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聖女の禁域編

第106話 その日の後……。☆

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「アレクー。仕事はいいのか?」
 本当にくっついて離れないなーー、琉生斗は旦那様の態度に、呆れ返っている。何をするにも少し動くだけでも気にされる、動かれる。未来の自分なんか大変だろうなー、と自分に同情してしまう。

 深い愛情からなのはわかるのだがーー。いま気にしてもしょうがないではないか。

 アレクセイがキスをねだった。
 もはや、朝からだけでも何回目かわからない。
「アレク。仕事大丈夫なら、ちょっとしようか」
 昨日してないしなー、と琉生斗から誘うとアレクセイは目を輝かせた。
 かわいいやつだなーー、と琉生斗は照れた。


「あっ、アレク!イイッ!あんっ」
 対面座位でアレクセイに下から突かれ、琉生斗は気持ちよさそうに喘いでいる。彼の首にきつく腕をまわし、動きに合わせて腰を振る。
「ルート、愛している!」
 噛みつくようなキスをされ、琉生斗は震える。
「あん!!」
 身体が震えるとそこもよく動き、最奥の刺激に琉生斗は頭を振った。これだけ近いとお互いのはく息を吸い合いしてるんだろうな、とアレクセイの汗や肌の匂いに満たされながら琉生斗は思った。
「あっ、ヤバッ、すぐクる!」
 身体が跳ねる。身体の奥が快感を期待して、焦れていく。
「ルートーー」
「アレクーーー!」
 絶頂を迎えても、アレクセイの動きはとまらなかった。
「やだぁ~、待ってよぉ~、やめてぇ~~」
 自分の甘ったるい声にも気づかないぐらい、琉生斗の脳内は沸騰していた。
「もう、大好き!」

 その日、二人の行為は終わらなかった。
 教皇ミハエルも、そのまま三日は放っておいたそうだーー。



「ちょっと殿下ー!陛下怒ってるよー」
 貧乏くじを引かされた兵馬が離宮の前に立つ。
 みんな、人に押し付けてー。こっちはそれどころじゃないんだよ、まったく。
 しばらくしてアレクセイが出てきた。
「ーー幸せそうだね」
「何かあったのか?」
 意表を突かれ兵馬は返事ができなかった。
「ーーないけど。変な事聞くね」
「そうか。すまない」
「はいはい。殿下は謁見室、アジャハン国の王太子が来るんでしょ?急いだほうがいいよ。ルートは神殿ね。さっさと用意して」
「ーーああ」
 アレクセイは目を伏せた。
「そんな顔してもだめ!」
「わかっているー。だが、ルートがーー」
「だったら動きなよ。メソメソしてどうなる問題でもないじゃん」
 正論に、アレクセイは悲しげな顔をした。


 神殿へ向かいながら、兵馬はうんざりしたように言った。
「まったく、すぐにこもるねー。何やってんの?」
「え?セックスだけど」
「わかってて聞いてるんだよ!バカルート!」
「何だよ、エライ気が立ってるな。おまえこそ大丈夫だったか?」
 親友に問われて兵馬は下を向いた。
「ひとりだったのか?」
「ジュナ王太子のとこに行ったよ」
「えっ?」
 琉生斗は目を見開いた。
「ぱっーと遊びたかったんだよ」
 兵馬の言葉に琉生斗は項垂れた。
「ーーごめんな。おれが遊んでやれなかったから」
 兵馬は溜め息をついた。
「君だって、正直つらいでしょ」
「まあ、たしかに最近はたいした魔蝕も起こらなかったから油断してたし、ちょうどよかったよ」
 気い引き締めてがんばらなきゃな、と琉生斗は言った。
「ーー君は偉いね」
「んな事ねえよ」
「僕は自分の事ばっかりだな」

「兵馬…?」
 何で泣いてんだよーー。
「おまえ……、ラルジュナさんとケンカでもしたのか?」

 ーーいくら僕でも他国の王太子とケンカなんかしないよー。ルートのにぶちん。

「ルート……」
 兵馬は言うべきじゃないのはわかっていた。
「どうしたんだ?そりゃ、親父さん達の事はショックだろうがーー」
「あの二人より僕の方が最低なんだよ!」
 大粒の涙がボロボロとこぼれる。琉生斗はその様子を見ながらある事を視てしまい・・・・・、目を見開いたまま息を呑んだ。
「おまえ、まさかーー」
 いや、口にしてはいけない。マナー違反だ。
 だが、ーー。
「おまえな!男と男でもずっと一緒にいたらできちまうんだよ!おれ見てわからなかったのか!」
「そんなつもりはないよ!一回きりだ!」
「はあ!捨てられたのか!あの、タレ目ぶん殴ってやる!」
「何てこと言うんだよ!ルートのバカ!ちょっと人肌が欲しかっただけだ!悪いのは甘えた僕だよ!」
「あー、もう!あー、おれが全面的に悪いなー。おまえ放っといたからー」
 琉生斗は頭をかいた。
 ふと、神殿前の人々の視線に気づき、兵馬を促す。
「ちょっと、店行こうぜー」




「すみません!オレンジジュースとリンゴジュースください。個室借ります!」
 神殿近くの喫茶店ソラリスは、聖女の降臨に慌てて席を用意した。
 席に案内されスタッフがいなくなると、琉生斗はすぐに口を開いた。
「襲われたとかじゃないんだな?」
「紳士だったよ」
「あー、意外にああいうタイプってそうかー」
 軽そうに見えて、最初は優しいみたいな。
「殿下なんか、まともそうに見えてただの変態だもんね」
「ひどいわね、あんた」
 いや、あの人は優しいけど、ハマるとやばそうなタイプだろーー、琉生斗の脳内が警鐘を鳴らす。
「おまえ、最初優しくて、後で高額商品買わされるんじゃないか?」
「そんな人じゃないよ!」
「わかんねえよ。そんなに知ってるのか?」
「ーー知らないーー」
「自分でも深入りはマズイと思ってんだろ?一回きりと納得してんだったら、何が引っかかってんだよ」
 琉生斗も言いながらわかっている。

 情、だ。これが絡んでくると、人間は理屈が通用しない。
 あの詐欺師王太子、よくわかってるじゃねえかーー、琉生斗は苦々しい気持ちでオレンジジュースを飲む。
「つっこんだこと聞いて悪いけど、向こうは一夜限りの遊びで納得してんのか?」
「ーー普通に接しようとは言ったよ」
「どっちが?」
「僕が…」
「向こうは何て?」
「わかった、ってーー」

 ふーん。

 判断ができないーー。琉生斗は話を聞きながらどうしたらいいのかわからなかった。
「問題は何なんだ?」
「僕がひどい人間だってことだよ……」
「いやー、まあ、親父さんのことでへこんでたんだろー。仲良かったもんな」
 その言葉に、兵馬の涙はとまらなくなった。
「おまえどうしたいんだ?」
「ーーどうもしない。普通にするよ」
「できんのか?鉄道の打ち合わせもあんのにー」
「できるよ!僕は大丈夫だよ!つまんない感情になんかブレたりはしない!」

 言い聞かせてんじゃねえかーー。

 親友の必死な姿に、琉生斗は息を吐いた。
「お互い遊びの延長だよ。向こうは王太子なんだから」
「王太子じゃなかったら遊びじゃねえんだな」
「違う!そうじゃない!僕は普通がいいんだ。普通に仕事の話したり、普通に視察に出かけたり、普通に会話してたいんだよ!」


「兵馬……。バカだな、おまえーー………」




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  読んでいただきありがとうございます。
 もう1話ほど補足の話になります。
 お付き合いいただきありがとうございます。

        濃子
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