ロクイチ聖女 6分の1の確率で聖女になりました。(第一部、第二部、第三部)

濃子

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強国バルド編 (ファンタジー系)

第29話 強国バルド 最終話 永遠の二人♡

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 翌日、大神殿祭の日。

 神聖ロードリンゲン国王太子クリステイルの表明が、神殿を通して各国に告げられた。

 強国バルドの件で、王族達もわかっているのか、大きな動きはなかったという。


 今日は大神殿で、愛しい夫君の隣で澄まして座っている聖女様。
 純白の法衣を着ていると、花嫁のようにも見え、溜め息をついてうっとりするものもいた。

 神殿祭の催しで、子供達が踊ったり歌ったりする姿を、神殿にお参りにきた国民が微笑ましく見ていく。
 琉生斗の場合、こういうのが大好きなひとなので、本当に楽しんで眺めている。

 ピアノを兵馬が用意した。

「おれはアレクのためにしか弾かないんだよ」 
 と言ったのだが、夫君の許可が出ると、子供達の歌に合わせて演奏をし、観客は大興奮だ。

 なかでも花蓮のアメージング・レースに合わせた伴奏は、王太子殿下が泣いたそうだ。

 兵馬のヴァイオリン演奏に付き合い、ブラームスのユモレスクや、チャイコフスキーのヴァイオリンソナタを弾いたりして、場を盛り上げた。



 演奏が終わり、教皇のありがたいお話がはじまる。



「クリステイル、おまえはヴァイオリンは弾くのか?」

 兄の問いに、クリステイルは首を振った。

「あまり得意ではありませんがーー」

 教皇がお話中ですよ、とクリステイルは兄を嗜める。

「そうかー。ヴァイオリンも駄目なのか」

「ちょっと兄上、ひどいじゃないですか!」

「おまえは少しでも秀でたものがないのかー」

「私は兄上より、世渡り上手ですよ」

 クリステイルは完全に剥れた。

「お兄様、ヴァイオリンならお母様が得意ですわ」

 ミントが口を挟む。

 ラズベリーを見ると、「わたくしでよろしければ」と王妃は言った。

「クリステイル、習うか」

「はいはい。わからないところは私に質問させるんでしょ!」

 弟は兄をよく理解していた。

「しかし、聖女様が、ベキリーブルーガーネットか、カレンは、何にしようかな」

 クリステイルは呟いた。結局、誰も教皇の話は聞いていない。

「カレンは、蓮が入った名前なのだろう?パパラチアサファイアでいいのではないか?」

 アダマスが言うと、クリステイルは手を叩いた。

「いいですね。そうしましょう」

「おまえ、まだ手は出しとらんだろうな」

 アレクセイを見ながらアダマスは言う。

「もちろんですよ」

 クリステイルは澄ました顔で頷いた。

 アレクセイは、襟を直し、無言で立ち上がると、琉生斗の側まで優雅に歩く。お話の最中、教皇の側でずっと立っていた妻はお疲れ気味だ。

 何事かと皆が見ている中、教皇ミハエルから、アレクセイと琉生斗が、籍を入れたとの報告があった。

 二人そろってお辞儀をする。





 大神殿は割れんばかりの歓声に包まれ、アレクセイと琉生斗はお互いを見つめた。





 幸せだよ、アレクーー。



 おれ、死んでもおまえが好きだーー。







 突然、空から花びらがまかれた。

 美しい白く銀が混じった花弁だ。

 皆が上を見ると、時空竜の女神様が、優美な姿で空を飛んでいた。大神殿は驚きに包まれる。



 花吹雪が舞う中、二人はキスをした。



 シッカリ守リナーー。



 女神様がアレクセイを叱る。



 申シ訳ゴザイマセンーー。

 

 アレクセイは素直に謝った。








「へぇー、あれが神様なんだー。すげぇーなあ」

「僕も本体ははじめてみるよ」

 上空を飛ぶ時空竜の女神様を、東堂と兵馬は芝生に寝転がりながら眺めている。兵馬はヴァイオリン演奏を終えて、東堂と合流した。

「あいつ、愛されてんだなーー」

「ん?東堂!」

「何だよーー」

「避けてぇ!」

 兵馬が悲鳴をあげた。東堂は飛び起きると、異常に強い風が巻き起こった。

「な、何だよ……」

 今まで寝ていたところに、長剣が刺さっている。

「え?」

 紋は時空竜の女神様だ。

「ほぇぇぇーー!」

「え?東堂だけ?」

 僕には?と兵馬は残念そうだ。



 東堂は恐る恐る剣に触れてみる。

 一見何もなさそうだ。

 だが、触ってみてわかる。魔法剣だーー。

「すげぇー」

 魔力を使わなくても、魔法が使える剣。魔力は他の事に使えるというわけだ。

「サンキュー!女神様ぁ!」

 東堂は大声で叫んだ。
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