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強国バルド編 (ファンタジー系)
第15話 世界聖女連盟 2
しおりを挟むやがて会議室に案内されたのたが、前を見ないようにするのは、骨が折れる。
琉生斗は今、ふかふかの絨毯しか見ていない。いい長さだ、と思うのにも限界がある。
前を歩くアレクセイの足がとまり。琉生斗も歩みをとめた。
手を差し出されたので、自然にのせる。
はいはいー、お辞儀ですねーー。
琉生斗は目は伏せたまま、アレクセイに合わせて、二人で優雅にお辞儀をした。
あっ、手重ねたままだけど、いいよなーー、とは思ったものの、何となく離れがたい。
水を打ったような静かな場だった。
人間が本当にいるのかーー、と思うぐらい動く気配がない。
だが、ものすごい視線だ。
琉生斗は教皇の、一点集中、という言葉を思い出す。本当に視線がつき刺さってくる。
「皆様、ようこそお集まり下さいました。今日はどうぞ、我が家のようにごくつろぎ下さいね」
今回の主催、アジャハン国の国王リルハンが挨拶をする。
会議室内の空気が少しだけ和らいだ。
「アジャハン国王、ありがとうございます」
教皇ミハエルが挨拶を礼で返した。
全世界聖女連盟は、時空竜の女神様を信仰する国々の集まりだという。各国に大神殿はあれど、教皇はロードリンゲン国にただ一人、ミハエルのみ。
他国の大神殿は、教皇に次ぐ枢機卿をトップに成り立っているそうだ。
魔蝕の浄化は依頼してくるが、信仰神は別だという、ジャルト国のような国も多いらしく、全世界聖女連盟の加盟国も、世界の災害の割には、二十国と少なめだ。
ただ、小さな国は、数に入っていないらしく、何か要望があれば、直接主催国に申し入れるらしい。
現時点の加盟国が紹介されるときに、琉生斗は、海国オランジーと農国ナルディアの名前が呼ばれない事に気付いた。
加盟していないのか、国が小さいのか、おとなりさんなのになーー、という気持ちがなきにしもあらずである。
だが、会議が進む中、琉生斗は気付いた。
この場には、世界でも強大国と呼ばれる十五ヶ国しか集まれないのだ。
財力、生産力、軍事力、学力ーー。国力のない国は呼んでもらえないのだろう。
各国の自己紹介の、うちが一番アピールには、かなり疲労を感じる。
何の集まりなん?自慢大会?
しかもこっちは、視線をあげるな。とにかく目立つな、なのに、視線地獄。
いい加減背筋も痛いなーー、と思ったときに、教皇がようやく琉生斗の紹介をはじめた。
「ーー永きに渡って魔蝕を浄化されてきた、スズ様に代わり、召喚致しました、聖女ルート様です」
アレクセイに合図をされる。
琉生斗は立ち上がり、お辞儀をした。
顔をあげても視線は斜め下をキープ。瞬きも少なめにしとかなきゃなーー、と琉生斗は言われた事を忠実にこなし、席につこうとするが、
「失礼ですが、ご結婚は?」
「婚約は?」
あちこちから質問が飛びだした。
急に会議室が騒がしくなった。各国の王太子や王子が口を挟みだしたからだ。
立ってた方がいいのだろうかーー、と琉生斗が迷っていると、教皇が返答し始めた。
「はい。我が国の第一王子アレクセイ殿下と、ご結婚なさっておられます」
うわ!
何この視線、痛!
身体を貫通するほどの視線に、琉生斗は驚いた。
「ちっ」
あきらかな舌打ち。
「はあーぁ」
「いくら召喚国であっても、我々にも求婚する権利ぐらいいただけないものですかな」
嫌味を言われる。
「噂にはきいていましたが、アレクセイ殿下とは」
「政略結婚とは、聖女様もおかわいそうにーー」
「我々は行儀よく待っていましたがね」
「氷の王子が、結婚とは。ロードリンゲンも人材不足で、大変ですね」
嘲笑が混じる話し声。
おい、いまの奴ら、声覚えたぞーー。
「政略結婚ではありません。純愛だそうです」
教皇の言葉に、会議室は笑い声でわれた。
「ばかなーー!」
「ご冗談を、教皇!」
アレク、おまえまわりからのイメージ悪いんだなーー。
旦那様の交友関係を心配しつつ、教皇の意を汲んだ琉生斗は、目線をあげた。
会議室内に、えっ?、と動揺が走った。
琉生斗は、にっこりと微笑んでいる。
誰とも目は合わせずに、にっこりしながら左手の結婚指輪を、列席の王子達に見せる。
王子達が、ぽかん、とした顔で固まっている。
アダマスは肘をついた。笑いを堪えている。
ーーよくそんな度胸がありますね、とクリステイルは舌を巻く思いだ。
そして、王子達のその表情が、驚愕に変わる。
アレクセイが、優雅に立ち上がり、琉生斗の側に寄り、お揃いの指輪を王子達に見せたからだ。
芸能人みてーー。
琉生斗はにこにこがとまらない、いや、にやにやもとまらない。
ーーおい、おまえら、おれは幸せだぞーー、どうだいこのおれのスパダリ!純愛オーラ出してやんよ、ちくしょうめーー!
「はい、もう、よろしい。距離が近いですよ。はいはい、勝手に近付かない」
教皇の静止も聞かずに、琉生斗は自身の身体をアレクセイの方に寄せる。
視線も、アレクセイの下方に向ける。
まるで、直接顔をみたいのに、恥ずかしくて見れない、でも、どんなときでも、あなたの事を考えていますーー、とそんな雰囲気をかもし出す。
自分で言うのもなんだが、この恥じらうような小娘の演技、満点じゃねえかーー、琉生斗は心の中でガッツポーズだ。
各国の王族が動揺する中、会議は終わる。
「聖女様、私はこれからアダマス陛下と王太子殿下と枢機卿達との会議になります。アレクセイ殿下を挟んでなら、会話を許可しましょう」
「はい」
お行儀よく、返事をする。
東堂と美花も教皇の後に続いた。
「アレクセイ、今日はご機嫌だな」
アジャハン国の王太子アスラーンが近付いてくる。
「そんな嬉しそうな顔をはじめて見たよ」
バッカイア帝国の王太子ラルジュナも寄ってきた。
「はじめまして聖女様。実は一度会っているのだが、あのとき聖女様は倒れていたからな」
強い魔蝕のときかなーー、と琉生斗は会釈を返した。銀色のキレイな髪に深緑色の細い目。塩顔イケメンというやつだな、と琉生斗は感じた。
「ボクは魔通信ではよくやりとりしてるよー。今日はヒョウマいないんだー、残念ー」
「おい、すごいなぁ」
「あの三人の仲に入りたいなぁ」
こそこそ、ひそひそ、話し声が聞こえる。
「私の私室に行こう」
アスラーンが促した。琉生斗はアレクセイを見ると彼は軽く頷いた。
「ありがとうございます。喜んで」
琉生斗は頭を下げた。
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