ロクイチ聖女 6分の1の確率で聖女になりました。(第一部、第二部、第三部)

濃子

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大隊長の恋編

第41話 大隊長の恋 1 ー美花は悩むー☆

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「ルート、何の書類だ?」
 アレクセイが琉生斗の首の後ろにキスをする。
「ひゃっ!もう、ちょっと待ってー」
 琉生斗は広げた書類に丸をつけた。
 ハーベスター公爵リーフ 正室ナビエラ
 子息 長男ファウラ
             側室ナナカ
 子女 長女アルストロメリア 次女ブバルディア 三女ベルガモット(没)

「ほーん。やっぱりそうだよなー」
 琉生斗は笑った。
「アレクー、ごめんごめん」

 剥れているアレクセイにキスをしながら、琉生斗は町子に頼んで作ってもらったものを取り出し、彼の頭につけた。   

 それは魔法で磁石のようにくっついた。
「ルート?」
 獣人のように、犬の耳を頭につけたアレクセイに、琉生斗は目を輝かせた。
「かわいいーー」
「か、かわいい?」
 アレクセイは戸惑ったが、琉生斗が喜んでいるのが嬉しくて、耳をつけたまま愛の行為をはじめた。

 琉生斗がときおり、「すっごいかわいい~!」と言って触ったりするので、アレクセイはそれだけでイッてしまい、赤面することになったのだがーー。

















 美花は精神修行の最中だった。魔力を高速で練り上げるには、実践経験ももちろんだが、強い精神力が必要だ。

 一瞬で魔法を構築する、技術。

 早い判断力ーー。

 すべてが足りない美花だが、目を閉じて、まわりを遮断し、その集中力を維持する。
 すぐに、気が途切れる。そこから、またはじめるーー。



「お疲れ様、ミハナ」
「レノラさん、ありがとうございます」
 美花は、レノラから水を受け取った。
「ずいぶん集中力があがってきたわね」
 感心したようにレノラが言う。

 雑談をしながら修行室を出る。
 太陽が眩しい、部屋に入ったときはまだ日は高くなかったのだが。
「暑くなってきましたね」
「そうね」


 ときおり思う。


 あんた達なんて産まなきゃよかったーー。



 あれ以外の言葉だったら、ちゃんとお別れしていたら、自分はもっと前を向けたのではないか、と。



 中庭のベンチで、琉生斗とアレクセイが座って話をしている。アレクセイの美しい瞳が、愛している、と琉生斗に囁いていた。 
 琉生斗の方は何かツボにはまったのか爆笑していて、アレクセイもそれを見て薄く笑う。


 ーー両想い、結婚。もはや、奇跡よね。


 仮面夫婦だった両親を思うと、彼らにもあんな時期があったのだろうか、美花は想像ができない。

「おぅ、葛城!」
 琉生斗が美花に気が付く。美花はレノラに頭を下げて、琉生斗の方に向かった。
「お疲れさんー」

 あら、チャイナ服、かわいいわ。

 琉生斗は銀色が入るものをよく着ている。聖女のカラーが白と銀だからだ。向こうでの、ダボダボのTシャツとデニム姿を知ってるだけに、なんだか笑える。
 
 あの頃から比べると、琉生斗は顔が大人になった。傍らにいる旦那様に、終始愛を囁かれているのか自信のようなものがみなぎっている。
 本人は気づいていないが、色魔と呼ばれる兄、琉生亜に似た色香を放っているときがある。


 自分も大人になっていってるのかなー。


 美花は疑問だ。女神様に妊娠できる身体にしてもらう、という話もピンとこない。すべて漠然としている。

 ファウラの事は好きだ。


 一緒にいられたら、と思うが、それはどういう事なのかよくわからない。自分の歳でも結婚している人は多い。結婚すると、幸せなのかー。そんな訳がないと、美花は知っている。

「あんた、毎日いちゃこらしてるけど、飽きられない?」 

 飽きない、ではなく、飽きられない、と聞いてしまった。

「全然」
 自信に満ちている。こんな性格だったっけ?
「それは、幸せで何よりねー」
 スパダリだからいいのか、それも違うようなー。

「ーー公爵の事気にしてんのか?」

 美花は黙った。

 しばらくして首を振る。
「ーーそうじゃないわ。なんだか、相手の親を見て、現実を知るって言うのかしらねー」
「あぁ、なるほどーー」

 琉生斗もそれは思う。相手の籍に入るという事は、相手の親族関係とも繋がっていくという事。婚約者のときとは違い、あらゆる場面で同席を求められ、挨拶を受け、返さなければならない。

 だが、琉生斗の場合、祖母がパーティをよく開く人だったので、挨拶関係は得意な方だ。
 どこの社長だ、重役だ、役員だ。政治家の誰々だ、その家族構成、好みーー、など、強制的に覚えさせられたものだ。

 一般的な家庭から、上流階級の相手と結婚すると、こういう部分がネックになるよなーー、と花蓮のお后教育に付き合ってみて、琉生斗は自分がやったほうが早い、と何度思ったかーー。

「親に反対されるって、もうダメじゃない?」
 色々考えたのか、泣きそうになりながら、美花は鼻をすする。

 琉生斗は困った表情を浮かべ、アレクセイを見る。

「親は関係ないと思うがー」

 本当に関係なさそうな人に言われてもーー。

「おまえはそうでも、他の人はそうはいかないの」
 妻に叱られアレクセイは、しゅん、となる。
 ーーこんなカッコイイのに、かわいいとは何という破壊力、ルートもこれにやられたのかしらー。

 美花は、思った。
「亭主関白かと思うと、そうでもないのね」
 なんだよそりゃー、と琉生斗は返した。
「どっちかっていうと、あんたの方がしっかりしてそう」
「それはある」
 琉生斗は笑った。

 なんでもそうだが、バランスが大事だ。後は価値感。友達が、彼氏とのデートですべて割り勘でありえない、と言っていたが、美花にしてみれば、奢ってもらうほうが気を使って嫌である。
 

 その後、何か見返りに、となる気がするーー。その友達も、さんざん彼氏とのエッチな話を聞かせてくれたが、三ヶ月もしない間に別れた。そこまでしといて別れるの?と、美花は呆然としたものだ。

「ねえ」
「うん?」
「エッチって必ずしなきゃならないの?」
 琉生斗は吹き出した。
「いや、そりゃ、なあー」
 盛大に困っている。アレクセイの方は表情も変わらない。

「私はルートが欲しかった」
 おいおい、と琉生斗が引きつった。
「側にいられればよかった。それも本心だが、その内にすべてが欲しくなった。行為はその結果だ」
 琉生斗は真っ赤だ。

「ーー飽きないんですか?もしくは、嫌な面にきづいちゃうとかー」
「飽きる?」
 アレクセイは微笑んだ。美花もその顔を見て、真っ赤になる。

「来世も一緒になるのだ。そんな感情はないな」
 美花は開いた口が塞がらなかった。


 すっごいロマンチストだわ、この王子様ーー。


 琉生斗の方を見ると、しょうがねぇな、と言いながら、まんざらでもない様子。

 さすが、エッチの為に二週間、家にこもる人は言う事が違うわー、と美花は感動した。

「それはそうと、向こうはおまえの事どう思ってんだよ」
 何らかのアプローチがあるのか?

「ーー何も……」
「ん?まさか、片思いかーー」
「ーーあんたらみたいに、好いたら好かれる世の中じゃないわよ」
 美花は琉生斗を睨んだ。

「よけいな事はしなくていいからね!あたしは魔法騎士として東堂より上を目指すんだから!」
 東堂は先に小隊長になったが、これから巻き返すのだ。 

「おい!おまえに指揮官は向いてないぞ!」
「うるさい!」
 美花は怒りながら行ってしまう。

「うーん。どうしたものかー」
 と、言った琉生斗の唇に、アレクセイはキスをする。濃厚なキスをされて、琉生斗は怒った。

「おまえはおまえで、いい加減にしろ!」
「愛している」
「今は関係ない!せめて、人が通らないとこでーー」

 アレクセイは転移魔法で、離宮に戻る。
 寝室で、琉生斗にキスをねだる。
「だから、おまえはーー」
 キスを繰り返し、琉生斗もアレクセイに身を任せてしまう。
「なんでこうなるんだ!」
 琉生斗の昼休みは潰れたーー。


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