ロクイチ聖女 6分の1の確率で聖女になりました。(第一部、第二部、第三部)

濃子

文字の大きさ
上 下
214 / 410
海水浴に行きましょう。編

第4話 海水浴に行きましょう。4

しおりを挟む
 青く澄んだ海ーー。


 意中の人は、顔を赤らめながら自分を見つめている。

「セージ、だめだーー」
「いいだろ。せっかく二人になれたんだ。あいつには秘密にしよう」

 琉生斗が首を振った。

「アレクは裏切れないーー」

 セージは琉生斗の顎に手をかけたー。

「でも、オレの事も振り切れないんだろ?」

 唇を奪うと、琉生斗の身体がぴくんと跳ねた。

「好きだせ、ルートーー」


 耳にキスをしながら首へおりていく。琉生斗の澄んだ瞳は閉じていきーー。





 何をするんだろうーー。実際のところー。
 
 セージは想像力を働かせて考えるが、エッチな事とは最終的にどうなるかいまいちわからない。アダマスからは、そろそろ閨の作法はどうか、と聞かれたりもするが、親が用意した人となんか冗談じゃない。


 バーベキューに氷菓子、最高だなー、と海水浴を満喫する琉生斗に対し、面白くないのがセージだ。

 長兄のせいで、ちっとも琉生斗に近付けない。次兄は花蓮と幸せそうに、サンドアートなんか作ってるし。

「けっ」
「セージ、遊ぼう」

 友達のシャーランが言う。レイラーンも待っている。二人ともアスラーンの妹で双子だ。留学先の学院で仲良くなった。

「ああ」
 セージは溜め息をついた。

「あの人が、セージの片思いの相手なの?」
 かなり遠くで泳いでいる琉生斗を見て、シャーランが尋ねる。深い緑色の目は兄と同じだ。

「そうだよ。マジいいだろ」
「ーーよくわからないわ」

 レイラーンがそっぽを向いた。シャーランよりさらに深い緑色の目を細める。 

「お兄様の奥さんでしょ?」
「絶対ないよね」
「別れりゃ問題ねえよ」

 姉妹は顔を見合わせた。

「セージがよくても向こうは嫌でしょ?」 
「そうなったら、オレは親父達と縁を切るつもりだ」

 力強く言うと、双子は笑った。

「セージから切ってどうすんの?」
「露頭に迷うわねー。お金がなくて、それこそすぐに別れそう」

 二人はセージを置いて、ミント達のボール遊びの方に行ってしまった。

「ーー何だそりゃ」
 みんな、オレを何だと思ってんだかーー。










 遠泳中のメンバーは、かなり沖まで泳いでいる。

「ひゃあ!最高!」
 東堂が水しぶきをあげて飛び上がる。モロフやトルイスト、ファウラまでもが、長距離をガンガン泳いでいる。

「いまなら34キロも余裕だな!」
 東堂が叫んだ。

「ドーバーとグリ・ネ岬の最短距離かー」

 琉生斗はアレクセイと伸び伸び泳いでいる。

「なあなあ、潜ったら魚いるかな?」
 琉生斗がにこにこと聞くと、アレクセイは薄く笑った。

「水中で息ができるように、しろと?」
 その顔に、琉生斗はげんなりする。
 ※琉生斗には、水中で神ポセイドンにときめいた浮気未遂前科がある(その遺跡は神経が衰弱する)。

「そんな事言ってませんよ」
「そうかー」

 琉生斗は頬を膨らませた。

「いじわる!」
 ひとりで泳いで行こうとしたが、アレクセイにピタリと張りつかれる。

「怒ったルートはかわいいな」
 慈しむような目で見られ、琉生斗は疲れた顔をする。

「うるせー!」
「あそこの島まで行くと、いい岩がある。何の原石だったかー」
「え!何色だ!」

 琉生斗はスピードをあげる。

「薄緑ーー、翡翠だったかー」
「おっ!いいじゃん、行こうぜ!」

 ふふ、とアレクセイは微笑んだ。 









「ファウラ様、全然遊んでくれないー!」

 テントの下、美花はかき氷を自棄食いしている。

「やばーい!美味しい!うさんくさーー、ヒョローー、ええとー」

「ーークリスで結構ですが」

 クリステイルは果物のジュースを凍らせて、それを風の魔法でかき氷にする。練乳をかけると、女性陣は大喜びだ。花蓮が横で練乳をかけているので、たまにとんでもない量の練乳がかかる。

「あら、またやっちゃったー」
「もう、カレンたらー」

 うきうき、デレデレなクリステイルは、女性陣から痛い目で見られている。

「仲がよろしいんですのね」
 ミントが意外そうな顔をした。次兄といえば、そういう事にはあっさりしてそうなイメージだったのだがー。

 ーーいや、一番色恋に関心が無さそうな人が、どっぷり沼にハマっているのだから、ようは相手なのだろう。



「かき氷!美味しそう!」

 そう、この人達だ。

「聖女様。何の味にします?」
「ありがとー。ん、とね。オレンジとモモと、パイナップル!」

「ーーお腹壊しません?兄上は?」
「アレクと半分こすんの」

 なるほどー、とクリステイルは苦笑い。
 兄もこういうのには弱そうだーー。

「ルート、ファウラ様達は?」

「さあ?外洋に出てんじゃねえ?あいつらなら百キロぐらい余裕かもなー。トルイストもファウラも、すげぇー速いんよ。東堂、モロフに合わせてたから置いていかれてるかもな」

「ファウラ様ー」

 美花は涙を呑んだ。

「まあまあ、ミハナさん。女子会でもいたしましょうよ」
 ベルガモットが艶やかに笑うと、美花もへらへら笑う。

 ーー何て美しいお義姉様ー。男だとは信じられないーー。

「ベル姉様が下さった化粧水、すごいいいです~」
 町子が言うと、女子がざわめく。

「えっ?どんなんなんですか?」
 シフォンとユピナが食い付いた。

「貴女達の肌には、少々早いかもしれないけど、星薔薇堂の商品を長年愛用していますのー」
「まあ」

 ベルガモットの美容講座が盛り上がる中、花蓮は琉生斗のかき氷に練乳をかける。

「花蓮、気前いいなあー」
「ルートくんにはサービスよ」
「ーー仲がよろしいんですのね」

 ナスターシャが言うと、美花は言った。

「ルートと花蓮、親戚よ」
「それは、そうですけどーー」

 これからはそうなるのだがーー。それにしても距離が近いように思う。

「ルートのおばあちゃんと、花蓮のお父さんが兄弟なのよ」
「えっ!」

 驚いたのはクリステイルだ。花蓮はにこにことしている。

「そうなんですかー。祖母と、父親ってー」

「うちの親父がわけーのに子供作っただけ。姉貴十四、兄貴十六、おれ十九のときの子供なのよ。おれのときばあちゃんまだ四十一歳。叔父さん三十八歳ぐらいじゃなかったか?」

「覚えてないわ」

 花蓮はころころと笑う。

「まっ、あのおっさん、おれ嫌いだけどな」
「わたしも嫌いー」

 琉生斗と花蓮は笑った。その様子を、ミントは不思議そうに見ている。

「たしかに、そう言われると、何かが似ている」

 クリステイルは頷いた。

「兄上は知ってたんですか?」
「あぁ」
「教えてくれてもいいじゃないですか」
 アレクセイは首を傾げた。

「自分で聞けばいい」

 それはそうだがー。

 そもそも、カレンはあの中の誰かと親戚ですか?なんていつ聞くんだ?


 琉生斗にかき氷を食べさせてもらって、ご満悦の兄に溜め息が出るクリステイルである。
しおりを挟む
感想 19

あなたにおすすめの小説

とある文官のひとりごと

きりか
BL
貧乏な弱小子爵家出身のノア・マキシム。 アシュリー王国の花形騎士団の文官として、日々頑張っているが、学生の頃からやたらと絡んでくるイケメン部隊長であるアベル・エメを大の苦手というか、天敵認定をしていた。しかし、ある日、父の借金が判明して…。 基本コメディで、少しだけシリアス? エチシーンところか、チュッどまりで申し訳ございません(土下座) ムーンライト様でも公開しております。

神子の余分

朝山みどり
BL
ずっと自分をいじめていた男と一緒に異世界に召喚されたオオヤナギは、なんとか逃げ出した。 おまけながらも、それなりのチートがあるようで、冒険者として暮らしていく。

龍の寵愛を受けし者達

樹木緑
BL
サンクホルム国の王子のジェイドは、 父王の護衛騎士であるダリルに憧れていたけど、 ある日偶然に自分の護衛にと推す父王に反する声を聞いてしまう。 それ以来ずっと嫌われていると思っていた王子だったが少しずつ打ち解けて いつかはそれが愛に変わっていることに気付いた。 それと同時に何故父王が最強の自身の護衛を自分につけたのか理解す時が来る。 王家はある者に裏切りにより、 無惨にもその策に敗れてしまう。 剣が苦手でずっと魔法の研究をしていた王子は、 責めて騎士だけは助けようと、 刃にかかる寸前の所でとうの昔に失ったとされる 時戻しの術をかけるが…

どこにでもある話と思ったら、まさか?

きりか
BL
ストロベリームーンとニュースで言われた月夜の晩に、リストラ対象になった俺は、アルコールによって現実逃避をし、異世界転生らしきこととなったが、あまりにありきたりな展開に笑いがこみ上げてきたところ、イケメンが2人現れて…。

一級警備員の俺が異世界転生したら一流警備兵になったけど色々と勧誘されて鬱陶しい

司真 緋水銀
ファンタジー
【あらすじ】 一級の警備資格を持つ不思議系マイペース主人公、石原鳴月維(いしはらなつい)は仕事中トラックに轢かれ死亡する。 目を覚ました先は勇者と魔王の争う異世界。 『職業』の『天職』『適職』などにより『資格(センス)』や『技術(スキル)』が決まる世界。 勇者の力になるべく喚ばれた石原の職業は……【天職の警備兵】 周囲に笑いとばされ勇者達にもつま弾きにされた石原だったが…彼はあくまでマイペースに徐々に力を発揮し、周囲を驚嘆させながら自由に生き抜いていく。 -------------------------------------------------------- ※基本主人公視点ですが別の人視点も入ります。 改修した改訂版でセリフや分かりにくい部分など変更しました。 小説家になろうさんで先行配信していますのでこちらも応援していただくと嬉しいですっ! https://ncode.syosetu.com/n7300fi/ この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。

せっかく美少年に転生したのに女神の祝福がおかしい

拓海のり
BL
前世の記憶を取り戻した途端、海に放り込まれたレニー。【腐女神の祝福】は気になるけれど、裕福な商人の三男に転生したので、まったり気ままに異世界の醍醐味を満喫したいです。神様は出て来ません。ご都合主義、ゆるふわ設定。 途中までしか書いていないので、一話のみ三万字位の短編になります。 他サイトにも投稿しています。

学園の俺様と、辺境地の僕

そらうみ
BL
この国の三大貴族の一つであるルーン・ホワイトが、何故か僕に構ってくる。学園生活を平穏に過ごしたいだけなのに、ルーンのせいで僕は皆の注目の的となってしまった。卒業すれば関わることもなくなるのに、ルーンは一体…何を考えているんだ? 【全12話になります。よろしくお願いします。】

側妻になった男の僕。

selen
BL
国王と平民による禁断の主従らぶ。。を書くつもりです(⌒▽⌒)よかったらみてね☆☆

処理中です...