ロクイチ聖女 6分の1の確率で聖女になりました。(第一部、第二部、第三部)

濃子

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その遺跡は神経が衰弱する。編 (ファンタジー系)

第31話 その遺跡は神経が衰弱する。2 ー東堂は火曜日の人ー

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 二人はここがどこかを考える。東堂と違って、暇じゃないのである。

「僕、今日中に仕上げたい書類があったんだけどなー。王太子にも婚約お祝い金で呼ばれてたしー。あっ、ルート達の結婚祝い、すっごいきてるよ。安全の為に、僕と神官達で確認してるからー」
「えー、申し訳ないなぁ。お返ししないとー」
「ちゃんと、名前と品物と金額控えてるから」
 有能すぎる補佐官だ。
「おまえ、アレクに月いくらぐらいもらってんの?」
 ダチの給料が気になる聖女様。
「うーん、あっちならタワマンに住めるよ」
「やり過ぎだろー」
「能力に見合った分頂いています」
 兵馬はニヤついた。さすが、家を建てよう、というやつは違うなー、と琉生斗は思う。
「おーい!奥行くぞ!」
 石像をすべて破壊した東堂が声をかけてきた。
「はーい」
 兵馬が返事をした。
「何なんだろ、女神様ー」
 意図がわからないー。

 廊下は長く続いた。
 窓も松明もないが、明るい。魔法だろう。突き当りに、ドアがひとつ。どうやらそこ以外に道が、ないようだ。
「東堂、ゆっくり開けろよ」
「ああ」
 東堂はドアをバタンと開けた。
「おい!だからーー」
「何これ?」
 兵馬が引きつった。
 ドアの向こうには大きなカードが、無造作に床の上に並べられていた。
「これって、トランプかなー?」
「みたいだな」 
「よし、入るぞ」
「僕入りたくないなー」
 兵馬はごねた。東堂に肩を組まれ、引きずられながら兵馬は歩く。琉生斗が入ると扉が勝手に閉まる。
 パッと部屋が明るくなった。

「ーーこの適当な並べ方、神経衰弱だよな。たぶん」
「おっ!めくろうぜ!じゃんけんぽん!」
「ちょっと待って、壁になんか書いてある!」
 兵馬が指摘した通り、壁には壁画のように、マークと字が描かれていた。
「波線が三つ並んだマーク、木が三つ並んだマーク、焚き火のマークーー。あぁ、下に海、森、炎って書いてんな」
 他にも、雪だるま、温泉、雲、雨、魔物、嵐、滝、癒し、爆破と、もうひとつ、全部で13種類のマークと文字が描かれていた。
 琉生斗は、その文字を見て眉を顰めた。
「どこかで、見たなーー」
「おまえ読めるのか?」
 思考が中断された。
「東堂ーー、おまえはまだダメなのかー」
 琉生斗は脱力した。
 一年経つのに、こちらの字が読めないとは。
「座学どうしてんの?」
「モロフが読んでくれる」
 一生読み書きがダメそうだ、と琉生斗と兵馬は顔を見合わせた。

 東堂から、琉生斗、兵馬の順でカードを引くことになった。東堂が張り切ってカードをめくる。
 波線が三つ並んだマークと木が三つ並んだマーク。
「ハズレ、なんだよな?」
 カードは自然に元に戻る。
「兵馬、描いたか?海と、森」
「まかせてよ」
 スケッチブックを広げて、兵馬は先程のマークを描いたカードの上に写した。
「そのスケブ、どうなってんだ?」
 東堂が覗き込みながら尋ねた。
「魔法で大きくしたり小さくしてるの」
 殿下にやってもらった、と兵馬が言うと、東堂は剥れた。
「おまえ、大事にされてるな」
「第二夫人になる予定なんだ」
「なんだと!?俺もいれてくれ!」
「嫌だね。まあ、どうしてもと言うなら、月水金土はルートで、木、日は僕。なんだか学校に行きたくない火曜日だけ、東堂にしよう」
 兵馬は眼鏡をくいっとあげる。
「俺は火曜日の愛人か、きゃあっ」
 二人は盛り上がった。

 そんな二人を、琉生斗は楽しそうに見ていた。
「おいおい、おれの旦那を取るなー!って来ないのかよ。つまんねーな」
「いやいや」
 琉生斗はカードに目をやる。
「学生のノリが、楽しいなあ、と」
 懐かしいものを見るような目で、琉生斗は二人を見た。
「おまえはなー、普段同年代と接することねーもんな」
 超イケメンとじいさん二人かー。
「俺らは宿舎じゃ毎日これだからな」
「うるさい、って毎日怒られてんでしょ?」
「女子宿舎も、人数のわりにはうるせーぞ」
 話に耳を傾けながら、琉生斗はカードを返した。
「あっ、これは、火、だな」
 焚き火のマークだ。
「次は、あっ、海だ。兵馬、次これ引けよ」
「おまえ、兵馬には優しいな」
「そういう問題じゃねえよーー」
 兵馬は海マークのカードを返した。2枚のカードが光りだしたー。
「おっ!」


 バシャン!
「!」
 三人は水の中に移動した。
「ぶべっ!」
 兵馬が慌てて息を吐いてしまう。東堂はしっかりと兵馬を後ろから抱え、上にあがる。兵馬は口を手で押さえている。
 琉生斗も、上を目指して足を動かした。
「ぷはっ!」
 東堂が、兵馬を水面に出した。
「大丈夫か!」
「ーーごめん……」
 兵馬は落ち込む。
「あっちだ!」
 琉生斗が水のない場所を指差した。東堂は頷き、兵馬を抱えたまま泳ぐ。琉生斗も続いた。


「まさか、いきなり海の中とはなー」
 東堂は服を脱いで絞る。琉生斗と兵馬は脱がずに、できるだけ水を切るように絞る。
 建物の内部には違いない。入口と雰囲気が同じだ。どこからか海の水が入っているのだろう。
 
 
「海だな」
「あぁ、しょっぺえよ」
 じゃあ、本物の海の中なのかーー。

 彼らの側に魔法陣がある。
「さっきの部屋に戻るんだろうね」
 兵馬は疲れた顔をした。
「よし、がんばろうぜ!」
「体育会系は暑苦しいな」
「脳筋とは、わかり合えないよね」
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