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魔法騎士大演習 亡霊城編(ファンタジー系 長編)

第78話 亡霊城攻略 14 ー神頼みー

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「勝てる?」
「五割だ」
「え?そんなに強いの?」
 琉生斗は目を丸くした。
「魔法騎士の能力、マチコの魔法、すべての集合体だからな」
「アレクセイは魔法が使えないしね」
 ラルジュナが指をくるくるとまわす。睨みながらアレクセイは返す。
「いざとなればルートがいる」
「それもそうだねー」
 二人の言葉に、琉生斗は気になった事を尋ねた。
「なぁ、浄化した場合、ちょっといい霊はどうなるんだ?」
「いい霊?」
「ルートは幽霊とか見る人なんだー。消えるよ、そりゃぁー」
 そっかぁー。
 琉生斗は困ったように頭を掻く。
「何か心配なの?」
「うーん。地下で会ったキャロラインって人が、恋人を待ってる、って言ってたんだ。キャロラインも消えるんだろ?何か可哀想だなー、って」
「ふうんー。さすがだね、ルート。本当に神様に会えるんだねー」

 え?

「ああ見えて、凶霊キャロラインは神様になってるからね。浄化では消えないよ」
 あ、そうなんだ、と琉生斗は胸を撫で下ろした。
「悪神の方ではあるけど、神様は神様だしね。そんなのをやれるのはアレクセイぐらいのもんーー」
「王太子」
 ラルジュナの言葉を、ミハエルが遮った。
「聖女様に聞かせる話ではありませんよ」
「それもそうだねーー。ごめんね、アレクセイー」
「あぁ」
 アレクセイは気にする様子もなかった。
 琉生斗はそんな彼を見て、何か言えや、とは思うものの尋ねる事はできなかった。
「ん?」
 琉生斗は肩を叩かれた。横を向く。
「あー、東堂!がんばって!」
 千里眼鏡を見ながら、兵馬は応援する。
「新人でしょー?このメンバーの中で戦えるって異常だねー」
「ほんと、それ」
 どんな精神してんだかー。
「なぁ、アレク。相談があるんだけど」
「何だ?」
「おれが、魔力封じを解いてやるから、その後おまえの魔力くれよ」
 アレクセイ、琉生斗の顔をじっと見た。
「どんな方法だ?」
「すぐわかるよ」
 琉生斗はアレクセイにキスをした。もちろん拒むアレクセイではないーー。
「っ!」
  アレクセイから離れた琉生斗は、指先で彼の唇から垂れた血を拭い軽く擦り、片手で聖女の証を握った。
 暗い光に、アレクセイは包まれた。
「ーーなるほど、闇魔法での解除かー」
「いけた?」
 神力を魔力に変えるのが本当に難儀だ、と琉生斗は言った。
「これは、いつかのお返しだな」
 アレクセイは血を拭った。
 何しても色気がやばいなー、と琉生斗は思う。
「おれはしつこいタチなの」
 ご存知でしょ?
「んじゃ、協力してー」
「わかったー」
 琉生斗は目を閉じて祈りだした。アレクセイは後ろから肩に触れて、琉生斗に合わせた魔力を送る。それはまるで水の流れのように神力へと変化していく。

 あー、きれいな魔力だーー。

 琉生斗は少し、イキそうになった。









 剣は離すな、絶対に。
 東堂は固く握り締めた聖剣デュランダルを、中段に構え、あらゆる攻撃をかわし続けている。
 いや、もうかわすのが精一杯なのだ。
 亡霊王の登場に折れた三人の心だったのだが、将軍達の参戦により正気を取り戻した。
「すげぇー」
 アンダーソニーの大魔法が炸裂する。ルッタマイヤとファウラが続いて魔法を撃ち、ヤヘルとトルイストとマリアが魔法攻撃から皆を守り続け、隙あらば攻撃を仕掛けている。
 自分は何もできないが、この光景を見るだけでも、ここに残れてよかったと思う、と東堂は思う。
最後の檻ラストプリズン!」
 アンダーソニーが唱えた。
 光が亡霊王のまわりで檻になる。亡霊王は苦しんでいる。暗く恐ろしい姿の亡霊が、もがき出す。
天空の剣セレスティアルソード!」
天空の槍セレスティアルスピア!」
 ルッタマイヤとファウラの魔法だ。亡霊王におびただしい数の光の剣と槍が刺さる。
 亡霊王の半身が消し飛んだ。
『デスビースト』
 亡霊王が魔獣を出す。犬、虎、獅子ーー、様々な動物達が腐敗した姿の生き物は、口から涎を垂らしながら、魔法騎士達に襲いかかる。
 ファウラが強大な結界を展開する。とてつもない強さだ。魔獣達は結界にぶつかり、その衝撃でファウラは吹っ飛ばされた。
「ぐっ」
 すぐに受け身を取る。
テンペスト!」
 アンダーソニーの大嵐の魔法が魔獣を消し飛ばした。休む間もなく、アンダーソニーは最高位の魔法を連発する。
 
 せめて、魔法が撃てるヤツを守らないとーー。
 役立たずじゃねえかー、おれは。
 
 東堂は焦っていた。
 剣を構えて攻撃をかわすだけなら、自爆覚悟で突っ込むしかねぇ!
 マリアの所に亡霊王の魔法が飛んだ。
 東堂は、聖剣を叩きつけるように魔法を弾くが、連発された魔法が身体に当たる。
「うげっ!」
 床に叩きつけられる。
「うっー」
 口から血が出た。
 俺は何て弱虫なんだーー。







『あら、そんなことないわ』
 
 へっ?

 なんだ、今の色っペー姉ちゃんの声は。
 意識がなくなる前に、東堂は女神様のような女性を見た。


「トードォ!」
 トルイストが叫んだ。東堂からは返事がない。
 よくやった、とトルイストは呟いた。彼もまた、気力だけで立っていた。折れるな、折れるな、と言い聞かせる。
 待っている妻に、良い知らせを聞かせたいーー。

「ーーうん?」
  トルイストは、東堂の身体が光に包まれるのを見た。彼はゆっくりと立ち上がった。
「光がはじめだったー」
 トルイストは眉を顰めた。東堂が、金髪の女性と被って見える。
「光より生まれたか、闇の中より生まれたかー」
 戦いながら、全員の目が東堂に集中する。だが、不思議な事に、亡霊王は東堂を攻撃して来ない。
「永遠に輝くは不滅の光ー」
 東堂は息を吸い込んだ。
「降臨せよ!光の神アラマズド!」
 亡霊王がたじろぐほどの、光圧が謁見の間を制した。光などと、かわいいものではない。災害のような光の渦だ。
『グワァーー!キャ、キャロラインーー』
 亡霊王が叫び声をあげた。

「いつまでもしつこいのよ。本当に気持ち悪い男」
 東堂は短髪をかきわけ、聖剣を降ろした。本当に長い髪があるように見える。
「やん、これ重い」
 ルッタマイヤは吹いた。

 
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