ロクイチ聖女 6分の1の確率で聖女になりました。(第一部、第二部、第三部)

濃子

文字の大きさ
上 下
224 / 410
列車は走るよ。何乗せて? 編

第14話 列車は走るよ。何乗せて? 5

しおりを挟む
 バッカイア国の国民の歓迎を受けながら、琉生斗達は魔導列車を降りた。異国のきつい香りに琉生斗はくすぐったいものを感じる。

「なんか、ニオイがきつくね?」
 アレクセイに小声で聞くと、そうだな、と返事が返ってきた。

「バッカイアは香油や香水が盛んな国だ」
「はー」

 たしかに、ラルジュナも香水くさい。だが、ここでは普通のこと。

 おれの鼻がロードリンゲンに染まってんだろうなーー、と琉生斗は思う。

 娯楽の国、バッカイア国が誇る大型遊具施設バスラパーク。ロードリンゲンとは規模が違い、複合遊具の大きさや数、アスレチック、ボルダリングの充実、何よりも客のテンションが高い。

 この時期ならではの水の遊具や、きらびやかな水着の女性に、東堂は興奮して鼻血を出した。
「生きててよかったー」
「おまえは破廉恥な奴だな」

 トルイストが呆れたように言う。

「え!?師団長、興奮しませんか!」
「何をだ?」
「ほら、セクシーな水着のお姉さまがいっぱいですよー」

 東堂は鼻の下を伸ばす。

「自分の女でもないのに、じろじろ見ては失礼だろう」

 トルイストの言葉にファウラも頷いた。

「あー、そうなんすねー」

 こういう国民性なんだなー、さすがは聖女の国だ、と東堂は深く感銘を受けた。

 まあ、あそこに水着の美女の視線をすべて集めるイケメンがいるけど、本人興味のきょの字も無さそうだよなーー。


 アレクセイは琉生斗の為にアイスを買い、琉生斗は嬉しそうにそれを食べていた。アレクセイに食べさせたりして、ちょっとは我慢できないのかあのバカップルは、と魔法騎士達は含み笑いがとまらない。


「あれ、いつまで続くと思います?」
 東堂はトルイストに尋ねた。

「知らん、というかわからないな。殿下のそういう噂は一度も聞いたことがないので、判断ができない」

 生真面目にトルイストが答える。

 この人とも親しくなったよなー、と東堂は思う。こんなくだけた話をする間柄じゃなかったのにーー。

「臣籍降下するなら是非教皇にと、神殿から打診があったそうです」

 ファウラが話す。内情に詳しいのは、王妃ラズベリーから聞いたのかもしれない。

「それぐらい、清らかなのでしょうね」

 おまえ違うのかよ、と東堂は意外そうな目でファウラを見た。美花は女性達と遊具で遊んでいる、これはチャンスだ。

「えっ。大隊長は色々ありましたか?」
 声を顰める。

「それなりにです」
「どっかの令嬢とかですかー?」

「トードォ、そんな訳ないだろ。令嬢なんかに手を出したら、即結婚させられるに決まっている」

「そうですね。難しいんですよ。お付き合いする人って。父にバレたら、邪魔されますしね」
「はー、高貴な人は大変だ。下々は気楽でいいっすね」

 頭をかいた後、東堂はにやりとした。

「じゃあどうすんです?」

 東堂の疑問に、公爵家と侯爵家のご令息は目を見合わせた。

「ーー妓館だな。自国ではなく、それも最高クラスのな」
「口が堅い、病気もない、そこですね」
「付き合うなら婚約させられるからなー」
「極端なんですよね」

 あぁ、やっぱりそうなんだな。向こうでも、偉い奴ほど夜の街に行くもんな、と東堂は納得した。


「じゃあ、きっと殿下も妓館でサクッとしてたんですねー」

 トルイストとファウラが口を噤んだ。何とも判断のできない顔だ。

「我々には何ともーー」
「おまえ、聞いてみたらどうだ?」
 二人が疑問を東堂へぶん投げた。
「機会があったら聞いてみます」


 そのときはぜひ教えてくれーー。






 琉生斗はひまわり畑の中にいた。

 広大な土地に、見渡す限りのひまわりだ。

「ルートは花が好きだな」
「そうかもなー。ばあちゃんがよく、胡蝶蘭とかデンファレとか鉢植えもらうんだけど、世話すんのおれだった」

「ーー花はどうした?」
「近所の人で、欲しい人にあげた。万年筆とか、皿や、服や家具なんかは、学校のバザーに持って行ったら、すげぇー勢いでなくなったよ」

 琉生斗は笑った。

「ーーひとつぐらい、身に付けてたらよかったな」

 何気なく呟く。

 アレクセイが後ろから琉生斗を抱きしめた。

「もう、いい加減痛いカップルだと言われてんぞ」
「言われてもいい。きみとずっとこうしてたい」
「そう?」

 こいつもたいがい変わってんなー、おれの何がいいんだーー。




『加賀にスカート履かせてみないか?』
 中一のときのクラスメイトが言った。

『おお!協力するぜ!履かせて犯してみる?』
『やりたい!』

 ゲラゲラ笑う彼らは、犯す、という言葉が、相手にどれほどの恐怖を与えるか、知らないのだろう。

 無知なウジ虫達め。
 絡んできたクラスメイトを、全員病院送りにして停学になった。

 当時は、あの親父の子供だし仕方がない、と言われていた。暴力を受けて育つと切れやすくなるらしく、その後は切れないように努力した。
 
 自分は自分が思う、理想の自分になってきているのだろうかー。
 
 夜の公園でうずくまるあいつは、どこへいったのだろうーー。






「ルート、ベンチに座ろう。何か食べたいものはないか?」
「あぁ」

 何がいいかなー。

「香水とか盛んだと、味が濃そうだ」
「そうだなー、香辛料がよくきいているな」
「アレクは好き嫌いないなー」

 食べれないのは可哀想だけどーー。琉生斗の言葉に、アレクセイは薄く笑った。

「それどころではなかったからなー」

 自分の事を話すなんて珍しいな、と琉生斗は目を丸くした。

「ルート……」
 静かに見つめられて、琉生斗の胸は早鐘を打つ。
「な、なんだよー」

「何か悩みがあるのか?」


 琉生斗はアレクセイの目をじっと見つめた。何か、自分はおかしかったのだろうか、彼が不安気に見つめるほどにー。

 あっーー!
しおりを挟む
感想 19

あなたにおすすめの小説

とある文官のひとりごと

きりか
BL
貧乏な弱小子爵家出身のノア・マキシム。 アシュリー王国の花形騎士団の文官として、日々頑張っているが、学生の頃からやたらと絡んでくるイケメン部隊長であるアベル・エメを大の苦手というか、天敵認定をしていた。しかし、ある日、父の借金が判明して…。 基本コメディで、少しだけシリアス? エチシーンところか、チュッどまりで申し訳ございません(土下座) ムーンライト様でも公開しております。

神子の余分

朝山みどり
BL
ずっと自分をいじめていた男と一緒に異世界に召喚されたオオヤナギは、なんとか逃げ出した。 おまけながらも、それなりのチートがあるようで、冒険者として暮らしていく。

幼い精霊を預けられたので、俺と主様が育ての父母になった件

雪玉 円記
BL
ハイマー辺境領主のグルシエス家に仕える、ディラン・サヘンドラ。 主である辺境伯グルシエス家三男、クリストファーと共に王立学園を卒業し、ハイマー領へと戻る。 その数日後、魔獣討伐のために騎士団と共に出撃したところ、幼い見た目の言葉を話せない子供を拾う。 リアンと名付けたその子供は、クリストファーの思惑でディランと彼を父母と認識してしまった。 個性豊かなグルシエス家、仕える面々、不思議な生き物たちに囲まれ、リアンはのびのびと暮らす。 ある日、世界的宗教であるマナ・ユリエ教の教団騎士であるエイギルがリアンを訪ねてきた。 リアンは次代の世界樹の精霊である。そのため、次のシンボルとして教団に居を移してほしい、と告げるエイギル。 だがリアンはそれを拒否する。リアンが嫌なら、と二人も支持する。 その判断が教皇アーシスの怒髪天をついてしまった。 数週間後、教団騎士団がハイマー辺境領邸を襲撃した。 ディランはリアンとクリストファーを守るため、リアンを迎えにきたエイギルと対峙する。 だが実力の差は大きく、ディランは斬り伏せられ、死の淵を彷徨う。 次に目が覚めた時、ディランはユグドラシルの元にいた。 ユグドラシルが用意したアフタヌーンティーを前に、意識が途絶えたあとのこと、自分とクリストファーの状態、リアンの決断、そして、何故自分とクリストファーがリアンの養親に選ばれたのかを聞かされる。 ユグドラシルに送り出され、意識が戻ったのは襲撃から数日後だった。 後日、リアンが拾ってきた不思議な生き物たちが実は四大元素の精霊たちであると知らされる。 彼らとグルシエス家中の協力を得て、ディランとクリストファーは鍛錬に励む。 一ヶ月後、ディランとクリスは四大精霊を伴い、教団本部がある隣国にいた。 ユグドラシルとリアンの意思を叶えるために。 そして、自分達を圧倒的戦闘力でねじ伏せたエイギルへのリベンジを果たすために──……。 ※一部に流血を含む戦闘シーン、R-15程度のイチャイチャが含まれます。 ※現在、改稿したものを順次投稿中です。  詳しくは最新の近況ボードをご覧ください。

主人公のライバルポジにいるようなので、主人公のカッコ可愛さを特等席で愛でたいと思います。

小鷹けい
BL
以前、なろうサイトさまに途中まであげて、結局書きかけのまま放置していたものになります(アカウントごと削除済み)タイトルさえもうろ覚え。 そのうち続きを書くぞ、の意気込みついでに数話分投稿させていただきます。 先輩×後輩 攻略キャラ×当て馬キャラ 総受けではありません。 嫌われ→からの溺愛。こちらも面倒くさい拗らせ攻めです。 ある日、目が覚めたら大好きだったBLゲームの当て馬キャラになっていた。死んだ覚えはないが、そのキャラクターとして生きてきた期間の記憶もある。 だけど、ここでひとつ問題が……。『おれ』の推し、『僕』が今まで嫌がらせし続けてきた、このゲームの主人公キャラなんだよね……。 え、イジめなきゃダメなの??死ぬほど嫌なんだけど。絶対嫌でしょ……。 でも、主人公が攻略キャラとBLしてるところはなんとしても見たい!!ひっそりと。なんなら近くで見たい!! ……って、なったライバルポジとして生きることになった『おれ(僕)』が、主人公と仲良くしつつ、攻略キャラを巻き込んでひっそり推し活する……みたいな話です。 本来なら当て馬キャラとして冷たくあしらわれ、手酷くフラれるはずの『ハルカ先輩』から、バグなのかなんなのか徐々に距離を詰めてこられて戸惑いまくる当て馬の話。 こちらは、ゆるゆる不定期更新になります。

一級警備員の俺が異世界転生したら一流警備兵になったけど色々と勧誘されて鬱陶しい

司真 緋水銀
ファンタジー
【あらすじ】 一級の警備資格を持つ不思議系マイペース主人公、石原鳴月維(いしはらなつい)は仕事中トラックに轢かれ死亡する。 目を覚ました先は勇者と魔王の争う異世界。 『職業』の『天職』『適職』などにより『資格(センス)』や『技術(スキル)』が決まる世界。 勇者の力になるべく喚ばれた石原の職業は……【天職の警備兵】 周囲に笑いとばされ勇者達にもつま弾きにされた石原だったが…彼はあくまでマイペースに徐々に力を発揮し、周囲を驚嘆させながら自由に生き抜いていく。 -------------------------------------------------------- ※基本主人公視点ですが別の人視点も入ります。 改修した改訂版でセリフや分かりにくい部分など変更しました。 小説家になろうさんで先行配信していますのでこちらも応援していただくと嬉しいですっ! https://ncode.syosetu.com/n7300fi/ この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。

せっかく美少年に転生したのに女神の祝福がおかしい

拓海のり
BL
前世の記憶を取り戻した途端、海に放り込まれたレニー。【腐女神の祝福】は気になるけれど、裕福な商人の三男に転生したので、まったり気ままに異世界の醍醐味を満喫したいです。神様は出て来ません。ご都合主義、ゆるふわ設定。 途中までしか書いていないので、一話のみ三万字位の短編になります。 他サイトにも投稿しています。

側妻になった男の僕。

selen
BL
国王と平民による禁断の主従らぶ。。を書くつもりです(⌒▽⌒)よかったらみてね☆☆

龍の寵愛を受けし者達

樹木緑
BL
サンクホルム国の王子のジェイドは、 父王の護衛騎士であるダリルに憧れていたけど、 ある日偶然に自分の護衛にと推す父王に反する声を聞いてしまう。 それ以来ずっと嫌われていると思っていた王子だったが少しずつ打ち解けて いつかはそれが愛に変わっていることに気付いた。 それと同時に何故父王が最強の自身の護衛を自分につけたのか理解す時が来る。 王家はある者に裏切りにより、 無惨にもその策に敗れてしまう。 剣が苦手でずっと魔法の研究をしていた王子は、 責めて騎士だけは助けようと、 刃にかかる寸前の所でとうの昔に失ったとされる 時戻しの術をかけるが…

処理中です...