ロクイチ聖女 6分の1の確率で聖女になりました。(第一部、第二部、第三部)

濃子

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強国バルド編 (ファンタジー系)

第27話 強国バルド 11 終幕☆やや18禁

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「揃った!いま全面が揃ってるよ!」

「殿下、壊せるわ~!」



 ああ。

大地震アースクエイク



 王都を揺さぶる大地震が起きた。

 結界が壊れていく。

 そして、琉生斗がズラした建物や地面が、揺さぶられながら元に戻っていく。完全には戻らないだろうが、後は自分達でどうにかするだろう。



「そんな、馬鹿なーー」

 バルド国の魔法騎士は、言葉を失った。

 敵国が、国を助けてくれている。どういうつもりなのかーー。

 もしかして、自分達が、敵なのではーー。

 

 国民は青ざめた。









「よくも騙したな!」

 ハオルは怒りで我を忘れている。琉生斗を引きずり回し、蹴り続けた。

「おやめください!」

 ドライアド達が泣きながらとめる。

 エントは溜め息をついた。

 涙を木は流す。



「ハオル様、残念ですがお別れです」

「な、何?」

「我々は必要とされたかった。必要とされ、嬉しかった。だが、それも、もうどうでもよい事」

 エントは諦めた顔をした。

「鉄の森へ帰ります。さようなら、ハオル様」

 エントと共に、ドライアドも引いていく。





 ちょっと待ってよーー。

 琉生斗は思った。この状態で放置?



 本当に、神様や精霊という生き物は、身勝手だーー!



「おまえのせいだ!」

 琉生斗の口に薬がねじ込まれる。

「!」

 くそー、またかよー。油断した!

 手の自由がきかないと吐く事もできないーー。



 何の薬だよーー。

 もう、あの夢は嫌だぁ!

「アレクセイが来たときに、おもしろい状態を見せてやる!」

 琉生斗は意識が朦朧としてくるのを耐える。

 なんだよ、死ぬのかー。

 死ぬならアレクと一発ーー。

 

 ん?



 ……マジかよー、この薬ーー。

 

 琉生斗は苦しみだした。もがいて逃げようとするがー。

 意識が飛びそうになる。

 身を縮こませて、琉生斗は耐えている。



 ハオルはにやつきながら、琉生斗に手を伸ばす。



 空気が揺れた。

「がはっ」

 ハオルは壁に激突した。

 ふらつきながら顔をあげると、そこにアレクセイが立っていた。

 琉生斗を抱え、去ろうとする。



「ま、待て!がっ!」

 見えない刃にハオルは斬られた。

 ぐったりとする。

「カルヤン王太子ーー」

「わかっている」

 アレクセイに連れて来られたカルヤンは、自国の兵士を呼ぶ。



「カルヤン様!」

「皆、こいつに人質を取られているのか?」

「ーーはい」

 カルヤンは溜め息をついた。

「すべて解放する。こいつの魔力を封じ、投獄する」

 



 強国バルドは、神聖ロードリンゲン国第一王子アレクセイに、全面降伏した。

「後は父に任せる」

「わかった。国を救っていただき、礼を言う」

 ハオルは国賊扱いかーー、とアレクセイは目を伏せた。

「聖女様が苦しんでいる。何を飲ませた」

 アレクセイの問いに、カルヤンが答える。

「死なないところを見ると、死に至るものではないな。身体の自由を奪われる。私と同じだろう、いずれ気がつく」







 アレクセイは皆のところに転移した。

「すぐに国に運びたい。薬を飲まされている」

「殿下、馬車へどうぞ!」

 東堂が叫んだ。

「ルートーー」

 兵馬が不安そうに見ている。琉生斗はきつく目を閉じて、苦しそうだ。



 鉄の森を馬車で抜ける。

 もう、ドライアド達は攻撃してこなかった。



 ーーすみません。我々は我々を必要としてくれることが嬉しかった。それも、今日このときまでの事。
 我々は、深い眠りにつきます。


 鉄の森のエントの声に、アレクセイは頷いた。

「ルート……」

 琉生斗の唇に、キスをしようと顔を近付ける。

 そのとき、琉生斗が嫌がるように顔を埋めた。



 軽いショックを受けながら、アレクセイは固まった。

「ルート……」

 ハオルに何をされたーー。

 今すぐ聞きたいのに、怖くて聞けないーー。

 きつく抱きしめる。



 何があろうと、私はーー。





 ロードリンゲンまで戻ると、医療班が呼ばれた。

 それほどの衰弱はない。

 だが、琉生斗は丸まったまま、医師の言う事を聞かない。

 教皇ミハエルが、聖魔法で体力を回復させ、保存魔法をかけていた聖女の証を首に戻す。

 琉生斗は動かなかった。人に触られるのをとにかく嫌がった。アレクセイでも、駄目だった。





 側で看病をしながら、アレクセイはすっかり気力を失ってしまっていた。琉生斗に拒絶されるなどーー。

 どうなるのだ、と皆が心配する中、琉生斗は目を覚ました。助け出されてから、一日経とうとしていた。

 戸惑うアレクセイに、琉生斗は腕を伸ばした。

「アレク、だよな……」

「あぁー」

「本当にアレク、だよな……」

 マジのマジでアレクだよなー、とくどいと言うぐらい確認をする。

「そうだ」

 アレクセイは琉生斗を抱きしめた。琉生斗の身体が安堵したようにも思う。

「私だろ?」

 頬に触れる。その触れ方に、琉生斗は息をついた。

「アレクーー」

「あぁ、ルート」

「抱いて、早く」



 アレクセイは固まった。

「マジで、つらいんだってーー。おれ、おまえだって確信するまで、ちょーがんばったのよー」

 琉生斗はアレクセイの首筋にキスをした。舌で這われ、ゾクリとする。



 まさか、ハオルが飲ませたのはーー。



「アレクセイ殿下、我々は失礼致します」

 何飲まされてんだかーー、と教皇が空気を読んだ。

 医療班長ナイチンと共に出て行く。

「そうだ、殿下。聖女様がハンカチにくるんでいたもの、何だと思います?」

「?」

「殿下のあれでしたよー」

 ミハエルが吹いた。アレクセイは黙ったまま、琉生斗に抱きつかれている。

「では、鍵はかけてくださいねー」

 その間にも、琉生斗はアレクセイのボタンを外していく。舌を出したキスの誘いに、アレクセイは応じた。大胆に舌を絡めていき、琉生斗はアレクセイの下唇を甘く噛んだ。



 そうか、あのとき帰ってから出そうかと、とりあえずティッシュをあてたのだったな。それを、闇魔法にでも使ったのだろうかー。

 アレクセイは冷静に考えながら、赤面した。

「ルート、ハオルに何かされなかったか?」

「ない!」

 琉生斗の足が、開かれる。

「もう、早くちょうだいー」

 喘ぐような言葉に、アレクセイは気力を取り戻した。

「あぁ、いくらでも……」

 アレクセイの汗と埃の匂いが、たまらなかった。抱きついているだけで、琉生斗の身体はすぐに、喜びで埋め尽くされる。

「いっぱい、ちょうだいーー」

 服を脱ぎながらの愛らしいおねだりに、アレクセイは何も考えられなくなりー。











「まだ、出てこねーの?」

 東堂が呆れたように言う。

「うん。まぁ、僕ができる仕事はやってるんだけどね」 

 有能な補佐官は答える。

「もう、二週間になるんじゃねえの?」

 マジであほなのか、あの二人。



 琉生斗とアレクセイが、離宮から出てこない、と噂になっている。何をしているかは想像がつくが。

「新婚さんだからって、エグいなー」

 嫁がそんなんでも、俺はがんばれるだろうかー。

 東堂は悩む。

「魔蝕は出てねーの?」

「それはわからない。発生すれば、ルートの方が気付くのが早いしね」

「おまえ、部屋入れんだろ?呼んで来いよ。ヒョロ太子困ってんじゃん」

「ヒョロ太子に呼ばれて行く二人じゃないよ」

 離れたところで聞いていたヒョロ太子ことクリステイルは、がっくりきていた。

 ヒョロ、って、ヒョロって言うけど、いちお貴方より強いですよー、と東堂を睨む。

 しかも、ヒョウマまで一緒になってー。

「バルドの王太子が、各国に謝罪に回ってんだろ」

「お兄さんは、わりとまともだったみたいだね」

「と、いうよりは懲りてんだろ。因縁の相手みたいだし」

「そうでしょうねーー」

 クリステイルは姿を見せた。

「ヒョウマ殿、ダメですか?」

「うん。僕だって何度もあんなとこ行きたくないよ」

 離宮がピンク色に染まったみたいな空気になっている。

「三日ぐらい離れて二週間なら、一週間なら一ヶ月か」

 東堂は爆笑した。

「何にせよ。助けられてよかったよな」

「本当にーー」

 クリステイルは深く頷いた。

「あなた方には感謝しかありません」
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