ロクイチ聖女 6分の1の確率で聖女になりました。(第一部、第二部、第三部)

濃子

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魔法騎士大演習 亡霊城編(ファンタジー系 長編)

第65話 亡霊城攻略 1 ー王太子乱入すー

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 ーーその城は、バッカイア国の北に位置する、巨大な城。神聖ロードリンゲン国からも近い古代魔王の遺産として残る城だ。
 五年に一度、城には亡霊が湧き、放っておくと城を出て多大な被害を及ぼしてしまう。
 
 今回の魔法騎士大演習は、すべての亡霊退治である。この亡霊の厄介な面は、身体を乗っとるところだ。乗っ取られると身体は一日から三日は動けなくなる。
 乗っとられた時点で魔導師達が、回収してくれるが、能力は亡霊に記憶される。


 脱落者が多ければ多いほど後の者が大変になる。最期の亡霊王に至っては、異次元の強さだ。


「では、諸君、健闘を祈る」
 真夜中、アンダーソニーの激励を受け、魔法騎士団はほうぼうに別れて城の中に入って行く。

 魔導師室長のティンも「しっかり回収しますからね」と声をかける。隣りで町子も笑っている。他の魔導師達も、くすくすと笑っている。

「世話にはなりたくないけどなーー」
 誰かが言った。

 今回は呪いがかかったときの為に、数人の神官も魔導師達と共に待機している。
 他組織が万全の体制で魔法騎士団をバックアップする。それぐらい、危険が多いという意味でもある。

 現にーー。
「あら~、もう出番ですか~」
 町子が千里眼鏡を見て言った。
 天幕にはたくさんの千里眼鏡が並べられていた。どこからでも、魔法騎士達が映り脱落者もよくわかる。
「行ってきます~」
「気を付けて」

 同僚のエバンが、町子に声をかけた。身体は弱いが、魔力は強い少年だ。髪の毛の色も町子と似た茶色だ。
 
 入口に入ったと思えば、亡霊が溢れ出す。魔法を唱えるタイミングが遅れれば、すぐに身体を乗っ取られる。
 あちこちから悲鳴があがった。

「まじかよ!はっやー!」

 早すぎないか?

 開けた途端に亡霊が湧き出る。勢いのある噴水のようだ。

 東堂は、聖剣デュランダルで斬りつける。とにかく斬る、斬る、斬りつける。疲れるまもなく、斬り続ける。すり抜けた亡霊が、他の魔法騎士と戦う。
「おまえら!がんばれよ!」
「はい!」
 今回、東堂は小隊長として、小隊を一つ任された。


 大隊長三人、中隊長六人、それでは最小の十組にはならないので、師団長を入れて十組になる予定だった。だが、隊員が二十六人いると、多いような気がするため、最大の十五組を作る事になり、五組だけはベテランの小隊長を二人頭に据えて作っている。後の小隊長は、二人だったり三人が大隊長、中隊長の組に入っている。
 そして、十七人か十八人の隊員が付くというわけだ。

 東堂の組には大隊長達がいないので、元上司のジップと組めて、気は楽であるーー、だったのだがーー。


「早いですね!すごいです!」

 なんで俺がこんなヒョロ太子の面倒を見なきゃならんのよーー。

 亡霊城に似つかわしくないきらきら王太子、クリステイルが天幕に現れたとき、誰もが何しに来た?という顔をしたらしい。


 クリステイルとしては激励に来ているのに、皆の冷たい空気に早々に帰るつもりはしていたのだが、彼は最後に余計な事を言った。

「明日は神殿にカレンに会いに行こうかな。聖女様もおられるらしいし、遠乗りでもしてきますよ」
 それがアレクセイの逆鱗に触れ、兄は無言で弟を東堂の隊に放り込んだ。

 ヒョードルは王太子が放り込まれるのを、黙ってみていたらしい。

 あれは駄目ですよね。近衛兵長のくせにーー、とトルイストはヤヘルにボソリと言った。例の件以来、トルイストはヒョードルに冷たくあたっているらしい。

「さてさて、微力ながらお助けしますよ。聖なる雷ホーリーサンダー!」
 白い雷が廊下を走り、亡霊が消し飛んだ。

 亡霊への魔法は、光、雷、炎、風の順で効く。クリステイルは光と雷を混ぜて撃った。

「えっ、すごい」
 ジップや他の隊員が感動している。
 連発してクリステイルは魔法を撃っている。
「なかなか、前に行けませんねーー。トードォ殿、合図したら結界を張れますか!」
「張ってもらう!」
「では、足止めを、五秒」
「了解!」
 東堂達は走り出し、亡霊を斬り続けた。斬るコツはいらない、素早く斬れば戻る事はないーー。

「行きますよ!天空の槍セレスティアルスピア!」 
 光属性でも最高位の魔法が放たれた。
 白い槍が、無限に突き刺さっていく。光が、消える頃には、亡霊達は一掃されていた。
「はい!先へ行きましょう!」
 大魔法を放ったとは思えないほど元気な声で、クリステイルは告げた。

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