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魔法騎士大演習 亡霊城編(ファンタジー系 長編)

第66話 亡霊城攻略 2 ー東堂は説教をするー

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「ヒョロ太子、やるじゃねえか!」
「誰がヒョロ太子ですか!貴方達、私が誰かわからないんですか?」
「恋敵かな?」
 走りながら東堂は剣を構えた。もう亡霊が襲ってくる。クリステイルは吹き出した。
「カレンと何かあったんですか?」
「うちの学校、花蓮と付き合いたい奴ばっかだったぞ、俺もその一人」
「えっ!?恋人はいたんですか?」
 聖なる雷ホーリーサンダーを乱発するクリステイル。
「いつも、町子や美花とつるんでたからなー、花蓮が話す男子って、あの腐れ聖女ぐらいだったなぁ」
 斬りながら東堂は答えた。廊下が終わり、広間のような場所に出る。そこには、蟻一匹通る隙間もないほど、亡霊が浮いている。
「聖女様とは?」
「裏で、女子高って言われてたなーー」
 クリステイルが盛大に吹き出した。
天空の槍セレスティアルスピア!」
 走りながら魔法を練っていたクリステイルが、先制をかけた。
 残った亡霊を、東堂達は片付ける。
「まぁ、花蓮もモテるわりには誰とも付き合ってなかったし。どっちかつーと、親が大学教授で、勉強しろばっかり言われてたみたいで、常にルートとか町子とかに教えてもらってたっけ」
「そうなんですかーー。聖女様はモテなかったんですか?」
「あいつなぁー。俺冗談だと思ってたんだよな」
 東堂はポツリと言った。
「何がですか?」
「数人の男子がな、あいつに告りてーって言ってたんだわ」
「はあー」
「俺は笑い飛ばしちまったんだけど、笑っちゃダメだったよな。あいつらにしてみれば、真剣だったんだろうしー」
 少し落ち込んだように、東堂が言う。
「ーー難しい話ですねーー」
 クリステイルも、言葉に詰まる。
「まあな、言ったところであの頃のあいつじゃ無理だったろうけどな」
「あぁ、お固い理念があったそうですねーー」
「結婚までは清い関係でって、あれは大爆笑だよなー」
 結局、琉生斗も結婚まで清い関係ではいられなかったが。
「誰かに言ったんですか?」
 突然、東堂は笑い出した。
「トードォ殿?」
 クリステイルが亡霊を始末しながら話しかけた。
「いや、あっちもこっちもそこは同じなんだけど、男って、やった女の事しゃべるの好きじゃん」
「え!」
「王子様はしねーか。まぁ、クラスで男だけでしゃべるのに、みんな結構進んだ話してたんだよ」
 俺も衝撃だったけど。
「んで、奴がたまたま入ってきたときに、ルートはやった事あるか?って誰かが聞いたんだよ」
「ないでしょうに」
「いや、そうなんだけど、その答えがそうだったんだよ。『おれは、結婚までは清い関係でいたい』、ってはっきり言ったんだよ」
「言いそうですね」
「モテねー奴が言うならまだしも、面はいい、金持ち、成績もいい、運動神経もいい、いろんな賞をとってる奴がそれ言うんだぜー、全員こいつはヤベー奴だって思ったぜ」
「聖女様はモテそうでモテなさそうですね」
「そうだな。その後言った事が、まぁ奴らしいんだわ」
「何ですか?」
「経済力のない奴は初手で詰む」
 クリステイルは吹き出した。
「トードォ!戦えよ!」  
 ジップから苦情がくる。東堂は剣を構え直し、亡霊を斬り裂く。
「それはそうですねー」
 やる事やって、子ができれば必ず要るものだ。
「だから、殿下と決まったとき、最初は財力かと思ったぜ」
 財力はこの世界でも、トップクラスだろうー。
「経済力なら私にもありますけどーー」
「いや、ヒョロ太子は誠実さがねえー」
「えー!」
「ーー俺達半年ぐらい、毎月王太子からって金もらってたじゃん」
 給料貰い出したから断ったけどさ、と言う東堂の言葉に、クリステイルは口をつぐんだ。
「殿下からだったんだろ?」
「あー、すみません……」
「いやいや。殿下はルートに言われたのかもしれないけどよ。男の俺らは衣食住ちゃんとしてれば問題ない。けど、女の方は色々いるだろ?召喚したら後は成り行き任せなところが、みんな胡散臭い、って言ってたぞ」
 痛いところを突かれ、クリステイルは落ち込んだ。
「なあ、おまえ実際のところ、あいつと付き合えたのか?」
 段々と強く魔法を撃つ亡霊まで出てくる。脱落者が出たのだろうかーー。
「え?いけるんじゃないですか?」
 結婚ぐらい、形でもー。
「魔蝕隠したのにも気付かなかったんだろ?」
「あれは悪いと思ってますよ」
「すっげー舐められてんじゃんー」
 こいつとルートなら勝つのはどっちかアホでもわかるよなーー、と東堂は溜め息をついた。
「な、舐められてるー?」
「あぁ、ヒョロ太子はちょっと舐められ過ぎだな」
 どこがー?と、クリステイルは考える。
「テオドロスとミストンが言ってたけどよ」
「あぁ、はい」
 お世話になってるんですよねーー。
「成人式のマント持ち、もっと練習すりゃ良かったってーー。出来ないなら最初に決まってた子に代われば良かったって、反省してたぜ」
 東堂の言葉に、クリステイルは動きをとめた。
「ーーそうですか」
「わかってて、言わなかったんだろ?俺は知らねえが、ルートが気づいたんなら、偉いさんはみんな気づいてるよな?」
 クリステイルは下を向いた。
「リハーサルがあったんなら、そこで怒んねえと、後で違う人間に怒られたって、心には響きませんぜ」
 無言になったクリステイルを、ジップがはらはらと見守る。
「おまえ、ちょっとズレてんだよ。そういうとこ、おまえの親父と一緒。俺らに謝んなかったくせに、どうでもいいガキには気を使いやがる。好みの女が来て舞い上がってたのか知らねえが、二択で滑るのはお家芸だな」
 クリステイルは黙ったままだ。
 あのときは部下の手前虚勢は張ったが、本来ならしっかり謝罪しなければならなかったのだ。平和に暮らしていた彼らにとって、こちらに来ることが名誉な事のわけがない。

 しかしーー、

「さて、無礼はこの辺に置いといて、デカい魔法頼んます」
 東堂は巨大な亡霊達を指差した。
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