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日常編3

第67話 王都日和 4 ☆やや18禁

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「ルート、その、目当てものは買えたか」

 少し焦っているアレクセイが、かわいかったりした。

「あぁ、ルッタマイヤさんに色々教えてもらった」

「一ついいか?」

 琉生斗は真剣な目で見つめられる。

「なんだよ」

「いや、なぜ彼女なのかーー」

「あー、おれがよろよろしてたら、ケツが痛いのか聞かれて、そうだって言ったら、いい薬の店があるから、って言うから」

「ーーそうか。すまなかった」

「いや、いいんだけど」

 はたして、彼は何に対して謝っているのかー。

「薬は塗ったのか?」

 ぶふっ、と琉生斗は吹き出した。

「どのタイミングで塗るんだよ」

 ホントにずれてるよなーー。ひとしきり笑ってしまう。



「自分でやるからー」

「させてくれ」

 最近、本当にただの変態になってないか?

「はいはい、これね。恥ずかしいからか下向いてんぞ」

 どうやってもケツ丸出し。明るい中で本当に恥ずかしすぎ、琉生斗はアレクセイの事を、肛門科の先生と思う事にした。

 ゆっくり、指が入ってくる。

「ふっ」

 息が漏れる。

 薬を塗られているだけなのに、感じてしまいそうになる自分が許せない。琉生斗は、静かに呼吸を繰り返す。
 呼吸に集中して、ケツの感触を忘れなくては。

 しみない薬でよかった。効いてるのかなわからないが、薬というだけで安心する。

「もう、いい?」

 いつまでいじってんだよ、と言おうとしたときだった。


 あれ?


 やべー、なんかめちゃ感じるんだけど。


 アレクセイの指が優しくそこを擦ると、琉生斗のゾクゾク感が止まらなくなった。

「アレク、や、やめ……」

「ルート?」

 なんだこれ、あそこの中が、すげぇーヤバ気持ちいい。どうすりゃ止まるんだよー。

 ぎゅっとシーツを掴む。

「あんっ」

 アレクセイが指を抜くと、自然に声が漏れた。

 今の、聞こえてねーよなー。

 どうしたらいんだよー。こんなんーー。

 

 アレクに頼むしかないだろーー、琉生斗の中の琉生斗が言った。



「あ、アレク」

「どうした、気分が悪いのか」

 薬がおかしかったのか、とアレクセイは表示を読む。

「アレクー」

 四つん這いになって、アレクセイに顔を向ける。自分が今、どんな浅ましい顔をしているか、考えただけで気が滅入る。

 現に自分を見るアレクセイの顔が、驚きで固まっている。

 ひっでー顔してんだろうなーー。

「挿れて……」

 声がかすれたが、意味は伝わったのか、アレクセイが琉生斗に覆いかぶさった。

「あ、あんっ」

 涙目になりながら、彼のものを受け入れるーー。


 何なんだよ、このエロ一直線。

 おれ、いくつだったっけ?

 高校生で、半分以上は、するって本当か?

 こんなん、将来を誓った相手じゃねえと、絶対無理だろうがーー。


 意識が薄れ、快感に飛ぶ。

 琉生斗は危険な快楽に、ただ、身を任せたーー。




 三日連続かー。

 そういうものかー?

 もしかしたら、結婚後は飽きちゃって、何もしなくなったりしてーー。

 琉生斗はよろよろの身体にムチを打って、なんとか歩いている。

 相方は朝から元気だ。

 とうとう世界でも征服したのか、というぐらい、何かに満ち溢れている。

 琉生斗としても、白シャツに黒いズボンのアレクセイなど、滅多にお目にかかれないので、その姿をしっかりと目に焼き付けている。

 ボタン二つ外しは、エロすぎてアウトだろ、と何気に胸ばかり見てしまっているが。

 

 おれ、胸だったら堅くてもいいのかーー、そう思うとせつない。

「ルートは何を飲む?」

 アレクセイはコーヒー豆を挽いて、コーヒーを淹れていた。

「コーヒーってあったんだな」

 だいたい紅茶だと思っていたのだが。

「城ではあまり出ない。下町だとよく飲まれるものだ」

 下町ー。お母さんのいたとこかなー。

「ふーん」

 ミルクと砂糖多めなら、というと、くすっと笑い声が聞こえた。



「さて、ルート。昨日はどこまで覚えている?」

 コーヒーを渡された後、アレクセイに尋ねられ、琉生斗は素直に答えた。

「序盤ぐらいだな。後は、はっきりとはーー」

 琉生斗の返事に、アレクセイはにこりと笑った。笑うと年相応に見える。

「この薬は、使わない方がいい」

 目の前に置かれたのは、ケツの薬ではない方だった。

「ルッタマイヤさんが、感度があがる、って言ってたやつ。間違えたのかーー」

 あちゃー、と琉生斗が言う。

「だが」

 アレクセイが、琉生斗の顎に手をかける。 

「な、なんだよ」

「記念日には使用させて欲しい」


 ん?


「特別な日だけでいいから」


 ん? 


「おまえー」

 琉生斗は吠えた。

「イケメンだからって何言っても許されると思ったら大間違いだ!こんなんゴミ箱行きだ!」

「成分表覚えたから、作れる……」

「賢さの無駄遣い!」

 キスをされる。舌がコーヒー味だ。

「誤魔化すな!」

「ルート、これは何?」

「はあ?」

 アレクセイは机の上に、琉生斗が警備隊からもらった薬のサンプルを並べた。

 よく見ると、パッケージがやらしいやつばかりだ。特にコンドームを指差され、恥ずかしさのあまり、視線を外した。

「さ、サンプルだよ。お店の」

 空気が、怖い。

 キャバクラの名刺が見つかったサラリーマンのお父さんのような気持ちで、琉生斗は話した。

「これは?」

 なんと、サンプルの間に紙が挟んであり、名前と連絡方法が書かれていた。琉生斗は血の気が引くのを感じた。
 本当に、サーと波が引くように引くんだなー。


 ーーあいつ、余計な事しやがってーー。

 だが、受け取った自分も自分だ。ルッタマイヤがいるからと、油断したのも自分だーー。

 琉生斗は顔をあげられなくなった。  

 圧が、恐ろしい圧が、琉生斗の目の前にある。

「ごっ、誤解です。本当に知りませんでした」

 嘘、偽りございません!琉生斗はひたすら謝った。

「こいつが勝手に渡してきたのか」

 こいつ、とは、アレクセイの口から、はじめて聞くワードが出た。

「おれは知りませんでした!」

「そうか」

 納得してくれたのかと顔をあげると、まったく信じていない目とぶつかる。

「そうだな」

 視線を逸らさずに、アレクセイは頷いた。

「そういう事にしておこうかーー」

 艶然と微笑まれ、琉生斗は真っ赤になったー。



 その日は、溜まっている書類を片付けると、アレクセイは執務室に籠もったので、琉生斗は一人でマシュウのところへ、果物を持ってお見舞いに行った。

「ゆっくりしておいで」

 と、寛大なアレクセイに、少し不気味なものを感じ取りながら、琉生斗は離宮から出ていった。


「殿下。バッカイア国の宝石大好き王太子から、金の輸出を増やして欲しいって、書簡きてるよ。今日、金の取引価格がこれぐらいで、先月の方がーー」

 兵馬が手早く書類を並べる。兵馬には、少し魔力があったので、転移魔法だけでも使えるように、アレクセイがした。
 

 おかげで、すごい便利だーー。兵馬はご機嫌だ。


「どしたの?なんかとてつもなく良い事があった?」

「いや……」

 自然に頬が緩むなど、今までなかった事だ。琉生斗が来てからというもの、アレクセイは自身の変化に、驚く事ばかりだ。


『ーーアレクセイ。あなたはこれから、あの子と出会うわ。必ず出会うから、死にたいなんて言わないで。あの子がひとりになってしまうーー。
 

 同じ景色を二人で見ていくのよ。

 必ず、あなたはあの子を大事にするーー。

 何より、あなたの大事なものになるのーー』


 スズ様は、ルートを見てそう思ったのだなー。


 ーー今、時空転移など覚えたら、ルートはどこに行くかわからんからなー。

 父の懸念はもっともだ。時空に飛ばれたら、誰も追える者はいないー。だが、それはーー。


 自分以外の話だーー。


 琉生斗が時空を越えるのなら、自分も越えてやる。何があっても絶対に離さない、ことわりなど変えてやるーー。



『アレク、好き、ねえ、好きだってー』

 自分の上で琉生斗が跳ねる。

『おれの事好きでいて、ずっと好きでいてぇ』

 キスをされて、髪を掻きまわされる。

『がんばるから、アレクがいるなら、何年でもがんばるからぁーー』

 明かりを消さずに、交わった。正気なら絶対に許してはくれなかっただろう。


 かわいいーー。


 アレクセイは思い出しては、笑みが零れてしまう。


 ずっと、一緒にいよう。


 そうだな、金婚式ぐらい、楽なものじゃないかーー。
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