30 / 410
魔法騎士大演習編 (ファンタジー系)
第29話 魔法騎士大演習 4
しおりを挟む
下を見ぬように、というありがたい警告の通り、底の見えぬ恐ろしさと、風の強さに、美花の心は挫けていた。
ーー怖いよー。
加えて道の細さ。
五人一組で紐を腰に通し、崖道を行く。下からあがってくる風の音が、もはやホラーだ。
「他に道ないんですかーー」
つい、泣き言をいってしまうー。
「他の道は、ロープを渡して綱渡りかしら」
冷静に、前を歩くカルディが言う。さすがにこの道幅は走る事はできない。
「ミハナ、ペース合わせて」
後ろからマッジが追いたてる。
「なんで平気なんですかー?」
「慣れかしら?」
カルディが答える。
「こんな足場での戦闘も、ない事はないからね」
「はぁー」
「よく、歩いているわ。ミハナ」
カルディは、アメとムチの使い方がうまそうだ。
想定訓練では、近場の山を登ったりしたが、崖の高さが違うし、何より手摺があったのだ。その差は、天と地ほど大きい。
こんな、へっぽこ魔法騎士、参加しないほうがよかったんじゃないのかなー。
時折、前方から戦闘を知らせるラッパの音が響く。
うそでしょー!と、思う間もなく、戦闘終了の合図が、聞こえる。
「えっ、終わったの?」
「魔法が使えるのなら、ファウラ大隊長がいるからね。足場の悪さは関係ないわ」
「へぇー」
優しいお師匠様の顔を思い出す。普段の指導からはわからないが、カルディが言うのなら強いのだろう。
「強いなんてもんじゃないわよ」
魔法の火力は、魔法騎士の中でもトップクラスよ。アンダーソニー様も、敵わない魔法もあるらしいわ。
と、カルディは語った。
「ミハナは、期待されてんね」
マッジが豪快に笑った。
「そんな事ないですよ。ルートのおまけだから、気を使ってもらってますけど」
「自覚はあるんだ」
「まぁ」
そりゃあねーー。
「それ込みであんただからいいじゃん」
あれ?マッジが優しいーー。
「戦闘の合図!」
一組前からレノラの声が聞こえた。美花が横を見るとーー。
「ひゃあ!」
ドキリ、とした。巨大な鳥がこちらを見ている。
「炎天!」
間髪入れずに、騎士達が魔法を唱えた。
「ダメよ!」
レノラが叫んだ。
えっ!と美花が思った瞬間、鳥は炎を飲み込み、大きく嘴を開いた。喉の奥に、燃え盛る炎の渦が見える。
ぼぉぉぉぉー!
まるで大きなガスバーナーの音。熱風と炎がくるのを結界で防ぐ。美花は上位の魔法しか使えないので、下位の盾は使用できない。だが、結界より簡単に出せる盾は、とても便利で使い勝手がよい。そう思うと、上位の魔法ばっかり使えても、いい事ばかりではない、と美花は思う。
ようは使い分け、なのだ。
「炎鳥えんちょうよ。よく見なさい!」
どこ見たらわかるんだろ、と美花が思った瞬間。
「凍結」
空中にファウラが浮いており、炎鳥を凍らせた。
氷に包まれた炎鳥は、そのまま落下していく。
しばらくして、下からぶつかるような音が響いた。
「怪我はないですか?」
ファウラが微笑んだ。大隊長とは思えぬ、親しみ安さと腰の低さ。一新兵にすら頭を下げる姿には、誰もが瞠目する。
「はい!」
「ミハナ、炎鳥は嘴が真っ赤で、爪も赤いです」
へぇー。
「わかりました!」
ファウラがいると、なぜだかがんばりたくなる。美花は気力を持ち直した。
元気な返事に、カルディは頭痛を覚えた。
「さあ、もう少しがんばりましょう」
「お師匠様のもう少しは、もう少しじゃないです!」
ミハナーー!、と心の中でレノラは引き攣った。
ファウラは気にした様子もなく笑った。
「この調子なら、明日の昼にはエデン平に着きますよ」
もう少しじゃないーー!
「ねぇ、殿下」
三日目の夜天幕にて、千里眼の魔法で三チームの動向を見ていた兵馬が、アレクセイに声をかけた。
「どうした」
「姉さんとファウラ大隊長、できてないよね?」
表情が固まっている。
「さあ、知らないが」
何の事だ、と不思議そうなアレクセイの顔。
「知らないじゃないよ。姉さんに大隊長紹介したの殿下でしょ?男と女がしょっちゅうくっついてたら、どうなるのかわからなかったの?男と男でもくっついてたらできちゃったのに!」
「まだ、できてはいない」
なぜ兵馬は怒っているのか、理解できるアレクセイではなかった。
「問題はそこじゃないの!いやぁー、もうー。殿下のバカ。女の人だって十人いるんだから、そっちで面倒みてもらえば良かったのにさ」
ぷんぷん、兵馬は怒っているが、適任者を選んだつもりのアレクセイは困惑しかない。
「ファウラほど、最高位の魔法が使える者は、魔法騎士でもいないのだが」
「そうですよ。ヒョウマ殿。いい奴ですぜ、奴は。独身ですし」
ヤヘルの言葉に、さらに兵馬は毒づく。
「不倫とかそういう事を気にしてんじゃないの!なんか、身内のラブコメは見たくないんだよ!」
「なるほど、ヒョウマ殿はミハナが大好きなんだな」
「違うの!」
ホント、兵士って無神経だ、と兵馬は怒りながら腕を組んだ。
「わたくしはわかりますわよ。兄弟が異性に接するときはこんな風なんだという、衝撃ですわよね」
わたくしの兄も義姉に接するときなんか、とルッタマイヤが語る。
「そう、姉が女の顔してる!ってやつ!」
「ミハナが、悪いのか」
「殿下は黙ってて」
尋ねられたり、黙っててと言われたり、忙しいことこの上ない、アレクセイは溜め息をついた。
「ヒョウマ殿は、ミハナに恋人ができるのが嫌なのか?」
ヤヘルが問う。年下なのに、アレクセイ達の講師という肩書きのせいで、名前の下に、殿、とつけてもらっている。
「そうでもないけどさ。糸目の優男だよ。双子って同じ趣味だって言うじゃん」
「糸目の優女を捜せばいいのか」
「殿下はホントに黙ってて」
アレクセイは少し落ち込んだ。
「もう、殿下はさっさとルートのとこ行きなよ。内心ウキウキしてんのモロバレだよ」
「そうかー」
「新婚のパパみたいだ」
仕事ちゃっちゃっと終わらせて、今日も妻の為に早く家に帰るぞー、というアレクセイ。家では転がりながら、ゴロゴロする妻が待っているだろう。
「遅くなったが、行ってくる」
「何か用事なの?」
「あぁ、とても大事な用事だ」
ふーん、聖女の関係かな、と思う兵馬。
「魔法騎士って全員で三百五人なんだよね」
兵馬の問いに、ルッタマイヤが頷いた。
「三百三人でしたが、トードォとミハナが加わりましたから」
魔法騎士長にアンダーソニー、軍将ルッタマイヤ、団将ヤヘルの後に、師団長パボン、大隊長トルイスト、大隊長ファウラ、大隊長マリア(産休中)。その下に六人の中隊長、二十九人の小隊長で構成されている。もっとも、小隊長は十人一組の一員でもある。
「全体で兵士は何人なの?」
「非正規を合わせると、五千人ぐらいだなー」
「少なく感じるねー。でも、国民が四万近くだから、ちょうどいいぐらいか」
国土も広いし、豊かなのに、人口が四万だけーー。この世界の総人口が少ないのか。
「昔はともかく、今は他国からちょっかいをかけられる事も、聖女を寄越せ、と言われる事も減りましたな」
やっぱりあるのかーー。
「上の脅威バルド国は、国民が、八万人に対して、軍人が三万五千人、この国は一定の年齢になると兵役があります」
「やる気満々だね」
「ただ、下のバッカイア国は十万の民に対して軍人が五万人。非正規が多いそうですが……」
「さらに、多いねーー。非正規でも半分が軍人てー」
特にバルドは我が国を潰したくて仕方のない国なのです、と溜め息をつくアンダーソニー。
「聖女がうざいってやつ?」
「それがなかったら、我が国はありませんな」
三人は笑った。
琉生斗、思ってるより君って大変だねーー。
「今は両国とも大人しくしておりますな」
「昔、アレクセイ殿下にボコボコにやられましたからなー。屈辱だったでしょう。十四の若造に空軍を壊滅させられて」
理由は、我が国の領域に入ったから、とヤヘルが懐かしい顔をした。思い出に浸る内容ではないが。
「なんで、殿下だけ規格外に強いの?」
「なんででしょうなー」
アンダーソニーが惚けた。
絶対知ってそうーー。
「おかしくない?変な薬飲んでるとか」
「そんな薬があったら、わたくしも欲しいですわ」
「おまえさんも充分強いだろ」
「みんなしてごまかしてー」
兵馬は聞き出すことを諦めた。
「アレクセイ殿下は、我々が思っているよりも過酷な道を歩まれてきました」
アンダーソニーが誰に聞かせる訳でもないように、呟くように語った。
「スズ様が、誰よりも強くなるように、とおっしゃられたそうですーー」
「誰も当てにしない、そんな戦い方ですな。殿下は」
ヤヘルが淋しげに漏らす。
「ですが」
アンダーソニーが笑顔を見せた。
「今は、とてもお幸せそうで、本当に聖女様には感謝しかありません」
感慨深気な様子に、ヤヘルとルッタマイヤもしんみりする。
「まっ、聖女ってあのとんでもルートさんだからね。息つく暇もないんじゃない」
兵馬は軽く肩を竦めた。
「それにしても、東堂ーー」
大丈夫かなーー。
兵馬は友を案じた。
姉さんより、心配なのは、おまえだよーー。
ーー怖いよー。
加えて道の細さ。
五人一組で紐を腰に通し、崖道を行く。下からあがってくる風の音が、もはやホラーだ。
「他に道ないんですかーー」
つい、泣き言をいってしまうー。
「他の道は、ロープを渡して綱渡りかしら」
冷静に、前を歩くカルディが言う。さすがにこの道幅は走る事はできない。
「ミハナ、ペース合わせて」
後ろからマッジが追いたてる。
「なんで平気なんですかー?」
「慣れかしら?」
カルディが答える。
「こんな足場での戦闘も、ない事はないからね」
「はぁー」
「よく、歩いているわ。ミハナ」
カルディは、アメとムチの使い方がうまそうだ。
想定訓練では、近場の山を登ったりしたが、崖の高さが違うし、何より手摺があったのだ。その差は、天と地ほど大きい。
こんな、へっぽこ魔法騎士、参加しないほうがよかったんじゃないのかなー。
時折、前方から戦闘を知らせるラッパの音が響く。
うそでしょー!と、思う間もなく、戦闘終了の合図が、聞こえる。
「えっ、終わったの?」
「魔法が使えるのなら、ファウラ大隊長がいるからね。足場の悪さは関係ないわ」
「へぇー」
優しいお師匠様の顔を思い出す。普段の指導からはわからないが、カルディが言うのなら強いのだろう。
「強いなんてもんじゃないわよ」
魔法の火力は、魔法騎士の中でもトップクラスよ。アンダーソニー様も、敵わない魔法もあるらしいわ。
と、カルディは語った。
「ミハナは、期待されてんね」
マッジが豪快に笑った。
「そんな事ないですよ。ルートのおまけだから、気を使ってもらってますけど」
「自覚はあるんだ」
「まぁ」
そりゃあねーー。
「それ込みであんただからいいじゃん」
あれ?マッジが優しいーー。
「戦闘の合図!」
一組前からレノラの声が聞こえた。美花が横を見るとーー。
「ひゃあ!」
ドキリ、とした。巨大な鳥がこちらを見ている。
「炎天!」
間髪入れずに、騎士達が魔法を唱えた。
「ダメよ!」
レノラが叫んだ。
えっ!と美花が思った瞬間、鳥は炎を飲み込み、大きく嘴を開いた。喉の奥に、燃え盛る炎の渦が見える。
ぼぉぉぉぉー!
まるで大きなガスバーナーの音。熱風と炎がくるのを結界で防ぐ。美花は上位の魔法しか使えないので、下位の盾は使用できない。だが、結界より簡単に出せる盾は、とても便利で使い勝手がよい。そう思うと、上位の魔法ばっかり使えても、いい事ばかりではない、と美花は思う。
ようは使い分け、なのだ。
「炎鳥えんちょうよ。よく見なさい!」
どこ見たらわかるんだろ、と美花が思った瞬間。
「凍結」
空中にファウラが浮いており、炎鳥を凍らせた。
氷に包まれた炎鳥は、そのまま落下していく。
しばらくして、下からぶつかるような音が響いた。
「怪我はないですか?」
ファウラが微笑んだ。大隊長とは思えぬ、親しみ安さと腰の低さ。一新兵にすら頭を下げる姿には、誰もが瞠目する。
「はい!」
「ミハナ、炎鳥は嘴が真っ赤で、爪も赤いです」
へぇー。
「わかりました!」
ファウラがいると、なぜだかがんばりたくなる。美花は気力を持ち直した。
元気な返事に、カルディは頭痛を覚えた。
「さあ、もう少しがんばりましょう」
「お師匠様のもう少しは、もう少しじゃないです!」
ミハナーー!、と心の中でレノラは引き攣った。
ファウラは気にした様子もなく笑った。
「この調子なら、明日の昼にはエデン平に着きますよ」
もう少しじゃないーー!
「ねぇ、殿下」
三日目の夜天幕にて、千里眼の魔法で三チームの動向を見ていた兵馬が、アレクセイに声をかけた。
「どうした」
「姉さんとファウラ大隊長、できてないよね?」
表情が固まっている。
「さあ、知らないが」
何の事だ、と不思議そうなアレクセイの顔。
「知らないじゃないよ。姉さんに大隊長紹介したの殿下でしょ?男と女がしょっちゅうくっついてたら、どうなるのかわからなかったの?男と男でもくっついてたらできちゃったのに!」
「まだ、できてはいない」
なぜ兵馬は怒っているのか、理解できるアレクセイではなかった。
「問題はそこじゃないの!いやぁー、もうー。殿下のバカ。女の人だって十人いるんだから、そっちで面倒みてもらえば良かったのにさ」
ぷんぷん、兵馬は怒っているが、適任者を選んだつもりのアレクセイは困惑しかない。
「ファウラほど、最高位の魔法が使える者は、魔法騎士でもいないのだが」
「そうですよ。ヒョウマ殿。いい奴ですぜ、奴は。独身ですし」
ヤヘルの言葉に、さらに兵馬は毒づく。
「不倫とかそういう事を気にしてんじゃないの!なんか、身内のラブコメは見たくないんだよ!」
「なるほど、ヒョウマ殿はミハナが大好きなんだな」
「違うの!」
ホント、兵士って無神経だ、と兵馬は怒りながら腕を組んだ。
「わたくしはわかりますわよ。兄弟が異性に接するときはこんな風なんだという、衝撃ですわよね」
わたくしの兄も義姉に接するときなんか、とルッタマイヤが語る。
「そう、姉が女の顔してる!ってやつ!」
「ミハナが、悪いのか」
「殿下は黙ってて」
尋ねられたり、黙っててと言われたり、忙しいことこの上ない、アレクセイは溜め息をついた。
「ヒョウマ殿は、ミハナに恋人ができるのが嫌なのか?」
ヤヘルが問う。年下なのに、アレクセイ達の講師という肩書きのせいで、名前の下に、殿、とつけてもらっている。
「そうでもないけどさ。糸目の優男だよ。双子って同じ趣味だって言うじゃん」
「糸目の優女を捜せばいいのか」
「殿下はホントに黙ってて」
アレクセイは少し落ち込んだ。
「もう、殿下はさっさとルートのとこ行きなよ。内心ウキウキしてんのモロバレだよ」
「そうかー」
「新婚のパパみたいだ」
仕事ちゃっちゃっと終わらせて、今日も妻の為に早く家に帰るぞー、というアレクセイ。家では転がりながら、ゴロゴロする妻が待っているだろう。
「遅くなったが、行ってくる」
「何か用事なの?」
「あぁ、とても大事な用事だ」
ふーん、聖女の関係かな、と思う兵馬。
「魔法騎士って全員で三百五人なんだよね」
兵馬の問いに、ルッタマイヤが頷いた。
「三百三人でしたが、トードォとミハナが加わりましたから」
魔法騎士長にアンダーソニー、軍将ルッタマイヤ、団将ヤヘルの後に、師団長パボン、大隊長トルイスト、大隊長ファウラ、大隊長マリア(産休中)。その下に六人の中隊長、二十九人の小隊長で構成されている。もっとも、小隊長は十人一組の一員でもある。
「全体で兵士は何人なの?」
「非正規を合わせると、五千人ぐらいだなー」
「少なく感じるねー。でも、国民が四万近くだから、ちょうどいいぐらいか」
国土も広いし、豊かなのに、人口が四万だけーー。この世界の総人口が少ないのか。
「昔はともかく、今は他国からちょっかいをかけられる事も、聖女を寄越せ、と言われる事も減りましたな」
やっぱりあるのかーー。
「上の脅威バルド国は、国民が、八万人に対して、軍人が三万五千人、この国は一定の年齢になると兵役があります」
「やる気満々だね」
「ただ、下のバッカイア国は十万の民に対して軍人が五万人。非正規が多いそうですが……」
「さらに、多いねーー。非正規でも半分が軍人てー」
特にバルドは我が国を潰したくて仕方のない国なのです、と溜め息をつくアンダーソニー。
「聖女がうざいってやつ?」
「それがなかったら、我が国はありませんな」
三人は笑った。
琉生斗、思ってるより君って大変だねーー。
「今は両国とも大人しくしておりますな」
「昔、アレクセイ殿下にボコボコにやられましたからなー。屈辱だったでしょう。十四の若造に空軍を壊滅させられて」
理由は、我が国の領域に入ったから、とヤヘルが懐かしい顔をした。思い出に浸る内容ではないが。
「なんで、殿下だけ規格外に強いの?」
「なんででしょうなー」
アンダーソニーが惚けた。
絶対知ってそうーー。
「おかしくない?変な薬飲んでるとか」
「そんな薬があったら、わたくしも欲しいですわ」
「おまえさんも充分強いだろ」
「みんなしてごまかしてー」
兵馬は聞き出すことを諦めた。
「アレクセイ殿下は、我々が思っているよりも過酷な道を歩まれてきました」
アンダーソニーが誰に聞かせる訳でもないように、呟くように語った。
「スズ様が、誰よりも強くなるように、とおっしゃられたそうですーー」
「誰も当てにしない、そんな戦い方ですな。殿下は」
ヤヘルが淋しげに漏らす。
「ですが」
アンダーソニーが笑顔を見せた。
「今は、とてもお幸せそうで、本当に聖女様には感謝しかありません」
感慨深気な様子に、ヤヘルとルッタマイヤもしんみりする。
「まっ、聖女ってあのとんでもルートさんだからね。息つく暇もないんじゃない」
兵馬は軽く肩を竦めた。
「それにしても、東堂ーー」
大丈夫かなーー。
兵馬は友を案じた。
姉さんより、心配なのは、おまえだよーー。
118
お気に入りに追加
255
あなたにおすすめの小説
とある文官のひとりごと
きりか
BL
貧乏な弱小子爵家出身のノア・マキシム。
アシュリー王国の花形騎士団の文官として、日々頑張っているが、学生の頃からやたらと絡んでくるイケメン部隊長であるアベル・エメを大の苦手というか、天敵認定をしていた。しかし、ある日、父の借金が判明して…。
基本コメディで、少しだけシリアス?
エチシーンところか、チュッどまりで申し訳ございません(土下座)
ムーンライト様でも公開しております。


一級警備員の俺が異世界転生したら一流警備兵になったけど色々と勧誘されて鬱陶しい
司真 緋水銀
ファンタジー
【あらすじ】
一級の警備資格を持つ不思議系マイペース主人公、石原鳴月維(いしはらなつい)は仕事中トラックに轢かれ死亡する。
目を覚ました先は勇者と魔王の争う異世界。
『職業』の『天職』『適職』などにより『資格(センス)』や『技術(スキル)』が決まる世界。
勇者の力になるべく喚ばれた石原の職業は……【天職の警備兵】
周囲に笑いとばされ勇者達にもつま弾きにされた石原だったが…彼はあくまでマイペースに徐々に力を発揮し、周囲を驚嘆させながら自由に生き抜いていく。
--------------------------------------------------------
※基本主人公視点ですが別の人視点も入ります。
改修した改訂版でセリフや分かりにくい部分など変更しました。
小説家になろうさんで先行配信していますのでこちらも応援していただくと嬉しいですっ!
https://ncode.syosetu.com/n7300fi/
この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。

どこにでもある話と思ったら、まさか?
きりか
BL
ストロベリームーンとニュースで言われた月夜の晩に、リストラ対象になった俺は、アルコールによって現実逃避をし、異世界転生らしきこととなったが、あまりにありきたりな展開に笑いがこみ上げてきたところ、イケメンが2人現れて…。

せっかく美少年に転生したのに女神の祝福がおかしい
拓海のり
BL
前世の記憶を取り戻した途端、海に放り込まれたレニー。【腐女神の祝福】は気になるけれど、裕福な商人の三男に転生したので、まったり気ままに異世界の醍醐味を満喫したいです。神様は出て来ません。ご都合主義、ゆるふわ設定。
途中までしか書いていないので、一話のみ三万字位の短編になります。
他サイトにも投稿しています。
【完結】ここで会ったが、十年目。
N2O
BL
帝国の第二皇子×不思議な力を持つ一族の長の息子(治癒術特化)
我が道を突き進む攻めに、ぶん回される受けのはなし。
(追記5/14 : お互いぶん回してますね。)
Special thanks
illustration by おのつく 様
X(旧Twitter) @__oc_t
※ご都合主義です。あしからず。
※素人作品です。ゆっくりと、温かな目でご覧ください。
※◎は視点が変わります。
秘花~王太子の秘密と宿命の皇女~
めぐみ
BL
☆俺はお前を何度も抱き、俺なしではいられぬ淫らな身体にする。宿命という名の数奇な運命に翻弄される王子達☆
―俺はそなたを玩具だと思ったことはなかった。ただ、そなたの身体は俺のものだ。俺はそなたを何度でも抱き、俺なしではいられないような淫らな身体にする。抱き潰すくらいに抱けば、そなたもあの宦官のことなど思い出しもしなくなる。―
モンゴル大帝国の皇帝を祖父に持ちモンゴル帝国直系の皇女を生母として生まれた彼は、生まれながらの高麗の王太子だった。
だが、そんな王太子の運命を激変させる出来事が起こった。
そう、あの「秘密」が表に出るまでは。
幼い精霊を預けられたので、俺と主様が育ての父母になった件
雪玉 円記
BL
ハイマー辺境領主のグルシエス家に仕える、ディラン・サヘンドラ。
主である辺境伯グルシエス家三男、クリストファーと共に王立学園を卒業し、ハイマー領へと戻る。
その数日後、魔獣討伐のために騎士団と共に出撃したところ、幼い見た目の言葉を話せない子供を拾う。
リアンと名付けたその子供は、クリストファーの思惑でディランと彼を父母と認識してしまった。
個性豊かなグルシエス家、仕える面々、不思議な生き物たちに囲まれ、リアンはのびのびと暮らす。
ある日、世界的宗教であるマナ・ユリエ教の教団騎士であるエイギルがリアンを訪ねてきた。
リアンは次代の世界樹の精霊である。そのため、次のシンボルとして教団に居を移してほしい、と告げるエイギル。
だがリアンはそれを拒否する。リアンが嫌なら、と二人も支持する。
その判断が教皇アーシスの怒髪天をついてしまった。
数週間後、教団騎士団がハイマー辺境領邸を襲撃した。
ディランはリアンとクリストファーを守るため、リアンを迎えにきたエイギルと対峙する。
だが実力の差は大きく、ディランは斬り伏せられ、死の淵を彷徨う。
次に目が覚めた時、ディランはユグドラシルの元にいた。
ユグドラシルが用意したアフタヌーンティーを前に、意識が途絶えたあとのこと、自分とクリストファーの状態、リアンの決断、そして、何故自分とクリストファーがリアンの養親に選ばれたのかを聞かされる。
ユグドラシルに送り出され、意識が戻ったのは襲撃から数日後だった。
後日、リアンが拾ってきた不思議な生き物たちが実は四大元素の精霊たちであると知らされる。
彼らとグルシエス家中の協力を得て、ディランとクリストファーは鍛錬に励む。
一ヶ月後、ディランとクリスは四大精霊を伴い、教団本部がある隣国にいた。
ユグドラシルとリアンの意思を叶えるために。
そして、自分達を圧倒的戦闘力でねじ伏せたエイギルへのリベンジを果たすために──……。
※一部に流血を含む戦闘シーン、R-15程度のイチャイチャが含まれます。
※現在、改稿したものを順次投稿中です。
詳しくは最新の近況ボードをご覧ください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる