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魔法騎士大演習 亡霊城編(ファンタジー系 長編)
第77話 亡霊城攻略 13 ー魔法少女アレクセイー
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『町子!町子!』
町子は呼ばれているのはわかっていた。ティンも、美花も自分を懸命に起こそうとしてくれている。
だが、目が開かない。身体が動かないのだ。
あのとき、咳き込んだエバンを亡霊が取り込もうとしているのを見て、咄嗟に跳ね飛ばした。
たぶん、亡霊の戦力アップを考えたら、自分のとった行動は正しくはない。エバンが弱い人訳では無いが、自分の結界を張られたら、解除できる者はいないだろう。内側からしか解除できない結界なのにー。
早く起きないと、結界を解かないとーー。他の魔導師や神官達が危険な目にあってしまうかもしれない。
『何だ、まだ結界解けないの?』
町子の耳に琉生斗の声が聞こえた。
幻聴ーー?
『言葉はあっているはずーー。だが、魔力封じが来るから間違いなのだろうなー』
『え?いま、魔法使えねぇの?』
間違いない、琉生斗とアレクセイが亡霊城の中にいる。
『あぁ』
『亡霊が来ないからいいのかー』
そうだ、琉生斗の側には亡霊は近付けないとティンも話していた。
『ルート』
『ん?……』
「ふわふわふわのふわりんちょ。まじかる変身魔法少女ふわりんただいま参上、とは何だ?」
「ーーアレク……」
大真面目な顔して何言ってんだ、と琉生斗は愕然としている。
「たぶん、解除呪文なんだが、何回やってもエラーが出る」
アレクセイが指をくるくると回した。
そして溜め息をつく。
「しばらくの間、魔法が使えないな」
三日ぐらいかー。
「えー!魔蝕出たらどうすんだよ!」
「ティン殿に結界は頼むしかないーー」
町子ー、おまえは魔人の魔力も封じる事ができんだなーー。恐ろしい女だぜー。
『殿下!殿下!聞こえる!?』
ん?とアレクセイは辺りを見回した。
「マチコかー」
魔力封じの状態でも、精神でつながるようにできるとはー、アレクセイは目を細めた。こちら側の受信が駄目なのだから、どんな方法を使っているかはわからないがー。
『呪文はあってます~。それを振りをつけてお願いします~。今やり方を送ります~!』
何と振りつきとは、さすがにそれではティンでも無理な訳だ。
アレクセイは町子の送ってきた映像に、膝から崩れ落ちた。
「ほ、本気かーー」
「何だよ、アレク」
「わ、私がーー。ルートにー」
『ルート君、聞こえてないんでしょ~?じゃあ、この方法じゃルート君には送信できない~!殿下なら大丈夫!』
大丈夫ってーー。
こういうときにクリステイルがいればーー。
「ルート……」
「あぁ?」
「ちょっと目を閉じて下を向いていてくれ。なんなら目隠しをーー」
「何のプレイだよ。そこまでして見るかよー」
琉生斗は下を向いた。
アレクセイはしばらく肩を落とした後、姿勢を正した。
「ふわふわふわのふわりんちょ」
アレクセイは腰に手を当て、片膝をあげて指をくるくるとまわした。
「まじかる変身魔法少女ふわりん、ただいま参上!」
片腕をまわしながら、正拳突きのように拳を前に出し手を開けた。なんともやる気のない魔法少女だったが、その瞬間、結界が割れた。
アレクセイは顔を押さえて、屈み込んだ。
「ーーよかったよ。アレク」
しっかり見ていた琉生斗は、笑いを堪えきれず床に転がった。
ぶふふっ、ぶぶぶっふ、ぐふふふっ!はははは
ははははは!うげっほほほっ!
笑い過ぎて最後は咳き込んだ。
「ルートーー」
真っ赤になりながら、アレクセイは琉生斗を睨んだ。
「さ、さすが町子!い、いいい、いいもん見たぜ!」
「そうですよ、殿下」
笑顔のアンダーソニーが立っていた。
「さあ、天幕に戻りますよ」
アレクセイは首を振った。
「い、家に帰るーー」
「何を子供みたいな事をーー。まだ演習中ですよー」
項垂れたアレクセイと琉生斗を連れて、アンダーソニーは転移した。
天幕では、全員が笑い転げていた。
兵馬もひどいが、一番ひどかったのはラルジュナだ。
「あ、アレクセ、プッーー。さ、さ最高だったよ!」
アレクセイは何も言わずに、椅子に腰を掛けた。
「戻ってこなくてよかったのに……」
ボソリとアレクセイは呟いた。
「アレクセイ殿下ー、聖女様ー、ありがとうございます」
教皇はにっこにこだ。光る錫杖をきつく抱き締めている。
「よかったな、ミハエルじいちゃん」
琉生斗も笑い返した。
「殿下、亡霊王が出てますぜ」
笑うことではないのに、笑うしかない。ヤヘルは部下達が心配で仕方ないのに、思い出すと吹き出してしまうのとで、苦しんでいる。
ルッタマイヤは口を押さえて、身体を震わせていた。
アレクセイは、深い溜め息をついた。
「ーー案外、こういう戦法が一番怖いな」
「そうだねー。君にとってはねー」
ラルジュナが頷いた。装飾品が変わっている。
「えー、オレンジのトパーズ?すげぇーもんつけてんな」
「でしょ?わかる?お気に入りなんだー」
仲がいい琉生斗とラルジュナに腹立ちながら、アレクセイは指示を出す。
「アンダーソニー、ヤヘル、ルッタマイヤ、おまえ達はどうする?」
三人は弾かれたように姿勢を正した。
「もちろん、我々も魔法騎士団の一員として」
「演習に参加してきますぜー」
「では、殿下。いってまいります」
将軍達は消えた。
町子は呼ばれているのはわかっていた。ティンも、美花も自分を懸命に起こそうとしてくれている。
だが、目が開かない。身体が動かないのだ。
あのとき、咳き込んだエバンを亡霊が取り込もうとしているのを見て、咄嗟に跳ね飛ばした。
たぶん、亡霊の戦力アップを考えたら、自分のとった行動は正しくはない。エバンが弱い人訳では無いが、自分の結界を張られたら、解除できる者はいないだろう。内側からしか解除できない結界なのにー。
早く起きないと、結界を解かないとーー。他の魔導師や神官達が危険な目にあってしまうかもしれない。
『何だ、まだ結界解けないの?』
町子の耳に琉生斗の声が聞こえた。
幻聴ーー?
『言葉はあっているはずーー。だが、魔力封じが来るから間違いなのだろうなー』
『え?いま、魔法使えねぇの?』
間違いない、琉生斗とアレクセイが亡霊城の中にいる。
『あぁ』
『亡霊が来ないからいいのかー』
そうだ、琉生斗の側には亡霊は近付けないとティンも話していた。
『ルート』
『ん?……』
「ふわふわふわのふわりんちょ。まじかる変身魔法少女ふわりんただいま参上、とは何だ?」
「ーーアレク……」
大真面目な顔して何言ってんだ、と琉生斗は愕然としている。
「たぶん、解除呪文なんだが、何回やってもエラーが出る」
アレクセイが指をくるくると回した。
そして溜め息をつく。
「しばらくの間、魔法が使えないな」
三日ぐらいかー。
「えー!魔蝕出たらどうすんだよ!」
「ティン殿に結界は頼むしかないーー」
町子ー、おまえは魔人の魔力も封じる事ができんだなーー。恐ろしい女だぜー。
『殿下!殿下!聞こえる!?』
ん?とアレクセイは辺りを見回した。
「マチコかー」
魔力封じの状態でも、精神でつながるようにできるとはー、アレクセイは目を細めた。こちら側の受信が駄目なのだから、どんな方法を使っているかはわからないがー。
『呪文はあってます~。それを振りをつけてお願いします~。今やり方を送ります~!』
何と振りつきとは、さすがにそれではティンでも無理な訳だ。
アレクセイは町子の送ってきた映像に、膝から崩れ落ちた。
「ほ、本気かーー」
「何だよ、アレク」
「わ、私がーー。ルートにー」
『ルート君、聞こえてないんでしょ~?じゃあ、この方法じゃルート君には送信できない~!殿下なら大丈夫!』
大丈夫ってーー。
こういうときにクリステイルがいればーー。
「ルート……」
「あぁ?」
「ちょっと目を閉じて下を向いていてくれ。なんなら目隠しをーー」
「何のプレイだよ。そこまでして見るかよー」
琉生斗は下を向いた。
アレクセイはしばらく肩を落とした後、姿勢を正した。
「ふわふわふわのふわりんちょ」
アレクセイは腰に手を当て、片膝をあげて指をくるくるとまわした。
「まじかる変身魔法少女ふわりん、ただいま参上!」
片腕をまわしながら、正拳突きのように拳を前に出し手を開けた。なんともやる気のない魔法少女だったが、その瞬間、結界が割れた。
アレクセイは顔を押さえて、屈み込んだ。
「ーーよかったよ。アレク」
しっかり見ていた琉生斗は、笑いを堪えきれず床に転がった。
ぶふふっ、ぶぶぶっふ、ぐふふふっ!はははは
ははははは!うげっほほほっ!
笑い過ぎて最後は咳き込んだ。
「ルートーー」
真っ赤になりながら、アレクセイは琉生斗を睨んだ。
「さ、さすが町子!い、いいい、いいもん見たぜ!」
「そうですよ、殿下」
笑顔のアンダーソニーが立っていた。
「さあ、天幕に戻りますよ」
アレクセイは首を振った。
「い、家に帰るーー」
「何を子供みたいな事をーー。まだ演習中ですよー」
項垂れたアレクセイと琉生斗を連れて、アンダーソニーは転移した。
天幕では、全員が笑い転げていた。
兵馬もひどいが、一番ひどかったのはラルジュナだ。
「あ、アレクセ、プッーー。さ、さ最高だったよ!」
アレクセイは何も言わずに、椅子に腰を掛けた。
「戻ってこなくてよかったのに……」
ボソリとアレクセイは呟いた。
「アレクセイ殿下ー、聖女様ー、ありがとうございます」
教皇はにっこにこだ。光る錫杖をきつく抱き締めている。
「よかったな、ミハエルじいちゃん」
琉生斗も笑い返した。
「殿下、亡霊王が出てますぜ」
笑うことではないのに、笑うしかない。ヤヘルは部下達が心配で仕方ないのに、思い出すと吹き出してしまうのとで、苦しんでいる。
ルッタマイヤは口を押さえて、身体を震わせていた。
アレクセイは、深い溜め息をついた。
「ーー案外、こういう戦法が一番怖いな」
「そうだねー。君にとってはねー」
ラルジュナが頷いた。装飾品が変わっている。
「えー、オレンジのトパーズ?すげぇーもんつけてんな」
「でしょ?わかる?お気に入りなんだー」
仲がいい琉生斗とラルジュナに腹立ちながら、アレクセイは指示を出す。
「アンダーソニー、ヤヘル、ルッタマイヤ、おまえ達はどうする?」
三人は弾かれたように姿勢を正した。
「もちろん、我々も魔法騎士団の一員として」
「演習に参加してきますぜー」
「では、殿下。いってまいります」
将軍達は消えた。
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