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魔法騎士大演習 亡霊城編(ファンタジー系 長編)

第72話 亡霊城攻略 8 ーアレクセイはやらかすー

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 琉生斗は道を引き返して入り口付近にいた。

 教皇に念じる。
(じいちゃん、二人いないと仕掛けが解除できない、どうする?)
 しばらく待ったが、返事がない。
(誰か寄越してくれる?それか、やめる?)




「二人いればいいのか?」
 
 琉生斗は身を震わせた。
「あっーー」
 振り向けば、アレクセイが憮然とした表情で立っている。
「アレクー!」
 嬉しくなって琉生斗は抱きついた。彼もやれやれと言いながら、琉生斗をきつく抱きしめキスをした。
「なんだ、ミハエルじいちゃん、ゲロったのかー」
 吐いてはないがー、あぁそういう意味か。アレクセイも琉生斗の言葉を、とてもよく理解するようになっている。
「へへー」
「どうした?」
「嬉しいだけだ」
「ーーそうか」
 琉生斗はアレクセイと歩き出した。

「ここで、向こう側に抜けて、んで、透明な壁から下に落ちたけど、また上がってきたんだ」
 案内しながら進む。
「ああ、見えるがないな」
 アレクセイは可視化の魔法を使った。壁が消える部分がある。
「こうなってたんだー」
 じゃあ、ここから抜けて、あっちに行くんだ。
「なぜ?」
 問われて答える。
「ミハエルじいちゃんには普段から世話になってるだろ?頼み事ぐらい聞かねえと」
「言ってくれればー」
「じいちゃんも演習の邪魔にならないように気を使ったんだろー。で、じいちゃんかおれしか抜けないんだって」
 聞いたか?琉生斗の問いに、アレクセイは首を振った。
「エクスカリバーみたいだ」
「アーサー王か?」
「兵馬、色々教えてんだな」
 感心したように、琉生斗は目を丸くした。
「ーー車や列車の構造は面白いな」
「あいつすげぇーよな、よくあんな細かい図面が描けるもんだよ」
 いつもながら、感嘆する事しかできない。運動能力以外、死角がない男。
「あぁ」
「あっちじゃガソリン使うから環境問題や資源問題があるけど、こっちじゃ魔法でいけるんだろ?」
「ーーそうだな。魔石を使ってみようかと思う」
 魔石?琉生斗は首を傾げた。
「魔導師の杖や、魔法騎士の剣にも入っているものもある。魔法の威力を増幅したり、維持したりする石だ」
「東堂の剣は違うのか?」
「違うな。あれには刀身に魔法が宿っていて、相手の属性に合わせ、自動で切り替わるようになっている」
 魔石はあくまで魔法の威力を増したり、魔法を維持したりするだけだ、とアレクセイは続けた。
「かけた魔法をずっと維持できるのかー、そりゃすげぇー。けど、あんまり聞かないな」
 そんな便利なものがあるなら、魔法騎士達に使わせればいいのでは。
「合成が難しいのだ」
「アレクが作るのか!」
 本当に器用な奴だ。
「魔法を液体にして混ぜていくのだがーー」
「魔法を液体にーー」
 アレクセイは、ハッとした。
 琉生斗も気付いた。

 珍しくやらかしたな、という目で琉生斗はアレクセイを見た。
「ーー答えを教えてしまったな」
「あぁ、人間を粒子に変える魔法は、まず魔法で液体を作るんだな」
「ーーそれ以上は」
「聞かねえけどさ、だったらアレクはすぐに時空を長く飛べるようになるんじゃねえか?」
 アレクセイは首を振った。
「聖女召喚の儀式は、時空竜の女神様が介入するから、ようはそれだけでいけるのだがー、自分を時空の中で安定する粒子にするには、やはり時空魔法が必要なのだろうな。自分を保つのが難しい、というのか」
「なるへそ」
「考えない」
 はいはい、と琉生斗はアレクセイにキスをした。
「なんでおれは信用されないんだ?」
 アレクセイの目を見て、琉生斗は剥れた。
「やりそうだからな」
「はいはい、そのときは一緒に行ってくれんだろ?」
 琉生斗の言葉にアレクセイは頷いた。
「もちろんだ」
 なら、いいじゃんねー、琉生斗は思った。
「随分入り組んでんなー」
 地図と目の前の通路を確認し、琉生斗は首を傾げた。二方向に分岐しているが、地図をみる限りどこも行き止まりだ。
「あれ?他に道ないよな?」
「可視化でも見えない」
 見えないものを見えるようにする魔法も通用しない。
 ん?もしかしたらーー。
「アレク、あっちの道に行って」
「あぁ」
 一方をアレクセイに行かせ、もう一方を琉生斗が行く。行き止まりの前で琉生斗は立ち止まった。

 ガタンー。どこかから大きい音がした。二人が立たないと開かない仕組みだったのだろう。
「アレク、どこが開いたかわかるか?」
 琉生斗は戻りながら大声をだした。
「来た道だ」
 アレクセイと合流する。
「ほんとだ」
 分岐点に、さっきまであったはずの壁が無くなっていた。
「三方向だったわけか」
 琉生斗達は奥へ進んだ。
 手をつないで、とても楽しそうだ。 
 突如、アレクセイは琉生斗を抱き上げた。
「なんだよー」
 と言いつつ、首に手を回す。
「階段だ」
 暗いのによくわかんなー、と琉生斗は感心する。
「危なくないか?」
 これではアレクセイは足元が見えないはず。
「あぁ」
 危なげな様子もなく階段を降りていく。そんな旦那様にくっつきながら、琉生斗は肩に頭を乗せた。

 いい匂いだなー、毎日風呂は入りに行ってんだろうなー。離宮は今誰もいないけど、寂しくなかったのかなー。
 おれがいなくて寂しかったはずだよな。うん、きっとそうだ、ミハエルじいちゃんの頼みなんか聞かないで、離宮で待ってたら良かったかなー。
 いや、けどこの状況も悪くはないーー。
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