129 / 410
その遺跡は神経が衰弱する。編 (ファンタジー系)
第31話 その遺跡は神経が衰弱する。2 ー東堂は火曜日の人ー
しおりを挟む
二人はここがどこかを考える。東堂と違って、暇じゃないのである。
「僕、今日中に仕上げたい書類があったんだけどなー。王太子にも婚約お祝い金で呼ばれてたしー。あっ、ルート達の結婚祝い、すっごいきてるよ。安全の為に、僕と神官達で確認してるからー」
「えー、申し訳ないなぁ。お返ししないとー」
「ちゃんと、名前と品物と金額控えてるから」
有能すぎる補佐官だ。
「おまえ、アレクに月いくらぐらいもらってんの?」
ダチの給料が気になる聖女様。
「うーん、あっちならタワマンに住めるよ」
「やり過ぎだろー」
「能力に見合った分頂いています」
兵馬はニヤついた。さすが、家を建てよう、というやつは違うなー、と琉生斗は思う。
「おーい!奥行くぞ!」
石像をすべて破壊した東堂が声をかけてきた。
「はーい」
兵馬が返事をした。
「何なんだろ、女神様ー」
意図がわからないー。
廊下は長く続いた。
窓も松明もないが、明るい。魔法だろう。突き当りに、ドアがひとつ。どうやらそこ以外に道が、ないようだ。
「東堂、ゆっくり開けろよ」
「ああ」
東堂はドアをバタンと開けた。
「おい!だからーー」
「何これ?」
兵馬が引きつった。
ドアの向こうには大きなカードが、無造作に床の上に並べられていた。
「これって、トランプかなー?」
「みたいだな」
「よし、入るぞ」
「僕入りたくないなー」
兵馬はごねた。東堂に肩を組まれ、引きずられながら兵馬は歩く。琉生斗が入ると扉が勝手に閉まる。
パッと部屋が明るくなった。
「ーーこの適当な並べ方、神経衰弱だよな。たぶん」
「おっ!めくろうぜ!じゃんけんぽん!」
「ちょっと待って、壁になんか書いてある!」
兵馬が指摘した通り、壁には壁画のように、マークと字が描かれていた。
「波線が三つ並んだマーク、木が三つ並んだマーク、焚き火のマークーー。あぁ、下に海、森、炎って書いてんな」
他にも、雪だるま、温泉、雲、雨、魔物、嵐、滝、癒し、爆破と、もうひとつ、全部で13種類のマークと文字が描かれていた。
琉生斗は、その文字を見て眉を顰めた。
「どこかで、見たなーー」
「おまえ読めるのか?」
思考が中断された。
「東堂ーー、おまえはまだダメなのかー」
琉生斗は脱力した。
一年経つのに、こちらの字が読めないとは。
「座学どうしてんの?」
「モロフが読んでくれる」
一生読み書きがダメそうだ、と琉生斗と兵馬は顔を見合わせた。
東堂から、琉生斗、兵馬の順でカードを引くことになった。東堂が張り切ってカードをめくる。
波線が三つ並んだマークと木が三つ並んだマーク。
「ハズレ、なんだよな?」
カードは自然に元に戻る。
「兵馬、描いたか?海と、森」
「まかせてよ」
スケッチブックを広げて、兵馬は先程のマークを描いたカードの上に写した。
「そのスケブ、どうなってんだ?」
東堂が覗き込みながら尋ねた。
「魔法で大きくしたり小さくしてるの」
殿下にやってもらった、と兵馬が言うと、東堂は剥れた。
「おまえ、大事にされてるな」
「第二夫人になる予定なんだ」
「なんだと!?俺もいれてくれ!」
「嫌だね。まあ、どうしてもと言うなら、月水金土はルートで、木、日は僕。なんだか学校に行きたくない火曜日だけ、東堂にしよう」
兵馬は眼鏡をくいっとあげる。
「俺は火曜日の愛人か、きゃあっ」
二人は盛り上がった。
そんな二人を、琉生斗は楽しそうに見ていた。
「おいおい、おれの旦那を取るなー!って来ないのかよ。つまんねーな」
「いやいや」
琉生斗はカードに目をやる。
「学生のノリが、楽しいなあ、と」
懐かしいものを見るような目で、琉生斗は二人を見た。
「おまえはなー、普段同年代と接することねーもんな」
超イケメンとじいさん二人かー。
「俺らは宿舎じゃ毎日これだからな」
「うるさい、って毎日怒られてんでしょ?」
「女子宿舎も、人数のわりにはうるせーぞ」
話に耳を傾けながら、琉生斗はカードを返した。
「あっ、これは、火、だな」
焚き火のマークだ。
「次は、あっ、海だ。兵馬、次これ引けよ」
「おまえ、兵馬には優しいな」
「そういう問題じゃねえよーー」
兵馬は海マークのカードを返した。2枚のカードが光りだしたー。
「おっ!」
バシャン!
「!」
三人は水の中に移動した。
「ぶべっ!」
兵馬が慌てて息を吐いてしまう。東堂はしっかりと兵馬を後ろから抱え、上にあがる。兵馬は口を手で押さえている。
琉生斗も、上を目指して足を動かした。
「ぷはっ!」
東堂が、兵馬を水面に出した。
「大丈夫か!」
「ーーごめん……」
兵馬は落ち込む。
「あっちだ!」
琉生斗が水のない場所を指差した。東堂は頷き、兵馬を抱えたまま泳ぐ。琉生斗も続いた。
「まさか、いきなり海の中とはなー」
東堂は服を脱いで絞る。琉生斗と兵馬は脱がずに、できるだけ水を切るように絞る。
建物の内部には違いない。入口と雰囲気が同じだ。どこからか海の水が入っているのだろう。
「海だな」
「あぁ、しょっぺえよ」
じゃあ、本物の海の中なのかーー。
彼らの側に魔法陣がある。
「さっきの部屋に戻るんだろうね」
兵馬は疲れた顔をした。
「よし、がんばろうぜ!」
「体育会系は暑苦しいな」
「脳筋とは、わかり合えないよね」
「僕、今日中に仕上げたい書類があったんだけどなー。王太子にも婚約お祝い金で呼ばれてたしー。あっ、ルート達の結婚祝い、すっごいきてるよ。安全の為に、僕と神官達で確認してるからー」
「えー、申し訳ないなぁ。お返ししないとー」
「ちゃんと、名前と品物と金額控えてるから」
有能すぎる補佐官だ。
「おまえ、アレクに月いくらぐらいもらってんの?」
ダチの給料が気になる聖女様。
「うーん、あっちならタワマンに住めるよ」
「やり過ぎだろー」
「能力に見合った分頂いています」
兵馬はニヤついた。さすが、家を建てよう、というやつは違うなー、と琉生斗は思う。
「おーい!奥行くぞ!」
石像をすべて破壊した東堂が声をかけてきた。
「はーい」
兵馬が返事をした。
「何なんだろ、女神様ー」
意図がわからないー。
廊下は長く続いた。
窓も松明もないが、明るい。魔法だろう。突き当りに、ドアがひとつ。どうやらそこ以外に道が、ないようだ。
「東堂、ゆっくり開けろよ」
「ああ」
東堂はドアをバタンと開けた。
「おい!だからーー」
「何これ?」
兵馬が引きつった。
ドアの向こうには大きなカードが、無造作に床の上に並べられていた。
「これって、トランプかなー?」
「みたいだな」
「よし、入るぞ」
「僕入りたくないなー」
兵馬はごねた。東堂に肩を組まれ、引きずられながら兵馬は歩く。琉生斗が入ると扉が勝手に閉まる。
パッと部屋が明るくなった。
「ーーこの適当な並べ方、神経衰弱だよな。たぶん」
「おっ!めくろうぜ!じゃんけんぽん!」
「ちょっと待って、壁になんか書いてある!」
兵馬が指摘した通り、壁には壁画のように、マークと字が描かれていた。
「波線が三つ並んだマーク、木が三つ並んだマーク、焚き火のマークーー。あぁ、下に海、森、炎って書いてんな」
他にも、雪だるま、温泉、雲、雨、魔物、嵐、滝、癒し、爆破と、もうひとつ、全部で13種類のマークと文字が描かれていた。
琉生斗は、その文字を見て眉を顰めた。
「どこかで、見たなーー」
「おまえ読めるのか?」
思考が中断された。
「東堂ーー、おまえはまだダメなのかー」
琉生斗は脱力した。
一年経つのに、こちらの字が読めないとは。
「座学どうしてんの?」
「モロフが読んでくれる」
一生読み書きがダメそうだ、と琉生斗と兵馬は顔を見合わせた。
東堂から、琉生斗、兵馬の順でカードを引くことになった。東堂が張り切ってカードをめくる。
波線が三つ並んだマークと木が三つ並んだマーク。
「ハズレ、なんだよな?」
カードは自然に元に戻る。
「兵馬、描いたか?海と、森」
「まかせてよ」
スケッチブックを広げて、兵馬は先程のマークを描いたカードの上に写した。
「そのスケブ、どうなってんだ?」
東堂が覗き込みながら尋ねた。
「魔法で大きくしたり小さくしてるの」
殿下にやってもらった、と兵馬が言うと、東堂は剥れた。
「おまえ、大事にされてるな」
「第二夫人になる予定なんだ」
「なんだと!?俺もいれてくれ!」
「嫌だね。まあ、どうしてもと言うなら、月水金土はルートで、木、日は僕。なんだか学校に行きたくない火曜日だけ、東堂にしよう」
兵馬は眼鏡をくいっとあげる。
「俺は火曜日の愛人か、きゃあっ」
二人は盛り上がった。
そんな二人を、琉生斗は楽しそうに見ていた。
「おいおい、おれの旦那を取るなー!って来ないのかよ。つまんねーな」
「いやいや」
琉生斗はカードに目をやる。
「学生のノリが、楽しいなあ、と」
懐かしいものを見るような目で、琉生斗は二人を見た。
「おまえはなー、普段同年代と接することねーもんな」
超イケメンとじいさん二人かー。
「俺らは宿舎じゃ毎日これだからな」
「うるさい、って毎日怒られてんでしょ?」
「女子宿舎も、人数のわりにはうるせーぞ」
話に耳を傾けながら、琉生斗はカードを返した。
「あっ、これは、火、だな」
焚き火のマークだ。
「次は、あっ、海だ。兵馬、次これ引けよ」
「おまえ、兵馬には優しいな」
「そういう問題じゃねえよーー」
兵馬は海マークのカードを返した。2枚のカードが光りだしたー。
「おっ!」
バシャン!
「!」
三人は水の中に移動した。
「ぶべっ!」
兵馬が慌てて息を吐いてしまう。東堂はしっかりと兵馬を後ろから抱え、上にあがる。兵馬は口を手で押さえている。
琉生斗も、上を目指して足を動かした。
「ぷはっ!」
東堂が、兵馬を水面に出した。
「大丈夫か!」
「ーーごめん……」
兵馬は落ち込む。
「あっちだ!」
琉生斗が水のない場所を指差した。東堂は頷き、兵馬を抱えたまま泳ぐ。琉生斗も続いた。
「まさか、いきなり海の中とはなー」
東堂は服を脱いで絞る。琉生斗と兵馬は脱がずに、できるだけ水を切るように絞る。
建物の内部には違いない。入口と雰囲気が同じだ。どこからか海の水が入っているのだろう。
「海だな」
「あぁ、しょっぺえよ」
じゃあ、本物の海の中なのかーー。
彼らの側に魔法陣がある。
「さっきの部屋に戻るんだろうね」
兵馬は疲れた顔をした。
「よし、がんばろうぜ!」
「体育会系は暑苦しいな」
「脳筋とは、わかり合えないよね」
105
お気に入りに追加
255
あなたにおすすめの小説
とある文官のひとりごと
きりか
BL
貧乏な弱小子爵家出身のノア・マキシム。
アシュリー王国の花形騎士団の文官として、日々頑張っているが、学生の頃からやたらと絡んでくるイケメン部隊長であるアベル・エメを大の苦手というか、天敵認定をしていた。しかし、ある日、父の借金が判明して…。
基本コメディで、少しだけシリアス?
エチシーンところか、チュッどまりで申し訳ございません(土下座)
ムーンライト様でも公開しております。


一級警備員の俺が異世界転生したら一流警備兵になったけど色々と勧誘されて鬱陶しい
司真 緋水銀
ファンタジー
【あらすじ】
一級の警備資格を持つ不思議系マイペース主人公、石原鳴月維(いしはらなつい)は仕事中トラックに轢かれ死亡する。
目を覚ました先は勇者と魔王の争う異世界。
『職業』の『天職』『適職』などにより『資格(センス)』や『技術(スキル)』が決まる世界。
勇者の力になるべく喚ばれた石原の職業は……【天職の警備兵】
周囲に笑いとばされ勇者達にもつま弾きにされた石原だったが…彼はあくまでマイペースに徐々に力を発揮し、周囲を驚嘆させながら自由に生き抜いていく。
--------------------------------------------------------
※基本主人公視点ですが別の人視点も入ります。
改修した改訂版でセリフや分かりにくい部分など変更しました。
小説家になろうさんで先行配信していますのでこちらも応援していただくと嬉しいですっ!
https://ncode.syosetu.com/n7300fi/
この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。
幼い精霊を預けられたので、俺と主様が育ての父母になった件
雪玉 円記
BL
ハイマー辺境領主のグルシエス家に仕える、ディラン・サヘンドラ。
主である辺境伯グルシエス家三男、クリストファーと共に王立学園を卒業し、ハイマー領へと戻る。
その数日後、魔獣討伐のために騎士団と共に出撃したところ、幼い見た目の言葉を話せない子供を拾う。
リアンと名付けたその子供は、クリストファーの思惑でディランと彼を父母と認識してしまった。
個性豊かなグルシエス家、仕える面々、不思議な生き物たちに囲まれ、リアンはのびのびと暮らす。
ある日、世界的宗教であるマナ・ユリエ教の教団騎士であるエイギルがリアンを訪ねてきた。
リアンは次代の世界樹の精霊である。そのため、次のシンボルとして教団に居を移してほしい、と告げるエイギル。
だがリアンはそれを拒否する。リアンが嫌なら、と二人も支持する。
その判断が教皇アーシスの怒髪天をついてしまった。
数週間後、教団騎士団がハイマー辺境領邸を襲撃した。
ディランはリアンとクリストファーを守るため、リアンを迎えにきたエイギルと対峙する。
だが実力の差は大きく、ディランは斬り伏せられ、死の淵を彷徨う。
次に目が覚めた時、ディランはユグドラシルの元にいた。
ユグドラシルが用意したアフタヌーンティーを前に、意識が途絶えたあとのこと、自分とクリストファーの状態、リアンの決断、そして、何故自分とクリストファーがリアンの養親に選ばれたのかを聞かされる。
ユグドラシルに送り出され、意識が戻ったのは襲撃から数日後だった。
後日、リアンが拾ってきた不思議な生き物たちが実は四大元素の精霊たちであると知らされる。
彼らとグルシエス家中の協力を得て、ディランとクリストファーは鍛錬に励む。
一ヶ月後、ディランとクリスは四大精霊を伴い、教団本部がある隣国にいた。
ユグドラシルとリアンの意思を叶えるために。
そして、自分達を圧倒的戦闘力でねじ伏せたエイギルへのリベンジを果たすために──……。
※一部に流血を含む戦闘シーン、R-15程度のイチャイチャが含まれます。
※現在、改稿したものを順次投稿中です。
詳しくは最新の近況ボードをご覧ください。

どこにでもある話と思ったら、まさか?
きりか
BL
ストロベリームーンとニュースで言われた月夜の晩に、リストラ対象になった俺は、アルコールによって現実逃避をし、異世界転生らしきこととなったが、あまりにありきたりな展開に笑いがこみ上げてきたところ、イケメンが2人現れて…。

せっかく美少年に転生したのに女神の祝福がおかしい
拓海のり
BL
前世の記憶を取り戻した途端、海に放り込まれたレニー。【腐女神の祝福】は気になるけれど、裕福な商人の三男に転生したので、まったり気ままに異世界の醍醐味を満喫したいです。神様は出て来ません。ご都合主義、ゆるふわ設定。
途中までしか書いていないので、一話のみ三万字位の短編になります。
他サイトにも投稿しています。

学園の俺様と、辺境地の僕
そらうみ
BL
この国の三大貴族の一つであるルーン・ホワイトが、何故か僕に構ってくる。学園生活を平穏に過ごしたいだけなのに、ルーンのせいで僕は皆の注目の的となってしまった。卒業すれば関わることもなくなるのに、ルーンは一体…何を考えているんだ?
【全12話になります。よろしくお願いします。】

主人公のライバルポジにいるようなので、主人公のカッコ可愛さを特等席で愛でたいと思います。
小鷹けい
BL
以前、なろうサイトさまに途中まであげて、結局書きかけのまま放置していたものになります(アカウントごと削除済み)タイトルさえもうろ覚え。
そのうち続きを書くぞ、の意気込みついでに数話分投稿させていただきます。
先輩×後輩
攻略キャラ×当て馬キャラ
総受けではありません。
嫌われ→からの溺愛。こちらも面倒くさい拗らせ攻めです。
ある日、目が覚めたら大好きだったBLゲームの当て馬キャラになっていた。死んだ覚えはないが、そのキャラクターとして生きてきた期間の記憶もある。
だけど、ここでひとつ問題が……。『おれ』の推し、『僕』が今まで嫌がらせし続けてきた、このゲームの主人公キャラなんだよね……。
え、イジめなきゃダメなの??死ぬほど嫌なんだけど。絶対嫌でしょ……。
でも、主人公が攻略キャラとBLしてるところはなんとしても見たい!!ひっそりと。なんなら近くで見たい!!
……って、なったライバルポジとして生きることになった『おれ(僕)』が、主人公と仲良くしつつ、攻略キャラを巻き込んでひっそり推し活する……みたいな話です。
本来なら当て馬キャラとして冷たくあしらわれ、手酷くフラれるはずの『ハルカ先輩』から、バグなのかなんなのか徐々に距離を詰めてこられて戸惑いまくる当て馬の話。
こちらは、ゆるゆる不定期更新になります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる