をまわすと、自分の背中もぎゅっと抱かれる。

「ーー好きだよ、アレク」
「私の方が愛が深い」

 いちゃいちゃいちゃいちゃ、しつこい二人は、恥ずかしいぐらい互いを愛する言葉を交わしながら愛し合う。


「うまくいかないときは、下手に動くな、動向を見ろ、ってじいちゃんがよく言ってたなー」
「お祖父様か?」
「そうそう、俯瞰ふかんで見る、ってやつよ」

「ーー難しい話だな」
「やっぱり好きな方を入れ込んで見るだろ?だからおれなんかラルジュナさんを悪者にしたいんだけど、そうじゃないんだよな」

 アレクセイが頷いた。

「立場、考え方、国の状況。最善を選択するなんて、簡単にはいかないよ」
「そうだな」
「けど、バッカイアってかなりノリがいいっていうか、言ってしまえば秩序より自由だろ?」
「ああ」

「ミント、ついていけんのかねー。国から何人か付けるの?」
「知らないな」

「マリー・アントワネットみたいに、完全にひとりじゃ可哀想だ」
「ああ、死刑になった王族か……」
「おれらは何とも思わず教科書に載ってる話だけど、アレクなんかアントワネットの気持ちもわかるんじゃないのか?」

「ーーそうだな。取り巻く環境が、善か悪か、よく見極めないとな」
「権力者にはアホばっかり寄るもんな」
「父上ももう少し厳しく育てられた方がよかったのだろうな」

 アレクセイの溜め息に、琉生斗は笑った。

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