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聖女誘拐編
第44話 ルートとアレクセイ♡
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「なぜ、こんな素人を?」
トルイストが眉を顰めた。それもそのはず、東堂、美花、兵馬はもとより、魔導師の町子までいる。
兵馬のたっての希望で連れてきた。
「あら、渋い騎士様~。こう見えてお役に立つと思いますよ~」
町子は、黒いトンガリ帽子をあげて、トルイストを見た。
「しかし、殿下。何の魔力も感じませんが、本当にあっているのですか?」
トルイストの言う通り、彼等が立つ小さな島以外、見渡す限り海しかない。
この、少ない植物の小島も、クローバー鳥の巣だらけで、糞がすごい。お腹に、四葉のクローバーの模様がある為、クローバー鳥と呼ばれているそうだ。
何も見えないー。
東堂も辺りを見回すが、何も感じられず首を振る。
だが、アレクセイは一定の方向を見据えている。じっと目を凝らしている。
「あそこに、ルートの髪飾りがあるのを感じる」
「そう、あそこですね~。開けても?」
「あぁ。頼む」
「カーテン、オープン~」
町子がカーテンを開けるように手を動かすと、空間がめくれ、海上に巨大な黒い城が現れた。
「「えっーー!」」
東堂達は声を揃えて驚いた。
「そんな、馬鹿な!」
トルイストも、驚愕の表情である。
「可視化の魔法だ」
見えないものを見えるようにする。
「すごい才能だ」
アレクセイが町子を誉めた。
「いえいえ、殿下。問題はここからですよ~」
「そうだな。こんな結界は見たことがない」
城を覆う結界が、異常な程、強力だ。
これは、どれだけ削れば壊せるのか、アレクセイにも検討がつかない。
「のんびり解析する時間はないだろう」
早く、早くいかなければならないのに。焦れば焦るほど、駄目なのはわかっているーー。
「まぁ、なんとかしますわ~。殿下~」
アレクセイは驚いた顔で町子を見た。
「これが破れるのか?」
自分でも無理なのに、この娘はできると言うのかーー。
「あー、今回はなんとかなりますが、いつも大丈夫な訳ないですよ~」
言葉を濁した言い方に、アレクセイは少し苛立った。
「兵馬くんに頼まれて、最初は無理だと思ったんですが、殿下にお会いしたら、いけると思いました~。準備します~」
杖を取り出して、町子は地面に文字を書き出す。
「なぜだ、なぜ今回は大丈夫なのだ?」
苛立ちが出てしまうのを収めるのが、少々難しかった。町子は、溜め息をついた。
「あちらがルート君の血で結界を作っていると言う事は~、ルート君の血があれば、何とでもなるという事です~」
アレクセイは眉根を寄せた。
「町子、おまえあいつの血なんか持ってたのか?」
東堂は聞く。
町子は魔力を練りながら答える。
「あるわけないよ~、血のようなものを殿下が持ってたから、いけると思ったの~」
町子は言いにくそうだった。
「殿下、まさかあいつの切った爪でも持ってるのか?」
完全に、変態を見る目の東堂である。
「いや」
いくらなんでもなー、と東堂は頭を掻く。
「じゃあ、ちょっと殿下、失礼して、腹部を触らせてもらいます~」
町子の言葉に、アレクセイはハッとなった。
東堂も、兵馬も、「あっ!」と声を出した。
「えっ?何?」
美花がキョロキョロと皆の顔を見る。
「ちょっと日が経ちましたが、血よりも強力ですよ~」
アレクセイは何も言えず、頷いた。
「殿下!行きますよ!」
アレクセイから黒い光が出る。町子は闇魔法を唱え、黒い城目掛けて、杖を振り回した。
バシャーン!
強固な結界が、いとも簡単に割れた!
「飛ぶぞ!」
アレクセイは、高速浮遊魔法を用い、黒い城に突入した。
まさに、翔ぶが如く、である。
「ルートォー!」
目の前で倒れていく琉生斗を支え、アレクセイはガルムスを斬り払った。
「な、なぜ!」
結界が、聖女の血で作った結界が、なぜ壊された!
ガルムスは恐怖した。
目の前に現れた人物の殺気が、殺気ではなくなっている。
糸が切れたように、ガルムスはへたり込んだ。
「あわわわわわわ……」
身体の震えが止まらない。
死んだほうがましなのでは、と思うほどの恐怖感に支配されていく。
「で、殿下!殿下ぁ!殺してはなりません!トードォ、捕縛だ!」
「はい!」
トルイストも腹に力を込めて、アレクセイを留めた。彼も、内心怖かった。
「よくも、貴様、よくもルートを……」
堪えても堪えきれない怒り。
ーーもしものときは殿下が間違いを起こさぬ様に、おまえさんが盾となってくれー。
アンダーソニーの思いを託されたが、自分ではどうすることもできないー。
トルイストは力なく、アレクセイを見た。
「大隊長!人がいっぱいいますが、どうしますか!」
東堂が、伏した人々を見て、困惑している。
「大隊長!花蓮と誘拐された子供達の安全を確保しました!」
東堂と美花の声に、トルイストは我に返った。
「殿下、お怒りはもちろんの事。ですが、聖女様の手当が先です」
トルイストの言葉に、アレクセイは瞬きをした。
「……そうだな」
琉生斗をしっかりと抱く。
「援軍は?」
「直に到着します。この城はーー」
「調べたのち、潰せ」
「はっ!」
アレクセイは転移魔法で、王宮へと戻った。
「ふぅ」
「お疲れっす!大隊長!」
「あぁ」
おまえたちがいてくれて良かったーー。他の兵士なら、殿下の気に呑まれて、行動できなかったであろう。
この新人達は侮りがたしーー。
その通りだと、トルイストは身をもって確信した。
琉生斗は目を覚ましたとき、アレクセイの顔を見て、女神様ーありがとうーー、と胸が熱くなった。
会いたかった顔を見て、一気に涙が出た。
自分が死んだと思っていたので、アレクセイに抱きつき、キスをするーー。
アレクセイが少し戸惑っているような気がしたが、かまわず続けた。死んでるのにリアルだなあ、と感じなくもなかったが、気持ちが先走った。
「会いたかったーー」
琉生斗はボロボロと泣いてしまう。そんな琉生斗のあまりの愛らしさに、アレクセイは胸を打たれ、きつく抱き締めキスを繰り返そうとーー。
「おっ、ほん」と、優雅な咳払いが聞こえた。
「!」
琉生斗は目を開け、まわりを見た。
国王アダマスをはじめ、クリステイルや、魔法騎士長達。東堂、美花、兵馬に花蓮、町子まで自分達を見守っていた。
「ほぎゃぁぁぁぁ!」
琉生斗は布団に突っ伏した。
現実かよ、生きてたのかよ、おれ!
「ルート、大丈夫か?」
アレクセイに尋ねられ、琉生斗は噛み付くように言った。
「大丈夫な訳ないだろ。止めろよ、ばかたれ!」
「まぁ、いいかと」
静かに笑うアレクセイは放っといて、琉生斗は姿勢を正した。力が入らず倒れそうになるのを、アレクセイが支える。
「ご心配をおかけしました」
頭を下げる。
視界の端に見える、にやにや笑う東堂を、今すぐ射殺してやりたい。
「いやいや。ご無事で何より。気分はいかがかな?」
アダマスが近付いてきた。アレクセイが場所を譲る。
「大丈夫です」
「無理はするな、ぎりぎりまで血を抜かれているそうだ、養生するように」
アダマスの言葉に、さらに深く頭を下げた。
「たくさん食べて栄養をつけよ」
「ありがとうございます」
国王は会議の為、クリステイルと退出した。クリステイルは、丁寧にお辞儀をして出て行く。出て行く途中、クリステイルは花蓮に頭を下げる。花蓮もにこにこと笑っている。
なんか、おかしいーー。笑いを堪えてないか?
「聖女様、ご無事で何よりでした」
魔法騎士長達も、なんだかにこにこしている。
いや、無事だったからなんだろうけどーー。
東堂は笑いを堪えた顔をしながら、魔法騎士長達と出て行った。兵馬は苦笑いだ。美花と町子に至っては、挨拶も適当に出ていくし。
「あっ、花蓮、大丈夫だったか?」
「うん。ルートくん、大丈夫よ。わたし、何もできなくて、ごめんね」
いい奴だよなーー。マジ好き。
琉生斗は思った。ーーアレクセイに振られたら、結婚してくれねーかなぁ。
「ルートくん、肩斬られたんでしょ?痛い?」
「いや、直してくれたのか?」
アレクセイの顔を見る。
「あぁ」
と、少し素っ気ない返事だった。
何なんだよ。まったく、もう。生き返ってこんな素っ気なくされたらぐれるぞ、と琉生斗は心の中でへそを曲げる。
「おでこのとこも傷があるわ」
「あー、これは古いやつだよ」
「子供の頃の?」
「そうそうー」
「花蓮、ルートも疲れてるから、もう休ませてあげよう」
「うん。ルートくん、早く元気になってね。あの子達も会いたがってるから」
「あぁ、また行くよ」
兵馬と花蓮が部屋から出ていく。
「あれ?そういえば、ここ王宮の方?」
「そうだ、私の私室だ。離宮では、不便な事が多くてな」
「ふーん」
眠くなってきた。琉生斗は落ちかける。アレクセイが、身体を横たえた。
「悪い、ちょっと寝るよ」
「あぁ。心配せずに、寝るといい」
もう、どこにも行かせないーー。
「なぁ」
優しい婚約者を琉生斗は見つめる。
「?」
「死ぬかなーって思ったとき、おまえの顔が見たくなったよ」
アレクセイは、琉生斗の手を取った。
「君を失っては私は生きられないーー」
手の甲に恭しくキスをする。
「すぐにあちらで会えただろう」
いや、生きて欲しいけどーー。
琉生斗は笑った。
アレクセイも、ふっ、と花が開くように笑った。
トルイストが眉を顰めた。それもそのはず、東堂、美花、兵馬はもとより、魔導師の町子までいる。
兵馬のたっての希望で連れてきた。
「あら、渋い騎士様~。こう見えてお役に立つと思いますよ~」
町子は、黒いトンガリ帽子をあげて、トルイストを見た。
「しかし、殿下。何の魔力も感じませんが、本当にあっているのですか?」
トルイストの言う通り、彼等が立つ小さな島以外、見渡す限り海しかない。
この、少ない植物の小島も、クローバー鳥の巣だらけで、糞がすごい。お腹に、四葉のクローバーの模様がある為、クローバー鳥と呼ばれているそうだ。
何も見えないー。
東堂も辺りを見回すが、何も感じられず首を振る。
だが、アレクセイは一定の方向を見据えている。じっと目を凝らしている。
「あそこに、ルートの髪飾りがあるのを感じる」
「そう、あそこですね~。開けても?」
「あぁ。頼む」
「カーテン、オープン~」
町子がカーテンを開けるように手を動かすと、空間がめくれ、海上に巨大な黒い城が現れた。
「「えっーー!」」
東堂達は声を揃えて驚いた。
「そんな、馬鹿な!」
トルイストも、驚愕の表情である。
「可視化の魔法だ」
見えないものを見えるようにする。
「すごい才能だ」
アレクセイが町子を誉めた。
「いえいえ、殿下。問題はここからですよ~」
「そうだな。こんな結界は見たことがない」
城を覆う結界が、異常な程、強力だ。
これは、どれだけ削れば壊せるのか、アレクセイにも検討がつかない。
「のんびり解析する時間はないだろう」
早く、早くいかなければならないのに。焦れば焦るほど、駄目なのはわかっているーー。
「まぁ、なんとかしますわ~。殿下~」
アレクセイは驚いた顔で町子を見た。
「これが破れるのか?」
自分でも無理なのに、この娘はできると言うのかーー。
「あー、今回はなんとかなりますが、いつも大丈夫な訳ないですよ~」
言葉を濁した言い方に、アレクセイは少し苛立った。
「兵馬くんに頼まれて、最初は無理だと思ったんですが、殿下にお会いしたら、いけると思いました~。準備します~」
杖を取り出して、町子は地面に文字を書き出す。
「なぜだ、なぜ今回は大丈夫なのだ?」
苛立ちが出てしまうのを収めるのが、少々難しかった。町子は、溜め息をついた。
「あちらがルート君の血で結界を作っていると言う事は~、ルート君の血があれば、何とでもなるという事です~」
アレクセイは眉根を寄せた。
「町子、おまえあいつの血なんか持ってたのか?」
東堂は聞く。
町子は魔力を練りながら答える。
「あるわけないよ~、血のようなものを殿下が持ってたから、いけると思ったの~」
町子は言いにくそうだった。
「殿下、まさかあいつの切った爪でも持ってるのか?」
完全に、変態を見る目の東堂である。
「いや」
いくらなんでもなー、と東堂は頭を掻く。
「じゃあ、ちょっと殿下、失礼して、腹部を触らせてもらいます~」
町子の言葉に、アレクセイはハッとなった。
東堂も、兵馬も、「あっ!」と声を出した。
「えっ?何?」
美花がキョロキョロと皆の顔を見る。
「ちょっと日が経ちましたが、血よりも強力ですよ~」
アレクセイは何も言えず、頷いた。
「殿下!行きますよ!」
アレクセイから黒い光が出る。町子は闇魔法を唱え、黒い城目掛けて、杖を振り回した。
バシャーン!
強固な結界が、いとも簡単に割れた!
「飛ぶぞ!」
アレクセイは、高速浮遊魔法を用い、黒い城に突入した。
まさに、翔ぶが如く、である。
「ルートォー!」
目の前で倒れていく琉生斗を支え、アレクセイはガルムスを斬り払った。
「な、なぜ!」
結界が、聖女の血で作った結界が、なぜ壊された!
ガルムスは恐怖した。
目の前に現れた人物の殺気が、殺気ではなくなっている。
糸が切れたように、ガルムスはへたり込んだ。
「あわわわわわわ……」
身体の震えが止まらない。
死んだほうがましなのでは、と思うほどの恐怖感に支配されていく。
「で、殿下!殿下ぁ!殺してはなりません!トードォ、捕縛だ!」
「はい!」
トルイストも腹に力を込めて、アレクセイを留めた。彼も、内心怖かった。
「よくも、貴様、よくもルートを……」
堪えても堪えきれない怒り。
ーーもしものときは殿下が間違いを起こさぬ様に、おまえさんが盾となってくれー。
アンダーソニーの思いを託されたが、自分ではどうすることもできないー。
トルイストは力なく、アレクセイを見た。
「大隊長!人がいっぱいいますが、どうしますか!」
東堂が、伏した人々を見て、困惑している。
「大隊長!花蓮と誘拐された子供達の安全を確保しました!」
東堂と美花の声に、トルイストは我に返った。
「殿下、お怒りはもちろんの事。ですが、聖女様の手当が先です」
トルイストの言葉に、アレクセイは瞬きをした。
「……そうだな」
琉生斗をしっかりと抱く。
「援軍は?」
「直に到着します。この城はーー」
「調べたのち、潰せ」
「はっ!」
アレクセイは転移魔法で、王宮へと戻った。
「ふぅ」
「お疲れっす!大隊長!」
「あぁ」
おまえたちがいてくれて良かったーー。他の兵士なら、殿下の気に呑まれて、行動できなかったであろう。
この新人達は侮りがたしーー。
その通りだと、トルイストは身をもって確信した。
琉生斗は目を覚ましたとき、アレクセイの顔を見て、女神様ーありがとうーー、と胸が熱くなった。
会いたかった顔を見て、一気に涙が出た。
自分が死んだと思っていたので、アレクセイに抱きつき、キスをするーー。
アレクセイが少し戸惑っているような気がしたが、かまわず続けた。死んでるのにリアルだなあ、と感じなくもなかったが、気持ちが先走った。
「会いたかったーー」
琉生斗はボロボロと泣いてしまう。そんな琉生斗のあまりの愛らしさに、アレクセイは胸を打たれ、きつく抱き締めキスを繰り返そうとーー。
「おっ、ほん」と、優雅な咳払いが聞こえた。
「!」
琉生斗は目を開け、まわりを見た。
国王アダマスをはじめ、クリステイルや、魔法騎士長達。東堂、美花、兵馬に花蓮、町子まで自分達を見守っていた。
「ほぎゃぁぁぁぁ!」
琉生斗は布団に突っ伏した。
現実かよ、生きてたのかよ、おれ!
「ルート、大丈夫か?」
アレクセイに尋ねられ、琉生斗は噛み付くように言った。
「大丈夫な訳ないだろ。止めろよ、ばかたれ!」
「まぁ、いいかと」
静かに笑うアレクセイは放っといて、琉生斗は姿勢を正した。力が入らず倒れそうになるのを、アレクセイが支える。
「ご心配をおかけしました」
頭を下げる。
視界の端に見える、にやにや笑う東堂を、今すぐ射殺してやりたい。
「いやいや。ご無事で何より。気分はいかがかな?」
アダマスが近付いてきた。アレクセイが場所を譲る。
「大丈夫です」
「無理はするな、ぎりぎりまで血を抜かれているそうだ、養生するように」
アダマスの言葉に、さらに深く頭を下げた。
「たくさん食べて栄養をつけよ」
「ありがとうございます」
国王は会議の為、クリステイルと退出した。クリステイルは、丁寧にお辞儀をして出て行く。出て行く途中、クリステイルは花蓮に頭を下げる。花蓮もにこにこと笑っている。
なんか、おかしいーー。笑いを堪えてないか?
「聖女様、ご無事で何よりでした」
魔法騎士長達も、なんだかにこにこしている。
いや、無事だったからなんだろうけどーー。
東堂は笑いを堪えた顔をしながら、魔法騎士長達と出て行った。兵馬は苦笑いだ。美花と町子に至っては、挨拶も適当に出ていくし。
「あっ、花蓮、大丈夫だったか?」
「うん。ルートくん、大丈夫よ。わたし、何もできなくて、ごめんね」
いい奴だよなーー。マジ好き。
琉生斗は思った。ーーアレクセイに振られたら、結婚してくれねーかなぁ。
「ルートくん、肩斬られたんでしょ?痛い?」
「いや、直してくれたのか?」
アレクセイの顔を見る。
「あぁ」
と、少し素っ気ない返事だった。
何なんだよ。まったく、もう。生き返ってこんな素っ気なくされたらぐれるぞ、と琉生斗は心の中でへそを曲げる。
「おでこのとこも傷があるわ」
「あー、これは古いやつだよ」
「子供の頃の?」
「そうそうー」
「花蓮、ルートも疲れてるから、もう休ませてあげよう」
「うん。ルートくん、早く元気になってね。あの子達も会いたがってるから」
「あぁ、また行くよ」
兵馬と花蓮が部屋から出ていく。
「あれ?そういえば、ここ王宮の方?」
「そうだ、私の私室だ。離宮では、不便な事が多くてな」
「ふーん」
眠くなってきた。琉生斗は落ちかける。アレクセイが、身体を横たえた。
「悪い、ちょっと寝るよ」
「あぁ。心配せずに、寝るといい」
もう、どこにも行かせないーー。
「なぁ」
優しい婚約者を琉生斗は見つめる。
「?」
「死ぬかなーって思ったとき、おまえの顔が見たくなったよ」
アレクセイは、琉生斗の手を取った。
「君を失っては私は生きられないーー」
手の甲に恭しくキスをする。
「すぐにあちらで会えただろう」
いや、生きて欲しいけどーー。
琉生斗は笑った。
アレクセイも、ふっ、と花が開くように笑った。
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