ロクイチ聖女 6分の1の確率で聖女になりました。(第一部、第二部、第三部)

濃子

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魔法騎士大演習 亡霊城編(ファンタジー系 長編)

第75話 亡霊城攻略 11 ーどこでもいちゃいちゃ天国な二人ー♡

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 うーーん。
 考えに詰まった東堂の耳に、呑気な会話が飛び込んできた。
「ーーはいはい、おれが悪いんですよ!だいたいおまえだってなー!」
「ーールート」
 よく聞く痴話喧嘩だ。
 全員の目がそちらを見る。
「おっ、お疲れー」
 聖女琉生斗が神官服を着て、アレクセイと立っていた。
「で、殿下!どうされましたか?」
 トルイストとファウラが姿勢を正した。
「いや、用事があったので城に入ったのだがー」
 アレクセイは言葉を濁した。町子の結界の為に出られない、という事なのだろう。
「実は町子の方が強いのか?」
 聖女様はいらん事を言う。
「結界には二種類がある。力任せに壊せばいいものと、解析して解除しなければならないもの。マチコの結界は二段階解除結界だ。ひとつ目を間違えるとカウンターがくる。ひとつ目が合っていてもふたつ目を間違えると魔力封じがくる。いまふたつ目を解析途中だー」
 トルイストとファウラが目を剥いた。
「ほーん。魔法少女はすげぇなぁ」
「魔法、少女?」
「いや、町子の事。あっちの創作物語なんだけど、なんか敵に攻撃されなきゃ変身しねえの」
「違うの!あれは普段は正体を隠したいから、後で変身するの!」
 町子と同じく魔法少女ふわりんのファンである美花が、よれよれになりながら答えた。
「まぁ関係ないからいいけど。魔蝕が出たら頼むわ」
 いろんな意味でひどいヤツだ、と東堂は思った。突っ込む元気がないのが残念だ。
「あぁ」
 アレクセイは結界を見ながら、目を細めた。
「おい、葛城。いいもんやるから食べろ」
 琉生斗はゲロ甘飴玉を取り出した。
「おまえ、老けたなー」
 ひどいーー、美花は泣きそうになった。
「あっ、俺にもくれ!」
「おまえにはたくさんやっただろうが」
「みんなにもやったんだよ」
 美花は力を出して飴玉を口に入れる。

「おえー」
 悶絶する。
「おぎゃぁ!なんだ、前のより甘さがー」
「改良版だ。塩が入っている」
 東堂がもがいた後、すっきりした顔で顔を上げる。
「殿下!こりゃまじでハマりますね!」
 アレクセイは黙っている。
 よかったらどうぞ、と言われてトルイストとファウラも口にする。
 二人とも吐きそうな顔になる。穏やかな顔じゃないファウラは、大変珍しい。
「あれ?すごい、回復してる」
 美花は目を丸くした。
「疲れたら糖分だろ」
「聖女様ー、オレも下さいーー」
 モロフが寝転びながら手を出した。
「東堂、むいてやれ」
「おう!」
 東堂はモロフの世話をした。
「これはすごい!何という飴玉ですか?」
 ファウラが目を丸くして驚いている。
「ゲロ甘飴玉改あまあめだまかいだ」
 琉生斗はカッコよく決めた。
「何と。軍の備蓄に是非取り入れたい」
 トルイストは入手方法を尋ねた。
「アレク、おまえもう王子やめて、なんでも屋でも開くか?兵馬がいれば、今の資産の倍になるぜ」
「それも面白い」
 アレクセイが頷いた。
「で、殿下が作ってるんですか!」
 驚愕の事実に、トルイストとファウラは目を剥いた。
「そう。おれの神力の回復に、色々考えて作ってくれたんだ」
 琉生斗はにやにやと笑う。
「はあー、殿下は本当に愛妻家ですな」
 トルイストが感心する。
 愛妻家ーー、いい響きだな、とアレクセイは思った。
「おまえ、もっと殿下の事大事にしろよー」
「うるせー」
 琉生斗が東堂を睨む。
 美花が辺りを見回す。
「なんだか、亡霊がいなくなったわね」
 変ね、あんなにいたのにーー。どこかに隠れているのだろうかー。
「ルートがいるからな」
 アレクセイが答えた。
「え?」
 聖女効果なの?
「あんたってたまにすごいわよね」
 たまにと言われると複雑な聖女様だ。
「亡霊王まで出てこねえんすか?」 
 東堂の疑問にアレクセイは頷く。
「ルートが近くにいれば出てこないだろうな」
 うっそだー、何がそんなに違うんだよ、と東堂は琉生斗の顔を見て不思議に思う。
「殿下、飴玉をありがとうございます。我々は先へ進みます」
 大隊長二人は立ち上がった。遠くで悲鳴があがる。
「行くぞ!」
 トルイストが駆け出した。
「はい!ルート、飴玉ありがとう!元気になったわ!」
「おぅ、ちょっと若返ったぞ」
 うるさい!美花が牙を剥く。
「じゃ!行ってきやーす!」
 美花と東堂もモロフを抱えて駆け出した。
「じゃあなー」
 琉生斗は手を振った。


「勝てんの?」 
 琉生斗は腕をあげた。
「どうだろうか」
 アレクセイも腕をあげ、ホールドの形をとる。
「タータ、タータ、ターター、タララッタ~」
 リズムを取りはじめる。
 二人はダンスを踊りだした。足の運びから、ターンのタイミングと速さ。息のあったダンスを、無観客の大広間で披露する。
「だいぶ、女側でもいけるようになったなー」
「とても綺麗だ」
「姿勢には自信がある」
「いや、すべてが綺麗だ」
 それはどうもーー、と琉生斗は照れた。
「けどよ、いざ踊るってなったら、マジでおれはどういう服装なんだ?」
 ターン、ナチュラルターン、リバース、スピンターン。もう一回スピンターンだ。
 するすると滑るように二人は踊る。スピードも速い。
 これ、ヒールで、って女性はすごいなぁー。ホントにーー。
「この前のお茶会の服でいいだろう」
 うっとりとアレクセイは琉生斗にキスをする。
「あれ、おまえ汚しまくったじゃん」
 レースなんか、破れてたぞ。
「復元したー」
「あ、そう。なあなあ、リフトとかやるの?」
「リフト?」
「抱き上げたりすんの」
「こうか」
 アレクセイが抱き上げる。琉生斗は彼の首に腕をまわして固定し、足を伸ばした。
「うーん、これからどうすんだったかなー」
 まあいっか、と琉生斗はアレクセイにキスをしてフロアに降りた。

「欲しいー」
「やらない」
 琉生斗はアレクセイから離れようとしたが、アレクセイはそれを許さず、腕を引っ張りしっかりと抱きしめようとする。琉生斗はくるりとまわりながら、膝をしならせて、後ろに倒れる。その身体をアレクセイはしっかりと支えた。
 二人は見つめ合った。
「ひひっ、バカップルの決めポーズだ」
「悪くないな」
 抱き上げられて、キスをする。
「んで、結界はどうなんだ?」
 光る錫杖はお守り代わりにカロリンに渡した、神官達は無事だろうかー。
  アレクセイは首を振った。
「魔力封じが、厄介だな」
「おれが受けるって無理なのか?」
 自分なら魔力がないから、魔力封じを食らっても関係がない。
「私が結界を壊しても、どこにカウンターが行くかまではー」
「わかんねえんだー。なら、町子が解除するしかないんだな。あいつ起きたのか?」
「亡霊に乗っ取られると、一日は目を覚まさない」
 なかなか面倒なんだなー。
「今度から断ったら?」
 それかミントを待機させる、と琉生斗が言う。
 くすりとアレクセイは笑う。
「ルートなら、城全体を浄化できる」
 
 琉生斗は目を丸くした。
 えっ?と驚いた顔でアレクセイを見る。
「この前は演習として私やアンダーソニー達が来たが、十年前まではスズ様が浄化されていた」
「まじで?」
 亡霊にも有効なのかー。
「魔蝕に比べるとたいした事はない、と」
「そうなんだー。おれ全然亡霊見ないから、強さがわかんねえんだけど」
「向こうはルートが怖い。出てこれない」
 おれの方が化け物かよ。
「じゃあ、東堂達が全滅したら浄化するかー」
 琉生斗は欠伸をした。
 アレクセイは琉生斗に頬を寄せた。
「少し寝てなさい」
「まじ?わりーなぁ……」
 琉生斗はアレクセイの肩に頭を預けた。よほど眠かったのか、すぐに寝息が聞こえる。
 かわいいーー、アレクセイは琉生斗をじっと見つめながら、起こさないようにキスをした。
 大広間を出て、琉生斗を寝かせそうな場所を探す。近くの応接間らしき部屋にソファを見つけ、魔法で新品にする。琉生斗を横たえ、キスをする。
 アレクセイは椅子を出し腰を降ろした。手をコップを持つような形にすると、そこに水が入ったコップが現れる。
 少し口をつけ、テーブルの上にコップを置く。宙を見ながら、時折指を振る。
 違うなーー。
 単純そうでいて、何かの呪文なのかー。
 魔法少女ーー。いやーー。
「大魔導師だな」
 アレクセイは町子を誉めた。
 
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