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聖女の国の王族達編

第83話 聖女の国の王族達 4 ー琉生斗と花蓮ー☆

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「いやー、ビビったぜー。兵馬が大学通うって言うだけで大泣きすんだぜ?」
 東堂は美花とファウラがお茶をしているところに割り込んだ。

「あー、ルートはねー。昔から兵馬がいないとあかんたれなのよー」
「兵馬が、じゃないんだな」

「それもあるからあの二人はややこしいのよ。兵馬が私立の小学校行くってなったときも、まあ、落ち込んで、落ち込んで、幼稚園卒園式まで来なかったわよ」
「あれ?兵馬だけか?」
「あたしは私立なんか行けないわよ」
「いや、それこそルートなんか、超セレブじゃん。何であいつ私立行ってねえの?」

 普通に考えれば幼稚舎から通えそうだが。

「あのお父さんじゃ無理よ。お母さんなんか不明なんだし」
「あー、親かーー」

 そりゃ難儀だな、と東堂は頷いた。

「ルート、参観日でも保護者来たことないもん。入学式も卒業式も、執事の人が来てたわ。唯一来た運動会じゃ、出禁になるし……」

 何したら運動会って出禁になるの?

 俺普通の家庭の子なんだな、と東堂は思う。

「けどよ、俺らの高校、公立じゃん。兵馬私立から公立にしたのか?」
「それが、結局私立に通ったのって小1だけなのよ」
「なんで?」

「いじめられちゃったのよね。ああいう世界って、親のマウントすごいじゃない?うちもセレブではないけど、お父さんJr東ニホンだし、悪くはなかったんだけど」
「え?鉄道マンかよ、すげえな」

「まあ、代々医者の家系だ、地主だ、武士の末裔みたいな方々にいじめ抜かれたみたいで」 
「どうしたんだよ」
「気づいたルートが、その子達ボコりにいったわ」

 習い事が一緒の子もいたらしい。

「行きそうだなー」

 小1の分際で、と東堂が言うと、ファウラがくすりと笑う。

「でも、んなことしたら、ルートが、んー?どうなるんだ?」
「兵馬の転校でおさまったわよ」
「おさまるかぁ?」
「おさまるわよ。ルートのお祖父さん、まじやばいから」
「え?」

「お母さんがね、加賀御前かがごぜんは絶対に敵にまわしちゃだめよ、って言ってた。うちのお母さん、議員秘書だったんだけど、ルートのお祖父さん政治家の裏にいるドンみたいな人だって言ってたもん」
「なるほど、ルートはじいさん似か」

 てか、おまえの母親もやべーな。

「それはあるわねー」
「悪の爺さんの孫が聖女とはねー」
「お祖父さんの遺言らしいわ」
「何が?」

「善行をしてくれ、って。わしは地獄にいるからおまえが善行を行って神様の考えを変えてくれ。そして、蜘蛛の糸を垂らすように頼んでくれ、って」
「悪い爺さんだな。芥川だったかその話ーー」

 うちの爺さん、かわいかったな。

「何だ、ルートは爺さん子だったんだな」
「あー、お祖父さんとはわりと仲が良かったかも。じいちゃんがいるときは親父は殴らない、って言ってたわ」

「もう、それが普通のあいつが怖いぜ」

 東堂が言うとファウラも頷いた。

「まっ、何にせよ兵馬の言ってる事の方が正しいわな。俺達もガキじゃなくなってくるんだし、それぞれ違う道を行くのは当たり前だ」
「そうね」
「結婚するやつもでてくるしな」
「はははっ」

 ファウラが破顔すると、美花はその顔を見て笑った。

 あらま、幸せそうだこと、と東堂は羨ましそうに二人を眺めた。
















「ルート、機嫌なおった?」
「そうだな……」
「すねてるならすねてるでいいよ」
 困った顔のアレクセイを見て、兵馬が肩を竦めた。

「旅行、無理っぽい?」
「ーー絶対に無理ということはない」
「何が嫌なのさ、僕も東堂も姉さん達もルートの事なんか恋愛感情で見てないのに」
「いや、ルートは…」

 アレクセイは下に視線を向けた。

「……カレンが、好き、だろ……?」
 言いにくそうにアレクセイは、今まで言いたくても言えずにいた事を尋ねた。

「カレン?殿下、聞いてないの?」
「何をだ?」
「聞きなよ。ほんと、殿下もルートもやってる事はすごいのに、その辺は中学生みたいなところがあるよね」

 呆れる兵馬にアレクセイは眉をしかめた。

「ーーかもな」















「あっ、お帰りー。今日はアレクの好きな豆腐のサラダだぞー」
「ああ、ありがとう」

 家でゴロゴロしていた琉生斗は、最近豆腐や、豆乳等、大豆食品の加工にハマっている。アレクセイが豆腐が美味しいと言ったことも大きな理由なのだが。

「ゴマのドレッシングが決め手でなー。何だよ、変な顔してーー」

「ルート。ルートはカレンが好きなのか?」
「え?」
「カレンがーー」
「そりゃ好きだけど……」

 琉生斗が言うと、アレクセイは目を細めた。

「そうかーー」
「何の話なんだっ、うわぁ」

 琉生斗は抱き上げられ、寝室に運ばれた。アレクセイは琉生斗をベッドに下ろすと服を脱がせ、強引に足を割った。

「え?」
 わけがわからない琉生斗は、そのまま彼の行為に流されていく。

「あっ、あん!」
 乳首を軽く噛まれ、琉生斗は喘いだ。

「ちょ、ちょっと、アレクぅーーーん」
 変な声に琉生斗は照れた。

「ルート……」
「ちょっと待てよ!キス!キスがないと嫌だ!」
 アレクセイからのキスに、琉生斗は安心したように彼の目を見つめて、舌を差し出した。

「ルート、愛しているーー」
「おれも。大好きだよアレク……」
 キスの合間に囁やき合う。自然に身体を重ねて、二人は愛し合った。

「アレクー。そこ、ちょっと激しく突いてー」
「ここか。もう少し足をあげるぞ」
「アレクの肩にかけていい?」
「ああ、そうしようーー」

 体位の研究にも余念がない。




 行為の後、琉生斗は尋ねた。
「何だったんだ?花蓮がどうとか?」

「ーールートがカレンの事を好きなら、私が二人の仲を邪魔をしたのかと思って、な」

「え?おれと花蓮、親戚だけど」
 琉生斗の言葉にアレクセイは動きをとめた。



「親戚?」

「うん。あんまり言いたくないんだけど、おれのばあちゃんと花蓮の親父が兄弟だから、おれの親父と花蓮が従兄弟になるんだよ。だから、おれは花蓮の従甥じゅうせい
「ーーそうなのか……」
「花蓮が可哀想だから、向こうではあんまり言わなかったな。うちの集まりには花蓮の親父だけ来てたよ」
 琉生斗の言葉にアレクセイからは力が抜けた。

「まあ、あいつもかわいいから、寄ってくる変態共は全員ぶっ飛ばしてきたけどさ」

 えっへん、と琉生斗は胸を張った。

「ルートは好戦的だな」
「だろ?」
「愛している」
「おまえは突然何言うのよー」

 アレクセイは琉生斗の首にキスをしながら、少し動きをとめた。

「ん?どうした」
「いや……」
 アレクセイは兵馬の首にあったものに気づいていた。

「ーー嫌な虫に目をつけられたな」
 独り言のようにこぼす。
「虫いるのか?」
 キョロキョロまわりを見る琉生斗を見て、アレクセイは眉を寄せた。

「いや、ここにはいない……」
「うん?」
 確信がもてない事をアレクセイは言わない。
「さて、どうなるかなー」


 遠くを見たアレクセイの視線の先を、琉生斗が知る事になるのはまだ先の事だーー。
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