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日常編5
第98話 王都日和16 ー兵馬は何でもしっているかもー☆
しおりを挟む「よし、帰ろう。まったく、まだまだだなー。僕も」
「そんなに上手くいくわけないじゃないー。タダでもらった金をありがたがる人間なんかいないよー。そのうち当然と思うようになるー。顧客は生かさず殺さずが基本だねー」
明るく物騒な発言のラルジュナは無視しといて、琉生斗は兵馬に言った。
「大丈夫か、兵馬」
「まあね。いい勉強になったよ。僕もしっかり経営の勉学に励むから、君もこっちでしっかりやりなよ」
「兵馬ー」
琉生斗は眉根を寄せた。
「マアリが、神殿が間違うわけないじゃない、って発言した時点でおかしいと思いなよ。警備隊は一言もそんなこと言わなかっただろ?」
「あっ」
琉生斗は頭をかいた。
「他にも、トーマスの顔で悪事を、なんて警備隊が言ってない事まで先に言ってただろ?そこで誰と誰につながりがあるかわかればすぐだったのに。母親は娘がすぐに行動しないから焦ったんだろうねー。マアリはいざとなったらトーマスに罪を押し付ける気でいたからラッドを変化させた、ってとこかなー」
複雑そうな顔で琉生斗は兵馬を見た。
「なあ、兵馬。さっきの好きな人ってさーー」
「うん?」
「おれじゃないよな?」
「はあ?」
「おれ兵馬は好きだけど、やっぱり親友として好きっていうかさー」
「ルート、キモいよ」
「えーー!おまえ好きなヤツにそんな事言ったらダメだろう!」
「僕はルートみたいな甘ったれた泣き虫なんか、好きじゃないよ」
「ひどいよ!兵馬!あんまりだー!」
「仲良しね~。じゃあ、変化の仮面は室長に渡しておくから~」
「ありがと、町子」
「またね~」
町子は箒に乗って空を飛んで行く。
「やっぱ、いいよな。魔法が使える連中は」
「君にそれを言われてもね」
世界の大災害を唯一何とかできる人間が、何を羨ましがるのか。
僕も何か武器がないと、君の役には立てないからねーー。
「ラルジュナ」
「何だいー?アリョーシャ。変な顔してー」
アレクセイは琉生斗から離れた場所で知己に話しかけた。
「実際のところ、ヒョウマとはどこまでいっている?」
「直球だねー。寝室まで行ってるよー」
「そうかー」
「まあ、まだ何にもしてないけどさー」
残念そうにラルジュナが言った。
「遊びもだが、真剣なのも困るのだが」
アレクセイにひたと見据えられ、ラルジュナは笑う。
「ふふふっ。どうだろうねー。いろんな意味で欲しいんだけどねー」
「人の恋路に口は挟まないが、ルートが絡んだ場合、わかっているな?」
「重々にー」
アレクセイは視線を外した。
ラルジュナの目が笑っていない。
じゃれ合う琉生斗と兵馬の姿を見て、アレクセイは軽く息を吐いた。
「ーーっていう話だったんだよ。マジひどくない?」
「そうですな。なるほど、記憶エラーとはね。人間の記憶なんて確かにあてになりませんけど、上書きが可能とは驚きましたよ。しかし、聖女様、首を突っ込むなと申し上げたでしょ?」
出来事の後にふれた情報が記憶に影響する事後情報効果によって、母親に兵馬が犯人だと言われたアミは、記憶を間違えてしまったのだろう。
「解決したからいいじゃないか」
「解決したのはヒョウマでしょ?」
「おれがトーマスの無実を証明したの!」
「アミに触ってないのが視えただけでしょ?聖魔法のおかげですね」
「くぅーー、あんなゲス魔法が役に立つなんて……」
「はい、がんばって処女を見分ける聖魔法を会得しましょうーー」
「絶対嫌だよ。それより、じいちゃん。そろそろ教えてよ、呪いについて」
「ーー女神様の仰ることです。聖女様には影響がないでしょう」
「そういう問題じゃないだろ?アレクだけ呪いを受けるなんて、絶対よくないよ」
「あなたは、呪いが効きにくいですからねー。一緒に行くんだったら夏がいいでしょうね」
魔蝕が少ない時期です。
琉生斗は目を丸くした。
「行ってもいいんだー、へぇー。じゃあ、そんなに急にやらなきゃいけない事でもないのか?」
「死ぬかもしれませんからね。できれば神竜をつくってから行っていただきたい」
ミハエルを睨みながら琉生斗は言った。
「ーーそりゃ、おれの出番だな」
誰が死なせるか。
その言葉に、ミハエルは大きく溜め息をついた。
その夜、アレクセイは琉生斗に目隠しをし、腕を後ろで縛り肩を押さえつけて、好き放題妻の身体を楽しんだ。
「変態!マジ変態!」
視覚がないだけで、触覚や嗅覚が敏感になる。いつもの愛撫に身体が異常に反応し、琉生斗は自身からしたたり続ける液が恥ずかしくてしょうがなかった。
しかし、アレクセイは触る気もなく、放置されたままの可哀想な琉生斗の棒は熱だけあがっていく。
「あんっ、さわってくれてもいいじゃねえかぁ!」
ヤケクソで怒ってみてもアレクセイの手はそこには触れずに、琉生斗の孔を執拗にいじる。
もう布団でもいいから擦りたいーー、膝をつきたいのに腰を浮かされてそれもできない。
「アレクのバカ!絶対許さねえからなぁ!」
「ーーかまわない」
「っ!」
「それでもルートは私のものだからなーー」
耳を噛まれて琉生斗は喘いだ。
声が、声が良すぎて、イッテまうよ、おれー。
ーー少し刺激的な夜だったが、最後は甘々のキスでアレクセイは琉生斗を愛した。
泣きに泣いた琉生斗のまぶたを冷やしながら、アレクセイは静かに言った。
「ルート、私が嫌か?」
「何で?」
変なこと聞くなぁ。
「部屋を作ると……」
「部屋ぐらい普通だろ?」
黙ってしまったアレクセイに、琉生斗はキスをした。
「おまえはいらんこと考えずに、おれを大事にすりゃいいじゃねえか」
「ーーそうだな」
昔はおれの方が飽きられたらどうしよう、とか思ってたんだけどなーー。
ーーいや、自分が知らないだけで、アレクも同じ事を考えていたのかもしれない。
「なあ、アレク」
「ーーどうした?」
「おれ達は二人で幸せになるんだ」
アレクセイが目を開いた。
「おれはおまえがいないと幸せじゃない。おまえだって、そうだろう?」
「ああ、その通りだ」
「何回でも言う、アレク。今生だけじゃねえ、来世でも一緒にならねえか?」
「ーールート!」
誓いのキスのように優しく唇を重ねる。
「ああ、もちろんだ。ルート……」
「うん……」
愛しくてしょうがない存在はひとつ、おまえだけでいい。後は、大切にしたい関係だよなーー。
じゃあな、兵馬。
琉生斗の頭の中で、大人になった眼鏡の少年が手をあげた。そこにハイタッチをして、二人は別の道を歩きはじめたーー。
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