ロクイチ聖女 6分の1の確率で聖女になりました。(第一部、第二部、第三部)

濃子

文字の大きさ
上 下
179 / 447
魔法騎士大演習 亡霊城編(ファンタジー系 長編)

第79話 亡霊城攻略 最終話 ー琉生斗の懸念ー☆

しおりを挟む
 光が次第に収まっていくー。亡霊王は跡形もなく、消し飛んでいた。

「あら、トードォがやったの?」
「いや、あいつは何に取り憑かれたんだ?」
 マリアとトルイストは顔を見合わせた。
「おやおや、これからというときにーー」
 ファウラがにこやかに笑う。
「嘘つけ、おまえさん重傷だろ。よく立てたなー」

 アンダーソニーが感心しながら魔導師を呼ぶ。ファウラと美花は連れて行かれた。

「あぁ、助かるとは思ってなかったわー」
 マリアがへたり込んだ。
「あらあら、だらしがない。狂犬と言われたあなたがねー」
 ルッタマイヤは溜め息をついた。
「さすがに、歳はとりたくありませんわね」
「あら、おっほほほほっ」
 ルッタマイヤは笑ったが、目は笑っていなかった。

「おい、トードォ、大丈夫か?」
 ヤヘルは心配して駆け寄る。トルイストは足を引きずりながらだ。

「この人は無理ねー。早く運んであげて」
 かわいく微笑まれ、二人はゾッとした。
 ズルっと東堂は床に落ちた。
「おおっ!」
 ヤヘルが受け止めて担ぐ。
「トルイスト、おまえは救護室行きだな。しかし、よくやった」
 アンダーソニーが告げた。
「はっ!」
 トルイストは頭を下げた。

 ベルガモットーー、もう早く抱きたい!

 頭の中はそれだけだったー。













「えっ、シャーマン?」
『そう、あの子素質があるわ。あそこまで完璧にあたしを降ろせるなんて、稀代のシャーマンだわ。まぁ、ルートの降ろし方がよかったんだけど』

 へー、東堂がねー。霊感とかまったくなさそうだけど、と琉生斗が言うと、兵馬は首を振った。

「東堂って絶対に写真に写らないよ」
「えっ?」
「ルート、撮った事ある?」
「そういや、テーマパーク行ったときも、一枚も撮らなかったなー」
「噂で聞いたけど、東堂と撮ると必ず何かが写るらしいよ」
「あいつ、そんな特技があったのかーー」

 人は見かけによらねえなぁ。

「みんな、お疲れ様!ありがとうー!」
 ラルジュナはどこまでも軽かった。

「ヒョウマ。鉄道早めにお願いねー」
「うん。殿下にがんばってもらうよ」

 二人共、人の旦那を何だと思っているんだかー。

「あっ、大型遊具の件だけどーー」
「うん!明日でもおいでよー。それともいまから来るー?」
「明日ねー。オッケーよろしく」

 ーー仲良しだな。おれの兵馬なんだけど。

 琉生斗はラルジュナに焼きもちを妬いた。


『ねえ、ルート、お願いがあるのーー』
 キャロラインが琉生斗の前で両手を組む。
「何?おれにできること?」
『トードォに恋人ができたら、その人にワリアを降ろして欲しいの』

「ーーそれ、おれができるかぁ?」
『異界から神獣を喚べるんだから、霊の一体ぐらい喚びなさいよ』

 琉生斗は頭を掻いた。

「おたくの神様、無茶苦茶だな」 
「そうでしょー。ちなみに亡霊王は、昔キャロラインに悪さをした王族だよー」
「そうなんだ」

 好きすぎちゃったのね。犯罪だけど。

『そうよ。謝罪したいって言うけど、顔も見たくないんだからほっといて欲しいのよ。毎回律儀に湧いてくるしー。どうにかならないかしら?』
 琉生斗は頷いた。

「わかる。顔も見たくないから、別の形で謝れ、って奴、結構いる」
「ルートにはいるよねー」

 兵馬が琉生斗の言葉だけで、内容を理解した。

「そう、ハオルとか、死んでも会いたくねぇ」
 名前を出すのも嫌だ、と琉生斗は鳥肌が立った。

『ハオル?どこかで聞いた名前ねー』
「えっ?知ってんの」

 神様がー。琉生斗は目を丸くした。

『うーん。女神様の集まりだったかなー』
「そんな、有名人かあいつー」
『そうよ。人間をやめたんだわ』

「えっ?」

 琉生斗の顔色を見て、アレクセイは剣を構えた。
『研究してたもので、そうなったらしいわよ。どの女神様が言ってたかまではー。あぁ、ルートには時空竜の女神がいるじゃないー』

 …………。

「ーーあぁ。聞いてみる」
『じゃあね、ルート。約束よーー』
 キャロラインは、空気に解けた。

「ルートもたまにはうちの宮殿に遊びに来てねー。バイヤーン」
 軽く挨拶をして、ラルジュナはバッカイアの王宮へと帰って行った。

「さて、我々も帰りましょうー」
 ミハエルが立ち上がった。
「ーーじいちゃん……」

 他の者がわからなくても、教皇ミハエルならキャロラインの声が聞こえていたはずだ。

「大丈夫ですよ。聖女様、まずは帰りましょう。ゆっくり休んで、話はそれからですー」
 ミハエルは微笑んだ。

 琉生斗は、アレクセイに抱きついた。


 ーーアンダーソニー。
(はい、殿下ー)

 ーー後は頼む。ヒョウマもー。
(お任せ下さい。お疲れ様でございましたーー)











 アレクセイは琉生斗を抱えて離宮に転移した。
 琉生斗をしっかりと抱き締める。
「凶霊キャロラインは何を?」

「ーー女神様の間で噂になってたってー」
 訝しげにアレクセイは尋ねる。
「何をだ?」
「ハオルが人間やめたってーー」

 アレクセイは黙った。琉生斗もそれ以上何も言えずに、黙ってしまう。
 しばらくして、アレクセイは琉生斗の顔をしっかりと見た。

「大丈夫。何があろうとも、ルートは私が守る」
 キスがはじまる。浅く深く、それは唇だったり耳だったり、二人は夢中になってキスをした。

「はぁー」
 口から垂れた涎を吹きながら、琉生斗は言う。

「風呂行く。さすがに埃っぽいー」
「気にしない」
「そこは、気にしろ」
 琉生斗が洗いっこしよう、と言うとアレクセイは急に張り切りだした。

「優しく洗うからー」
 アレクセイは琉生斗の腰に手を回す。
「いや、ケツは自分でやる」
「頼む、させてくれー」

 真剣に頼む案件ではない。

「おまえはなんでそんなに変態なんだよー」
 たまに旦那の行動に泣きそうになる。
「愛している」 
「おれもー」

 服を脱がし合い、浴室に入る。二人はお互いに泡を付け合って、遊びながら身体を洗う。


 えっ、すげぇーバカップルじゃんーー。ホント、こんなんて今しかできないよなぁーー。
 そう考えると、新婚の今しかできない事って多いなー、と思う琉生斗であるー。


 これは、まあ、あれだ。若いと思っているうちにやりつくさねえとなぁーー。






 不吉な懸念が残る中、魔法騎士大演習は幕を閉じたーー。

しおりを挟む
感想 20

あなたにおすすめの小説

平民男子と騎士団長の行く末

きわ
BL
 平民のエリオットは貴族で騎士団長でもあるジェラルドと体だけの関係を持っていた。  ある日ジェラルドの見合い話を聞き、彼のためにも離れたほうがいいと決意する。  好きだという気持ちを隠したまま。  過去の出来事から貴族などの権力者が実は嫌いなエリオットと、エリオットのことが好きすぎて表からでは分からないように手を回す隠れ執着ジェラルドのお話です。  第十一回BL大賞参加作品です。

聖女召喚されて『お前なんか聖女じゃない』って断罪されているけど、そんなことよりこの国が私を召喚したせいで滅びそうなのがこわい

金田のん
恋愛
自室で普通にお茶をしていたら、聖女召喚されました。 私と一緒に聖女召喚されたのは、若くてかわいい女の子。 勝手に召喚しといて「平凡顔の年増」とかいう王族の暴言はこの際、置いておこう。 なぜなら、この国・・・・私を召喚したせいで・・・・いまにも滅びそうだから・・・・・。 ※小説家になろうさんにも投稿しています。

【完結】相談する相手を、間違えました

ryon*
BL
長い間片想いしていた幼なじみの結婚を知らされ、30歳の誕生日前日に失恋した大晴。 自棄になり訪れた結婚相談所で、高校時代の同級生にして学内のカースト最上位に君臨していた男、早乙女 遼河と再会して・・・ *** 執着系美形攻めに、あっさりカラダから堕とされる自称平凡地味陰キャ受けを書きたかった。 ただ、それだけです。 *** 他サイトにも、掲載しています。 てんぱる1様の、フリー素材を表紙にお借りしています。 *** エブリスタで2022/5/6~5/11、BLトレンドランキング1位を獲得しました。 ありがとうございました。 *** 閲覧への感謝の気持ちをこめて、5/8 遼河視点のSSを追加しました。 ちょっと闇深い感じですが、楽しんで頂けたら幸いです(*´ω`*) *** 2022/5/14 エブリスタで保存したデータが飛ぶという不具合が出ているみたいで、ちょっとこわいのであちらに置いていたSSを念のためこちらにも転載しておきます。

国を救った英雄と一つ屋根の下とか聞いてない!

古森きり
BL
第8回BL小説大賞、奨励賞ありがとうございます! 7/15よりレンタル切り替えとなります。 紙書籍版もよろしくお願いします! 妾の子であり、『Ω型』として生まれてきて風当たりが強く、居心地の悪い思いをして生きてきた第五王子のシオン。 成人年齢である十八歳の誕生日に王位継承権を破棄して、王都で念願の冒険者酒場宿を開店させた! これからはお城に呼び出されていびられる事もない、幸せな生活が待っている……はずだった。 「なんで国の英雄と一緒に酒場宿をやらなきゃいけないの!」 「それはもちろん『Ω型』のシオン様お一人で生活出来るはずもない、と国王陛下よりお世話を仰せつかったからです」 「んもおおおっ!」 どうなる、俺の一人暮らし! いや、従業員もいるから元々一人暮らしじゃないけど! ※読み直しナッシング書き溜め。 ※飛び飛びで書いてるから矛盾点とか出ても見逃して欲しい。  

オッサン、エルフの森の歌姫【ディーバ】になる

クロタ
BL
召喚儀式の失敗で、現代日本から異世界に飛ばされて捨てられたオッサン(39歳)と、彼を拾って過保護に庇護するエルフ(300歳、外見年齢20代)のお話です。

醜さを理由に毒を盛られたけど、何だか綺麗になってない?

京月
恋愛
エリーナは生まれつき体に無数の痣があった。 顔にまで広がった痣のせいで周囲から醜いと蔑まれる日々。 貴族令嬢のため婚約をしたが、婚約者から笑顔を向けられたことなど一度もなかった。 「君はあまりにも醜い。僕の幸せのために死んでくれ」 毒を盛られ、体中に走る激痛。 痛みが引いた後起きてみると…。 「あれ?私綺麗になってない?」 ※前編、中編、後編の3話完結  作成済み。

十二年付き合った彼氏を人気清純派アイドルに盗られて絶望してたら、幼馴染のポンコツ御曹司に溺愛されたので、奴らを見返してやりたいと思います

塔原 槇
BL
会社員、兎山俊太郎(とやま しゅんたろう)はある日、「やっぱり女の子が好きだわ」と言われ別れを切り出される。彼氏の売れないバンドマン、熊井雄介(くまい ゆうすけ)は人気上昇中の清純派アイドル、桃澤久留美(ももざわ くるみ)と付き合うのだと言う。ショックの中で俊太郎が出社すると、幼馴染の有栖川麗音(ありすがわ れおん)が中途採用で入社してきて……?

光る穴に落ちたら、そこは異世界でした。

みぃ
BL
自宅マンションへ帰る途中の道に淡い光を見つけ、なに? と確かめるために近づいてみると気付けば落ちていて、ぽん、と異世界に放り出された大学生が、年下の騎士に拾われる話。 生活脳力のある主人公が、生活能力のない年下騎士の抜けてるとこや、美しく格好いいのにかわいいってなんだ!? とギャップにもだえながら、ゆるく仲良く暮らしていきます。 何もかも、ふわふわゆるゆる。ですが、描写はなくても主人公は受け、騎士は攻めです。

処理中です...