124 / 410
強国バルド編 (ファンタジー系)
第27話 強国バルド 11 終幕☆やや18禁
しおりを挟む「揃った!いま全面が揃ってるよ!」
「殿下、壊せるわ~!」
ああ。
「大地震」
王都を揺さぶる大地震が起きた。
結界が壊れていく。
そして、琉生斗がズラした建物や地面が、揺さぶられながら元に戻っていく。完全には戻らないだろうが、後は自分達でどうにかするだろう。
「そんな、馬鹿なーー」
バルド国の魔法騎士は、言葉を失った。
敵国が、国を助けてくれている。どういうつもりなのかーー。
もしかして、自分達が、敵なのではーー。
国民は青ざめた。
「よくも騙したな!」
ハオルは怒りで我を忘れている。琉生斗を引きずり回し、蹴り続けた。
「おやめください!」
ドライアド達が泣きながらとめる。
エントは溜め息をついた。
涙を木は流す。
「ハオル様、残念ですがお別れです」
「な、何?」
「我々は必要とされたかった。必要とされ、嬉しかった。だが、それも、もうどうでもよい事」
エントは諦めた顔をした。
「鉄の森へ帰ります。さようなら、ハオル様」
エントと共に、ドライアドも引いていく。
ちょっと待ってよーー。
琉生斗は思った。この状態で放置?
本当に、神様や精霊という生き物は、身勝手だーー!
「おまえのせいだ!」
琉生斗の口に薬がねじ込まれる。
「!」
くそー、またかよー。油断した!
手の自由がきかないと吐く事もできないーー。
何の薬だよーー。
もう、あの夢は嫌だぁ!
「アレクセイが来たときに、おもしろい状態を見せてやる!」
琉生斗は意識が朦朧としてくるのを耐える。
なんだよ、死ぬのかー。
死ぬならアレクと一発ーー。
ん?
……マジかよー、この薬ーー。
琉生斗は苦しみだした。もがいて逃げようとするがー。
意識が飛びそうになる。
身を縮こませて、琉生斗は耐えている。
ハオルはにやつきながら、琉生斗に手を伸ばす。
空気が揺れた。
「がはっ」
ハオルは壁に激突した。
ふらつきながら顔をあげると、そこにアレクセイが立っていた。
琉生斗を抱え、去ろうとする。
「ま、待て!がっ!」
見えない刃にハオルは斬られた。
ぐったりとする。
「カルヤン王太子ーー」
「わかっている」
アレクセイに連れて来られたカルヤンは、自国の兵士を呼ぶ。
「カルヤン様!」
「皆、こいつに人質を取られているのか?」
「ーーはい」
カルヤンは溜め息をついた。
「すべて解放する。こいつの魔力を封じ、投獄する」
強国バルドは、神聖ロードリンゲン国第一王子アレクセイに、全面降伏した。
「後は父に任せる」
「わかった。国を救っていただき、礼を言う」
ハオルは国賊扱いかーー、とアレクセイは目を伏せた。
「聖女様が苦しんでいる。何を飲ませた」
アレクセイの問いに、カルヤンが答える。
「死なないところを見ると、死に至るものではないな。身体の自由を奪われる。私と同じだろう、いずれ気がつく」
アレクセイは皆のところに転移した。
「すぐに国に運びたい。薬を飲まされている」
「殿下、馬車へどうぞ!」
東堂が叫んだ。
「ルートーー」
兵馬が不安そうに見ている。琉生斗はきつく目を閉じて、苦しそうだ。
鉄の森を馬車で抜ける。
もう、ドライアド達は攻撃してこなかった。
ーーすみません。我々は我々を必要としてくれることが嬉しかった。それも、今日このときまでの事。
我々は、深い眠りにつきます。
鉄の森のエントの声に、アレクセイは頷いた。
「ルート……」
琉生斗の唇に、キスをしようと顔を近付ける。
そのとき、琉生斗が嫌がるように顔を埋めた。
軽いショックを受けながら、アレクセイは固まった。
「ルート……」
ハオルに何をされたーー。
今すぐ聞きたいのに、怖くて聞けないーー。
きつく抱きしめる。
何があろうと、私はーー。
ロードリンゲンまで戻ると、医療班が呼ばれた。
それほどの衰弱はない。
だが、琉生斗は丸まったまま、医師の言う事を聞かない。
教皇ミハエルが、聖魔法で体力を回復させ、保存魔法をかけていた聖女の証を首に戻す。
琉生斗は動かなかった。人に触られるのをとにかく嫌がった。アレクセイでも、駄目だった。
側で看病をしながら、アレクセイはすっかり気力を失ってしまっていた。琉生斗に拒絶されるなどーー。
どうなるのだ、と皆が心配する中、琉生斗は目を覚ました。助け出されてから、一日経とうとしていた。
戸惑うアレクセイに、琉生斗は腕を伸ばした。
「アレク、だよな……」
「あぁー」
「本当にアレク、だよな……」
マジのマジでアレクだよなー、とくどいと言うぐらい確認をする。
「そうだ」
アレクセイは琉生斗を抱きしめた。琉生斗の身体が安堵したようにも思う。
「私だろ?」
頬に触れる。その触れ方に、琉生斗は息をついた。
「アレクーー」
「あぁ、ルート」
「抱いて、早く」
アレクセイは固まった。
「マジで、つらいんだってーー。おれ、おまえだって確信するまで、ちょーがんばったのよー」
琉生斗はアレクセイの首筋にキスをした。舌で這われ、ゾクリとする。
まさか、ハオルが飲ませたのはーー。
「アレクセイ殿下、我々は失礼致します」
何飲まされてんだかーー、と教皇が空気を読んだ。
医療班長ナイチンと共に出て行く。
「そうだ、殿下。聖女様がハンカチにくるんでいたもの、何だと思います?」
「?」
「殿下のあれでしたよー」
ミハエルが吹いた。アレクセイは黙ったまま、琉生斗に抱きつかれている。
「では、鍵はかけてくださいねー」
その間にも、琉生斗はアレクセイのボタンを外していく。舌を出したキスの誘いに、アレクセイは応じた。大胆に舌を絡めていき、琉生斗はアレクセイの下唇を甘く噛んだ。
そうか、あのとき帰ってから出そうかと、とりあえずティッシュをあてたのだったな。それを、闇魔法にでも使ったのだろうかー。
アレクセイは冷静に考えながら、赤面した。
「ルート、ハオルに何かされなかったか?」
「ない!」
琉生斗の足が、開かれる。
「もう、早くちょうだいー」
喘ぐような言葉に、アレクセイは気力を取り戻した。
「あぁ、いくらでも……」
アレクセイの汗と埃の匂いが、たまらなかった。抱きついているだけで、琉生斗の身体はすぐに、喜びで埋め尽くされる。
「いっぱい、ちょうだいーー」
服を脱ぎながらの愛らしいおねだりに、アレクセイは何も考えられなくなりー。
「まだ、出てこねーの?」
東堂が呆れたように言う。
「うん。まぁ、僕ができる仕事はやってるんだけどね」
有能な補佐官は答える。
「もう、二週間になるんじゃねえの?」
マジであほなのか、あの二人。
琉生斗とアレクセイが、離宮から出てこない、と噂になっている。何をしているかは想像がつくが。
「新婚さんだからって、エグいなー」
嫁がそんなんでも、俺はがんばれるだろうかー。
東堂は悩む。
「魔蝕は出てねーの?」
「それはわからない。発生すれば、ルートの方が気付くのが早いしね」
「おまえ、部屋入れんだろ?呼んで来いよ。ヒョロ太子困ってんじゃん」
「ヒョロ太子に呼ばれて行く二人じゃないよ」
離れたところで聞いていたヒョロ太子ことクリステイルは、がっくりきていた。
ヒョロ、って、ヒョロって言うけど、いちお貴方より強いですよー、と東堂を睨む。
しかも、ヒョウマまで一緒になってー。
「バルドの王太子が、各国に謝罪に回ってんだろ」
「お兄さんは、わりとまともだったみたいだね」
「と、いうよりは懲りてんだろ。因縁の相手みたいだし」
「そうでしょうねーー」
クリステイルは姿を見せた。
「ヒョウマ殿、ダメですか?」
「うん。僕だって何度もあんなとこ行きたくないよ」
離宮がピンク色に染まったみたいな空気になっている。
「三日ぐらい離れて二週間なら、一週間なら一ヶ月か」
東堂は爆笑した。
「何にせよ。助けられてよかったよな」
「本当にーー」
クリステイルは深く頷いた。
「あなた方には感謝しかありません」
86
お気に入りに追加
255
あなたにおすすめの小説
とある文官のひとりごと
きりか
BL
貧乏な弱小子爵家出身のノア・マキシム。
アシュリー王国の花形騎士団の文官として、日々頑張っているが、学生の頃からやたらと絡んでくるイケメン部隊長であるアベル・エメを大の苦手というか、天敵認定をしていた。しかし、ある日、父の借金が判明して…。
基本コメディで、少しだけシリアス?
エチシーンところか、チュッどまりで申し訳ございません(土下座)
ムーンライト様でも公開しております。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
一級警備員の俺が異世界転生したら一流警備兵になったけど色々と勧誘されて鬱陶しい
司真 緋水銀
ファンタジー
【あらすじ】
一級の警備資格を持つ不思議系マイペース主人公、石原鳴月維(いしはらなつい)は仕事中トラックに轢かれ死亡する。
目を覚ました先は勇者と魔王の争う異世界。
『職業』の『天職』『適職』などにより『資格(センス)』や『技術(スキル)』が決まる世界。
勇者の力になるべく喚ばれた石原の職業は……【天職の警備兵】
周囲に笑いとばされ勇者達にもつま弾きにされた石原だったが…彼はあくまでマイペースに徐々に力を発揮し、周囲を驚嘆させながら自由に生き抜いていく。
--------------------------------------------------------
※基本主人公視点ですが別の人視点も入ります。
改修した改訂版でセリフや分かりにくい部分など変更しました。
小説家になろうさんで先行配信していますのでこちらも応援していただくと嬉しいですっ!
https://ncode.syosetu.com/n7300fi/
この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
せっかく美少年に転生したのに女神の祝福がおかしい
拓海のり
BL
前世の記憶を取り戻した途端、海に放り込まれたレニー。【腐女神の祝福】は気になるけれど、裕福な商人の三男に転生したので、まったり気ままに異世界の醍醐味を満喫したいです。神様は出て来ません。ご都合主義、ゆるふわ設定。
途中までしか書いていないので、一話のみ三万字位の短編になります。
他サイトにも投稿しています。
幼い精霊を預けられたので、俺と主様が育ての父母になった件
雪玉 円記
BL
ハイマー辺境領主のグルシエス家に仕える、ディラン・サヘンドラ。
主である辺境伯グルシエス家三男、クリストファーと共に王立学園を卒業し、ハイマー領へと戻る。
その数日後、魔獣討伐のために騎士団と共に出撃したところ、幼い見た目の言葉を話せない子供を拾う。
リアンと名付けたその子供は、クリストファーの思惑でディランと彼を父母と認識してしまった。
個性豊かなグルシエス家、仕える面々、不思議な生き物たちに囲まれ、リアンはのびのびと暮らす。
ある日、世界的宗教であるマナ・ユリエ教の教団騎士であるエイギルがリアンを訪ねてきた。
リアンは次代の世界樹の精霊である。そのため、次のシンボルとして教団に居を移してほしい、と告げるエイギル。
だがリアンはそれを拒否する。リアンが嫌なら、と二人も支持する。
その判断が教皇アーシスの怒髪天をついてしまった。
数週間後、教団騎士団がハイマー辺境領邸を襲撃した。
ディランはリアンとクリストファーを守るため、リアンを迎えにきたエイギルと対峙する。
だが実力の差は大きく、ディランは斬り伏せられ、死の淵を彷徨う。
次に目が覚めた時、ディランはユグドラシルの元にいた。
ユグドラシルが用意したアフタヌーンティーを前に、意識が途絶えたあとのこと、自分とクリストファーの状態、リアンの決断、そして、何故自分とクリストファーがリアンの養親に選ばれたのかを聞かされる。
ユグドラシルに送り出され、意識が戻ったのは襲撃から数日後だった。
後日、リアンが拾ってきた不思議な生き物たちが実は四大元素の精霊たちであると知らされる。
彼らとグルシエス家中の協力を得て、ディランとクリストファーは鍛錬に励む。
一ヶ月後、ディランとクリスは四大精霊を伴い、教団本部がある隣国にいた。
ユグドラシルとリアンの意思を叶えるために。
そして、自分達を圧倒的戦闘力でねじ伏せたエイギルへのリベンジを果たすために──……。
※一部に流血を含む戦闘シーン、R-15程度のイチャイチャが含まれます。
※現在、改稿したものを順次投稿中です。
詳しくは最新の近況ボードをご覧ください。
龍の寵愛を受けし者達
樹木緑
BL
サンクホルム国の王子のジェイドは、
父王の護衛騎士であるダリルに憧れていたけど、
ある日偶然に自分の護衛にと推す父王に反する声を聞いてしまう。
それ以来ずっと嫌われていると思っていた王子だったが少しずつ打ち解けて
いつかはそれが愛に変わっていることに気付いた。
それと同時に何故父王が最強の自身の護衛を自分につけたのか理解す時が来る。
王家はある者に裏切りにより、
無惨にもその策に敗れてしまう。
剣が苦手でずっと魔法の研究をしていた王子は、
責めて騎士だけは助けようと、
刃にかかる寸前の所でとうの昔に失ったとされる
時戻しの術をかけるが…
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
どこにでもある話と思ったら、まさか?
きりか
BL
ストロベリームーンとニュースで言われた月夜の晩に、リストラ対象になった俺は、アルコールによって現実逃避をし、異世界転生らしきこととなったが、あまりにありきたりな展開に笑いがこみ上げてきたところ、イケメンが2人現れて…。
某国の皇子、冒険者となる
くー
BL
俺が転生したのは、とある帝国という国の皇子だった。
転生してから10年、19歳になった俺は、兄の反対を無視して従者とともに城を抜け出すことにした。
俺の本当の望み、冒険者になる夢を叶えるために……
異世界転生主人公がみんなから愛され、冒険を繰り広げ、成長していく物語です。
主人公は魔法使いとして、仲間と力をあわせて魔物や敵と戦います。
※ BL要素は控えめです。
2020年1月30日(木)完結しました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる