ロクイチ聖女 6分の1の確率で聖女になりました。(第一部、第二部、第三部)

濃子

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ラズベリー様のお茶会編

第61話 ラズベリー様のお茶会 1 ー葛城美花はかく語りきー

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 クリシュナ領地滞在十日目。

 はあー、魔蝕も発生しないし、最高だねー。、とゴロゴロしていた琉生斗の元に、兵馬がやって来た。

「ちょっと、ルート。姉さんがピンチだ。助けてあげて」
「何が?」
「王妃様と公爵夫人が、ちょっとした言い合いになったんだよ。あっ、殿下ぁ!ルートに服着せてよ!」

 アレクセイが琉生斗の服を持ってきて、着せていく。

 どっちが嫁なんだかー。

「ルートも悪いんだからね」
 兵馬はじっと琉生斗を見た。
「なんだよ。美花は、うちの嫁なのにってやつか?」
「その通り!王妃様の手伝いをさせるのはおかしい、って言い出したわけよ」
「そりゃ変だな。ハーベスター公爵夫人がおれのダチにんな事をいうか?」

 ベルガモットの件を、バラされたらえらいこっちゃだろー。

「そう、言い出したのはベルダスコン公爵夫人だ」
「おっと、ライバル公爵家が出てきた。ナスの兄貴が爵位を継いだから、公爵夫人はスコット伯爵家出のメメリだな」
「これがまた、気が強い。姉さんの事をハーベスター公爵家の嫁なのに、なぜ王妃様の手伝いをしているのか、ハーベスター公爵夫人にも追求したらしい」

 いやーん、女の世界っておもしれーー。

「そんな事気になるんだなーー。勉強になるわ」
「つつきたい人は理由は何でもいいんだよ。ホント、姉さんを実験台にしないでね」
「はいはいーー。残念、アレク。休暇は終わりだ、次は夏休みに来ようぜ」
「あぁ」

 アレクセイは心底残念そうに溜め息をついた。

「おまえ先に帰って、王妃様のフォロー、んでハーベスター公爵夫人に言っといて、本来は自分のやるべき事を体調が悪いため美花さんに代わってもらい申し訳ない、後はお任せ下さって大丈夫です。当日は美花さんとお越し下さい、って」
「了解ー。殿下も書類の量に引かないでね。演習までに処理しといて」
「あぁ」

 アレクセイも兵馬には逆らわない。彼の中で、琉生斗の大親友という地位は、父親や弟よりも高いのだろう。
 
 兵馬が去った後で、琉生斗は深く溜め息をついた。

「もっと遊びたかったなー」
「ルートが蒔いた種だが」
「そうなんだよなーー。まっ、御婦人方には挨拶できてねえからしとかないとなーー」

 琉生斗はアレクセイの前で、優雅にお辞儀をした。 


「皆様ごきげん麗しゅうございます。第一王子アレクセイ殿下の妻ルートでございます。どうぞよろしくお願い致します」

 本来男性は片足を軽く引くが、琉生斗は女性のように片膝を屈めるお辞儀をした。
「妃殿下だと圧迫感あるからやなんだけど、妻ってどうなんだろ?どっちがいいと思う?」
「どっちもいい」
「そうかーー」

 愛しいものを愛でるような目で見られて、琉生斗は照れまくりだ。
「かわいいー」
 抱き寄せられて、キスをされる。

 はあー、唇が気持ちいいなぁーー。

 キスだけで終わるわけがなく、二人は夜までに帰ればいいかと愛し合った。
 どのみち、帰ったら帰ったらで、同じ事をはじめるのだろうがーー。














「もう、戦ってるほうがましだったわよ!」

 琉生斗は離宮に帰宅後、早速次の日の朝にラズベリーの所へ赴いた。嫌な思いはしてないか聞いたところ、笑い飛ばされてしまった。

 御婦人方には、いざこざは通常運転なのだそうだ。

「ふうん。ラズベリー様、バッカイアのお菓子、これでいい?紅茶の種類は足りるかな?」
 美花の話を聞きながら、琉生斗はラズベリーとお茶会の予行練習をする。

「まぁ、招待状の書き方やら、進め方を教えてもらえてよかったじゃねえか。ハーベスター公爵夫人に一言言っときゃ満点だけど」
「何てー?」
「おれの代わりにお茶会のお手伝いをします、ってな」

 いやー、面倒!と、美花はソファに突っ伏した。

「後、演習後に学院に話してるから、この辺の授業には出るように」
 琉生斗は書類を美花の前に置く。でなければならない授業には丸がしてあった。

「歴史や、一般的な勉強は、今でもやってんだろ?」
「うん、座学ーー。何?このねやの作法って?」
 ラズベリーがくすり、と笑った。
「あっち系だよ」
「あっち系、ってまさかそんなの授業でやるの?」
「おれらだって、ゴムの使い方ぐらい授業でやっただろうがー。外国の方がそういうところはちゃんと教えてくれるんだよ」

 元の国は教えなさすぎて、逆に変な知識を持つだろ?と琉生斗が言うと、美花は頷いた。


 お父さんの見てた、変な動画の事ねーー。目隠しして縄でぶってる。


「こんなん布団に入って目つむってたら、勝手に終わるんじゃないの?」
 ラズベリーが吹き出した。

「ーー違うみたいだな」
 琉生斗が引きつった。自分も大概だったが、上には上がいた。戦前の女、美花だ。

「このカップ、アンティーク?すごいなー」
 琉生斗は白磁器の繊細な筆入れがされたカップを持って、色々な角度からそれを見た。裏には、トペンラーゲンと名前が書かれていた。

「トペンラーゲンさん」
「ええ、百年以上前のものですわ」

 わぉ、と琉生斗はカップを丁寧に置いた。

 ああいう価値がわかるのが、こいつのいいところなのよねー、美花にはちんぷんかんぷんだ。

 花を選ぶにしても、花の名前がわからないから、何を言われても、すみません、としか言えないし。

 できる奴がおかしいのだけど、弟の考察通りだと、琉生斗はここの王族と結婚するために、向こうで教育されていたみたいなのだ。
 ラズベリーの横で、彼女の意向を組んで物事を進めるところなど、本当に出来すぎだ。


「おまえ、訓練はいいのか?」
「今から行きますよー。夜にはファウラ様のご実家に行って、お食事会ですのよー。ベルガモットお姉様もいらっしゃるの」

 美花が令嬢のような仕草をして立ち上がった。
「トルさんも?」
「師団長は亡霊城視察で泊まりだってー」
「あぁ、そうなんだ」

 アレクも行くって言ってたなー、遅いのかなー、と琉生斗は思案を巡らせた。
「よし、当日が楽しみだな」
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